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貿易黒字はよいことではない

財務省が11月18日発表した10月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8729億円の黒字でした。黒字は4カ月連続とのことです。輸出額は前年同月比0.2%減の65661億円、輸入額は13.3%減の56932億円です。

 

「貿易黒字がよくて、貿易赤字が悪い」というイメージがよくありますが、標準的な経済学者がそう考えることはまずありません。それを如実に表しているのが、今回の貿易統計です。

 

コロカ禍の影響で日本経済は深刻な状況であり、7から9月期の経済回復度合いは、アメリカと比べて低くなっています。そうした中で、海外からの需要を示す輸出が回復する中で、国内需要が低迷し、輸入が大幅に減少しています。輸入は国内の海外製品への需要ですから、それが低迷していることは、すなわち国内需要の低迷をあらわすのです。

 

貿易黒字は、「輸出-輸入」ですので、国内需要が低迷して輸入が下がれば黒字になります。よって、貿易黒字であることは国内不景気を意味し、よいことだとはいえないのです。

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「マクロとミクロの視点を使い分ける~経営学と経済学の間を往来する」②

■木も森も見る

 

確かに個々の企業の頑張りは重要なことですが、一企業レベルでできることには限界があります。たとえばリーマンショック後、1ドル115円程度であった為替は、1ドル80円を割る水準にまで円高が進みましたが、これでは日本の輸出企業は韓国・台湾・中国などの企業と戦いようがありません。20122月に会社更生法を申請し、製造業として戦後最大の負債総額4480億円で経営破綻した半導体製造業エルピーダメモリの坂本幸雄社長(当時)が、記者会見の中で「為替については、リーマンショック前と今とを比べると、韓国のウォンとは70%もの差がある。円高は一企業の努力でカバーできない」と発言したのは偽らざる本音でしょう。逆にアベノミクス以降の円安で、過去最高益の企業が続出したことは記憶に新しいです。

 

ミクロ偏重の発想は、経営者、経営学者、経営コンサルタントに顕著に見られます。極端な例では、「日本経済がイマイチなのは、みんなが頑張らないからだ」という主張さえあります。私に言わせると、これはただの精神論に過ぎません。

 

ここで大事なことは、経営学(ミクロ)の視点も、経済学(マクロ)の視点も両方大事だということです。私自身も、経営コンサルタントの立場では、(日銀の金融政策が悪い、規制緩和がイマイチなどと言っていても始まらないので)経営学の観点で思考します。一方、経済全体を論評するときは、もちろん経済学の観点で発想するようにし、完全に思考のフレームを使い分けています。

 

経済学の視点がないと、正しい状況認識ができなくなります。みなさんにも、「木も見て、森も見る」、実務的な意思決定の場面では経営学的な発想を、国の政策判断(あるいは選挙の際の政党・候補者の選択)の際には経済学的な発想を心がけて頂ければと思います。

「マクロとミクロの視点を使い分ける~経営学と経済学の間を往来する」①

私は経営に関するコンサルタントや、講義・セミナー・研修の講師をしている一方で、経済に関する講義や執筆活動もしています。つまり経営学と経済学の間を行ったり来たりするという立場で、経営コンサルタント(あるいは中小企業診断士)としてはいささか珍しい立場です。今回は、経営学と経済学の使い分けについて述べたいと思います。

 

■経営学と経済学では目的が異なる

 

多くの方は、「経済学と経営学を同じもの」、あるいは「経営学は経済学の1つのジャンル」と捉えているかもしれません。確かに経営学は経済学をベースに誕生したという経緯がありますが、両者はまったくテーマ(目的)が異なります。

 

経営学は突き詰めれば「単一の企業の利益の最大化(ミクロの観点)」をテーマにするのに対し、経済学は「国全体の利益の最大化(マクロの観点)」をテーマにします。

 

ここでよくある誤解が、「ミクロの合計がマクロになる」、言い換えれば、「1つ1つの企業が利益の最大化のために望ましい行動をすれば、国全体の利益(GDP)が最大化する」というものです。この考え方は誤りです。

 

一企業が利益を最大化するためには、同業者との競争を脱し、独占に近い形を目指すことになり、経営学でもそのように教えます。しかしながら、一企業が市場を独占すると、価格が不当に上がり、消費者は損をするので、企業(売り手)と消費者(買い手)からなる経済全体では利益が阻害されることになります。よって、経済学ではできるだけ、市場を完全な競争状態に近い状態にすることを求めます。独占禁止法はその趣旨に沿ったものです。

 

またイノベーションの成功事例を数多く起こすことが国全体としての課題ですが、そのアプローチについても大きく異なります。経営学では1つ1つのイノベーションの成功確率を高めることに力点が置かれます。一方、経済学ではイノベーションはそもそも成功確率が低いものなので(ハイリスク・ハイリターン)、個々の質はともかくできるだけ多くのイノベーションを発生させるための環境整備に力点を置きます。要は「数打ちゃ当たる」という発想です。具体的には規制緩和や研究開発投資を促す仕組み(税制や資金調達市場など)の整備です。

ポスト安倍政権の経済学④

これまで述べてきたように、経済政策の観点で言えば、菅官房長官がもっとも信頼できます。菅政権誕生で杞憂にすぎなかったわけですが、もし岸田・石破両氏が総理になっていたらどうなっていただろうかと肝を冷やします。これは両氏の発言を経済学の知見に純粋に照らし合わせた上での必然です。今回の総裁選で、岸田・石破漁師の惨敗で、次の総裁選の芽もほとんどなくなったかもしれませんが、現在、将来の総裁候補といわれる人たちも大方は増税派であるのが何とも救いようがないところです。

 

菅次期総理はテレビ番組で「将来的には消費税を引き上げる必要がある」と発言しつつ、その翌日に「消費税は今後10年上げる必要がない」という安倍総理の発言を踏襲しています。

 

菅政権誕生で、今後の1年はアベノミクスを継承し、早期に解散を打つ公算が高いでしょう。その際に大規模な財政出動(場合によっては消費減税)を公約にかかげ、選挙での勝利を目指すかもしれません。総選挙に勝てば、次の総裁選にもまず菅氏の続投が決まります。その後に菅氏の最大の政治的関心である規制改革に乗り出すでしょう。

そこでマスメディアや野党、霞ヶ関との対立が先鋭化するのではないでしょうか。ここでもし退陣という事態になれば、かつての民主党への政権交代前の悪夢が再現される可能性があります(もっとも今の野党の体たらくからすれば政権交代はまずないとは思いますが)。

 

ポスト菅総理に当たる人物が消費増税を断行し、さらに日銀総裁をかつてのように緊縮派の日銀プロパー(現副総裁の雨宮氏)に変えた場合、日本はデフレに逆戻りします。よって早期の退陣に追い込まれるはずです。自民党内でも消費減税派は若手を中心に100名弱程度おり、党執行部に反旗を翻す可能性もあり、政治的には混迷します。これが最悪のシナリオです。

 

まずは菅政権誕生後のはじめての総選挙の結果が日本の将来を決めることになるでしょう。

 

ポスト安倍政権の経済学③(石破茂元地方創生大臣)

個人的には、石破氏がなぜ自民党にいるのか不思議です。国民的人気が高いといわれていますが、最近の調査では、菅氏の後塵を拝しています。自民党員から人気があったのは、おそらく自民党が野党時代の国会での質疑の舌鋒の鋭さや、憲法改正推進派というイメージからかと思います。

 

確かにこの方は、主張するときの圧の強さを感じますが、ほとんど具体策がありません。スローガンは「納得と共感」ということですが、何か道徳のようで、具体的な政策が見えてきません。

 

TVワイドスクランブル上での杉村太蔵氏とのやりとりが話題になっています。

杉村氏:「石破さんの支持が上がらないのはマクロ経済政策。ブログ見たけどどっかの夕刊コラムみたい。全然政策の事書いてない。マクロ経済政策の無い政権は支持できない。ひと言、経済政策、理念聞きたい」

石破氏:「グローバル経済脱却。東京一極集中是正」以下、持説に主張が続く

 

主張を聞いているとコロナの問題とは関係なく、どうも「グローバル経済=新保守主義=弱肉強食」というイメージがあるようですが、それ以前に、「グローバル経済脱却。東京一極集中是正」はミクロ経済学の範疇であることは、経済学部1年生レベルでもわかる話です。つまり何も分かっていないのです。

 

どうせ何も分かっていないのなら、とりあえず「アベノミクスを当面続ける」とか言っておけばよいのに、下手に違いを出そうとするのですぐに馬脚が現れてしまいます。この方はどうもポジション取りが下手に思います。安倍政権でも協力的な姿勢に徹していれば、もしかしたら有力な候補でいられたでしょうに、反政権的な立場をとり、野党や朝日新聞から待望されるも、党内で顰蹙を買ってしまったといったところかと思います。

 

最近では消費減税も容認するかのような発言をしており、これ自体はよいのですが、もともとは消費増税派です。世論や野党の動きに沿っただけとも思えてしまいます。また「金融政策は正常化しなければならない」という主張であり、岸田氏同様、緊縮派です

 

また石破氏はミクロ経済政策でいえば、守旧派(規制派)です。以前にも取り上げましたが、石破4条件なるもので獣医学部の規制緩和を阻止したのが石破茂氏といわれています。「学部の新設条件は大変苦慮しましたが、練りに練って、誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にしました」と語ったといいます。

 

ちなみに憲法改正についての姿勢も私は懐疑的に思っています。石破氏は「共産党も納得するような形でなければ憲法改正の論議はしない」といっていますが、共産党が憲法改正に賛成するはずがないので、事実上、憲法改正はしないといっているようなものでしょう。

 

まとめると、石破氏の経済政策観は、立憲民主党とほとんど同じであり、極めて低い水準であるといえます。

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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