起業家の条件⑨
次回に引き続き、起業する方に知っておいていただきたい顧客獲得の考え方について取り上げます。
■顧客の分類
顧客は「顧客満足度が高いか低いか」「スイッチング性向(他社に乗り換える可能性)が高いか低いか」で4つに分類することができます。
<伝道者>
顧客満足度が高くスイッチング性向が低い顧客は「伝道者」です。よいクチコミを拡げてくれて自社に顧客をもたらしてくれます。
<傭兵>
顧客満足度は高いですが、他社に乗り換える可能性が高い顧客は「傭兵」です。もともと1社に固執する気がない顧客ともいえます。
<人質>
顧客満足度が低いが、他社に乗り換える可能性が低い顧客は「人質」です。地元に他に選択肢がないので仕方がなく自社を使っている顧客が典型例ですが、いまさら他社にスイッチするのが億劫な人、入会金等相応の投資をすでにしてしまい他社に乗り換えることができない人なども該当します。要は囲い込まれている顧客です。
<テロリスト>
顧客満足度が低く、さらにスイッチング性向が高い顧客は「テロリスト」です。悪いクチコミをばらまく可能性があります。
4つの顧客層のうち、サービス業でとりわけ重要なのは「伝道者」と「テロリスト」のマネジメントです。
「伝道者」はよいクチコミを拡げ顧客をもたらしてくれますから、引き続き満足度を維持する必要があり、また他の顧客を「伝道者」に引き上げる努力をする必要があります。一方、「テロリスト」は悪いクチコミを拡げる恐れがありますから、なんとか中立化させる必要があります。
売り手側はすべての顧客の満足度を上げようと考えがちですが、満足度が低い顧客を満足度が高い顧客に引き上げることは至難の技です。
■ホッケースティック。ロイヤルティ
顧客のリピート率は、満足度と直線的な比例関係を示すのではなく、最高度の満足に達したときに突然リピート率が高まる傾向があり、これをホッケースティック・ロイヤルティといいます。
たとえば5段階の顧客満足度調査で、満足度を3から4にするのと、4から5にするのとでは、その効果はまったく異なります。そこそこの満足度(満足度3や4)では、リピートやクチコミにはまったく繋がらないのです。
■NPS(ネット・プロモーター・スコア:推奨者の正味比率)
NPSとは、製品やサービス、ブランド、企業に対するロイヤルティの指標を測るためのものです。究極の質問である「あなたはそれを友人や同僚に薦めたいと思いますか?」という問いに対する答えを、0から10の11段階で調査します。10から9をプロモーター(推奨者)、8から7をニュートラル(中立者)、6以下をデトラクター(非難者)に分類します。推奨者であるプロモーターが占める比率から非難者であるデトラクターが占める比率を差し引いた数値がNPSとなります。
したがってNPSの数値は、推奨者が非難者より多ければプラスになり、非難者の方が多ければマイナスになります。たとえばプロモーターが30%、デトラクターが15%の場合、NPSは15%となります。
顧客アンケートを実施する際に、「あなたはそれを友人や同僚に薦めたいと思いますか?」という問いを用意し、あなたのビジネスへの忠誠心が上がっているか確認してみるとよいでしょう。