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イメージでビジネス用語を語るのはもうやめよう②

言葉の解釈は人それぞれです。よって、重要なことは、「言葉を具体的に定義する」ということです。一般的にどうもキーワードが先行してしまい、経営用語やカタカタ用語を並び立てればなんとなく説明した気になっているのかもしれませんが、実際は中身がなく、何ら建設的でもないことは多く見られます。

 

このことはミーティングの場での「イシュー(論点)の設定」でも同じです。これが曖昧だと、メンバーそれぞれが考えていることが違いますから、議論が噛み合わなくなります。

 

たとえば「顧客満足度の向上」をとっても、「製品やサービスの強化」なのか「顧客への対応方法の強化」なのか明確にしなければ、いつまでたっても話が前に進まなくなります。

 

相手に信頼してもらうためにも、誤解や齟齬をまねかないためにも、「言葉の定義」は明確にすることを心がけたいものです。

 

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イメージでビジネス用語を語るのはもうやめよう①

メディアでの報道や巷での議論を聞いていると、どうしてもふわっとした言葉のイメージだけで話をしていると感じることが多々あります。

 

 

ケース1:具体的な実現手段を考えていない

 

たとえば企業の記者会見の場で次のような発言をよく聞きます。

 

「今回の経営統合で両社の強みをいかし、シナジーによる企業価値の向上が期待できるものと考えております。」

 

「シナジー」はみなさんも顧客との打ち合わせや社内のミーティングでよく耳にするのではないでしょうか?私なら「具体的に両社でどのようなシナジーが生まれるのか?(どうやってシナジーを生み出すのか?)」と思わず尋ねたくなります。両社が合わさればシナジーが生まれるという雰囲気で語っているとしか思えないのです。ちなみに経営統合の約8割は失敗するといわれており、実際にシナジーを生み出すことは容易ではありません。

 

他に「ブランド化」「企業価値の向上」「ブルーオーシャン戦略」「ダイバーシティ」なんていうのも頻出用語で具体的な実現手段を考えずに安易に用いられる傾向があります。

 

 

ケース2:そもそも言葉の定義が間違っている

 

次にそもそも言葉の定義が間違っているケースです。

 

「今回の新事業でお客様との共存を図ることが、当社のビジネスモデルです。」

 

ビジネスモデルとは上のように事業目的でもなければ、事業内容の説明でもありません。ですから、たとえば「モノを仕入れて店舗で販売して儲ける」ではビジネスモデルではないのです。

 

ビジネスモデルは端的には「どうやって儲けるかを記述したもの」であり、「対象顧客・製品やサービスの内容・提供手段」のほかに、「課金のしかた(儲けかた)」がなければそもそもビジネスモデルとはいわないのです。

 

 

ケース3:言葉の定義がないケース

 

最近の頻出ビジネス用語の1つに「働き方改革」がありますが、たとえば時短であったり、ダイバーシティであったり、AI活用であったりと、話を聞いていると人によって意味することは様々です。それぞれ考えているイメージが違うので、「働き方改革」をテーマにしても議論が噛み合いません。

 

ちなみに私なら「働き方改革=効率性の追求の取り組み」と定義し、「効率性=アウトプット÷インプット」と分解したのち「今よりアウトプットを向上できないか」「今よりインプットを削れないか」の2つを考えます。

ベイズ確率②

ベイズ確率の有名なエピソードにモンティ・ホール問題というのがあります。

これはアメリカのあるクイズ番組を題材にしたものです。

 

<問題>

・プレイヤーの前に閉じられたABC3つのドアが用意されている。

・そのうちの1つの後ろには景品(当たり)が、残りの2つの後ろにはヤギ(外れ)がいる

・まずプレイヤーが当たりだと思うドアを選択する(この時点ではドアはまだ開けない)

・事前にどのドアが当たりかを知っている司会者が、残った2つのドアのうち外れのドアを開ける

・司会者はプレイヤーに最初の選択を変えてもいいと伝える

 

Qこのとき、プレイヤーは「最初に選んだドア」か「残ったドア」のどちらを選択するべきか?(どちらが正解する確率が高いか?)

 

「3つのドアのうち、後ろに当たりがある確率は、3分の1であり、それは司会者が外れのドアを1つ開けても変わらない」というのが自然な結論かもしれません。実際多くの数学者がそのように考えました。ところが、あるIQの高いコラムニストが「選択を変えたほうが当たる確率は2倍になる」と主張し、論争になりました。

 

 

<答え>

仮にプレイヤーがAのドアを選択したとします。Aが当たりの確率は当然ながら3分の1で、残りのB.Cのいずれかが当たる確率はあわせて3分の2です。

 

その後、司会者がCのドアを開けてハズレであることをオープンにしたとしましょう。すると、Aの当たる確率は3分の1のままですから、残ったBが当たりの確率は、Cが確率ゼロと分かったので、3分の2になります。つまり、初めにAを選んだプレイヤーは、Bに変えたほうが当たる確率が2倍になるのです。

 

このように、事後の情報で確率が変わるということは、現在進行している事態の変化によって確率もまた変化するということです。この変化に対応して確率を修正することを、ベイズ更新といいます。

ベイズ確率①

コイントスで裏と表が出る確率は、裏と表が物理的に何も変わらなければ2分の1ずつです。5回連続で表が出ると、そろそろ裏が出るだろうと思うかもしれません。それでも、6回目に裏(あるいは表)が出る確率は2分の1で変わりません。

 

1回目で表が出ても2回目で裏が出る確率は2分の1だと普通は考えるでしょう。2回連続して表が出ても同様かもしれません。しかしながら、5回も連続で表が出ると、人は「何か怪しい。投げ方に癖があるのでは?」と考え、純粋に裏が出る確率は2分の1と分かっていてもそれより高い確率を予想するものです。

 

あながちそのように考えることは間違っていません。これを扱ったものにベイス確率があります。

 

 

ベイズ確率とは、実際の出来事や観察結果に従い、その確率(確率に関する見込み)がどんどん変化することを扱った確率の考え方です。本来、確率は客観的なものですが、主観的な確率を扱っている点が特徴です。

 

たとえば、新規事業を始める前では、主観的な成功確率が50%であったのが、初めて見ると事後的に情報が追加され、成功確率が75%(あるいは25%)に変わるということがありますが、これもベイズ確率の考え方によったものです。

 

このようにベイズ確率は、ある事象が起こるという条件のもとで、別のある事象が起こる確率(条件付き確率)を求めます。

 

通常、ビジネスでは追加情報が入ったほうが成功確率は高まるでしょう。そこで、リアルオプションという考え方でビジネスの評価を行います。

 

例えば、新製品をいきなり大々的に市場導入するよりも、テストマーケティングの結果次第で本格的に展開するか止めるかを決めることができる場合とでは、後者の方がビジネスの価値が上がります。

 

よって、不確実性のある将来において、プロジェクトの柔軟性を確保し、価値を高めることができます。リアルオプションはベイズ確率の考え方を簡易的に応用したものといえます。

 

公共投資の意思決定―川辺川ダム中止は正しかったのか?②

前回、公共投資を含む投資案件の評価では、正味現在価値法を使うことを説明しました。その手順の基本は,次のとおりです。

 

①各期のキャッシュインフロー(現金ベースの儲け)を求める。

②①の現在価値(現時点での価値)を求める。

③「②-投資額」で正味の現在価値を求め,値がプラスであれば投資するし,マイナスであれば投資しないという意思決定をする。

正味現在価値

■公共投資の場合は国債の金利を使う

 

公共投資の場合は割引率を社会的割引率といい,国債の金利を適用します。国土交通省によれば,社会的割引率は,これまでの長期国債の実質金利(名目金利-物価上昇率)を参考に4%に定めているといいます。

 

ちなみに,割引率が高ければキャッシュインフローの現在価値は小さくなるため,投資案が採択される可能性は低くなります。マイナス金利の時代に「社会的割引率が4%とは,いかにも高いのではないか?その結果,公共投資の採択が低く抑えられているのではないか?」との指摘があり,国交省も見直しを検討しているといいます。

 

 

■川辺川ダム事業中止に経済合理性は?

 

以上を踏まえ,ダム事業の投資判断を考えてみます。便益は,河川氾濫による被害(物的・人的被害)の軽減額や,都市用水供給から得られる収入です。

 

川辺川ダム事業の場合,おおよそ便益は5,200億円,投資額は4,000億円(うち1,200億円は実施済み)とのことです。よって,B/C各期の基準は満たします。キャッシュインフローおよびその現在価値までは確認できていませんが,1,200億円は埋没コスト(回収不能費用)として無視すると,まず正味現在価値もプラスと考えてよいでしょう。

 

遊水池,放水路,河川幅拡大,堤防嵩上といったダム以外の手段では時間がかかりすぎるし(45200年),そもそもB/C基準を満たしません。よって,ダム事業中止の判断に少なくとも経済的合理性はまったくないといってよいです。

 

ダム以外にも,築地市場移転問題や新型コロナウイルス感染拡大などで,「安全より安心」という印象論で政策が語られていることが多いと感じます。経済的価値がすべてとは言いませんが,少なくともそれがなければ,意思決定の俎上に上げようがないことは強調しておきたいところです。

 

【参考】

・国土交通省『公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針(共通編)』

・高橋洋一著『日本の大問題が面白いほど解ける本―シンプル・ロジカルに考える』光文社新書

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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