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ロジカル・シンキングの罠

「なんとかシンキングあれこれ」で、バーティカル・シンキング(垂直思考)について、次のことをお話しました。

・ある事実の束から疑えない結論を導き出す思考法
・目的の1つとして、「自分の問題解決力を高めること」がある
・問題解決力は「問題を発見する力」と「問題を分割する力」の2つに集約される

その一方で、「斬新なアイデアの発想(ラテラル・シンキング)と論理の構築(バーティカル・シンキング≒ロジカル・シンキング)はまったく別のものである」とも言いました。この点について、もう少し整理してみます。

確かにロジカル・シンキングを駆使することで、問題や課題を発見できそうな印象があります。もちろん、そういったこともあるのですが、かなり限界があることも事実です。

ビジネス・モデルを例に考えてみます(ビジネス・モデルの設計もある意味、新たな問題や課題の解決策と言えます)。極めて論理力に優れた人が、ロジカル・シンキングで「こういうニーズがあり、その市場規模はこれくらい見込め、それを攻略するにはこうすればいい」と非の打ち所がない完璧なロジックでビジネス・モデルを組んだとしましょう。投資家は大喜びで飛びつきます。たけど事業は失敗に終わりました。なぜか?

そのビジネス・モデル(ロジック)の前提となる外部環境が変わってしまったからです。たとえばテクノロジーの進化でニーズが無くなったとか(注1)、予期せぬ他社が先に参入してしまったとかいったケースです。優れたアイデアを持ちながら失敗したケースが山のように戦略論の書籍には紹介されていますが、その多くはこのパターンでしょう。


このように前提が変わるとそのロジックは成り立ちません(注2)。あるいは前提を誤ると、当然ながら誤ったロジックになります。誤った前提の下でいくらロジックを磨いたところで、それは視野狭窄になるだけというわけですね。もちろんロジック自体が誤っているということも十分ありえます。

ロジックとは、結局は自分の考えるロジックで、ロジカル・シンキングはそれに磨きをかけるためのものという側面もあるのです。そして自分の固定観念にとらわれることなく新たな問題や課題を発見するためには、ラテラル・シンキング(水平思考)が求められてきます

1か所に穴を掘り進んでいくと別の場所にもう1つの穴を掘ることができなくなる。垂直的思考は、このように同じ穴を深く掘ることであり、水平的思考は、別の場所にも穴を掘るという考え方である。」エドワード・デ・ボノ(コンサルタント)


ロジカル・シンキングの第1の目的として、多くの書籍では、「論理的なメッセージを伝えることで、相手を説得して、自分の思うような反応を相手から引き出すこと」を挙げています。そうであるならば、ロジカル・シンキングは、「問題に対する適切な解を発見するツール」というよりも「説得のためのコミュニケーション・ツールと捉えたほうがよいのではないでしょうか。

もちろんビジネス環境において、「相手を動かす」というのは不可欠な要素ですから、ロジカル・シンキングは有用なツールであることは否定できない事実です。ただし、だからこそ、その限界も意識して活用する必要があるでしょう。

注1
以前、「誤った二分法③」で紹介したソニーのMD(ミニ・ディスク)は、この例でしょう。家庭用VTRの失敗を教訓に、ソニーはほぼ完璧といってよいロジックでMDを展開しましたが、予想できなかったインターネット環境の急速な進展から、北米などではほとんど普及しませんでした。
注2
高度経済成長期のビジネス・モデルでは立ち行かなくなった総合スーパーや百貨店、インターネット通販時代に対抗できない書店や文房具店、国内生保などは典型例でしょう。

【参考】
「これからの思考の教科書」酒井穣著 ビジネス社
「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル」照屋華子、岡田恵子著 東洋経済新報社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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