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上海株式バブルはなぜ起こったのか?②

バブルははじけて初めてバブルと分かる」(アラン・グリーンスパン 元FRB議長)

今回は、「集団の智恵を引き出すための前提条件」で取り上げた、意見の多様性、独立性、分散性、集約性の4つの観点からバブルを検証してみましょう。投資家たちはバブルだと気がつかないのでしょうか。また仮に気付いていてもなぜバブルに踊るのでしょうか。

バブルの形成要因については、様々なことが言われています。バブルは一種の群衆行動の結果で、グループ・ジーニアス(集団の智恵)が機能しなかった結果と捉えることもできます。

最初に一般の財(モノ)と株式との違いを明確にする必要があります。基本的に一般の財は、市場全体の需要と供給のバランスによって価格が決まります。つまり1人1人の価値判断が反映されて価格が決まるわけです。よく知っている財であるほど、この傾向は強くなり、市場は買い手側の意見の多様性、独立性、分散性、集約性を満たすようになります。

一方、株価は、理論的には、その会社の将来の収益を反映して決定されるわけですが、誰も将来の収益など分かりません。「株価が上がっているのだからみんなこの会社の将来の収益は高いと判断しているのだろう。だから自分もこの会社の株を買おう」というほうが実態に近いでしょう。

つまり、株への投資は、(自分ではなく)他の人がその企業の収益の見通しをどう思っているのかに依存しているわけです(分散性の喪失)(注1)。

ここで、何かのきっかけで株式市場全体の株価が上昇し始めたとしましょう。そうなると情報カスケードと言われる現象が生じます。

情報カスケードとは、最初の人の行動を見て、次の人がマネして行動することです。2番目以降の人は正確な情報を持っていませんが、最初の人は正確な情報を持って行動したのだろうと思っている(ただし最初の人が正確な情報を持って行動したのかどうかは不明)点において単なる同調行動とは異なるのがポイントです。これが重なるとバブルが生じることになります。

人々はもはや他の人のマネをするだけですから、意見の多様性、独立性はなく、さらに株価はもはや制御不可能な状態ですから、集約性も損なわれています。

さらに行き過ぎた群衆行動(バブル)の背景には、一部の扇動者と彼らの影響を受けやすい多数の人々が存在します。

株式市場の扇動者は、証券会社などの金融機関、政府高官、エコノミストや証券アナリスト、そしてマスコミなどでしょう。中国共産党の株式市場への資金誘導策を、息のかかった金融機関や政府系のマスメディア(人民日報など)が、まともな知識や経験がないど素人の個人投資家を扇動した結果、バブルになったというのが妥当な見方でしょう(注2)。

1980年代後半の日本のバブル、200年代のサブプライムも、グループ・ジーニアスの機能不全という観点からおおよそ説明できます。

注1:
これについては、ジョン・メイナード・ケインズの「美人投票」の例えが有名です。
ケインズは、投資は「100枚の写真の中から最も美人だと思う人に投票してもらい、最も投票が多かった人に投票した人達に賞品を与える新聞投票」に見立てることができるとし、この場合「投票者は自分自身が美人と思う人へ投票するのではなく、平均的に美人と思われる人(多くの人が美人だと思う人)へ投票するようになる」としました。
つまり投資家は他の多くの投資家が収益性が高いと思っている株式に投資するということです。

注2:
上海株式市場は、外資の資本取引規制などから、約8割が国内個人投資家と言われています。
中国は社会保険制度が極めて脆弱であることから、老後の資金のために極めて貯蓄率が高いのですが、政府の低金利政策の下、株式投資に走ったという側面があり、今回の大暴落で(報道規制により公になっていないものの)多数の自殺者がでていると推測されています。


【参考】
「凡才の集団は孤高の天才に勝る」キース・ソーヤー著 ダイヤモンド社
「経済学的にありえない。」佐々木一寿著 日本経済新聞出版社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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