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平均と限界

マクロ経済学が1国全体の経済活動を対象とする学問分野であるのに対し、ミクロ経済学は、経済主体の最小単位である家計(消費者)、企業(生産者)、そしてそれらが経済的な取引を行う市場をその分析対象とします。もっともマクロの構成要素はミクロですから、マクロ経済学とミクロ経済学は密接なかかわりを持ちます。

ミクロ経済学を学ぶと必ず最初の方に平均費用と限界費用というものが出てきます。平均と限界は、経済学を学習する上で必須の考え方です。

■平均費用
 平均費用とは、生産物1単位あたりの平均的な費用のことです。
例)生産量1単位のときに総費用が20万円 ⇒ 平均費用=20万円÷1=20万円
  生産量2単位のときに総費用が25万円 ⇒ 平均費用=25万円÷2=12.5万円
  生産量3単位のときに総費用が27万円 ⇒ 平均費用=27万円÷3=9万円


■限界費用

限界とは、経済学では「端」というような意味で捉えてください。「○○をあともう1単位増やしたら△△がどれくらい変化するか」を表します。

限界費用とは、「生産量をあともう1単位増やしたら総費用がどれくらい変化するか」を意味します。

上記の例ですと、生産量が1単位から2単位に増加したら、総費用が5万円(25万円-20万円より)上昇しますから、この場合、限界費用は5万円になります。生産量が2単位から3単位に増加したら、総費用が2万円(27万円-25万円より)上昇しますから、この場合、限界費用は2万円になります。

さて、ここであるアメリカの大学の社交クラブで年1回開催される新入生歓迎のパーティーを例にしてみましょう。学生には①30ドルで飲み放題、②1杯6ドルで飲んだ量に応じて請求されるの2つの選択肢があります。もちろん学生の多くはパーティーで盛り上がるために、①の飲み放題を選択します。

しかし、ここ数年、学生たちがハメを外しすぎて器物を損壊する者や急性アルコール中毒で運ばれる者が後を断ちません。そこで主催者側としては、何らかの対策を講じることにしました。さて、あなたなら次の2つのどちらを選択しますか?

① 飲み放題制の料金を値上げする。
② 飲み放題制を止め、1杯あたりの料金を値上げする。

場合によっては①の飲み放題制の値上げを行うかもしれません。ただし、これは必ずしも良い結果を招くとは限りません。学生にとって、30ドルは固定費用(この場合、いくら飲んでも額が変わらない費用)です。1杯あたりの費用(つまり平均費用)は飲めば飲むほど下がります(1杯:30ドル、2杯:15ドル、3杯:10ドル…)。よって元をとろうと沢山、飲むようになります。料金を値上げすると、下手をするとさらに飲んで元をとろうとするインセンティブが働きかねません。

一方、学生の1杯あたりの限界費用は6ドルです。飲めば飲むほど料金は加算されていきます。よって、無理してまで飲もうというインセンティブは働きにくくなります。つまり経済学的には②のほうが優れているということになります。

このように平均と限界を分けて考えることは、公共政策を考える上でも重要です。
たとえば流入する車の量が多く、都市部で交通渋滞が発生しているとします。この場合、ドライバーにとっての固定費は車の購入費や車検代、車庫代などです。よって、固定費が高くなると、かえって運転しようというインセンティブが強まり、渋滞が緩和されないという恐れもあります。よって、限界費用(たとえばガソリン代や走行距離・都市への乗入れなどに応じた課税など)を上げたほうが効果が見込まれます。

かつて自動車の平均速度がビクトリア朝時代の馬車の速度と変わらないとまで言われたロンドンでは、ロードプライシング制度の導入により一定の効果を上げたと言われています。

限界という考え方を使うと日頃の購入の選択でも何かと役にたちます。よく「○○円で使い放題(固定料金制、定額料金制)」というものがありますが、使用ごとに料金(限界費用)を払ったほうが実は安上がりということが多いのではないでしょうか。

【参考】
「まっとうな経済学」ティム・ハーフォード著 ランダムハウス講談社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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