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人口問題を経済学的に考えると?(限界代替率)

■中国の極端な男女比

10月29日に閉幕した中国共産党の重要会議である中央委員会第5回全体会議により、「一人っ子」政策の廃止が決定されました。

ご存知の方が多いかもしれませんが、「一人っ子」政策は、大躍進政策や文化大革命に匹敵するほどの極めて非人道的な政策であり、国家による強制中絶、人身売買、無国籍児など様々な問題を引き起こしました。

その1つに、男女の産み分けの問題があり、中国の新生児男女比率は118対100となっています。農村国家でしたから、労働力として男児のほうが好まれたということです。もともと男女比で言うと、男児の方が多いのが自然なのですが(世界的にはおおむね安定的に105:100前後で推移)、中国の場合は、かなり極端であることは以前より指摘されていました。


■限界代替率

経済学では、限界代替率という考え方を使います。限界代替率とは、単純に言えば、「2財間の交換比率」を言います。

たとえばビール好きな人であれば、「ビール1杯が焼酎2杯に相当するなあ(ビール1杯の価値が焼酎2杯の価値に相当する)」と考えたとしたら、「ビールの焼酎に対する限界代替率は2」となります。


■男女比の格差は解消される?

さて、この限界代替率の考え方を中国の問題に置き換えるとどうなるでしょうか。いままでは力仕事に頼る農村経済中心でしたから、男児の労働力の価値は女児よりも高かったわけです。しかし、今後も工業・サービス経済への移行が進むでしょうから、労働力としての男児の価値は低下するものと思われます。

一方、男性比率が高く、現在でも男性の未婚問題が指摘されていますから、妻や恋人としての女性の価値は相対的に高くなることになります。嫁ぎ先からの経済的援助などが期待できることもあり、女児を出産する動機づけが高まることも予想されます。

つまり「男児の女児に対する限界代替率は低下し、女児の男児に対する限界代替率は上昇する」ことになります。よって、経済学的にはいずれ男女比の格差は解消されていくだろうと考えます。

男女を財とみなすことは不謹慎かもしれません。しかし農村社会では(中国に限らず昭和初期までの日本でも)、「子供=労働力」とみなしていたことは否定できません。人口問題は、人権問題とは別に、たぶんに経済学的問題を秘めており、この点を意識しないと現実的な問題の解決にはつながらないでしょう。

ただし実際に中国で男女比の格差がどれくらのスピードで解消に向かうかどうかは不透明です。

男児を好む傾向は、①自給農業の割合が高いこと、②社会保障制度が未整備であること、③個人の自由・安全・財産の保証が未整備であること(その結果、暴力による搾取や報復の余地が高いこと)によって高まると言われています。①から③までの解消を図っていくことが必要条件になるでしょう。

【参考】
「ベッカー教授、ポズナー判事の常識破りの経済学」ゲーリー・S. ベッカー、リチャード・A. ポズナー著 東洋経済新報社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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