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相関関係と因果関係③(教育にお金をかけると企業業績は上がる?)

 前回、因果関係の成立要件の1つである時間的順序関係(もしXがYの原因であるならば、XがYより時間的に先に起こっていなければならない)に関する錯誤の例を見ました。経営書や広告などでよく見られる次のケースについて、反論を考えてみましょう。

Q1:
低コスト企業は市場シェアが高い。よって市場シェアを高めるためには、低コスト化を図るべきだ。

A1:
市場シェアが高いからこそ低コスト化が図られているのではないか。


Q2:
管理者教育にお金をかけている企業は業績が良い。よって業績を高めるためには管理者教育に十分なお金をかけるべきだ。

A2:
もともと業績が高い企業でないと管理者教育に予算を割けないのではないか。単に業績が高い企業が管理者教育に予算を割いているだけではないか。


Q3:
イノベーションを行っている企業ほど業績が良い。よって業績を高めるためにはイノベーションを推進すべきだ。

A3:
イノベーションを行えば企業は成長するだろう。ただしイノベーションの推進にはお金がかかるしリスクが大きい。業績が良いからイノベーションを推進できるのではないか。


Q4:
ベイン・アンド・カンパニー(外資系コンサルティング・ファーム)の顧問先には優良企業が多い。よって我が社もベイン・アンド・カンパニーとコンサルティング契約を結ぶべきだ。

A4:
もともと優良企業だから高額のコンサル・フィーを取るベイン・アンド・カンパニーと契約できるのではないか。


 このように見ると大家と言われる学者の書いた経営書であっても、因果関係の把握のミスが非常に多いことに気がつきます。広告の謳い文句については、ミスというよりはもはや意図的とさえ言えます。なぜ経営学者はエラーを起こすのかについては回を改めて考えたいと思います。

【参考】
『なぜビジネス書は間違うのか』フィル・ローゼンツワイグ著 日経BP社
『改訂3版 グロービスMBAクリティカル・シンキング』グロービス経営大学院著 ダイヤモンド社
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相関関係と因果関係②(体罰は子供を凶暴にさせる?)

Q1:
 「体罰などの厳しい躾を行う親に育てられた子供は、そうでない親に育てられた子供に比べて、性格的に攻撃的な傾向が見られる」という結果が分かったとします。ある識者は「体罰を行うと、子供は攻撃的な性格になる」と言います。
さて、この場合、体罰と子供の攻撃的性格との間には、因果関係が成立すると断定してよいでしょうか?

Q2:
 社会的貢献を理念に掲げた経営を行っている企業のほうが、そうでない企業よりも利益率が高いというデータが存在したとします。それではあなたが経営者であったら、早速、社会的貢献を理念に掲げるでしょうか?



 前回、因果関係の成立要件の1つとして、時間的順序関係(もしXがYの原因であるならば、XがYより時間的に先に起こっていなければならない)を挙げましたが、2つのケースは、それにかかわるものです。

A1:
 もともと子供が攻撃的なので(原因)体罰を行ったのであって(結果)、体罰を行ったから(原因)子供が攻撃的な性格になった(結果)わけではないのかもしれません。

A2:
 もともと利益率が高いから(原因)社会的貢献を行えたのであって(結果)、社会的貢献を行ったので(原因)利益率が高い(結果)わけではないのかもしれません。


【参考】
『クリティカルシンキング 入門篇』E.B.ゼックミスタ、J.E.ジョンソン著 北大路書房
『なぜビジネス書は間違うのか』フィル・ローゼンツワイグ著 日経BP社

相関関係と因果関係①


「本当に危険なのは、コンピュータが人間のように考え始めることではなく、人間がコンピュータのように考え始めることだ。」シドニー・J・フバード(コラムニスト)

今回は、相関関係と因果関係について整理したいと思います。

■相関関係
2つの値の関連性のこと。
相関関係の種類には、正の相関、負の相関、無相関があります。

・Xが増加するとYも増加する傾向にある場合 
⇒XとYは正の相関関係

・Xが増加しているにもかかわらずYが減少する傾向にある場合 
⇒XとYは負の相関関係

・Xが増加するとYが増加する・変わらない・減少する場合 
⇒XとYは無相関


■因果関係
原因と結果の関係のこと。
出来事Xと出来事Yとの間に因果関係が成立するためには、次の3つを満たさなければなりません。

①共変の原則
もしXがYの原因であるならば、XとYは共に変化しなければならない。
②時間的順序関係
もしXがYの原因であるならば、XがYより時間的に先に起こっていなければならない。
③他の原因の排除
XがYの原因と考えられ、さらにX以外にYの原因を合理的に説明できるものが何もない場合にのみ、XがYの原因と認められる。

さて、ここで重要なことは、相関関係にあるからと言って、因果関係が成立するとは限らないということです。人はなんらかの理由を見つけたがるものですが、相関関係がある2つの事柄の間に勝手な因果関係を見出すことがあります。次回以降、例を取り上げながら考えてみましょう。

【参考】
『クリティカルシンキング 入門篇』E.B.ゼックミスタ、J.E.ジョンソン著 北大路書房

アメリカの利上げは日本にとってプラスなのかマイナスなのか?②

前回は、アメリカの金利引き上げのプラス面について触れましたが、今回はマイナス面について見てみます。


■世界経済にとっては減速要因に

アメリカの金利が上がれば、アメリカの企業や投資家にとって、資金の調達コストが上がるわけですから、設備投資や金融投資が減少することになります。住宅投資も減少するかもしれません。そうなると株価が低下することもありえます。また投資の減少は投資から得られる所得の減少を通じて消費の減少をもたらす可能性もあります。つまりアメリカ経済にとってはマイナス要因になります(そもそも景気の過熱を嫌ってFRBは金利の引き上げを決定しています)。

そうなると円安に触れてもアメリカの需要が減少し、日本からの輸出があまり伸びない可能性もあります。もっともアメリカの景気は底堅いものがありますから、いきなり景気が減速するということにはならないでしょう。今回の利上げの判断もそうしたことを見越しています。


■新興国からのキャピタルフライト

さて、もっと深刻なのは新興国からのキャピタルフライト(資金流出)です。日本からアメリカへの資金流出(円売りドル買い)が進むのと同じ理屈で、新興国からアメリカに資金が流出します。

そうなると新興国内で投資資金が不足しますから、経済が減速することになります。一部では減速する中国経済にさらに追い打ちをかけるのではないかとも言われています。

またアメリカ(ドル)の金融引き締めは資源安を招き、特に資源輸出国にとって深刻です。たとえば原油は多くがドル建てで決済されています。ドルと原油の相対比で考えると、利上げによるドルの減少は、相対的な原油量の増加(ドルに対して余り気味)を意味しますが、余り気味の原油価格は下落します。

もともと原油価格はアメリカの金融政策によって決まる部分があります。アメリカ国内でお金が余ったら原油等の資源が買われるのということです。利上げでアメリカの債券が買われるようになれれば、原油に廻るお金は少なくなります。原油を買う動きが弱まるのですから、原油価格は下落します。

最近の空前の原油価格の下落は、OPEC内での生産調整の失敗とともに、こうしたアメリカの利上げを織り込んだものとも言われています。

資金が不足するわけですから、資金を確保するために新興国や資源輸出国は手持ちの債券や株式を売却することになり、これが世界の資産価格の低下圧力になります。

現にサウジアラビアでは、財政赤字が拡大し、IMFはこのまま原油安が続けば5年以内に外貨準備が枯渇すると指摘しています。


■日本にとってはプラス材料に!?

もっとも資源安は、日本にとってはプラス材料になります(原油価格が10%低下すると、実質GDPは0・1%程度増加するという説もあります)。

しかしながら、新興国や資源輸出国の経済の停滞は、こうした国々に輸出する先進国の経済にとってマイナスに作用し、もちろん日本にとってもリスク要因となります。多くのエコノミストはリスク要因のほうが大きいと捉えているようです。


■経済予測の難しさ

今回のアメリカの金利引き上げのプラス面は「円安による輸出の拡大」「資源安による調達コストの節約」、マイナス面は「新興国経済発の世界経済の停滞」です。大方の見方はプラス面よりもマイナス面のほうが大きいだとは思いますが、正直どっちに転ぶかはわかりません。

これは「なぜ経済予測が難しいのか」にも関係します。多くの場合、経済政策は、メリットとデメリット、言い換えれば効果と副作用(反作用)が伴い、そのバランスで結果が決まりますが、どちらのほうがより大きいかの判断が難しいからです。また短期的な効果と長期的な効果が逆になることもあります。

今回のケースも、短期的には日本にはプラス、長期的にはマイナスということなのかもしれません。

アメリカの利上げは日本にとってプラスなのかマイナスなのか?①

■アメリカの利上げ
 
今年の世界のリスク要因は、「ユーロ問題(ギリシャ危機)」「中国経済の減速」「アメリカの利上げ」の3つと言われてきました。

アメリカの利上げについては、世界経済へのインパクトが大きいこと、アメリカ国内での物価上昇率がと目標の2%に届かないことから、場合によっては年内は見送りするのではないかとの声もありましたが、17日、ついにFRB(連邦準備制度理事会)は、リーマンショック後7年間続けてきたゼロ金利政策を解除しました。

政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は0~0.25%から0.25~0.5%に引き上げられます。ニューヨーク市場が220ドル以上値上がりしたことを受けて、17日の日経平均株価は400円以上値上がりしましたが、翌日には両市場とも急落しています。


■そもそも金利とは?
 
ちなみにFF金利とは、かなり単純化して言うと、短期で民間銀行同士で貸し借りする時の利率のことです。オペレーショナルな部分はやや複雑なので割愛しますが、FRBはその傘下にある連邦準備銀行を通じてFF金利を操作することで市中金利を誘導することができます。

また金利には「①資金の調達コスト」と「②債券の収益」という2つの側面があります。

たとえば資金調達のために国が国債を発行する場合、その金利は国にとっては資金の調達コストですが、投資家にとっては収益になります。社債についても同じです。

FF金利を引き上げると市中の資金調達コストが上昇するので資金が借りにくくなり、国内のマネーが減少することになります(金融引き締め策)。
一方、債券の利子率は高くなります。


■為替は円安に触れる
 
さてアメリカの金利上昇はどのような影響を日本に及ぼすのでしょうか。相対的に日本の金利は下がるので、より高い収益率が見込まれるアメリカの債券(公社債)が買われることになります。

アメリカの債券はドル建てですので、円を売ってドルを買う動きが始まります。どんなものでも売られるものは価格が下がり、買われるものは価格が上がりますから、円安ドル高に振れることになります。

またアメリカの利上げはアメリカ国内のマネーの減少を意味します。日米それぞれのマネーの量を比べると、(実際には増加していなくても)相対的に日本はマネーの量が増加し、アメリカのマネーの量は減少します。どんな場合でも相対的に量が多いものは値下がりし、相対的に希少なものは値上がりしますから、円安ドル高に振れることになります。

円安になれば日本の輸出は拡大しますから、日本経済にとってはプラス要因になります。10円円安になると、GDPを0.5%押し上げるとの指摘もあります。
(つづく)

消費税率は上げるべきか(反対の立場から)④

まったく影響力のないブログで吠えたところでしかたがないのですが、せっかく書いたのでもう1回だけ。今回は、これまで挙げなかった論点をまとめて拾ってみたいと思います。増税派の主張(太字)に対する反論というスタイルは同じです。


■ヨーロッパでは消費税率20%が標準である。だから日本も国際標準に揃えなければならない。

他の国がそうだから日本もそうしろと言っているだけで、まともな主張とは思えません。もし世界標準に揃えろというのであれば、ヨーロッパ並みの高い失業率(イギリス5.6%、フランス10.2%、ドイツ4.7%、イタリア12.4%で、日本は3.5%)を甘受しなくてはいけないでしょう。もちろんそうなると安全保障環境も移民受け入れも国際標準とすべきです。


■消費税増税は国際公約である

これは2011年に当時の野田首相がG20で「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」と発言したことが、「消費増税は国際公約」と捉えられているようです。

しかし野田首相は野党はおろか当時与党であった民主党内でもコンセンサスを得ないま発言したわけです(その結果、民主党は分裂)。

またG20での発言は何も拘束力はありませんし、諸外国も国際公約だと考えていません。これまでも国際会議での場での発言が実行・実現に至らなかったケースは沢山あるでしょう。


■日本が消費増税しなければ世界で信用を失う

 「消費税を15%以上にすべきだ」と言っているのはIMF(国際通貨基金)くらいです。ノーベル経済学受賞者のジョセフ・スティグリッツやポール・クルーグマン、元アメリカ財務長官のローレンス・サマーズ、現財務長官のジェイコブ・ルー、「21世紀の資本」の著者であるトマ・ピケティらは反対の立場です。世界銀行内でも反対が見られます。
 IMFについて言うと、日本は世界第2位の出資国で、増税したい財務省から副専務理事を派遣しています。よって国際機関の報告書という体裁をとっているものの、実質的には財務省の主張であるとの見方もあります。


■社会保障の財源確保のためにも消費増税は必要だ。

日本の消費税は将来の社会保障のために使うという目的税化されています。社会保障(年金など)は富裕層から低所得者層への所得の再分配ですが、逆進性のある(より低所得者に痛税感のある)消費税で賄うというのは合理的ではありません。「困っている人のために困っている人から税金を取る」ことになるからです。

所得再分配は所得税で行ない、消費税は景気動向にかかわらず安定した財源であるので、本来はニーズが安定している地方公共サービスにまわされるべきものです(地方税化)。世界的にも消費税を目的税化している例はなく、地方税化していることが一般的です。何もかも世界に合わせる必要はないですが、妥当なものは採用すべきでしょう。

また、このまま社会保障の財源を消費税で賄うことになると、少子高齢化のペースを考えれば、最低でも消費税率は20%、おそらく30%まで上げる必要があります。つまり最初から増税ありきなのです。


11月末より、民主党の枝野幹事長が、軽減税率の導入に伴う低所得者対策費用の削減を理由に、「三党合意は既に破られた。破られた以上は守る必要はなし。」と、10%への引き上げに反対する可能性を示唆しています。なんとなく支持率対策のような気もしますが、もし民主党が消費税率引き上げに反対に廻るとなると、選挙対策上、与党側も税率引き上げ再延期(あるいは凍結)に廻る可能性がでてきたような気がします。

消費税率は上げるべきか(反対の立場から)③

かなりしつこい感じになってきましたが、消費増税への一般的な反対理由について、今回は「税収を上げるためには本当に消費税率を上げるしかないのか」という観点から考えてみたいと思います。今回もよくある増税派の主張(太字)に対する反論という形で進めていきます。

■税収を上げるためには安定財源である消費税を上げるべきだ

1997年度の橋本内閣時の消費増税(3%から5%)後の財政を見ると、歳出が膨らむ一方で、税収は2014年度まで3%から5%への増税前の水準を超えられませんでした。確かに消費税については安定的に推移しましたが、所得税は上がらず、法人税は低下傾向となったためです。

つまり消費増税しても、景気が悪いと所得税と法人税が伸びない(あるいは減少する)ので、税収が増えるわけではないし、景気下支えのための歳出も増加することになります。税収を上げる(歳出を減らす)ためには景気を良くする(名目GDPを伸ばす)ことが最優先課題となるわけです。

ちなみに2003年度のプライマリーバランスはマイナス28兆円であったのが、2008年度にはマイナス6兆円の赤字にまで回復しています。これは多少の歳出カットとゆるやかな景気回復による税収増によるものです。この間に増税はありませんでしたから、増税は税収を上げるための必要条件とは言いにくいでしょう。

また(税金ではないですが)そもそも年金徴収漏れが約10兆円あり、これにクロヨン(所得の補足率の不公平感を表す言葉で、サラリーマンは約9割に対し、自営業者は約6割、農林水産業者は約4割しか所得を把握できていない)の是正分等を足すと18兆円ぐらいになります。増税の前に本来取るべきところから取ることを優先すべきでしょう。


■経済成長しても税収はあまり上がらない

結論から言うと名目GDPの増加率よりも税収の伸び率は高いです。財務省では日本の税収弾性値(名目GDPが1%伸びたら、税収は何%伸びるかを示す数字)は、1.1としてきましたが、統計を取ると3~4程度との指摘もあります(GDP拡大期では最高で8以上、最低で0)。そうならば3%の名目GDP成長率を達成すれば税収は9%伸びることになります。


■消費増税しても景気は悪くならない

消費増税後、2014年度の実質GDPはマイナス1.0%になっています(名目GDP成長率は1.5%のプラスですが、これは消費増税分を含みます)。

現在までGDPの約6割を占める個人消費の回復が十分に見られないわけですから、消費増税は景気のマイナス要因であることは明らかでしょう。

2014年度の消費増税前にも影響は限定的だという主張がありましたが、深刻なことは確かです。1997年度の日本の消費増税後や、2011年度のイギリスの消費増税後にも実質GDP成長率はマイナスに転じているので結果は明らかです。


■2014年度の消費増税により税収は増えている。

2014年度の税収は、前年度から比べて7兆円増加し、54兆円となっています。このうち消費税の税収増は5.2兆円を占めていますから、税収増の主要因は確かに消費増税によるものと言えます。

しかし税収はいろいろな要素が絡み合って決まるものであり、そもそも短期的な見方ではなく、1997年の5%への増税では税収は上がらなかったことにも注意すべきです。

消費増税なかりせば実質GDPは最低でもプラス1.5%は実現できたはずで、今頃は完全雇用や物価上昇率2%を実現できていた可能性があります。つまり名目GDPがより増加し、その結果、法人税収や所得税収がより増加した可能性を考えるべきでしょう。
(つづく)

消費税率は上げるべきか(反対の立場から)②

前回同様、財政問題の観点から消費増税について考えてみます。


■このままいくとギリシャの二の舞になる。

ギリシャはIMF、世界銀行、ECB(ヨーロッパ中央銀行)から資金を借りていますが、日本国債はほとんどが内国債(円建て債務)です。ギリシャはユーロを勝手に発行できませんが、日本政府あるいは日本銀行は政府紙幣を含めて円通貨を発行できます。

よって、原理的にはおカネを刷って負債の返済に充てることが可能です。もっとも刷り過ぎるとハイパーインフレになりますが、リーマンショック後の先進国を見ると、通貨量を3倍から4倍にしてもハイパーインフレにはなっていません。

さらに日本国債の保有割合を見ると、約3割が日本銀行です。日本銀行は政府から独立した立場となっていますが、事実上は政府の特殊法人、つまり統合政府として一体の立場と見るほうが自然でしょう。

同じ統合政府の中での借金の貸し借りを相殺すると、政府の負債は400兆円ほどになります。だからまったく問題ではないとまではさすがに言いませんが、少なくともギリシャとは事情がまったく異なるのは事実です。

そうなると「旦那の年収が540万しかないのに借金が1億円もあって早く返済しないと大変だ!」に「ただし旦那は不滅である」と「旦那はある程度までおカネを刷ることができる」を加えることもできます。


■消費増税して負債を減らさないと国債の金利が高騰し、国内の金利が高くなる

一般的に返済能力が不安な国(企業)は、投資家からすればリスクがあるわけですから、資金調達コストである金利は高くなります。

つぶれそうな国に金を貸すのであれば、リスクに応じて高いリターン(利子・金利)をくれというのが投資家心理です。デフォルト(債務不履行)を起こしそうな国の国債は高い金利(リスク・プレミアム)をつけないと誰も買ってくれないわけです。

また国内の様々な金利(株の配当、社債の利子、各種ローンの金利など)は、通常、国債の金利に上乗せされて決まります。よって国の負債の返済能力が疑われると、国内の金利は上がることになります。そうなると銀行からお金を借りる時の金利も高くなるので、設備投資や個人の住宅投資などが減少することになります。

では日本の国債の金利は上がっているのでしょうか。10年物国債の年利で見ると、2012年度初頭に1.1%程度であったのが、現在では0.4%程度まで一貫して低下しています。

また国債がデフォルトになった場合の保険料としてCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)というものがありますが、日本の場合は0.4%~0.5%程度です。

これはアメリカやドイツと比べて高いですが、イタリア(0.9%)やスペイン(0.8%)よりも低い値です。すぐにでも日本の財政が破綻するのであれば、もっとCDSは高いはずです。ちなみに財政危機が本格化した今年の7月のギリシャは87%(現在は10%程度)で、要は元本と同程度の保険料が求められていました。

少なくともマーケットは日本国債のデフォルトのリスクをそれほど高く見ていないと言えます。(つづく)

消費税率は上げるべきか(反対の立場から)①

■マクロ経済学の基礎知識で消費増税のタイミングを考えると

マクロ経済学では、デフレギャップ(総需要<総供給)が生じている場合には拡張的な財政政策(減税を含む)により総需要を喚起する、インフレギャップ(総需要>総供給)が生じている場合には緊縮的な財政政策(増税を含む)により総需要を減少させるというのが基本的な知識です。

よって私はこの経済学の常識に沿って、10兆円程度のデフレギャップが生じている現在は消費増税はせずにデフレギャップの縮小に努め、インフレギャップが生じるタイミングで増税すべきではないかという考えです。

一般的に消費税を上げる理由は、「日本政府は巨額の債務を抱えており財政再建はまったなしである。今後の社会保障関連費用の膨張を考えると、安定財源である消費税を上げることで税収を増やす必要がある」ということでしょう。

消費税をめぐる議論が対立するのは、大きく①本当に日本の財政は危機的状況なのか②税収を上げるためには消費増税が必要なのかについて想定が違うからではないでしょうか。今回と次回は①について、よく見られる主張(太字)とそれに対する一般的な反論を紹介したいと思います。


■日本の財政状況

日本の財政状況を確認しておきましょう。2013年3月末時点で日本国の資産は総計653兆円、負債は1143兆円です。負債のうち、政府の債務と言うべきものは、公的年金預り金112兆円等を除いた976兆円になります。

2014年度(2014年4月~15年3月)の税収は約54兆円、2015年度は56兆円の見通しになります。

こうしたことから政府を家計にたとえ、「旦那の年収が540万しかないのに借金が1億円もあって早く返済しないと大変だ!」という話がされます。

またプライマリーバランスは、2013年度で27.8兆円の赤字となっています。なおプライマリーバランスとは、国債の利払いと償還費を除いた歳出(一般歳出)と、国債発行収入を除いた歳入(主に税収)についての財政収支のことで、基礎的財政収支とも呼ばれます。

少し説明を端折りますが、税収より一般歳出が多ければ、不足分を国債の新規発行で賄うことになるので、財政的には赤字(プライマリーバランスは赤字)になります。

一方、税収で一般歳出が賄われていれば(プライマリーバランスの均衡)、国の借金は膨張しないことになります。

現在の日本では多額の政府債務がありますが、それ自体が既に何か経済的な悪影響をもたらしているわけではないので、プライマリーバランスの均衡を達成し、政府の債務額を一定水準に押さえれば問題がないというのが前提にある考え方です。


■名目GDP対比で200%を超える政府債務は異常だ

2013年度末の日本の財政状況を見ると、資産は総計653兆円、債務は1143兆円です。名目GDP対比で約230%の債務率となり、これが世界的に見て突出しているとされています。

しかし負債のうち、政府の債務と言うべきものは、公的年金預り金112兆円等を除いた976兆円です。政府の債務から資産を引いたネットの債務は323兆円になり、名目GDP対比では約65%となり、他の先進国と比べて極端に悪くならないことになります。

なぜこのようなことになるかと言うと、日本政府の資産は世界でダントツの650兆円もあるからで、これはGDPが約3倍のアメリカの4倍以上にもなります。そうなると必ず出るのは、政府資産は売却できないのだからネットの債務で考えても意味がないという主張です。350兆円程度は売却可能だとの指摘もありますが、政府の資産のうち、どれくらいが売却できるのかは議論が別れています。

いずれにせよ特殊法人への貸付金や出資金、有形固定資産が諸外国に比べて格段に大きいことは事実であり、その整理をして債務返済に充てることは議論すべきではないでしょうか。


■私たちの世代の借金を子供や孫たちに追わせてはいけない。

端的に言うと私たちは借金していません。負債があるのは政府です。誰も年収の20倍の借金の返済に追われているなどとは思わないでしょう。

これは国を家計と同一視していることに原因があります。確かにもし年収の20倍の借金があったら、子供に返済させるわけにはいかないので、なんとか自分が生きているうちに返そうとするのが普通でしょう。

ただし日本は(永久とは言わないまでも)これからもずっと存続しますからどこかのタイミングで債務を完済する必要はありません。一定額の債務が世代を超えてずっと残っていても何も問題はありません。

ですから「旦那の年収が540万しかないのに借金が1億円もあって早く返済しないと大変だ!」に「ただし旦那は不滅である」を加えないと正しくはないのです。
(つづく)

10%への消費税率の引き上げは本当に決まったことなのか?

■与党内での軽減税率の合意

自民党と公明党の与党内で、12日、2017年4月の消費税率10%への引き上げと同時に導入する軽減税率について、対象を「酒類と外食を除く食品全般」とすることで大筋合意したとのことです。

減税規模は約1兆円とのことで、当初、自民党が強く主張した4千億円を大きく上回る結果となり、公明党案を受け入れたとの見方が大勢です。消費税率1%ごとに約2兆円の税収増が見込まれており、2%増税で約4兆円の税収増、その中から1兆円の減税を行うということなので、かなり思い切った合意と言えます。

■まったくおかしな軽減税率の議論

しかしながら消費増税の低所得者層の痛税感を和らげるために軽減税率を行う、あるいは軽減税率導入の代わりに新たな税収の確保(増税)を検討するというのでは、まったくの本末転倒と言わざるを得ません。最初から消費増税を見直すなり、増税率を下げるなりすればよいというのが私の考えです。

そもそも消費税は逆進性が高い(低所得層に対してより痛税感がある)のと同様に軽減税率の恩恵にも逆進性がある(高所得者のほうがより得をする)のですから、軽減税率を云々しているだけバカバカしい話でしょう。

■本当に消費増税は決まっていることなのか?

残念ながら日本では消費税問題は経済問題ではなく政治問題です。まず消費税の段階的引き上げは、2012年度の民主党政権末期の3党合意(民主野田首相、谷垣自民党総裁、山口公明党代表)で決まったことです。つまり現在の与党と野党第1党が増税に賛成であること、アベノミクスとは関係がないことに注意する必要があります。

安倍政権では昨年末の解散・総選挙で勝利したことを受けて消費税の10%引き上げを延期しました。消費税引き上げは決まったことという見方が一般的ですが、識者やジャーナリストの中にはまだ分からないという見方をする人もいます。ここで消費税引き上げに関する政局の見方をいくつか紹介してみましょう。

■増税は予定どおりとする見方

・自公民の3党合意で決まっているのだから予定どおり引き上げるに決まっている。

・昨年の総選挙において安倍首相は「今度は景気条項を設けない(悪くても税率を引き上げる)」と明言している。

・軽減税率の話に世間の話を向かせることで、消費税を既定路線化して反対意見を言わせないようにしているのではないか。
・現政権下で2回延期することは考えにくい。

■増税を見送る可能性があるとする見方

・安倍首相はそもそも増税派ではなく景気回復による税の増収を優先する立場(いわゆる上げ潮派)であり、第1次政権下で増税をしたこともなければ検討したこともない。第2次政権下でも「社会保障のためには絶対消費税を引き上げなければならない」というよりは「既に決まったことだから引き上げる」という趣旨の発言が目立つ。

・現に安倍首相は昨年に一度10%への引き上げを延期するという判断をしており、増税推進派とはとても言えない。

・確かに安倍首相は、当初は「今度は景気に関係なく引き上げる」と言っていたが、今年の春頃から「リーマンショックのようなことがあれば、もちろん別だ」とトーンが変わっている。

・どのみち公正に軽減税率の対象品目を決めることなど不可能だし、流通サイドの手間も膨大であり、軽減税率案は潰れる可能性が高い。その場合、公明党の顔を立てるためには、軽減税率をやめる代わりに消費税の引き上げをやめるか延期するしかなくなる。

・自民党税制調査会の会長をごりごりの増税派の野田氏から宮沢氏に代えたのは、軽減税率を進めたい公明党への配慮とともに、増税延期のための布石ではないか。

・安倍首相は5年を目処に名目GDP600兆円を達成するとしている。8%に上げたら景気が減速した経験からも、消費税を引き上げればその目標が不可能になることくらいわかっているはずだ。

・安倍首相は8%への引き上げ後に「経済財政諮問会議のメンバーが増税しても影響ないと言ったから引き上げたのに、このざまだ。」と周囲に語ったとされる。

・もともと消費増税を言った手前上、民主党側から消費税延期・凍結を言い出すことはできない。来年夏の参院選あるいはダブル選で与党側から消費増税の延期を争点にすれば民主党はせいぜい追認しかできず(増税延期に反対すれば必ず負ける)、与党は大勝できる。

・ただし9日に民主党枝野幹事長が3党合意は破棄されたのも同然とし、消費増税に反対に回る可能性を示唆した。そうなると与党は選挙対策のためにもやはり増税延期を打ち出すしかないのではないか。

■結局は政権維持に有利なように消費税引き上げの判断をするのか?

私自身は消費税が政治問題化している(与党内でも増税派が多数を占めている)ことから、引き上げ延期にあたっては、(昨年末 のように)ダブル選挙に打って出るような思い切ったことをやらないと難しいように思います。

安倍首相自体は増税に乗り気ではないように思えますが、政治的な安定性の確保を優先して最終的な判断をするのではないでしょうか。
 
さて次回から複数回に分けて消費税をめぐる議論について、私なりに整理してみたいと思います。

繰り返しになりますが、私は消費増税は反対でその立場でこれまで出てきている様々な議論を整理していきます。消費増税に賛成(あるいはやむを得ない)と考えている方も、このような見方もあるのだなと少しは参考になるかもしれません。

経済成長はなぜ必要か?②

「経済成長しても労働時間が長くなるだけで幸せにはなれない。経済成長よりも幸福感を高めるべきだ」という意見は、左派と呼ばれる人たちから主張されてきました。ただし「幸せの感じ方」は人それぞれでしょうし、そもそも定量化ができないという点で政策目標として採用することは困難でしょう。

内閣府経済社会総合研究所の2012年度の調査によれば、幸福感に影響を与える要因として次のことが挙げられています。

① 所得水準が高いほど幸福感も高くなる。
② 仕事をしている人は総じて幸福感が高く、失業している人は幸福感が低い。
③ 結婚している人のほうが幸福感が高い。
④ 自分の健康状態についての評価が高い人ほど幸福感が高い。
⑤ 学歴が高い人ほど幸福感が高い。
⑥ 困難なときに助けてくれる人の数が多いほど幸福感が高い。


また自殺率と失業率との間には正の相関関係があることが指摘されています。厚生労働省「人口動態統計」と総務省「労働力調査」のデータから、自殺率と失業率との相関係数は0.87(自殺率の増減の9割近くが雇用要因で説明できる)ということです。

ギリシャでは、財政問題が表面化した2008年以降、緊縮財政により、名目GDP(26%減少)、失業率(7.8%から25.6%に上昇)、自殺率(36%上昇)と悪化していることも、無視できない事実だと思います。

そう考えると、経済成長により、仕事が確保されたり所得が上がれば、結婚しやすくなり、子供への教育費が増え、社会保険の充実により健康状態も維持されることになり、いいことづくめということになります。

「経済成長しても仕事人間になるだけ」という人は、既に仕事や相応の所得が確保されている人ではないでしょうか。

「カネか充実感か?おそらくどちらも、あるいはケースバイケース(モチベーション理論)」で触れたように、所得には衛生要因(「不満」の状態から「不満なし」の状態に持っていく要因)という性格があります。

衛生要因を満たしているが、動機づけ要因(「不満なし」の状態から「満足」の状態に持っていく要因)を満たしているわけではない(したがって幸福感が小さい)ので、そのようなことを言っているようにも思えます。

【参考】
「日本経済論の罪と罰」小峰隆夫著 日本経済新聞社
「誤った経済政策で 自殺者を増やした罪を忘れたか 間違い続ける民主党に 安保の議論をする資格なし!」2015年08月03日高橋洋一「ニュースの深層」

経済成長はなぜ必要か?①

テレビ番組での竹中平蔵氏(元総務相、現慶應義塾大学教授)と榊原英資氏(元大蔵省財務官、現青山学院大学教授)との討論の中で、榊原氏がおおよそ次のようなことを言っていました。

「日本を含め先進国はゼロ成長時代に入っており、せいぜい1%程度の成長しか見込めない。江戸時代の中期から後期はほとんどゼロ成長であったが、文化が生まれ、それを楽しんできた。日本も成熟社会を楽しむよう意識を変えていくべきだ。」

脱経済成長を唱える人には、大きく2つのタイプがあります。1つめは「経済成長はできない」というもの、2つめは「経済成長より心の豊かさを求める」というものです。榊原氏の発言は両方の要素が強いようですが、民主党の枝野幸男幹事長なども同様の主張と考えて良いかと思います。

「経済成長しなくてもいいじゃん」という主張は以前からありましたが、それに対してはどのように反論すればよいでしょうか?意外と説明が難しいかもしれません。

「経済成長しない=現状の生活維持」というイメージなんだと思いますが、「経済成長しない=現状の生活を維持できない」というのが特に日本の場合では当てはまります。

一般的に経済成長することのメリットは、次のとおりでしょう。

① 1人あたりの所得が増える
② 雇用機会が増える。
③ ①②より需要が増える。
④ 投資が増え、将来の成長が可能になり、その結果、将来世代が豊かになる。
⑤ 構造改革が進む。

 成長していれば不採算分野をなくして余剰の資源(人材)が発生しても成長分野が吸収できる。
 社会的摩擦が低い。
 成長していれば大なり小なり多くの人が得をする。逆にゼロ成長(マイナス成長)だと限られた所得の取り合いになる。
 税収が増えるので財政が健全化する。

逆にゼロ成長(マイナス成長)だと税収が上がらず、財政が健全化しない。日本のような少子高齢化が進んでいる場合、社会保険のための資金が確保できなくなる。

②に関連して、ポール・クルーグマン(経済学者でノーベル経済学賞受賞)の「生産性の謎」というものがあります。これは「人間は努力をほとんどしなくても年2%程度の生産性の向上を成し遂げてしまう」というもので、それは「慣れ」によるものだと考えられます。そうなると生産性の伸びと同程度の人員が不要となります。経済成長(生産規模の拡大)がないと、自動的に失業者が増えることになるのです。


【参考】
「日本経済論の罪と罰」小峰隆夫著 日本経済新聞社

思ったよりモノが売れるとGDPはマイナスになる?(GDP)

甘利経財相は12月6日のテレビ番組で、8日に発表される7─9月期の実質GDP(実質国内総生産)の改定値が「ゼロになると思う」と述べたことが話題になっています。発表前から知りうる立場であることは想像できますが、事前に言ってしまうのはどうかとの批判が上がっています。

ちなみにGDPの発表には、1次速報値と2次確報値があります。7-9月期の実質GDPの1次速報値は11月16日に発表されており、前期比(4-6月)マイナス0.2%でした。

今回は、GDPについて確認しておきましょう。まずGDPとは、ある国において一定期間に新たに生み出された財・サービスの付加価値の総額です(生産面から見たGDP)。

付加価値とは、単純に言えば、「生産額-中間投入額(生産のための仕入れコスト)」と考えておけばよいでしょう。

生産された付加価値は、各経済主体(家計・企業・政府)に分配されます(分配面から見たGDP)。また付加価値は各経済主体の需要の対象にもなります(支出面から見たGDP)。

つまり生産面から見たGDP・分配面から見たGDP・支出面から見たGDPは一致することになります(三面等価の原則)。

今回は支出面から見たGDPについて考えてみましょう。支出面から見たGDPは、需要面から見たGDPとも言われ、次の項目から成り立ちます。

<支出面から見たGDP>
GDP=民間・政府最終消費支出+国内総固定資本形成+在庫品増加+輸出
   -輸入


国内総資本形成とは、住宅投資、設備投資、公共投資などの固定資本の追加分のことです。今回は、設備投資のマイナス1.3%と在庫品増加のマイナス0.5%が響きました。

ここで注意すべきは、在庫品(言い換えれば売れ残り)が減る、言い換えれば思ったより売れるとGDPにはマイナスになる、逆に売れ残りが増えるとGDPにはプラスに作用するということです。

本来、総供給(総生産)と総需要は一致するわけではないのですが、三面等価の原則では、支出面(需要面)から見たGDPのうち、在庫品増加という形で売れ残りの増加分も含んでしまうことで(注)、総供給と総需要を一致させているのです。

今回の1次速報でも、在庫品増加のマイナスがなければプラスの0.3%だったということで、景気は印象よりも悪くはない(ただし決して良くはない)状態なのかもしれません。

1次速報値と2次速報値はかなり食い違いがあり、1次速報値はあまり当てにならないという声もあります。7日に甘利大臣は「確報値については知っていない。民間予想に基づいて発言しただけだ」と釈明しました。さて、もうすぐ発表される確報値は甘利大臣の言うとおりなのでしょうか。

注:
正しくは仕掛品や半製品、原材料の増加も含む。

追加:
2次速報値は前期比0・3%増で大幅な上方修正でした。こんなに変わると速報値の意味が分からないですね。甘利大臣が番組出演時に2次速報値を知っていたかどうかは微妙な感じでしょうか。

GDP600兆円は実現可能か?

安倍首相は、現在の名目GDP約490兆円を2020年までに600兆円にすることを目標に掲げましたが、おそらく多くの方が実現不可能と思われているのではないでしょうか。名目GDPを600兆円にするためには、年平均で約3.4%の名目GDP成長率が必要になるのですが、1990年から2012年度の日本の平均成長率は約0.3%ですので、確かに実現は極めて困難に思えるでしょう。


■名目と実質


マスメディアでの報道や論調を見ると、「名目GDP」と「実質GDP」を混同している、あるいは区別できていないケースが散見されます。まずこの点から確認していきましょう。

名目とは、いわば額面の値のことです。たとえば賃金を例にとると、みなさんの給与明細に書かれている金額は名目の賃金です。税金や社会保険料などを除いた手取りではありませんから注意してください。

一方、実質とは、名目から物価上昇率を割り引いたものです。たとえば額面の賃金(名目賃金)が一定でも物価が上昇すると、実質的な賃金は目減りします。

名目と実質の関係を成長率で考えると、次のような関係が成立します。

 実質成長率=名目成長率-物価上昇率

GDP成長率で考えると、次のようになります。

 実質GDP成長率=名目GDP成長率-物価上昇率
 ∴名目GDP成長率=実質GDP成長率+物価上昇率


こうして考えると、名目GDP成長率3.4%を達成するためには、実質GDP成長率と物価上昇率で分担すればよいということになります。


■年平均で約3.4%の名目GDP成長率は達成可能か?

日本の場合、実質GDP成長率を平均3.4%で廻すことは極めて難しいでしょうが、リーマンショックからの回復が見られた2010年度以降の他の先進国並みの成長率である1.5%であれば十分に可能です。

<2010年度~2014年度の実質GDP成長率の平均値>
アメリカ:約2.2%
イギリス:約1.5%
ドイツ:約2.1%
フランス:約1.2%
ノルウェー:約1.3%
フィンランド:約0,7%
スウェーデン:約2.5%
韓国:約3.9%
台湾:約4.7%

一方、物価上昇率ですが、代表的な物価指数である消費者物価上昇率の推移を見ると、リーマンショック後の大幅な物価下落を除けば、先進国ではおおむね2%前後で推移しています。

アメリカのFRB(連邦準備制度)やユーロのECB(ヨーロッパ中央銀行)、イギリスのイングランド銀行などの主要中央銀行では、2±1%の物価上昇率を目標としていますが、こうした国際標準を受けて日本銀行でも遅まきながら2013年度に物価上昇率目標2%にコミットしたわけですから、そのとおり実現させればよいのです。

まとめると、実質GDP成長率を他の先進国並みの1.5%、物価上昇率も同様に国際標準である2%にすれば、名目GDP成長率は3.4%を超え、2020年度には名目GDPを600兆円にすることは可能だということです(注)。


たしかに実現のためには、まともな経済政策(金融追加緩和、補正予算など)が必要ですし、消費増税を実施すれば、確実に実現不可能となります。

しかしながら、1990年から2012年の先進国の名目GDP成長率は平均で3.7%程度ですから、現時点ですでに不可能と決めつけるのは、もはや日本は並みの先進国と同じことはできないというのとほぼ同義であり、それは過度な悲観論ではないでしょうか。


注:
ただし、なぜか政府が掲げる名目3%目標の内訳は、実質2%、物価上昇率1%になっていて、日銀の目標物価上昇率2%との齟齬が見られる。

【参考】
統計局ホームページ/世界の統計2015 3-5 国内総生産の実質成長率

おカネは個人の生産性を高めるのか?(モチベーション)

プロ野球も全日程が終わり、選手たちの契約更改が進んでいます。毎年、一発サインで更改する選手もいれば、球団側からの提示を不服とし、なかなか合意に至らないケースもあります。「球団側もあんまりだな」と思うこともありますが、額が大きいだけに、どちらかというと「選手は野球が好きだとかチームの勝利が第一とか言いながら、やっぱりおカネが一番なのか」という印象もあるかもしれません。
 
今回は、「おカネは個人の生産性を高めるのか?」という問題について考えたいと思います。一般的に金銭的報酬が生産性の向上につながるのは次のような場合であるとされます。

①追加的な努力で成果が著しく向上する作業

あともうひと踏ん張りが求められるような作業でのカンフル剤ということですね。決まった手順がある事務作業がこれに当たり、正しくこなせば報酬を与えることで、注意力が増し、正確な作業が期待できます。逆に作業の質と報酬が連動しないと、作業が雑になる恐れがあります。

②内側からのやる気が弱いとき

どうしてもやる気がない場合や、もともと充実感が得られにくいような作業は、金銭的な報酬を使うしかありません。

③報酬を受け取ることが社会的評価につながる場合

冒頭の野球選手の例が典型的でしょう。「大台(年棒1億円)に乗る」のは、一流選手の仲間入りであり、大幅な年棒アップは球団からその年の活躍に対する評価や来シーズンの期待度の高さを意味します。
また他の選手のそれと比較することで、自分に対する選手としての価値を確認することにもなります。この場合、追加的な金銭的報酬は生産性の向上(実績)につながることが期待できます。会社員であっても、年棒制であれば、同様のことは言えるでしょう。


①②については、どちらかというとルーティンワーク的で、あまり充実感を感じられないような作業の場合であると考えられます。

では、歩合給的な要素が高い保険や車のセールスはどうでしょうか。どちらも過酷で離職率も高いイメージですが、モチベーションが高く、実績を上げることで高い充実感を得ている人もいます。高い報酬を得るために頑張るという面が大きいでしょうが、それ以外に金銭的な報酬(給与)が社内での地位や社外での評判につながることが動機づけとなっているとも考えられます。

【参考】
「インセンティブ」タイラー・コーエン著 日経BP社

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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