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消費税率は上げるべきか(反対の立場から)①

■マクロ経済学の基礎知識で消費増税のタイミングを考えると

マクロ経済学では、デフレギャップ(総需要<総供給)が生じている場合には拡張的な財政政策(減税を含む)により総需要を喚起する、インフレギャップ(総需要>総供給)が生じている場合には緊縮的な財政政策(増税を含む)により総需要を減少させるというのが基本的な知識です。

よって私はこの経済学の常識に沿って、10兆円程度のデフレギャップが生じている現在は消費増税はせずにデフレギャップの縮小に努め、インフレギャップが生じるタイミングで増税すべきではないかという考えです。

一般的に消費税を上げる理由は、「日本政府は巨額の債務を抱えており財政再建はまったなしである。今後の社会保障関連費用の膨張を考えると、安定財源である消費税を上げることで税収を増やす必要がある」ということでしょう。

消費税をめぐる議論が対立するのは、大きく①本当に日本の財政は危機的状況なのか②税収を上げるためには消費増税が必要なのかについて想定が違うからではないでしょうか。今回と次回は①について、よく見られる主張(太字)とそれに対する一般的な反論を紹介したいと思います。


■日本の財政状況

日本の財政状況を確認しておきましょう。2013年3月末時点で日本国の資産は総計653兆円、負債は1143兆円です。負債のうち、政府の債務と言うべきものは、公的年金預り金112兆円等を除いた976兆円になります。

2014年度(2014年4月~15年3月)の税収は約54兆円、2015年度は56兆円の見通しになります。

こうしたことから政府を家計にたとえ、「旦那の年収が540万しかないのに借金が1億円もあって早く返済しないと大変だ!」という話がされます。

またプライマリーバランスは、2013年度で27.8兆円の赤字となっています。なおプライマリーバランスとは、国債の利払いと償還費を除いた歳出(一般歳出)と、国債発行収入を除いた歳入(主に税収)についての財政収支のことで、基礎的財政収支とも呼ばれます。

少し説明を端折りますが、税収より一般歳出が多ければ、不足分を国債の新規発行で賄うことになるので、財政的には赤字(プライマリーバランスは赤字)になります。

一方、税収で一般歳出が賄われていれば(プライマリーバランスの均衡)、国の借金は膨張しないことになります。

現在の日本では多額の政府債務がありますが、それ自体が既に何か経済的な悪影響をもたらしているわけではないので、プライマリーバランスの均衡を達成し、政府の債務額を一定水準に押さえれば問題がないというのが前提にある考え方です。


■名目GDP対比で200%を超える政府債務は異常だ

2013年度末の日本の財政状況を見ると、資産は総計653兆円、債務は1143兆円です。名目GDP対比で約230%の債務率となり、これが世界的に見て突出しているとされています。

しかし負債のうち、政府の債務と言うべきものは、公的年金預り金112兆円等を除いた976兆円です。政府の債務から資産を引いたネットの債務は323兆円になり、名目GDP対比では約65%となり、他の先進国と比べて極端に悪くならないことになります。

なぜこのようなことになるかと言うと、日本政府の資産は世界でダントツの650兆円もあるからで、これはGDPが約3倍のアメリカの4倍以上にもなります。そうなると必ず出るのは、政府資産は売却できないのだからネットの債務で考えても意味がないという主張です。350兆円程度は売却可能だとの指摘もありますが、政府の資産のうち、どれくらいが売却できるのかは議論が別れています。

いずれにせよ特殊法人への貸付金や出資金、有形固定資産が諸外国に比べて格段に大きいことは事実であり、その整理をして債務返済に充てることは議論すべきではないでしょうか。


■私たちの世代の借金を子供や孫たちに追わせてはいけない。

端的に言うと私たちは借金していません。負債があるのは政府です。誰も年収の20倍の借金の返済に追われているなどとは思わないでしょう。

これは国を家計と同一視していることに原因があります。確かにもし年収の20倍の借金があったら、子供に返済させるわけにはいかないので、なんとか自分が生きているうちに返そうとするのが普通でしょう。

ただし日本は(永久とは言わないまでも)これからもずっと存続しますからどこかのタイミングで債務を完済する必要はありません。一定額の債務が世代を超えてずっと残っていても何も問題はありません。

ですから「旦那の年収が540万しかないのに借金が1億円もあって早く返済しないと大変だ!」に「ただし旦那は不滅である」を加えないと正しくはないのです。
(つづく)
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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