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アメリカの利上げは日本にとってプラスなのかマイナスなのか?②

前回は、アメリカの金利引き上げのプラス面について触れましたが、今回はマイナス面について見てみます。


■世界経済にとっては減速要因に

アメリカの金利が上がれば、アメリカの企業や投資家にとって、資金の調達コストが上がるわけですから、設備投資や金融投資が減少することになります。住宅投資も減少するかもしれません。そうなると株価が低下することもありえます。また投資の減少は投資から得られる所得の減少を通じて消費の減少をもたらす可能性もあります。つまりアメリカ経済にとってはマイナス要因になります(そもそも景気の過熱を嫌ってFRBは金利の引き上げを決定しています)。

そうなると円安に触れてもアメリカの需要が減少し、日本からの輸出があまり伸びない可能性もあります。もっともアメリカの景気は底堅いものがありますから、いきなり景気が減速するということにはならないでしょう。今回の利上げの判断もそうしたことを見越しています。


■新興国からのキャピタルフライト

さて、もっと深刻なのは新興国からのキャピタルフライト(資金流出)です。日本からアメリカへの資金流出(円売りドル買い)が進むのと同じ理屈で、新興国からアメリカに資金が流出します。

そうなると新興国内で投資資金が不足しますから、経済が減速することになります。一部では減速する中国経済にさらに追い打ちをかけるのではないかとも言われています。

またアメリカ(ドル)の金融引き締めは資源安を招き、特に資源輸出国にとって深刻です。たとえば原油は多くがドル建てで決済されています。ドルと原油の相対比で考えると、利上げによるドルの減少は、相対的な原油量の増加(ドルに対して余り気味)を意味しますが、余り気味の原油価格は下落します。

もともと原油価格はアメリカの金融政策によって決まる部分があります。アメリカ国内でお金が余ったら原油等の資源が買われるのということです。利上げでアメリカの債券が買われるようになれれば、原油に廻るお金は少なくなります。原油を買う動きが弱まるのですから、原油価格は下落します。

最近の空前の原油価格の下落は、OPEC内での生産調整の失敗とともに、こうしたアメリカの利上げを織り込んだものとも言われています。

資金が不足するわけですから、資金を確保するために新興国や資源輸出国は手持ちの債券や株式を売却することになり、これが世界の資産価格の低下圧力になります。

現にサウジアラビアでは、財政赤字が拡大し、IMFはこのまま原油安が続けば5年以内に外貨準備が枯渇すると指摘しています。


■日本にとってはプラス材料に!?

もっとも資源安は、日本にとってはプラス材料になります(原油価格が10%低下すると、実質GDPは0・1%程度増加するという説もあります)。

しかしながら、新興国や資源輸出国の経済の停滞は、こうした国々に輸出する先進国の経済にとってマイナスに作用し、もちろん日本にとってもリスク要因となります。多くのエコノミストはリスク要因のほうが大きいと捉えているようです。


■経済予測の難しさ

今回のアメリカの金利引き上げのプラス面は「円安による輸出の拡大」「資源安による調達コストの節約」、マイナス面は「新興国経済発の世界経済の停滞」です。大方の見方はプラス面よりもマイナス面のほうが大きいだとは思いますが、正直どっちに転ぶかはわかりません。

これは「なぜ経済予測が難しいのか」にも関係します。多くの場合、経済政策は、メリットとデメリット、言い換えれば効果と副作用(反作用)が伴い、そのバランスで結果が決まりますが、どちらのほうがより大きいかの判断が難しいからです。また短期的な効果と長期的な効果が逆になることもあります。

今回のケースも、短期的には日本にはプラス、長期的にはマイナスということなのかもしれません。
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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