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経営戦略におけるいろいろなジレンマ③(生産性のジレンマ:前編)

画期的な製品が登場した当初は製品イノベーションに関する取り組みが活発に行われますが、やがて沈静化することが一般的です。これについて扱った理論に、生産性のジレンマがあります。


プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーション

プロダクト・イノベーションとは、文字通り製品イノベーションのことです。一方、プロセス・イノベーションとは、業務プロセス(販売方法や生産方法など)に関するイノベーションのことです。


抑制されるプロダクト・イノベーション

生産性のジレンマとは、画期的な製品が登場した当初はプロダクト・イノベーションに関する取り組みが活発に行われますが、やがて企業側の関心はプロセス・イノベーションにシフトし、プロダクト・イノベーションは沈静化してしまうというものです。1970年代にアッターバックとウィリアム・アバナシーによって発表されたものです。
生産性のジレンマに至る過程は、次のとおりです。


<流動期>
① 画期的な製品が登場すると、各社が知恵を凝らして様々なタイプの製品開発を行います。多種多様な企業が有機的な組織の下でそれぞれプロダクト・イノベーションを行います。

<移行期>
② やがて市場において支配的・標準的な製品デザイン(ドミナントデザイン)が決まると、各社の関心は製品デザインでの競争から低コスト化競争に移ります。

③ 各社は大規模な専用ラインを導入し、大量生産体制を構築します。その過程で生産工程の分業化、作業の標準化、専用機械化が進み、低コストのための生産体制が構築されていきます。あわせてそれに見合う組織の構造も確立されていきます。

④ この過程で大規模な設備投資を行えない企業は競争から脱落し、企業数は減少に転じます。

<固定期>
⑤ プロダクト・イノベーションは抑制され、ともはや大幅な製品デザインや機能の変更は見られなくなり、修正・改善レベルに留まるようになります。大幅な製品デザインや機能の変更を行ってしまうと、それまで多額の投資や労力をかけて構築した生産体制が無駄となってしますからです。

⑥ プロセス・イノベーションが進み、分業化と専用ライン化による大量生産体制が確立します。

⑦ 小規模の競争力に劣る企業が撤退したり買収されたりすることを通じて業界の寡占化(少数の企業が市場シェアの大部分を抑えてしまっている状態)が進みます。


たとえば自動車は、19世紀末には3輪車もあれば4輪車もあり、エンジンが前に付いていたり後ろに付いていたり、動力源が蒸気であったり電気であったりガソリンであったりと様々なデザインがあったわけですが、1908年のT型フォードの販売の頃にはおおむね現在のガソリン自動車の原型(ドミナントデザイン)が確立されました。もちろんその後も技術革新が進むわけですが、自動車誕生当初よりも抑制的であり、低コスト化の重要度の比重が相対的に高まったことは事実でしょう。

このような傾向は完成品市場では広範に見られます(つづく)。


【参考】
『イノベーション・ダイナミクス』ジェームズ・M. アッターバック著 有斐閣
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スキーバス転落事故から考える市場経済②

前回「スキーバス転落事故から考える市場経済①」では、貸し切りバス事業では情報の完全性が満たされておらず、完全競争市場とは言えないことを取り上げました。

ではどのようにすれば情報の不完全性をなくすことができるのでしょうか。経済学では、このような情報の不完全性の問題について様々な知見を得てきました。


■政府の規制

法律や規制などでバス事業者を縛るというものです。今回のバス事故を踏まえ、国交省ではバス会社への抜き打ち検査を実施するとしています。しかしながら、現在、国交省の監査官365人で4千5百社のバス会社と12万のタクシー・トラック会社をチェックしているというのが実態で、完全なバス事業者への監視が可能なのか大いに疑問です。
よって法律や行政指導で縛っても監視できない以上は違反を繰り返す事業者は絶えないでしょう。


■第三者の介入

格付機関や情報誌などでバス事業者の評価をし、悪質な業者を公表するというものです。ただし場合によってはバス事業者との係争が生じる可能性があります。格付機関や情報誌の能力的な信頼性の問題もあるでしょう。

そうなるとやはり政府の役割が重要になります。国交省は事故以前に今回のバス会社を行政処分としており公表しています(国交省の「国土交通省ネガティブ情報等検索サイト」で行政処分が公表されているバス事業者を使った旅行会社の責任は重いでしょう)が、それをもう少しバス利用者の目にも止まりやすいものとする余地はあるかもしれません。

たとえばバスを手配する旅行会社側にバス会社名をパンフレットなどに目立つ形で記載させる(行政処分を受けているようならその旨を記載する)といったことです。

日本バス協会の加盟事業者であれば「貸切バス事業者安全性評価認定制度」というものがあり、星マークで安全性がランクづけされるという制度があります。しかし事故を起こしたバス会社は加盟事業者ではありませんでしたし、たとえ加盟事業者であっても注意してランクを確認するバス利用者はあまり多くはないでしょう。

事業者の評価ということでは、アマゾンの星マークのカスタマーレビューのように、ネット上で利用者の評価を募るということもありますが、如何せんバスの事故は滅多に起きませんから適用することは難しいでしょう。


■シグナリング

もしかしたら規制や第三者の介入がなくても市場は上手く機能するようになるかもしれません。その理由は市場参加者のシグナリング機能が働くからというものです。

シグナリングとは、「情報を持っている主体が、持っていない主体に対し、自ら情報を伝えようとすること」です。

たとえば就活において、求職者(売り手)側が企業側(買い手)に対し、自らの経歴や保有資格、学歴などを開示することによってアピールすることが挙げられます。

今回の事故で利用者側の関心は高まるでしょうから、問題のない旅行会社やバス事業者は、自発的に運営内容を公表するようになるでしょう。そうなると安全性をアピールした差別化が可能となり、低価格競争から脱出することができるかもしれません(本来、安全性は最低条件であるので皮肉なことではありますが)。

しっかりと安全面の費用をかけた事業者はそれだけ料金は割高になりますが、「料金割高=安全面問題なし」「料金割安=安全面で問題あり」という価格の品質バロメーター機能が働いて、悪質な事業者は淘汰されることになるかもしれません。もちろん自発的に運営内容を公表しない旅行会社やバス事業者は淘汰されることが予想されます。


■いずれにせよ経済学の知見を活かすべき
 
今回のような衝撃的な事故が起きると、どうしても「規制緩和が悪い」「市場経済が悪い」といった浅薄な議論になりがちですが、たいていの場合は「市場が悪い」のではなく「市場が上手く機能していないことが悪い」のです。「バス会社をもっと厳しく監査すべきだ」などというほとんど精神論に近い対策を主張するよりも、本来の市場経済の持つ力が十分に発揮できるような環境を整備することが重要でしょう。

スキーバス転落事故から考える市場経済①

15日、長野県軽井沢町でスキーバス転落事故が起き、連日報道が繰り返されています。バスの整備不良説も濃厚ですが、これまでの大方の見方は、バス会社の杜撰な管理体制にツアー会社のチェックの甘さ、そしてその原因はバス事業の規制緩和による競争の激化、バスドライバーの人手不足によるものであるとするのが多いようです。


貸し切りバス事業の規制緩和

貸し切りバス事業は、各地域での需給調整のため以前は免許制でしたが、規制緩和で2000年からは条件を満たせば営業できる許可制となり、新規参入が進みました。1999年度に2294社であった民間事業者数は、2013年度に4486社とほぼ倍増しています。

こうした競争の加熱に加え、近年では外国人旅行者の急増を受けてバスのドライバーが不足しており、今回のように不慣れなドライバーであっても採用せざるを得ないといった事情があったことは事実でしょう。


規制緩和は失敗だった!?

こうなると必ず出てくるのは、「規制緩和したから貸し切りバスの事故が増える」という「規制緩和が諸悪の根源論」です。

では規制緩和によって本当に貸し切りバスの事故率は増加しているのでしょうか。国交省の資料を見ると、「億キロメートル当たり事故件数」は、規制緩和後も8~9件程度で推移しており、実はほとんど変わっていません。このことはほとんど報道されていないようです。

そもそも規制緩和は、自由な市場参入を促し、競争によってサービスの質の向上や低料金化を図ることで消費者の便益(余剰)を高めるというものです。端的に言えば「市場の自由化」です。その過程において、既存の事業者に不利益が生じたり、何らかの事故・不祥事が生じたりするので、必ず規制緩和に反対する声が生じることになります。


市場経済の前提

経済学では、「完全競争市場において社会的総余剰(売り手・買い手を含めた社会全体の便益)が最大化する」としています。完全競争市場とは次の4つを満たす市場のことを言います。

<完全競争市場の条件>
① 売り手、買い手ともに多数存在(その1つ1つは市場全体で言えば極めて小さい存在であり、その行動は他にまったく影響を与えない)
② 商品は同質であり代替可能(企業の価格支配力なし)
③ 市場への参入・退出は自由
④ 情報の完全性が成立(売り手、買い手とも価格・品質情報などをよく知っている)


上の4つの条件を満たさない場合は市場は上手くワークしないことになります。


市場条件をバス事業に当てはめてみると…

では貸し切りバス事業は完全競争市場と言えるのでしょうか。①~③の条件は満たすと考えてよいでしょう。

しかしながら④については、とても満たしているとは言えません。バスの乗客(場合によっては発注する旅行会社)はバス事業者についてほとんど何も知らないでしょう。

市場の失敗(市場経済が上手く機能しない)のケースとしては、独占や寡占、格差拡大などが挙げられますが、私自身は「情報の完全性を満たしていないこと」が最もケースとしては多いのではないかと考えています。

情報の完全性を満たしていないと売り手側は質の悪いものであってもよく見せよう(場合によっては高く吹っかけよう)とするし、買い手側は騙されたり、場合によっては不安から購入を控えようとしたりするかもしれません。
(つづく)


【参考】
高橋洋一「ニュースの深層」スキーバス転落事故はどうすれば防げたのか?http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47417

経営戦略におけるいろいろなジレンマ②(オープン・アーキテクチャ戦略:後編)

前回「経営戦略におけるいろいろなジレンマ②」で、オープン・アーキテクチャ戦略とは、予め独立性の高いモジュールに分解し、モジュール間のインターフェースを社会的にオープンにする戦略であり、ハイテク分野で採用される傾向があることについて触れました。

オープン・アーキテクチャ戦略には幅広い協働を促すという効果があるものの、その一方で完成品メーカーの収益性を圧迫するという副作用が生じる場合があります。今回もパソコン市場を例に考えていきましょう。


■オープン・アーキテクチャ戦略の落とし穴

アップルやインテルなどのモジュール・メーカーは、その後、IBM以外のパソコンメーカーにも採用されることで急速に事業を拡大し、業界内での影響力を増していきました。言い換えればモジュールはどの企業でも調達できます。

さらにどのように各モジュールを完成品に組み立てるのかのノウハウ・設計図(システム統合技術、リファレンスデザイン)もモジュール・メーカーを通じて販売・公開されています。つまりどのような企業でも組み立て可能で(注)、その結果、市場への参入が激化することになりました。

一方、力をつけた一部の有力なモジュール・メーカーは、完成品メーカーよりも力関係で上になり、高めの価格を完成品メーカーに請求することになります。このことと市場への参入激化が合わさって完成品メーカーの収益は急速に悪化することになります。


■オープン・アーキテクチャ戦略のジレンマ

IBMがパソコン事業をレノボに売却したことが典型的であるように、価格競争力で劣る多くの日本・米国メーカーのパソコン事業は不採算化しており、同様の構造が見られるデジタル家電・デジタルカメラ分野でも日本メーカーの撤退が相次いでいます。

早期に高付加価値の製品を開発するために、完成品メーカーはオープン・アーキテクチャ戦略を採用するしかありません。前回「経営戦略におけるいろいろなジレンマ①」で見たVTRでのデファクト・スタンダード競争においても、クローズド・ポリシーを採ったソニーに対し、オープンポリシーを採った日本ビクターが勝利したことも同様の例です。

しかしその一方、採用しても「庇を貸して母屋を取られる」で収益基盤が確保できないというジレンマが生じることになります。
 

注:
完成品メーカーは、単にモジュールを組み立てるだけの存在にすぎず、セットメーカーとかアセンブラーと呼ばれることが多いです。

【参考】
『MOT“技術経営”入門』延岡健太郎著 日本経済新聞社

経営戦略におけるいろいろなジレンマ②(オープン・アーキテクチャ戦略:前編)

ハイテク系の完成品メーカーの戦略は、オープン・アーキテクチャ戦略が基本です。これは様々な企業を巻き込み連携を図ることで、高付加価値化を早期に実現しようというものです。しかしながらオープン・アーキテクチャ戦略もやがては完成品メーカーの首を絞めかねないことになります。


■オープン・アーキテクチャ戦略とは

オープン・アーキテクチャ戦略とは、本来、複雑な構造を持つ製品やビジネスプロセスを、ある設計思想(アーキテクチャ)に基づいて予め独立性の高い単位(モジュール)に分解し、モジュール間のインターフェース(要はモジュール間のつなぎ目)を社会的にオープンにすることで、多様な主体が情報を統合させることで付加価値の増大を図る戦略のことです。

少しややこしいのでIBMのパソコン開発を例にしてみましょう。1980年前後、パソコン市場で完全にアップルに出遅れたIBMは、1年以内でのパソコンの開発を余儀なくされました。

当然ながらすべてを自社で開発することは困難で、全体構造のデザインに注力しそれを公開することで、構成する多くのモジュールについてはモジュール・メーカーに開発を委託することにしました。

予め各モジュールは独立性が保たれている(相互干渉しない)ので、各モジュール・メーカーはそれぞれ専門とするモジュールの開発に特化することができます。たとえばOSはマイクロソフト、CPUはインテルといった具合です。その結果、IBMは早期に製品開発に成功し、オープンポリシーの下でIBM規格はパソコン市場でのデファクト・スタンダードを確立するに至りました。

このように予め分業体制を定めておき全体構造をオープンにすることで、多様なモジュール・メーカーの参加を促し、分業による高付加価値化を図ることができるので、一般的に技術革新が激しいハイテク製品になるほどオープン・アーキテクチャ戦略が取られることになります。デジタル家電やデジタルカメラ、携帯電話などがまさにそうですし、自動車についても今後ハイテク化が進むことでオープン・アーキテクチャ化が進む可能性があります。(つづく)


【参考】
『オープン・アーキテクチャ戦略』国領二郎著 ダイヤモンド社
『MOT“技術経営”入門』延岡健太郎著 日本経済新聞社

経営戦略におけるいろいろなジレンマ①(デファクト・スタンダード競争)

短期的には合理的な選択をしたにもかかわらず、結果的には思わぬ落とし穴にはまってしまうようなことは経営戦略にもあります。前回見た「共有地の悲劇」と「囚人のジレンマ」と同様、各プレイヤーは「その選択をすることで結局は損をするかもしれないことを分かっていながらも選択せざるをえない」ところにジレンマがあります。
今回から複数回にかけて経営戦略におけるいろいろなジレンマについて見ていきましょう。


■デファクト・スタンダードとは

デファクト・スタンダード(以下、デファクト)とは、「事実上の業界標準規格」のことで、市場での競争の結果によって選ばれます。一方、ある認定機関がお墨付きを与えることで標準となった企画をデジュリ・スタンダードと言います。

デファクトをめぐる競争は、次世代型の技術が登場する際には必ずと言ってよいほど生じます。代表例としては、家庭用VTR(VHS対ベータ)、パソコンのOS(ウィンドウズ対マッキントッシュ)、DVD(ブルーレイ対HD-DVD)などがあります。それぞれ前者が勝者です。


■デファクトを取るための要件

自社の開発技術がデファクトを取れるかどうかは企業にとっては死活問題です。何せ何十年もかけて数百億円を投じて開発したにもかかわらず、デファクトを取れなければ、ほとんど誰も自社製品を買ってくれなくなり、それまでの投資を回収できないことになるからです。

ではデファクトを取るためには何が必要でしょうか。まずはとにかく早期に市場シェアで優位に立つことです。そのためには自社の技術をできるだけ多くのメーカーに採用してもらう必要があります(ファミリー企業づくり)。

たとえば技術供与やOEM供給(相手先ブランドでの生産)を行うことです。たとえば家庭用VTRにおいても、ベータがソニー単独であったのに対し、VHSは日本ビクターが当時の松下電器産業らを巻き込んだことにより競争を制しました(注)。


■デファクトを取っても儲からない

しかしながら自社規格陣営に多くの企業を招き入れてしまった結果、デファクト確立後も自陣営内で激しい競争が展開されることになります。たとえばブルーレイはデファクトを取ったにもかかわらず、儲けている企業は数少ないでしょう。まさに「庇を貸して母屋を取られる」ことになります。

デファクトを取ることは必要条件ではあるが、儲けるための十分条件とはならないところにジレンマがあります。


注:
VHS規格より小型で画質が良いベータ規格は放送業務用分野では標準規格となった。


【参考】
『デファクト・スタンダードの競争戦略』山田英夫著 白桃書房

「共有地の悲劇」と「囚人のジレンマ」

合理的な行動の結果が必ずしもよい結果を生まない現象を表すものとして、共有地の悲劇と囚人のジレンマがあります。もっとも根は同じで、端的には自分の利益ばかり考えていると結果的に損をするよということです。ともにゲーム理論(ミクロ経済)で用いられる用語です。


■共有地の悲劇

共有地の悲劇とは、多数者が利用できる共有資源が乱獲されることによって資源の枯渇を招いてしまうという現象のことです。

たとえば牧畜を営んでいる村共有の牧草地を考えてみます。村人にとって牛を増やせばそれだけ収入が増加します。自分の牛を増やさないと他の村人が牛を増やし、その結果、自分が利用できる牧草が減少することになります。この場合、自分の牛を増やして共有地の牧草をできるだけ多く食べさせることが合理的です。その結果、誰もが牛の数を増やし続け、共有資源である牧草地は荒廃することになります。魚や鉱物など天然資源の乱獲で多く見られますね。


■囚人のジレンマ

囚人のジレンマとは、協力し合う方がお互いに得をするにもかかわらず、協力し合わない(当面の自分の利得の最大化のみを図る)ことで、結果的にそれぞれ低い利得しか得られない現象のことです。たとえば次のようなケースです。


・共同で犯罪を行ったと思われる囚人A、Bがそれぞれ独房に収監されています。

・2人とも黙秘したら、2人とも懲役2年。

・司法取引により囚人Aか囚人Bのいずれかが自白したら、自白した方は無罪になるが、黙秘した方は懲役10年。

・囚人A・Bともに自白したら、懲役5年。

             図2



囚人Aの立場で考えてみます。仮に囚人Bが黙秘した場合、囚人Aは自白したほうが刑期が短くなる(2年)し、囚人Bが自白した場合も囚人Aは自白したほうが刑期が短くなります(5年)ので、囚人Bがどうしようと自白することになります。囚人Bもまったく同じ理由で自白を選択します。

その結果、囚人A・Bともに自白を選ぶことになりそれぞれ刑期は5年になります。しかしながら収監前に互いに黙秘し合うことを約束しそのとおりにすれば(協調)、互いに刑期は2年になったはずです。

それぞれが非協調的に自分の刑期を短くしようとすると(これ自体は合理的な行動ではある)、非合理的な結果を招いてしまうのです。囚人のジレンマについては、また回を改めて取り上げたいと思います。

【参考】
『戦略的思考をどう実践するか エール大学式ゲーム理論の活用法』A・ディキシット、B・ネイルバフ著 CCCメディアハウス

 「横並び意識」と「判官びいき」

今年の最大の政治的イベントは、国内で言えば夏に行われる参院選でしょう。野党側の体たらくもあり大方の予想は自民圧勝で、場合によっては衆参ダブル選もありうるとの報道が連日紙面を賑わせています。

さて以前より選挙の事前予想が実際の投票行動(選挙結果)に影響を与えることが指摘されており、識者によっては選挙の事前調査を報道すべきではないとの主張も見られます。

実際の投票行動については、バンドワゴン効果とアンダードッグ効果の2つがあります。バンドワゴン効果は、もともと経済学でいうところの外部性(市場を介さずに他の経済主体に影響を与えること)に関する用語です。


■バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは、「ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなること」です。バンドワゴンとは、パレードの先頭の山車のことで、人々がそれに引きずられていく様を語源としています。つまり「横並び意識」ということです。

選挙について言えば、事前予想である候補が優勢であることが伝えられると、それまで態度を決めかねていた人もその候補に投票し、その結果、その候補が大勝するということです。国政選挙になると、思わぬ形で与党を大勝させてしまうといったケースがありえます。

他に「他社が中国に進出するから我が社も進出する」「他社がカンパニー制を導入したから我が社も導入する」「一番売れている機種を買う」といったこともバンドワゴン効果の例です。


■アンダードッグ効果

アンダードッグ(負け犬)効果とは、「判官びいき」のことです。選挙について言えば、事前予想である候補が劣勢であることが伝えられると、それまで態度を決めかねていた人がその候補に同情し、その結果、その候補の得票が伸びる(場合によっては逆転勝利する)ということです。


■「横並び意識」と「判官びいき」のどちらが勝つか

バンドワゴン効果とアンダードッグ効果はまったく逆の現象であり、どちらが大きく作用するかはわかりません。日本はアンダードッグ効果のほうが大きいとする向きもあるようですが、横並び意識も強いでしょうし、はっきりとした統計結果はありません。

これまでも事前予想を覆すような結果となった例は数多くあります。たとえば昨年夏のギリシャの国民投票では、ユーロ側の緊縮案受け入れ賛成派が優勢の予想に反し、大差で反対派が勝利しました。これはアンダードッグ効果が働いたのかもしれません。

一方、昨年11月22日に投票が行われた大阪ダブル選挙では、府知事選は予想どおり維新の松井一郎氏が圧勝、市長選では事前では有利であった柳本氏を抑え吉村洋文氏が圧勝でした。府知事選ではバンドワゴン効果が市長選ではアンダードッグ効果が働いた結果かもしれません。


■結局は1人1人の判断が大事

バンドワゴン効果もアンダードッグ効果も一種の群集行動です。このブログでも「集団の智恵を引き出すための前提条件」で取り上げましたが、適切な投票結果を導くためには、投票参加者の独立性(集団のメンバーは他者の考えに左右されない)が求められます。

そのためにはそれぞれが十分な知識を持って政策を判断する必要があります。有権者側も「難しくてよく分からない」「政府は説明不足だ」と言っているだけではダメでしょう。

実現しない未来(予言の自己破壊)

■予想は裏切られる

今回は「行為の意図せざる結果」のもう片方、自己破壊的予言について取り上げましょう。自己破壊的予言は「予言がなされることで、予言がなされなかったら辿ったであろうコースから人間行動を外れさせ、その結果、予言の真実さが証明されなくなる現象」のことです。

たとえば年初に専門家が「今年は農産物が過剰になる」と予想すると、農家側では値崩れを恐れて減産するようになり、その結果、農産物の過剰状態が実現しなくなるといったケースです。

またマルクスは、資本家の搾取により労働者階級が窮乏化するため社会主義革命が実現するとしましたが、労働者保護の制度が整備されることで、西側諸国では革命が回避されたというのもこのケースでしょう。


■実現しなかった食料危機

1960年代末に「人口爆弾」という本がベストセラーになりました。これは「このままのペースで人口が増加すると1970年代には世界的に飢饉となり、数億人が餓死するだろう」というものです。確かに実際1961年から2000年にかけて世界の人口は2倍になったわけですから人口爆発による飢饉は現実味があり、1980年代に至るまで本気で人口抑制を主張する知識人が数多くいました。

しかしながらその後の品種改良や農業技術の劇的な改善(緑の革命)により食糧増産が実現し、少なくとも世界規模での飢饉は発生していません。これも将来の飢饉が迫る中でその回避にむけたイノベーションが実現したという解釈では自己破壊的予言の例と言えるかもしれません。


■資源危機は回避できるか?

石油危機も同じような話です。1970年代末、石油は1980年代には完全に不足し、2000年頃までに枯渇するだろうというのが専門家の一般的なコンセンサスでした。しかしながら省エネルギー化、代替エネルギーの開発、新たな油田の開発などにより、少なくとも当時の予測より石油枯渇のタイミングは後ずれしています。

人間の歴史は愚行の繰り返しですが、それでも少しずつ進歩しています。特にテクノロジー面では飛躍的な進歩を遂げており、今後も大いに飛躍するでしょう。地球温暖化についてはあまり知識がないので言及しませんが、これまで同様、技術の力で克服できるのではと私は期待しています。


■予想に基づいて行動すると当てが外れることも


これまで見てきたのは「予想を聞いてそれを回避するために人々が行動する結果、予想が実現しなくなる」というケースですが、「人々が予言の内容を信じて行動するために、かえって予言が外れる」ケースもあります。たとえば穴場情報がそうです。「A店は大人の隠れ家的な存在である」という情報がマスメディアによって流されると、あれよあれよと人が押し寄せて、もはや隠れ家ではなくなるといったケースです。


【参考】
「悪循環の現象学」長谷正人著 ハーベスト社
「専門家の予測はサルにも劣る」ダン・ガードナー著 飛鳥新社

不安は実現する②(経済は期待で動く)

■デフレは人々の合理的な選択で加速する
 
日本は1997年の消費税5%への引き上げ以来、本格的なデフレ経済に突入しました。デフレについては以前このブログでも取り上げましたが、要は「諸々のモノの値段が下がり続けること」です。よく「デフレ=物価が下がること」と単純化して説明されることがあるのですが、これは誤りです。経済学では、ある水準までモノの値段が下がっても、それによって需要が増えそのうち価格が上がるので問題視しません。「下がり続けること」が問題なのです。

さて「景気は気から」とはよく言いますが、「デフレ(インフレ)は期待から」と言うこともできます。経済学では「期待」とは、「人々の予想・予測」を指します。

人々が今後も物価が下落すると予想したとしましょう(デフレ期待)。今より将来の方が価格が下がると考えているわけですから、今モノを買うことは控えるはずです。そうなると本当に物価は下がることになります。そんなことは考えていないという方は、耐久消費財(家とか家電とか)をイメージしてみてください。マンションの価格が下がることが予想されるのであれば、誰も今買おうとは思わないはずです。これは合理的な選択です。

いずれにせよモノの値段が下がると、企業の収益は下がり、投資や賃金は減り、株価などの資産価格は下がり、その結果(需要が減少するので)モノの値段がもっと下がるというサイクルを続けるという悪循環(デフレ・スパイラル)に陥ります。これは自己成就的予言(デフレを予想するとデフレはもっとひどくなる)の例と言えます。


■悪循環を断ち切るためには
 
経済政策については財政政策と金融政策の2つがありますが、財政政策を実施してもデフレ脱却に効果がなかったわけなので、それまでまともに行ってこなかった金融政策を実施することになります。

2013年度4月からの量的・質的金融緩和は、インフレ期待を高めることで、デフレスパイラルを逆回転させるための政策です。お金を増やせばモノとお金の関係で言えば、相対的にモノが不足します。相対的に不足するものは価格が上がるのでモノの値段が上がる(インフレ期待が高まる)ことになります。

このように悪循環を断ち切るためには、その循環の外から何らかの圧力を加える必要があります。

不安は実現する①(予言の自己実現)

今回から複数回にわたり「なぜ予想どおりにいかないのか」について考えてみたいと思います。

■ヨーロッパの難民問題

ドイツでは大晦日から元旦にかけてケルン駅周辺でアラブ・北アフリカ系の難民・移民による集団暴行・窃盗が発生し、被害は500件以上にものぼります。これを受けて難民・移民の排斥運動が高まり、ヨーロッパ各国で国論を二分する事態が生じています。


■行為の意図せざる結果

「行為の意図せざる結果」とは、「ある行為の結果は予測できない」ということではなく、「行為自体がその行為の意図の達成を拒む」というものです。これには自己成就的予言と自己破壊的予言があります。

自己成就的予言とは、「最初の誤った状況の規定が新しい行動を呼び起こし、その行動が当初の誤った考えを真実なものとする」現象のことです。一方、自己破壊的予言とは、「予言がなされることで、予言がなされなかったら辿ったであろうコースから人間行動を外れさせ、その結果、予言の真実さが証明されなくなる」現象のことです。今回は、自己成就的予言について考えてみましょう。


■経営不安が広まると経営破綻する

たとえばA銀行はそのうち破綻するという風説がまかれたとします。たとえそれが根も葉もない噂であっても、人々は預金引き出しに殺到することになり、A銀行は支払い停止に追い込まれ本当に破綻することになります。

これが現実に起こったのが、1927年の昭和金融恐慌です。これは資金調達の目処がついていた東京渡辺銀行について、当時の片岡蔵相が国会で「東京渡辺銀行は破綻した」と発言してしまったために、その後取り付け騒ぎが起き、実際に破綻してしまったというものです。


■偏見がマイノリティを暴発させる

たとえばヨーロッパの人々がイスラム難民に対し「何をしでかすか分からない」といった偏見を持ったとします。そうなるとイスラム難民は社会から排除され、不満から本当に暴発するかもしれません。今回のケルンの件はともかくとして、結局はこのことがヨーロッパの移民問題を複雑化させることの要因だと思われます。


■人々の合理的な行動が思わぬ結果をもたらす

予言が自己実現するのは、「人々がある事態を回避しよう(意図)として、逆にその回避行動(行為)によって回避すべき事態を起こしてしまうから」と捉えることができます。銀行の例で言えば、人々が預金を確保するために取り付け騒ぎを起こし、結局は銀行が破綻して預金を確保できなくなるということです。震災後の飲料や電池などの買い占めも同じです。

単なるパニックということで片付けるのは単純で、人々のある意味合理的な行動(預金を守りたい、治安を確保したい)がもたらす結果であるという点に注目すべきです。

【参考】
「悪循環の現象学」長谷正人著 ハーベスト社

相関関係と因果関係⑦(ビジョンに共鳴していると社内で顔がきく?)

今回は経営について次のケースを考えてみましょう。


Q1:
A社では最近、従業員に対して「ビジョン共鳴度サーベイ」を行いました。その結果、A社のビジョンに共鳴している人材ほど、社内の人脈が広い傾向にあることが判明しました。

A社はこの結果から、「ビジョンに共鳴している人材ほど、ネットワーキングに熱心である」という結論を導き出しました。

さて、この結論は妥当でしょうか?



Q2:
企業の海外進出には、「独自資本でまったく新しい現地企業を設立する」と「現地企業を買収する(あるいは合弁企業を立ち上げる)」の2つの選択肢があります。

それぞれの場合の利益率について多くのデータを確かめたところ、独自資本での進出のほうが利益率が高いことが分かりました。

さて、あなたがコンサルタントなら、海外進出を検討している経営者に独自資本での進出を薦めるでしょうか?



今回も「他の原因の排除(XがYの原因と考えられ、さらにX以外にYの原因を合理的に説明できるものが何もない場合にのみ、XがYの原因と認められる)」の例です。

A1:
社内人脈は社歴が長い人や上位者であるほど広いのではないでしょうか。この場合、「ビジョンと社内人脈の関係」のほかに、「社歴と社内人脈との関係」「職階と社内人脈との関係」なども調査した上で、もっとも社内人脈の広さと相関が強いものに着目すべきでしょう。

A2:
「独自資本か買収か」は単に手段の話で、その決定に至るなんらかの理由があるはずです。たとえば独自の技術的な強みを持っているのであれば、海外進出にあたっても、技術漏洩の可能性を回避するために独自資本を選択するのではないでしょうか。つまり利益率に影響を与えるのは、「独自資本か買収か」ではなく、「独自の強みかどうか」ということです。

実は1990年代末までは、過去のデータから「海外進出は独自資本のほうが望ましい」とされてきました。これが現ミネソタ大学のシャイバー教授の論文によってひっくりかえってしまったのです。


このように経営や経済についてデータを使ってさもこれが結論だと主張している場合でも、よくよく考えると時間的順序関係が前後していたり(原因と結果の関係が逆さま)、他の原因について考慮していなかったりといったケースはかなり見られます。まずは疑ってみるという姿勢が求められるでしょう。

【参考】
『改訂3版 グロービスMBAクリティカル・シンキング』グロービス経営大学院著 ダイヤモンド社
『世界の経営学者はいま何を考えているのか』入山章栄著 英治出版

相関関係と因果関係⑥(畳の数が多いと子供が増える?)

前回は広告について見ましたが、今回は新聞について見てみましょう。古い記事(1994年4月8日)ですが、次の記事を読んで批評してみてください。


畳多いほど子供増加/円滑な住宅供給訴え/子育て負担の軽減に道

畳の数が多いほど子供の数も多い-。8日に公表された平成五年版厚生白書は、こんな分析結果を基に、子供を増やすには「公共住宅などの円滑な供給が必要」と訴えている。/(中略)1人当たりの畳の数(住宅の広さを畳に換算)が12.9畳とトップの富山は、1世帯(世帯主が49歳以下)当たりの子供(未成年)の数も2.3人と最も多かった。/全国的にもある程度の相関が見られ、例えば(中略)。/厚生省の出生動向基本調査(平成4年)でも、人口100万人以上の大都市では子供を持とうとしない理由として、24,5%が「家が狭い」を挙げている。
(以下、各都道府県の子供の数と畳数のデータが添付)


さて記事の趣旨は、「住宅が広いほど子供を産むようになるので、子供の数を増やすためには住宅の面積を広げなくてはならない」ということでしょう。だったら畳数ではなく単に平米でよいのではないかと突っ込みたくなりますが、それはおいておくとして次のような批評が可能です。

畳が多い(住宅が広い)のは地方であり、地方の方が(文化的な理由や主婦が多いといった理由から)大都市より出生率が高いのは自然である。つまり地方県だから住宅が広く、かつ子供が多いのであって、子供が多い理由は地方だということである。

また単に子供が多くなったから引っ越して広い家に住むようになったのであって、家が広いから子供が多くなったわけではない。

前者は他の原因の排除に関する錯誤で、後者は時間的順序関係に関する錯誤です。少し考えればおかしいなとわかる話ですが、信憑性がある(と思われている)新聞やテレビでの報道でデータを用いて説明されるとついつい信じてしまうものです。

【参考】
『「社会調査」のウソ』谷岡一郎著 文藝春秋社

相関関係と因果関係⑤(日経を読むと内定を取りやすい?)

広告をよく見ると、意図的なのかどうかはともかく、おかしなデータを根拠に用いたものが多く見られます。

Q1:
次の広告について、批評をしてください。


日経読者は内定率が高い。

就職活動中の学生にアンケートを行った結果、明らかになったことがあります。

日経購読者の内定獲得率   73.2%
日経非購読者の内定獲得率  51.62%

日経を読んでいる学生は、読んでいない学生に比べて内定獲得率が20ポイントも高いということです。
これは偶然ではありません。なぜなら、日本経済新聞には読めば読むほど就職活動に役に立つ情報、社会人として身に付けなければならない情報が豊富に詰め込まれているからです。



A1:
これは2003年に実際にあった広告です。前回同様、「他の原因の排除(XがYの原因と考えられ、さらにX以外にYの原因を合理的に説明できるものが何もない場合にのみ、XがYの原因と認められる)」の例です。

広告の趣旨は、「日経購読者はそうでない人と比べて内定率が高い」ということですが、これについては、次のような反論が可能です。

・自宅学生は実家が取っている新聞を読む可能性が高い。日経を購読している親は、傾向としとして比較的社会的地位が高いだろうし、教育熱心で、もしかしたら子の就職にあたってコネを効かせやすい可能性がある。よって日経を読んでいる学生の内定率が高いのではなく、学生の教育水準か、あるいは親のコネが内定率の決定要因ではないか。

・そもそも日経非購読者とは何か。おそらく他紙購読者と新聞非購読者であろう。そもそも新聞を読まない学生であれば他の文字媒体も読まない可能性があり、そうであれば内定率が低くてもしかたがないだろう。他紙購読者との比較では有意な差が確認できず、よって新聞非購読者も加えたのではないかと疑いたくなる。

【参考】
『データはウソをつく』谷岡一郎著 筑摩書房

相関関係と因果関係④(アイスが売れると犯罪が増える?)

次に挙げる3つは、正の相関関係が認められます。

・「人の体重」と「その人の語彙の豊富さ」
 ⇒体重が重い人ほど語彙が豊富である。

・小学校高学年の児童における「国語の学力テストの得点」と「生徒の髪の毛の長さ」
 ⇒国語の学力テストの得点が良い生徒ほど生徒の髪の毛が長い。

・「アイスクリームの1日の売上」と「犯罪発生率」
 ⇒アイスクリームの売上が多い日ほど犯罪発生率が高い。

では因果関係が成立しているかどうか判断してください。




今回は因果関係の成立要件の1つである「他の原因の排除(XがYの原因と考えられ、さらにX以外にYの原因を合理的に説明できるものが何もない場合にのみ、XがYの原因と認められる)」の例です。

エクセル操作に多少慣れていて相関係数を出せるようになると、相関関係があるものの間に勝手な因果関係を構築し始めるということが見られます。上記のケースで言えば次のような因果関係です。

・体重が重い人は沢山食べる人である。食べるものによっては語彙力が高まる成分があるのではないか。
・髪の毛が伸びるための成分と国語力のための成分は同じなのではないか。
・アイスクリームの中には犯罪に駆り立てる(より衝動的にさせる)成分が含まれているのではないか。

いずれもそんなことはないだろうというのは容易に想像できます。解答は次のとおりです。

・「人の体重」と「その人の語彙の豊富さ」
 ⇒成人になれば(より体重が重くなる)語彙が豊富になるのであって、体重が増えた
 からといって語彙が増えるわけではない。つまり因果関係で言うと語彙量の原因は
 年齢。

・小学校高学年の児童における「国語の学力テストの得点」と「生徒の髪の毛の長さ」
 ⇒小学校高学年では女子生徒(男子生徒より髪の毛が長い)のほうが国語の学力
 テストの得点が良い。つまり因果関係で言うと、国語の学力テストの点数の原因は
 女子生徒。

・「アイスクリームの1日の売上」と「犯罪発生率」
 ⇒暑い日ほどアイスクリームの売上が多くなると同時に(いらいらしてくるので)
 犯罪発生率も高くなる。つまり因果関係で言うと、犯罪発生率の原因は気温。

【参考】
『クリティカルシンキング 入門篇』E.B.ゼックミスタ、J.E.ジョンソン著 北大路書房

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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