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経営戦略におけるいろいろなジレンマ③(生産性のジレンマ:後編)

前回、「ドミナントデザイン(市場において支配的・標準的なデザイン)が確立すると、企業側の関心は大量生産による低コスト化のためのプロセス・イノベーションにシフトし、プロダクト・イノベーションは行われなくなること」を指摘しました(生産性のジレンマ)。市場は寡占化され、各企業はドミナントデザインの下で最適な生産・組織体制を確立します。

さて生産性のジレンマには、さらにもう1つのジレンマを生み出すことになります。それは確立された生産・組織体制が技術の世代交代期に足かせとなるというジレンマです。


インクリメンタル・イノベーションとラディカル・イノベーション

インクリメンタル・イノベーション(持続的イノベーション)とは、既存の技術体系の枠組み内でのイノベーションのことですが、要は改善レベルと考えて頂ければよいです。  

一方、ラディカル・イノベーション(破壊的イノベーション)とは、既存の技術体系の枠組みを超えた(既存の技術体系を破壊してしまうような)イノベーションのことです。
  

たとえばVTRに対してのDVD、スチルブカメラ(フィルムカメラ)に対してのデジタルカメラは、それぞれ旧世代技術と新世代技術は非連続の関係にあり(旧世代技術の延長に新世代技術があるわけではない)新世代技術は旧世代技術を代替してしまうものなのでラディカル・イノベーションということになります。

このような技術の世代交代は、次に挙げるように何世代にも渡ります。

<タイプライター>
手動式 ⇒ 電動式 ⇒ ワープロ ⇒パソコン

<照明>
オイルランプ ⇒ ガス灯 ⇒ 白熱電球 ⇒ 蛍光灯 ⇒ LED

<画像技術>
銀板写真 ⇒ 鉄板写真 ⇒ 湿板写真 ⇒ 乾板写真 ⇒ 巻きフィルム
⇒ 電子画像 ⇒ デジタル画像


リーダー企業はその地位ゆえに没落する?

ドミナントデザインの下で大量生産・大量販売のための生産・組織体制を確立して生き残った企業は、そのドミナントデザインが続く限りにおいては圧倒的な競争優位を持つことになります。

しかしながら既存の技術とは非連続な関係にある次世代技術(破壊的技術)が登場しそれが進化すると様相は一転し、それまでの主要企業は没落することになります。

破壊的技術はもっぱらアウトサイダーによってもたらされます。それまでの主要企業は、莫大な投資・労力を費やして既存の技術(やがて旧世代化する)に合った生産・組織体制を確立しています。よってそれを無駄にしてしまうような次世代技術(破壊的技術)にはどうしても消極的になります。

つまり確立した生産・組織体制が足かせとなってしまうのです。一方、新規参入者はそのような足かせはなく、次の市場での支配的な地位を目指してひたすら次世代技術の進化・普及に邁進します。

また本当に破壊的技術が既存技術を代替してしまうものなのかの見極めが難しいことも、それまでの主要企業が破壊的技術に取り組むことを消極的にさせます。破壊的技術のほとんどが失敗に終わりますから、事業としてのリスクは極めて高いです。破壊的技術は既存技術を駆逐して初めて破壊的技術であったことが分かるのです。

このような背景から、技術の世代交代期に主要なプレイヤーが一気に入れ替わってしまうことがしばしば見られます。複数の技術の世代交代となると、それを上手く泳ぎきれる企業はほとんどないと言えるでしょう。


【参考】
『イノベーション・ダイナミクス』ジェームズ・M. アッターバック著 有斐閣
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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