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経営戦略におけるいろいろなジレンマ④(イノベーションのジレンマ:前編)

生産性のジレンマが、技術(ドミナントデザイン)に合った生産体制を構築してしまうと、プロダクト・イノベーション(あるいはラディカル・イノベーション)が行われなくなるというジレンマでした。今回のイノベーションのジレンマは、顧客の声に耳を傾けてしまうとラディカル・イノベーションへの取り組みが行われなくなるというものです。


■価値ネットワーク

たとえば製造業の場合、原材料や部品のサプライヤー、完成品メーカー、卸売業者、小売業者といった様々な事業者の手を経て付加価値が積み重ねられた結果、最終的にユーザーの手に製品が渡ります。こうした付加価値化の一連の経路のことを価値ネットワークと言います。ポーターの言うところの価値システム(業界バリューチェーン)と似たような概念と考えてよいでしょう。

この価値システムの枠組みの中で各事業者は高付加価値化に励み、最もそれに成功した企業がリーダー企業となります。そしてリーダー企業はその地盤を強固なものとするために製品改良に励むことになります。たとえばビッグユーザー(ヘビーユーザー)からの高品質化・低価格化の要請に応えるために製品改良に励むといったことです。


■リーダーは合理的に次世代技術を無視する

ここで既存技術を代替してしまうような次世代型の技術が登場したとしましょう。世代技術が生まれた当初は既存技術よりも遥かに性能面で劣ることが一般的です。よってビッグユーザーを含むユーザーの大半は次世代技術製品を望まず、既存技術製品をより改良したものを望みます。

すでに既存技術の枠組みでの価値ネットワークに組み込まれているリーダー企業からすれば、ユーザーの大半の声に耳を傾けたほうが収益性の改善が見込まれ合理的です。よってリーダー企業は既存技術の改良に邁進することになります(インクリメンタル・イノベーション)。



■ユーザーの声に耳を傾けすぎるととんでもないことに!
 
しかしながら次世代技術が価値ネットワークを構築して、その中でやがて既存技術を上回る性能を発揮し出したらどうなるでしょうか(ラディカル・イノベーションの実現)。既存技術のリーダー企業は、次世代技術の価値ネットワークに所属していませんから、完全に次世代技術での競争で出遅れることになります。

このように技術の世代交代期には、業界の主要プレイヤーが一気に入れ替わることがあります。
「イノベーションのジレンマ」の著者であるクリステンセン(ハーバード・ビジネス・スクール教授)は、ハードディスクドライブ、プリンター、掘削機、オートバイなどを例に取り上げています。

自らの利益を高めるために既存技術に邁進するというリーダー企業の合理的な判断が、次世代技術への取り組みを消極的にさせることがイノベーションのジレンマなのです。


【参考】
『イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン著 翔泳社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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