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経営戦略におけるいろいろなジレンマ④(イノベーションのジレンマ:後編)

■リーダー企業が破壊的技術に尻込みする理由

既存技術におけるリーダー企業が次世代技術(破壊的技術)への取り組みに消極的になる理由は、次のようにまとめられます。

・破壊的技術によって、それまでに構築した生産・組織体制、あるいは現在の事業の付加価値化の源泉であるサプライヤー、流通業者、ユーザーとの関係(価値ネットーワーク)を台無しにしたくない。

・そもそも次世代技術はリスクが高く、事業規模も見通せない。よって事業規模が大きく株主などから高い成長率を期待(要求)されているリーダー企業にとっては、あまり魅力的ではない。



■どうすればイノベーション・ジレンマを回避できるか

リーダー企業の本業は、既存技術による製品(あるいはサービス)事業ですから、それを台無しにするような次世代技術(新事業)の発展をそもそも望んではないないどころか、それを潰しにかかる可能性すらあります。しかしながら次世代技術が既存技術を凌駕し、それを破壊し始める頃には、完全に手遅れになります。
 ではリーダー企業はどのように技術の世代交代を図っていくべきでしょうか。

(1)本業が健全であるうちに新事業を定期的に立ち上げる
もともと新事業(破壊的技術)はリスクが高いですから、財務的に余裕がないと無理だということです。さらに何が当たるか分からないので数を打つ必要があります。

(2)新事業は既存事業部門と分割し小さな規模で始める
 リーダー企業の主力事業部門には高い売上・利益・成長率目標が要求されます。よってリスクが高く事業規模を見通せない新事業への取り組みはどうしても忌避される傾向があります。小さい組織単位であれば、主力事業部門にとっては魅力がない程度の事業規模であっても、それを推進するだけの意義を見出すことができます。

(3)新事業に早期の成功を要求する
プレッシャーを与えることで新事業が本当に有望か、成功するためにはどうすればよいかの試行錯誤を促すということです。また新事業が早い段階で利益を上げることができれば、主力事業が傾いても致命的にはならないということです。
 ただし綿密な事業計画で縛ることは避けたほうがよいでしょう。もともと新事業は不透明性や不確実性が高いですから、柔軟性を確保することが必要です。

(4)新事業に自立性を与える
 当然ながら破壊的な新事業には既存事業とは異なるスキル・事業評価・ビジネスプロセスが求められます。新事業リーダーには十分な権限を与える必要があります。


■新事業の独立運営には注意点も…

新事業の自立性を確保するためには、地理的に既存部門から離す、別会社化するなどといった手段が考えられます。

しかし既存部門からすれば新事業は自らの存在を脅かす存在でありますから、新事業が完全に独立的に振る舞うと既存部門側が反発し、組織内で不協和が生じる可能性があります。『イノベーションのジレンマ』の著者であるクレイトン・クリステンセンは、新事業の自立性とはあくまで事業プロセスと価値基準においてであることを強調しています。

新事業には「優れたアイデア」と「実行プロセス」の2つが求められますが、後者についてはエキスパートである既存のスタッフ部門(たとえば財務・人事・マーケティング部門)の支援が不可欠でしょう。また新事業成功の暁には、その成果を既存部門にも速やかに反映させる必要があります。

こうした問題に対処するためには経営トップの役割が重要になります。まずは環境の不確実性に対応するためには新事業を展開する必要があることを組織全体に理解させること、そして新事業部門に対し既存事業部門が支援すること、両事業の成果の共有を図らせることが経営トップには求められます。


【参考】
『イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン著 翔泳社
『イノベーションへの解』クレイトン・クリステンセン/マイケル・レイナー著 翔泳社
『イノベーションを実行する』V・ゴビンダラジャン、C・トリンブル著 NTT出版

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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