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入れ替わる立証責任(STAP細胞問題)

前回「悪魔の証明」で見たように、立証責任を負う立場が議論の過程で変わる場合があります。今回はSTAP細胞問題を例に考えてみましょう。


■STAP細胞問題

先月29日に発売された小保方晴子氏の著書「あの日」が物議をかもしています。2月11日の夕方時点で、アマゾンのカスタマーレビューが413、平均で星3.6ですが、この評価がまた極端で星5つ(最高評価)が221、星1つ(最低評価)が108となっています。

まったくの個人的な印象ですが、科学者(社会学者を含む)は「そもそも論文の体をなしておらず、科学者としての常識・良識がない」とボロカス、高評価者は「小保方さん1人に責任をなすりつけて可哀想(とかげの尻尾切りだ!)」という感じでしょうか。小保方さんがさえない風貌のおじさんだったらどうだったんだろうなという気も…。

ES細胞がどのようにして混入したのかなどプロセスは永遠に謎なのでしょうが、今回はSTAP細胞問題が他の捏造問題と違ってなぜややこしくなったのかを考えてみましょう。


■再現できないのならその場で失格

自然科学の常識は、「再現ができないのなら、その論文は取り下げ」です。「STAP細胞はありま~す」と言うなら、作ってみせればいいだけで、作れなかったらおしまいという話だけでしょう。とかげの尻尾切りだとか理研の責任云々はまったく別の話で、小保方氏が(不正引用を含めて)科学者として失格だった、STAP細胞はなかったというだけのことがなぜこんなに騒ぎになるのでしょうか。


■入れ替わった議論

「悪魔の証明」で見たように、通常、ある事実が「存在する」と主張する側に立証責任があります。「存在しない」ことを証明するのはほぼ不可能だからです。よって、小保方氏が「STAP細胞はありま~す」と言うなら、作ってみせればいいだけです。

STAP細胞事件がややこしくなったのは、最初は小保方氏側にSTAP細胞がある(不正をしていない)ことを証明する義務があったはずなのに、やがて理研側に小保方氏が不正をしたことを証明する義務が負わされることになったからです。

「STAP細胞があるかないか」であれば、「STAP細胞がある(小保方氏)」と主張する側に立証責任があります。ただし理研内部での処分を決定する(刑法上の罰則を規定する)となると、理研側が不正の認定を行う必要があります。「不正があるかないか」であれば、「不正がある」と主張する方(理研)に立証責任が移ることになります。

つまり「STAP細胞があることの証明」から「不正があったことの証明」に話が入れ替わってしまい、本来、STAP細胞が再現できなかった時点で話は終わりだったはずが、不正をきちんと立証できない(プラス小保方氏の特異なキャラ)ので物議を醸すことになったのではないでしょうか。

【参考】
『科学研究とデータのからくり』谷岡一郎著 PHP研究所
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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