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健全な模倣と不健全な模倣

企業間での価格競争を回避するためには、お互い低価格にしないという同調行動を促す状況を作り出せばよいということになります。同調行動には、他社の模倣も含まれます。今回は模倣による効果について考えてみます。


■ゼロサム下での模倣は過当競争に

ゼロサムとは、全員の利得の総和が常にゼロになる状況のことで、「WIN-LOSE」、すなわち誰かが得をすれば必ず他の誰かが損をすることになります。

ゼロサムの状況では、低価格化といった相手を出し抜こうという誘因が働きますが、遅かれ早かれ他社に模倣されることになります。「出し抜く⇒模倣される」が繰り返され、過当競争になります。
 
 相手を負かす戦略+相手による模倣=双方ともに負ける結果


■プラスサム下での模倣は双方にとって得に

プラスサムとは、全体が拡大することにより、各プレイヤ-もそれぞれ得をする(WIN-WIN)という状況のことです。企業間ではどうしても競争という面が強調されますが、プラスサムである可能性についても考慮すべきでしょう。この場合、他社による模倣は双方にとって望ましい結果を生み出します。

 双方が勝つ戦略+相手による模倣=より大きな双方の勝利


■会員カードの発行

プラスサム下での模倣について、ポイント還元付きの会員カードの発行を例にしてみましょう。この場合、低価格競争を避けるばかりか、値上げを行う余地も高まります。

市場にA社とB社の2社しか存在しないとします。仮にA社が多少値上げしても、それがB社と比べてそれほどの割高ではなかったとしたら、多くの顧客はA社に留まるとします。買い手を変えることは顧客にとっても面倒ですから、このようなことは現実にもあるでしょう。またB社の顧客も同様に行動すると考えます。

ここでA社がポイント還元付きの会員カードを発行したとします。このままではB社は顧客をA社に取られてしまいますから、対抗措置として同様に会員カードを発行したとします。そうなると第一の効果として、互いに顧客を囲い込むことに成功します。何らかの形で顧客を囲い込んでしまい棲み分けができれば、価格競争は起きません。

次にA社が、B社と比べてそれほどの割高にはならない程度に値上げしたとします。ただし多くの顧客は先述の理由でA社に留まることになります。それを見たB社も同じように多少の値上げをするはずです。A社の場合と同様にB社の顧客はB社に留まるからです。そしてそれを見たA社はさらに多少の値上げを行うことが可能になります。つまり相手に顧客を取られない程度に少しずつ値上げを行っていくという余地が生まれることになります。


■「双方が勝つ戦略」を創造する

寡占市場では、会員カードの発行以外にも、何らかの形で顧客を囲い込んで棲み分けを作ってしまえば、価格競争の回避どころか値上げすら可能になる状況を作り出すことができます。「相手を負かす戦略」だけでなく「双方が勝つ戦略」を創造することで過当競争から脱する余地が生まれます。

そのためには自社だけでなく、同業他社、顧客、サプライヤーなど幅広い視野からの利害状況の分析が必要になります。

【参考】
『コーペティション経営』バリー・J. ネイルバフ、アダム・M. ブランデンバーガー著 日本経済新聞社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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