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交渉のための準備⑥(BATNA)

他に選択肢がないと追い込まれるのは、交渉時においても同じです。代替的な選択肢があるかで交渉力が決まるといっても過言ではないでしょう。

■BATNAとは

BATNAとは、「Best Altenative To a Negotiated Agreement」の略で、「交渉が決裂した時の対処策として最も良い案」のことです。

たとえば就職のためにある企業の採用面接に行き、条件面での話し合いが始まったとします。現在、失業中で他に進んでいる話もなければ、この企業が提示する条件を飲むしかないかもしれません。この場合、BATNAは存在しません。

一方、現在、勤め先があれば、そこでの労働条件を上回る条件でなければ転職しないでしょう。この場合、BATNAは現在の勤め先(での労働条件)になります。


■BATNAの意義

BATNAを起点に「交渉のための準備②(ミッションと目標の設定)」で触れたZOPA
(交渉可能価格帯)の抵抗点(交渉に当たっての最低目標)が形成されることになります。

BATNAを用意することの意義は、今の取引の価値を見極めることです。
今の取引が魅力的なものであるならば、ミッションが実現できる範囲であれば、BATANAを上回る範囲内で譲歩したとしても、適切な交渉姿勢だということになります。

ビジネスの交渉に臨むと、どうしても妥結しようというモーメンタムが働きます。しかしながら交渉の妥結はミッションの実現のための手段に過ぎません。自らのBATNAと照らし合わせて場合によっては撤退を決断することも辞さないという姿勢が望ましいです。


■BATNAは交渉にどう影響するのか?

ビジネス交渉に当たっては、自らのBATNAを相手に悟られないようにすることが必須になります。言い方を換えれば、BATNAを悟られてしまうと、相手につけ込まれることになります。反対に相手のBATNAを知ることができれば交渉を優位に進められる可能性が高くなります。

総じて言えば、「自らのBATNAはより高く、相手のBATNAがより低ければ交渉で優位に立てる」ことになります。


■BATNAがない場合はどうするか!?

まさにBATNAは交渉力の源泉ですから、必ず用意しかつ強化につとめなければなりません。しかしながら、どうしてもBATNAが用意できない場合もあるでしょう。このような場合はどのように交渉にあたればよいでしょうか。

①無理のない範囲でBATNAがあるふりをする

たとえば営業活動において他にも引き合いがあることを匂わせるといったことです。

②内部BATNA(インナーBATNA)を確立する

先の失業者の転職のケースで言えば、他の転職先を見つけることを外部BATNAとすると、自身の中で譲れない条件を想定することは内部BATNAにあたります。内部BATNAの実現を決意することで、内側から交渉力を高めるということです。

③コミットメントを表明する

コミットメントとは、「自分が将来にとる行動を表明し、それを確実に実行することを約束すること」です(注)。端的に言えば、自ら退路を断つこと(瀬戸際作戦)によって相手に対する交渉力を高めるというものです。
たとえば取引先から値下げを要求されたら「今の価格を維持できなければ今後、取引には応じられない」と言って突き返すといったことです。リスクのある手段ですが、どうしてもという場合は考えても良いかもしれません。

※注:
詳しくは「価格競争を避けるためのコミットメント①」http://bgeducation.blog.fc2.com/blog-entry-120.htmlを参照して下さい。

【参考】
『ハーバード×慶應流 交渉学入門』田村次朗著 中央公論社
『ハーバード流 最後までブレない交渉術』ウィリアム・ユーリー著 日本経済新聞社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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