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コア・コンピタンス再考①(集中と選択)

細々と続けている本ブログですが、今回で150本目に至りました。
お読み頂きました皆様には大変感謝しております。
今後とも単なる浅薄な一般論では終わらないよう励みたいと思いますので、ご一読頂きますようお願い申し上げます。

ベストケースとして取り上げられた企業が、その後に経営不振に陥ると、その経営書には読む価値がないと思ってしまうのは無理からむところです。日本語版が1995年に刊行された「コア・コンピタンス経営」(ゲイリー ハメル、C.K. プラハラード著 日本経済新聞社)もそのような書籍の1つかもしれません。
しかしながら本書の主張は普遍的であり、今でも十分に一読の価値があると思います。


■コア・コンピタンスとは

コア・コンピタンスとは、他社には提供できないような利益を顧客にもたらすことのできる、企業内部に秘められた独自のスキルや技術の集合体のことで、一般的には企業独自の中核能力と定義されています。簡単な概念図を書くと次のようになります。

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「①コア・コンピタンスをもとに製品や事業を展開し②市場から得られた成果をコア・コンピタンスにフィードバックする③その結果、強化されたコア・コンピタンスをもとに新たな製品や事業を展開する」というサイクルを繰り返すことで、企業全体でシナジー効果(相乗効果)を図ろうというものです。

「コア・コンピタンス経営」では、日本企業ではソニーの小型化技術、ホンダのエンジン技術、キヤノンの光学技術、シャープの液晶パネル技術が挙げられています。

たとえばキヤノンであれば、光学技術をもとにコピー、プリンター、カメラ、FAXなどの事業を展開していくということです。

コア・コンピタンスは、将来に向けた戦略設計図を描き、外部との連携を含めた組織全体での学習活動を行っていくことで構築・強化されます。


■「選択と集中」ではなく「集中と選択」

1990年代の終わり、バブル崩壊後の日本企業は、リストラクチャリング(事業構造の再構築)を進めました。そこで行われたのは、「選択と集中」の名の下での「儲からない事業の清算」であり、事業範囲をフォーカスするコア・コンピタンスの考え方は相性が良かったのです。

そもそも「選択」という言葉からは、切り捨てる事業を選ぶということが連想されます。よって「選択と集中」とは「まず不採算事業を切り捨て、残った事業に経営資源を集中させる(まずは選択ありき)」ということであり、まさにかつて日本企業が行ったことがこれに該当します。

しかしながら「自社の強みとなりうる核となる事業に経営資源を集中させるために、それ以外の事業をたたむ」というのが本来のコア・コンピタンスの考え方です。つまり「集中と選択(まずは集中ありき)」なのです。


「コア・コンピタンス経営」でも、まず冒頭において、短期的な視点に立った安易な事業清算や事業間の資源シフトに対して警鐘を鳴らしているのですが、皮肉にも日本企業が行ったことはコア・コンピタンス経営の曲解であり、それがその後の技術力の停滞を招いたとの指摘があります。

現在もソニーや東芝(やがてはシャープも?)などでリストラクチャリングが進められていますが、同じ轍を踏まないことを期待したいです。

世間一般では便利に使われる言葉であっても、言葉だけが一人歩きをしていて中身が空疎であったり、単なる決まり文句にすぎなかったりするものがよくあります。個人的には「シナジー」や「選択と集中」「権限委譲」「チームビルディング」といったものが浮かびますが、きちんと意味や効果を考えた上で発したいものです。
(つづく)

【参考】
『コア・コンピタンス経営』ゲイリー ハメル、C.K. プラハラード著 日本経済新聞社
『合理的なのに愚かな戦略』ルディー和子著 日本実業出版社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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