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組織の意思決定の姿(意思決定のゴミ箱モデル)①

少し前ですが、3月初めに、新国立競技場の聖火台について主催者側が検討していなかったことが発覚し、大騒ぎになりました。今回は、組織の意思決定の欠陥について考えたいと思います。


■議論が済んだような気がしていた

ご存知のとおり、新国立競技場は総工費の問題で昨年7月にザハ・ハディド案が撤回され、コンペの末、現在の設計案に落ち着いたという経緯があります。これにより五輪前の2019年ラクビーワールドカップでの使用は見送られることになりました。

白紙撤回された旧整備計画では、競技場が開閉式屋根で覆われることもあり、JSC(日本スポーツ振興センター)は競技場外に仮設することを想定していました。しかも、五輪前にラグビーの2019年ワールドカップで使用されることになっていたため、W杯後に聖火台を含めて五輪仕様に追加工事を実施する方針だったようです。

新たな整備計画は初めから五輪会場として策定されましたが、以前の設備計画での印象が残っていて、後から聖火台を設置するという認識のままだったということです。遠藤五輪相は「前計画の時(議論が)済んだような気がしていた」と振り返っています。

「関係者が誰も聖火台のことに気がつかないなんて間抜けすぎる!」という声が多いようですが、程度はともあれ同じようなエラーはどこの組織でも起きているはずです。みなさんにも「あれ、何で気づかなかったのだろう?」と思った経験が少なからずあるのではないでしょうか。


■望ましい意思決定のプロセス

理想的な意思決定のプロセスは、①意思決定の問題を認識する②意思決定の判断基準を特定する③その判断基準を比較する④選択肢(解決案)を考える⑤それぞれの案について判断基準に照らして評点をつける⑥最適な選択肢を選択するというものです(意思決定の完全合理モデル)。

つまり意思決定を、問題に始まり解決に終わるという連続的な流れと捉えるわけです。


■実際の意思決定の状況

しかしながら組織の意思決定は必ずしも上記のような連続的なプロセスを踏まえるとは限りません。たとえば次のような状況を考えてみましょう。

ある外食チェーンの部長会議で、営業成績が悪い和食店について閉店すべきかどうかが議題で取り上げられた。

営業部長は2期連続で赤字であることから「閉店すべきだ」と主張した。それに対して人事部長は「店長には若い人材を抜擢したが、時期尚早だったかもしれない。リーダーシップに問題があるのでは?」と提起した。何人かがその意見に同意したことから、その後の議論は「誰を新任の店長にすべきか」に移り、3名の店長候補が選ばれ、次回に誰を店長にするか決を採ることになった。

翌週の会議では、採用説明会のため人事部長は欠席し、代わりに前回は欠席した事業開発室長が出席した。まず司会役から前回の経緯について説明があり、予定していた新店長の採決が行われようとしていた矢先、事業開発室長が恐る恐る手を挙げ、「低価格店への業態転換をしたらどうか」と意見を述べた。低価格店舗の導入は、事業開発室長がかねてより温めていた案である。

議論は振り出しに戻り、会議は紛糾したが、次の議題の時間が迫っていることから、司会役が切り出した。「そろそろ何か決めないといけませんね。今出ているところでは低価格店への転換がいいように思いますが、決を取りましょうか?」「いいですね。ずいぶん議論をしましたし。」


上記の例から言える組織での意思決定の特徴は次のとおりです。

・議論の過程で問題そのものが変容し、その結果、判断基準や解決策が変化する。

・本来は問題が先で解決策が後という順序関係だが、個人がもともと魅力を感じていたアイデアがまずあり、その後に実現できる問題を探すといったことがある(解決策が先で問題が後)。

・意思決定の場に参加するメンバーが入れ替わったり回が改まったりすると、問題や意思決定の基準が変わってしまう。

・意思決定は必然的になされるのではなく、意思決定の機会(採決の場)に居合わせた人によって問題が認識・解釈され、その問題に関わる解決策から適当なものが選ばれる。

(つづく)

【参考】
『キャリアで語る経営組織』稲葉祐之、井上達彦、鈴木竜太、山下勝著 有斐閣

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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