fc2ブログ

人間関係モードとお金モード(社会規範と市場規範)①

あなたが義理の両親の家に夕食に招かれたとします。義理の母が自慢の腕によりをかけて申し分のない食事でもてなしてくれ、あなたは大変満足です。食後には年代物のワインを開けてくれ十分楽しんだあなたは財布に手をかけておもむろにこう切り出します。
「今晩のお義母さんが私に示してくれた愛情にいくらお支払いすればよろしいでしょうか?」あなたは真摯な態度で続ける。「8千円?いや1万円はお支払いしないと。」
あなたが義理の両親の夕食に招かれることはもうないかもしれません。


■社会規範と市場規範

私たちは2つの規範の中で暮らしています。1つは社会規範で人間関係を拠り所とし、この場合、何か経済的な見返りがなくても進んで他人に便益を図ってあげます。ちょっとした友達からの頼みごとをタダでやってあげることで人間関係が良好になり気分が良くなります。

もう1つは市場規範で価格や費用といった経済的基準を拠り所とします。支払った分に見合うものを手に入れる、あるいは提供するものに等しい対価を相手に求めます。

社会規範と市場規範は両立せず、明確に区別する必要があります。社会規範が優先される中で市場規範を持ち出すと社会規範が崩されますし、市場規範が優先される中では社会規範を持ち出すことはできません。

冒頭の例は、前者に該当します。後者の例で言えば、本来は対価が生じるべきである確定申告について、友人の税理士にタダでやってくれと社会規範に訴えて頼むことはNGでしょう。


■わずかな報酬より社会規範に訴えたほうがはるかによい

行動経済学者のダン・アリエリーらは、次のような実験を行いました。

コンピューターの画面の左側に円が映し出され、右側に四角が表示される。円を四角までドラッグするが、ドラッグし終わると再び左側に円が表示され、右側の四角にドラッグする。5分間これをひたすら実験協力者に続けされる。実験協力者は3つのグループに分けられ、それぞれ報酬が異なる。

グループA:実験の前に報酬として5ドルを支払った。
グループB:実験の前に報酬として50セントを支払った。
グループC:報酬は支払わず、ただ実験に協力してくれるよう頼んだ。

結果は、グループAが平均で159個、グループBが平均で101個の円をドラッグし、グループCは平均で168個の円をドラッグした。


実験の結果から言えることは、報酬が高いほうがやる気(生産性)が高まること、そして何よりもわずかな報酬より社会的規範に訴えたほうがはるかにやる気が高まるということです。

以前、全米退職者協会が弁護士たちに、1時間あたり30ドルの低価格で困窮している失業者たちの相談にのってくれないかという依頼をしたところ、引き受けてはいませんでした。一方、ボランティア(無料)で引き受けてくれないかと依頼したところ、多数の弁護士が引き受けたといいます。

市場規範では割に合わないと思っても、社会規範に照らし合わせれば引き受けることがあるということです。
(つづく)

【参考】
『予想どおりに不合理』ダン・アリエリー著 早川書房


スポンサーサイト



プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR