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人間関係モードとお金モード(社会規範と市場規範)②

■罰金制にするとむしろ違反が多くなる?

市場規範と社会規範との関係については、次のような面白い実験があります。

あるイスラエルの託児所では、時間通り母親が子供を迎えに来ないという問題を抱えていた。そこで遅れてくる母親たちに罰金を科すことにした。罰金を取られるのを嫌がって時間通りに迎えに来るだろうと考えたのである。
しかしながら結果は逆でむしろ母親が遅れてくるケースが増加してしまった。また、しばらく後に罰金制をやめたが、遅刻の数はもとに戻らず、かえってわずかながら増加してしまった。


罰金制導入前、母親たちは託児所の先生と社会規範によって結ばれていました。たまにうっかり遅刻することがあっても先生に対し申し訳ないと感じ、それほど遅刻はしていませんでした。

しかしながら一度、罰金制が導入されると、社会規範はどこかへ飛んでしまい、「罰金を払うなら遅刻してもいいだろう(罰金で遅刻を買う)」という市場規範が形成されてしまったのです。さらに一度市場規範が形成されてしまうと、罰金制を止めてもとの社会規範に戻そうとしてもなかなか戻らなくなるのです。

男性なら次のような例を考えるとイメージしやすいかもしれません。意中の女性に何回かご馳走したりプレゼントしたりして仲良くなった後に、「結構、お金かけたんだけど、そろそろどうかな?」なんて言ったら、どうなるでしょう。想像するだに恐ろしいですが「私のこと、そういう目で見てたのね!」と罵倒されるでしょうし、マズイと思って社会規範に戻そうと思ってもそうは問屋が卸さないでしょう。

また市場規範で物事を考えるようになると、独立独歩で行動するようになり、他人を助けたり、手伝ったりすることが見られなくなるということも実験から明らかにされています。


■社会規範をモチベーション管理に活かす

これまで見てきた市場規範と社会規範との関係をうまくモチベーション管理に取り入れるとしたらどのようになるでしょうか。

何か協力的な姿勢を示してくれたり成果を上げてくれた従業員に対しては、お金をあげることよりも社会規範に訴えたほうが有効な場合があるということです。小学の金額よりも、感謝や賞賛、ちょっとしたプレゼントのほうが遥かに効果が高いです。

近年、福利厚生を削減して(たとえば社内旅行、社内での祝い事・飲み会、各種手当など)個人に対し賃金で報いるという傾向が強まっていますが、かえって逆効果かもしれません。
いったん社会規範から市場規範にシフトしてしまうと、従業員はもはや会社に対して愛着をもたなくなり、賃金が安いと感じたらさっさと辞めてしまうようになります。

逆にグーグルやIDEOなどのような新興優良企業を見ると、成果主義的賃金とは別に何らかの形で会社や仲間たちとの絆を深めるような制度を導入しています。社会規範を強めることで会社への忠誠心を育て、個人のやる気を高めることには合理性があるのです。


【参考】
『予想どおりに不合理』ダン・アリエリー著 早川書房



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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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