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統一通貨ユーロがもたらしたもの②(国際金融のトリレンマ・最適通貨圏)

経済学者の間では、統一通貨ユーロは失敗(あるいは最初から失敗が予想できた)というのが大筋の意見です。これについて説明する理論に国際金融のトリレンマというものがあります。


■国際金融のトリレンマ

国際金融のトリレンマとは、次の3つのすべてを満たすことはできない(2つは満たせるが1つは犠牲になる)というものです。

① 自由な資本移動(資本取引)
② 物価の安定(金融政策の独自性)
③ 為替の固定

トリレンマ


「自由な資本移動」と「物価の安定(金融政策の独自性)」を取ると、「為替の固定」はできません。たとえば拡張的な金融政策(貨幣量の増加)を行うと、自由な資本取引により為替レートは自国通貨安になります。

「自由な資本移動」と「為替の固定」を取ると、「物価の安定(金融政策の独自性)」はできません。自由な資本取引を認めると為替レートが変動しますが、その変動を抑えるために金融当局は為替介入を行う必要があります。

たとえば自国通貨安に振れそうであれば、固定相場を維持するために自国通貨高誘導、つまり自国通貨買い介入(通貨量の減少)を行い、その結果、国内物価は低下します(注)。つまり為替レートの維持に振り回され国内経済の対策のための金融政策が行えなくなるのです。

国内経済の対策のための金融政策を行いつつ為替レートを固定しようとすれば、資本取引を規制するしかありません。


■何を犠牲にするかは事情によって異なる

日本やアメリカなど変動相場制を採用している国では、「自由な資本移動(資本取引)」「物価の安定(金融政策の独自性)」を取って「為替の固定」を犠牲にしています。

中国は「物価の安定(金融政策の独自性)」「為替の固定」を取って「自由な資本移動(資本取引)」を犠牲にしています。

ユーロ加盟国で見ると、加盟国は勝手にユーロを刷る権利はありませんから「為替の固定」「自由な資本移動(資本取引)」を取って「物価の安定(金融政策の独自性)」を犠牲にしている形になります。金融政策はECB(ヨーロッパ中央銀行)に一任されます。

ユーロ各国に認められているのは財政政策(減税や公共投資など)だけです。しかしながら前回見たように、リーマンショックの煽りを受けてのバブル崩壊後、政府債務が拡大する中で、南欧諸国はIMC(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)などから財政緊縮が求められ、その結果、国内不況がより深刻化してしまいました。国内経済対策として財政政策も金融政策も行えなかったのです。


■最適通貨圏理論

通貨を統一することで事務的な運用効率が高まります。一方、国際金融のトリレンマで見たようにデメリットもあります。

統一通貨の成立条件を扱ったものにノーベル経済学者のマンデル教授による最適通貨圏理論というものがあります。これによると①同一通貨を持つ域内の経済変動と自国の経済変動がお互いに似ている②あるいは自国の経済構造が変化に対応できるくらいに柔軟という条件を満たせば同一通貨にするメリットがあるとされます。

そうなるとユーロに加盟するメリットがあるのはドイツやフランス周辺の国々に限られてきます。


■ギリシャやイギリスはどうするべきか

昨年度、ギリシャの財政危機問題が大きく取り沙汰されましたが、最適通貨圏理論や国際金融のトリレンマを考えると、ギリシャはユーロ脱退し、独自通貨の下での金融政策と財政政策を行うというのが不況脱出のための現実的な解ということになります。

ユーロを脱退し独自通貨に戻せば独自通貨が暴落すること必至です。しかし、その結果、輸出競争力が増し、観光客が多く訪れることで経済は再び浮揚します。というかギリシャは1800年以降の200年余の歴史の中で、2年に1度は破綻しており(ギリシャの債務不履行と債務条件変更の年数が50%以上)、、その度に通貨の暴落と再浮上を繰り返してきた国なのです。

すっかり話が逸れてしまいましたが話をイギリスに戻すと、イギリスはEUに加盟して非関税のメリットを受けつつ、ユーロには加盟しないで独自の金融政策が可能という絶妙な位置にいます。EUに残留するというのが経済学から見た正解となるでしょう。


注:
貨幣量と物価の関係は「日銀の量的・質的金融緩和政策①(なぜ日本は出遅れたのか)」を参照してください。

【参考】
『もうダマされないための経済学講義』若田部昌澄著 光文社
『図解 地政学入門』高橋洋一著 あさ出版
DIAMOND ONLINE高橋洋一の俗論を撃つ『ギリシャはデフォルト(債務不履行)常習国 歴史と最適通貨圏理論で解く問題の本質』2011年10月20日



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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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