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成功法則が役に立たない理由(必要条件と十分条件)②

前回は、経営書「エクセレント・カンパニー」の調査方法を取り上げました。それは、「優良企業の共通点を探る」というアプローチであり、その結果、「①行動の重視、②顧客に密着する、③自主性と企業家精神、④人を通じての生産性の向上、⑤価値観に基づく実践、⑥基軸から離れない、⑦単純な組織・小さな本社、⑧厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ」という成功条件を抽出しました。

しかしながら、このような「いくつかのケースから共通点を探る」というアプローチでは問題があります。今回は、その問題を具体化したいと思います。


■必要条件と十分条件

調査して何らかの要因を抽出する際には、必要条件と十分条件の違いを明確に意識する必要があります。

必要条件とは、「ある事柄が成立するために必要な条件」のことです。たとえそれが優良企業になるために必要な条件であっても、それだけ満たせば優良になるとは限らないということです。

たとえば日本で企業家として成功を収めた人の共通点として「日本語が話せること」を見出したとしても、何も意味はないでしょう。これは必要条件かもしれませんが、もちろん十分条件ではないわけですから。


■必要条件と十分条件をどう識別するか

条件Aさえ満たせば必ず高業績になるとすれば、条件Aは高業績の必要十分条件と言えます。しかし、条件Aと同時に条件Bも満たさなければ高業績をあげられないとすれば、Aは必要条件であっても十分条件ではありません。これはAかBかどちらかでは高業績をもたらすのに十分ではないということを意味します。

逆に条件AかBかのどちらか片方を満たせば高業績を収められる場合、条件AもBも高業績の十分条件となります。ただし、AもBも必ずしも必要でないわけですから、どちらも必要条件ではないのです。

必要条件

「エクセレント・カンパニー」の調査の場合も、もしそれが適当な手続きを経たとしても、見つかったのは必要条件だけで他の条件があった可能性があります。


■では、どうすれば成功要件を検証できたのか

「エクセレント・カンパニー」の「高業績企業に共通する特性を抽出する」という帰納法的なアプローチは、なにも間違ったことではありません。

しかしながら抽出された要因が十分条件なのか検証するには、別のアプローチが必要となります。具体的には逆の手順を踏むのです。まず8つの要因を備えた企業を探し出し、その企業の業績を見るのです。

① 8つの要因を同じく備えた企業をリストする。
② その特質を備えた企業が、いずれも成功しているか否かを調べる。
③ もし成功していれば、8つの要因が成功の十分条件だと考える。

逆に8つの条件を満たしていても業績不振の企業があれば、他に成否を分ける要因が隠されていることになります。


■ほとんどのビジネス書で見られる誤り

本来、ビジネス上の成功に至る因果関係は、様々な要素が複雑にからみあっているはずです。しかしながら多くのビジネス書や自己啓発書において見られるのは、原因(成功要因)を単純化しすぎており、さらにそれが必要条件にすぎないというということです。

ビジネス書や他人のアドバイスを聞く際には、まずは鵜呑みにしないで「本当にそれで上手くいくのか」自分自身で考えてみるという姿勢が必要でしょう。因果関係成立の条件で言えば、「③他の原因の排除(XがYの原因と考えられ、さらにX以外にYの原因を合理的に説明できるものが何もない場合にのみ、XがYの原因と認められる)」を意識するということですね。


【参考】
『ブラックスワンの経営学』井上達彦著 日経BP社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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