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「1人あたりの生産性を上げる」は正しいか?(需給ギャップ)①

「1人あたりの生産性を上げることが大事だ」と経済学者で主張する方がいます。これについて違和感を持つ方は少ないでしょう。「1人あたり生産性を上げる」というのも曖昧ですが、おそらく「1人あたりの生産量を増やす」というイメージが強いのではないでしょうか。
一見するとよさそうなことであっても、きちんと具体化していないと誤った政策が導入されかねません。
ここでは、「1人あたり生産性を上げる=1人あたりの生産量を増やす」とどうなるのかについて、GDPギャップの観点から確認したいと思います。


■GDPは何で決まるのか?

1人あたりの生産性を上げることに対し、反対する人は誰もいないでしょう。1人あたりの生産性とは、一般的には1人あたりGDP(GDP÷人口)を指すことが多いです。

一方、GDPは国内総生産(1国内で新たに生産された付加価値の合計)のことです。ですから、1人あたりの生産性を上げればGDPは上がると思われます。

しかしながら、実際のGDPは、多くの場合、1国内の総需要によって決まります。なぜなら需要がある以上に生産しても売れ残りになるだけなので、企業は総需要以上に生産しようとはしないからです。つまり総需要に合わせて総供給が決まり、それが実際のGDPになるわけです。


■インフレギャップとデフレギャップ
需給ギャップ
上図は総需要(曲線)と潜在総供給(右上がりの直線)を表したものです。潜在総供給は、一般的に1国内の労働や生産設備をフル稼働させた場合に実現する総供給の上限と定義されます。作業の機械化・自動化や慣れなどによって毎年0.2~0.5%ずつは上昇します。

厳密には潜在総供給は完全雇用に対応するGDP水準ではなく、現実のGDPの上限ではありません。あくまで過去のGDP水準から傾向的な水準として算出されるものです。よって、実際のGDPが潜在総供給を超えることもあり、潜在総供給がGDPの上限というわけではありません。ただし、そのような厳密性はともかく、潜在総供給を総供給の上限として扱うことが多いので、本ブログでもそれに倣うことにします。

一方、総需要は、国内の消費・投資・輸出などによって決まり、浮き沈みがあります。

図の中央より右側のように「総需要>潜在総供給」の場合、潜在総供給以上の総供給は実現できませんから、実際のGDPは潜在総供給によって決まります。この場合、物価上昇の圧力がかかり、総需要と潜在総供給の差をインフレギャップ(供給不足に相当)と言います。

図の左側のように「潜在総供給>総需要」の場合、先述のように実際のGDPは総需要によって決まります。この場合、物価下落の圧力がかかり、潜在総供給と総需要の差をデフレギャップ(需要不足に相当)と言います。



■現在の日本の需給ギャップは?

内閣府ではGDPギャップを公表しています。GDPギャップとは、「(実際のGDP-潜在GDP)÷潜在GDP」のことで、潜在GDPは上述の潜在総供給にあたります。

2000年以降のGDPギャップの推移を見ると、2006年末から2008年初頭にかけてはプラス(インフレギャップ)ですが、それ以外の期間はほぼマイナス(デフレギャップ)です。特に最悪だったのが、リーマンショック後の2008年末で約マイナス8%に達しました。

2012年度以降のGDPギャップの4半期ごとの推移は次のとおりです。

GDPギャップ

第2次安倍政権が本格的に始動した2013年度以降、縮小傾向にあったGDPギャップは2014年4月(第2四半期)の消費税8%導入以降、拡大してしまっています。現在は10兆円程度のデフレギャップ(需要不足)と言われています。
(つづく)

【参考】
ダイヤモンド・オンライン/高橋洋一の俗論を撃つ!/賃金が上昇するのはGDPギャップ解消の半年後http://diamond.jp/articles/-/67856


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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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