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比べてなんぼ(相対評価)①

さて8回に渡り市場ポジショニングについて見てきましたが、ポジショニング(位置づけ)は他があってこその話です。他のものがなければ座標軸が定まらないからです。画期的な新商品の多くが失敗する理由に、あまりに突飛すぎて良さが理解できないということがあります。良さとは、結局のところ、他と比べた場合の良さです。というより特徴(メリット・デメリットを含む)そのものが他との比較によってでしか成り立たないものでしょう。

■人はどう選択するか?

次のケースを考えてみてください。

あなたのもとにアメリカの某有名経済雑誌社からマーケティング雑誌の購読案内が来ました。与えられた選択肢の中から1つ選んでください。

Q1:
 選択肢A   ウェブ版だけの購読(59ドル)
 選択肢B   印刷版だけの購読(125ドル)
 選択肢C   印刷版とウェブ版だけの購読(125ドル)



MITの大学院生100人に質問したところ、次のような結果になりました。
Q1:
選択肢A 16人
選択肢B 0人
選択肢C 84人

選択肢BはCと比べて明らかに損というわけです。そこで訊いてもしかたのない選択肢Bを除いて質問したとします。

Q2:
 選択肢A   ウェブ版だけの購読(59ドル)
 選択肢B   印刷版とウェブ版だけの購読(125ドル)



同じ対象に調査した結果は次のとおりです。
Q2:
選択肢A 68人
選択肢B 32人

どこが変か分かるでしょうか。Q1の選択肢B、つまり「印刷版だけの購読(125ドル)」は明らかに無意味な選択肢で、もともと購買の対象にはならないわけですから、それを省いたところで結果は変わらないはずです。つまりQ2でも「ウェブ版だけの購読(59ドル)」を選ぶ人が16人、「印刷版とウェブ版だけの購読(125ドル)」を選ぶ人が84人になるはずですが、そうはならないのです。


■比較対象が変わると評価も変わる

この実験結果から言えることは、私たち消費者は合理的な判断をしているわけではなく、比較対象が変わると評価も変わるということです。「あいつにはかなわないが、あいつよりはマシ」といったように、比較対象が変われば優劣も変わるということですね。

Q1では「印刷版だけの購読(125ドル)」と「印刷版とウェブ版だけの購読(125ドル)」の比較に焦点があたり、明らかによい後者が選ばれたわけです。一方、Q2では、「ウェブ版だけの購読(59ドル)」と「印刷版とウェブ版だけの購読(125ドル)」の比較になり、優劣の評価が難しくなった結果、評価が分かれることになったのです。


■比べやすいものだけ比べる

では、もう1つ質問に答えてください。

あなたは長期の休暇がとれたので、海外旅行に行くつもりです。予算内に収まる候補としては次の3つがあります。与えられた選択肢の中から1つ選んでください。

選択肢A   パリでの1週間
選択肢B   ローマでの1週間
選択肢C   ローマでの1週間(ただし朝食抜き)



パリとローマの個人的な嗜好を抜きにすれば、おそらく選択肢Bの「ローマでの1週間」が選ばれるはずです。パリかローマかを選ぶのは難しいですが、朝食抜きかどうかは判断しやすいからです。

このように私たちは比べて選ぶし、さらに比べやすいものだけを比べて、比べにくいものは無視する傾向があります。


【参考】
『予想どおりに不合理』ダン・アリエリー著 早川書房
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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