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認めて欲しい(承認欲求)

「社員に最も知られてはいけないことは何ですか?」と問われたら、何が浮かびますか?それはおそらく「誰がどれくらいもらっているのか」ということです。私たちはなんだかんだいっても、他人と比べて評価をし、それがモチベーションに影響を与えるからです。


■年棒が高騰する理由

1976年、アメリカの平均的なCEOの給与は、平均的な社員の36倍でした。しかし格差は拡大の一途をたどり、1993年には131倍にも達しました。

証券規制当局は、このような格差拡大に歯止めをかけようと、経営幹部の報酬や役得を開示するように義務付けました。経営幹部の報酬が開示されれば、企業の報酬委員会も法外な報酬を出しにくくなるだろうということです。

しかしながらこれはまったくの逆効果で、幹部の報酬はうなぎのぼりに上昇し、今ではCEOの給与は平均的な社員の約360倍にも達しています。


なぜこのようなことになったのでしょうか。人間は他人と比較して評価を決めます。さらに自分の能力を過剰に評価する傾向があります(プライドの高いCEOならなおさらでしょう)。よって「あのCEOがあれくらいもらっているなら、自分はもっともらえるはずだ」と「もっともっと」と高い報酬を要求しだしたのです。

プロ野球の選手で初めて1億円プレイヤーになったのは、1987年度の落合博満氏で、当時、非常に話題になった記憶があります。一方、2016年度の契約で年棒1億円以上の選手は68人いるそうです。選手の年棒が急激に上昇したのは、以前より選手の年棒の公開が進み、みんな他の選手の年棒と比べるようになった結果と言えます。


■成果主義が上手くいかないわけ

報酬には純粋な経済的利益という面のほかに、自分に対する評価という面があることを忘れてはいけません。

日本で成果主義を導入すると、大抵は上手くいかないのもこのあたりに原因があると思います。評価が賃金と結びつくと、賃金を見て「ああ自分の値打ちはこれくらいなのだな」と思うわけです。


そもそもきちんと業績が評価できるのかという問題が大きいですが、仮に適切に評価できたとしても、自己評価と他人評価では差が生じます。その結果、「結構、貢献したのにこれだけ?」というように社員に不満が生じます。

さらに同僚がどれくらいもらっているかは大体想像がついてきますから、「あいつがこれくらいなら、自分はもっともらえるはずだ」というように増額欲求が刺激されます。しかしながら給与全体の原資には限りがあり、さらに自己評価と他人評価は異なるのが一般的ですから、自分の増額欲求は満たされず、それがモチベーションの低下や離職へとつながるのです。


これだったらもともと年功主義で評価と賃金との関係が曖昧である方が、まだマシだったということになりかねません。


■管理者は部下に何をするべきか

「君のことは評価しているが、残念だけど社内事情でこれだけしかあげられない。どうか我慢して欲しい。」と言われたら納得するというケースは多いように感じます。このように「自分のことを認めて欲しい」という欲求のことを、モチベーション理論では承認欲求といいます。

他社でも十分通用する実力がある人があまり給与水準が高くない企業にとどまっているのも、転職が面倒だからというより、社内で承認欲求が満たされているからだということも考えられます。

逆に管理者側とすれば、こうした社員の承認欲求を日頃から満たすことが重要だと考えられます。もともと公正でかつ納得性の高い賃金などどだい無理な話で、かつ社員側も「賃金=自分への評価」と捉えてしまうことがややこしさの原因ですから、評価と賃金は分けて考え、それを社員にもある程度納得してもらうほうがよいのです(無論、程度の問題はあります)。

「よくやっている」「この間の仕事はよかったね」などと声をかけて承認欲求を満たしてあげるほうが、社員が望むように賃金を上げるより遥かに安上がりでかつ現実的です。


【参考】
『予想どおりに不合理』ダン・アリエリー著 早川書房
『承認欲求』太田肇著 東洋経済新報社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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