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歪曲された歴史(世界大恐慌に見る経済政策①)

本ブログの「トランプ経済学⑤(公共投資の効果)」で取り上げたヘリコプターマネー政策は、かつての日本で採用され希に見る大成功を収めたという事実があり、経済政策を考える上で世界的にも貴重な成果となっています。


■修正されないデタラメな歴史認識

私が高校時代に習った日本史では、「戦前の日本は世界大恐慌(日本では昭和恐慌)の影響で農村部を中心に壊滅的な打撃を受け、その苦境を見かねた陸軍の青年将校の一部が1936年に226事件を起こした」と教えられた記憶があります。つまり経済失政が軍部の台頭を招いたのだということです。以前見たNHKの歴史アーカイブでも同様の紹介がなされていました。

しかしこれはデータを見れば明確な誤りであることがわかります。当時の日本は先進国ではかなり早い段階で不況から脱し、景気はむしろ過熱気味であったのです。


■日本の近現代経済史上、最も愚かな政策

世界大恐慌発生の翌年の1930年1月、日本は濱口雄幸首相・井上準之助蔵相(現在の財務相)の下で金本位制に復帰します。

金本位制とは、中央銀行が紙幣を発行する際に、それと一定比率で交換する金の量を保有していなければならないという制度のことです。言い換えれば、中央銀行は保有する金の量に沿ってしか紙幣を発行できないということで、金融政策の自由度を縛るもの、ずばり金融引締め政策です。

世界大恐慌の影響で需要が冷え込み、さらに濱口・井上体制は財政支出を大幅カット、これに引き締め的な金融政策を行ったので、バブル崩壊以降の日本のデフレが些細なものに思えるくらいのとんでもないデフレ経済に陥りました。

1930年には10%、1931年には11.5%という物価の下落率を記録したのです。大恐慌で有効な経済政策を打たないどころか、あろうことか超しばき上げをやったのですから、当然といえば当然で、まさに未曾有の経済危機が発生しました。日本の近現代経済史上でも最も愚かな政策だと思います。

1930年11月の濱口首相が右翼青年に狙撃され退陣すると、入れ替わりに犬養内閣が成立し、高橋是清が通算4度目の蔵相に就任します。ちなみに井上も1932年、経済苦境を招いたこと、海軍予算を削減したことを理由に右翼結社の手によって暗殺されます(血盟団事件)。


■ヘリコプターから金を撒いた男

蔵相に就任した高橋是清は昭和恐慌を脱するために積極的な財政・金融政策に打って出ます。まずは金本位制を脱し、金融政策の自由度を確保します。金の保有量に縛られないで紙幣を発行できるようにしたということです。日本銀行による大幅な金融緩和により、円が約4割も下落し、その結果、日本製品の輸出が増えました。

次に農村や漁村の救済措置や軍事支出など財政支出を一気に約3割増額し、発行した国債の9割近くを日銀に買い取らせました(日銀の国債直接引受)。つまりヘリコプターマネーを実施したのです。
(つづく)

【参考】
『「復興増税」亡国論』田中秀臣、上念司著 宝島社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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