「大きな池の小さな魚」か「小さな池の大きな魚」か(自己有能感④)
レベルの高い集団に属すると、その人の有能感が低下し、その結果、モチベーションにも悪影響を与えるということが、会社組織でも当てはまるのなら、どのような対策が打てるのでしょうか。教育心理学の知見を応用しながら、考えてみます。
■能力別の編成にする
「大きな池の小さな魚」だと有能感が低下するのなら、「小さな池の大きな魚」にしてあげればよいという考え方もできます。進学塾では能力別のクラス編成が一般的ですが、これは教える側の教えやすさもさることながら、受ける側にとってもメリットがあるわけです。
会社では、首都圏の花形部門などいわゆる出世コースといわれる部署に所属すると、そこから外されることにかなりの恐怖心を覚えることもあるでしょう。確かに異動(左遷?)は、心理的には堪えますが、早めに移ったほうが結果的にはよいのではないでしょうか。移った先で伸び伸びと仕事に励み、実力をつければ、何かの折にまた花形部署に戻れることもあるでしょう。
もしそれが困難であっても、無理に所属して劣等感を感じ続けて潰れるよりもはるかにマシな気がします。場合によっては転職するということも手段としては考えられます。収入は下がるかもしれませんが、心の健康を損なうよりはよいでしょう。
■集団への同一視を高める
前回、栄光浴効果、つまり社会的に高い評価を受けている個人や集団と自分が何らかの結びつきがあることによって、自分の評価を高めることについて指摘しました。この栄光浴効果を利用するという手段も考えられます。
集団の一員であることに価値を置いていない人は、自分が所属している集団が優れた成績を収めているのに対して、自分自身の成績が悪いとネガティブな感情を抱く傾向がありますが、集団の一員であることに価値を置いている人には、こうした傾向が見られないそうです。
つまり自身が優れた集団の一員であることを強調することによって、自分が所属している集団への同一視を高めさせることが、優れた集団に所属することによって有能感が低下することを減じることにつながるのです
■幅広い比較軸を用いる
レベルの高い集団に属すると、その人の有能感が低下するのは、周りの高いレベルが判断基準となるからであれば、違う判断基準(比較基準)を用いれば、有能感の低下を防ぐことができるかもしれません。
たとえば進学校であれば校内の順位だけでなく、全国的な標準試験の成績で判断するといったことです。企業内であれば、1部門内だけでなく、部門全体、あるいは業界平均と比較するといったことは考えられるかもしれません。
■他人との比較を止める
おそらく最も現実的かつ有効なのは、他人との比較を止めるということでしょう。何しろ周りとの比較で劣等感を感じてしまうわけですから。相対評価ではなく、絶対評価で、過去の自分の実績や能力と比べて、今の自分がどれくらい進歩したかに焦点を当てるのです。このことは上司の部下への接し方でも大切なことです。
確かにライバル心むき出しで駆け上がっていく人もいますが、むしろ周りと比較せずマイペースな人でも順調なキャリアを築いているケースは、みなさんの周りでも多く見られると思います。
競争意欲は短期的には効果があっても、長期的にはそれでは持たないと思います。実際に若い頃にはガツガツしていた人でも、ある程度の年齢になると大抵は角がとれたようになるのは、(出世の限界もあるかもしれませんが)他人との比較から自己評価へとシフトしたからとも考えられます。
さて今年の掲載は今回で最後になります。1年間お読みいただき有難うございました。良いお年をお過ごしください。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。
【参考】
『行動を起こし、持続する力』外山美樹著 新曜社
■能力別の編成にする
「大きな池の小さな魚」だと有能感が低下するのなら、「小さな池の大きな魚」にしてあげればよいという考え方もできます。進学塾では能力別のクラス編成が一般的ですが、これは教える側の教えやすさもさることながら、受ける側にとってもメリットがあるわけです。
会社では、首都圏の花形部門などいわゆる出世コースといわれる部署に所属すると、そこから外されることにかなりの恐怖心を覚えることもあるでしょう。確かに異動(左遷?)は、心理的には堪えますが、早めに移ったほうが結果的にはよいのではないでしょうか。移った先で伸び伸びと仕事に励み、実力をつければ、何かの折にまた花形部署に戻れることもあるでしょう。
もしそれが困難であっても、無理に所属して劣等感を感じ続けて潰れるよりもはるかにマシな気がします。場合によっては転職するということも手段としては考えられます。収入は下がるかもしれませんが、心の健康を損なうよりはよいでしょう。
■集団への同一視を高める
前回、栄光浴効果、つまり社会的に高い評価を受けている個人や集団と自分が何らかの結びつきがあることによって、自分の評価を高めることについて指摘しました。この栄光浴効果を利用するという手段も考えられます。
集団の一員であることに価値を置いていない人は、自分が所属している集団が優れた成績を収めているのに対して、自分自身の成績が悪いとネガティブな感情を抱く傾向がありますが、集団の一員であることに価値を置いている人には、こうした傾向が見られないそうです。
つまり自身が優れた集団の一員であることを強調することによって、自分が所属している集団への同一視を高めさせることが、優れた集団に所属することによって有能感が低下することを減じることにつながるのです
■幅広い比較軸を用いる
レベルの高い集団に属すると、その人の有能感が低下するのは、周りの高いレベルが判断基準となるからであれば、違う判断基準(比較基準)を用いれば、有能感の低下を防ぐことができるかもしれません。
たとえば進学校であれば校内の順位だけでなく、全国的な標準試験の成績で判断するといったことです。企業内であれば、1部門内だけでなく、部門全体、あるいは業界平均と比較するといったことは考えられるかもしれません。
■他人との比較を止める
おそらく最も現実的かつ有効なのは、他人との比較を止めるということでしょう。何しろ周りとの比較で劣等感を感じてしまうわけですから。相対評価ではなく、絶対評価で、過去の自分の実績や能力と比べて、今の自分がどれくらい進歩したかに焦点を当てるのです。このことは上司の部下への接し方でも大切なことです。
確かにライバル心むき出しで駆け上がっていく人もいますが、むしろ周りと比較せずマイペースな人でも順調なキャリアを築いているケースは、みなさんの周りでも多く見られると思います。
競争意欲は短期的には効果があっても、長期的にはそれでは持たないと思います。実際に若い頃にはガツガツしていた人でも、ある程度の年齢になると大抵は角がとれたようになるのは、(出世の限界もあるかもしれませんが)他人との比較から自己評価へとシフトしたからとも考えられます。
さて今年の掲載は今回で最後になります。1年間お読みいただき有難うございました。良いお年をお過ごしください。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。
【参考】
『行動を起こし、持続する力』外山美樹著 新曜社
スポンサーサイト