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報酬と創造性、そして承認欲求(青色LED訴訟)

高い報酬と創造性というと、たとえば青色発光ダイオードを発明・開発した中村修二氏(現カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)と、勤務先であった日亜化学工業との訴訟を想起する方もおられるかもしれません。

これは、中村修二氏が職務発明した窒化物半導体結晶膜の成長方法に関する特許についての支払いが争われたものです。2005年1月に、全関連特許などの対価などとして、日亜化学工業側が約8億4000万円を中村氏に支払うことで和解が成立しました。今回は、この訴訟について私見を交えながら取り上げたいと思います。

勤務先である日亜化学工業への高い貢献に対して、低すぎる報酬に頭にきた中村氏が高い金銭的報酬を求めて訴訟を起こしたという見方が一般的かもれません。テレビの評論家の意見も、中村氏の行動に対して「当然だ。また日本の研究開発力を高めるためにも高額な報酬を与えるべきだ」という肯定的な立場と、「職務発明なのだから不当な要求だ」という否定的な立場に分かれますが、いずれにせよ「カネと研究意欲」の関係から論じられることが多かった記憶があります。

中村氏は創業者社長が多額の研究開発費を躊躇なく出してくれたことには大変感謝していると述べており、また海外の企業や大学からの誘いにも当初は技術漏洩の可能性から固辞していたといいます。一方で、僅かな報奨金しか得ていないことを海外の研究者から「スレイブ・ナカムラ」と言われていたといいます。

特許権の帰属と、帰属が認められない場合の対価の額ばかりに焦点が集まりましたが、今から思えば、ことの本質はそこではなく、日亜化学工業側が中村氏の承認欲求を満たそうとしなかった点が大きかったように思えます。

多大な貢献をした中村氏に日亜化学工業側が十分に感謝し報いなかったことから、中村氏は離職を決意し、さらにその後、日亜化学工業が営業秘密漏洩の疑いで中村氏を提訴したことから、憤慨し、逆に日亜化学工業に対し特許権譲渡および特許の対価の増額を求めて提訴したと考えることもできます。

日亜化学工業側が中村氏の承認欲求を満たすような振る舞いをしていれば、互いにダメージを受けることもなかったかもしれません。

いずれにせよ、中村氏は高額の報酬を目的に研究開発を行っていたわけではないことは留意する必要があるでしょう。

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
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