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貿易赤字は悪いのか(GDPの見方)①

連日、就任後のトランプ大統領関連のニュースが続いています。私も就任演説を聞いていましたが、言っていることは大統領選のときのまんまで、実際に大統領になればトランプ氏もまともになるだろうという楽観的な予想を吹き飛ばしてしまいました。選挙で約束したことは、当然守るということなのでしょう。
ツイッターでの対日貿易赤字(日本にとっては黒字)批判や日本企業叩きが話題となっていますが、そもそも貿易赤字は問題なのでしょうか。GDPの観点から考えてみたいと思います。


■GDPは需要と供給の大小関係で決まる

GDP(国内総生産)の定義は、「1国内で1年間に生産された付加価値の合計」ですが、これは供給サイドの見方です。生産されるのは需要があるからだと考えると、GDPは需要サイドからも見ることができます。

ちなみにGDPは潜在総供給(1国の生産要素をフル稼働した場合に実現する総供給)と総需要のどちらか小さい方で決まります。

「潜在総供給>実際の総需要(デフレギャップ)」なら(生産しても需要がないので)実際の総供給は総需要の水準となり、GDPは需要サイドで決まります。

「実際の総需要>潜在総供給(インフレギャップ)」なら(生産が需要に追いつかないので)生産水準は潜在総供給(=実際の総供給)の水準となり、GDPは供給サイドで決まります。

日本の場合は、「潜在総供給>実際の総需要(デフレギャップ)」なので、GDPは需要サイドで決まります。


■貿易赤字でも経済成長する

やや脱線しましたが、需要サイドから見たGDPは、単純には次のような式で表現されます。

需要面から見たGDP=国内消費+投資+政府支出+輸出-輸入

「国内消費+投資+政府支出」は国内寄与分で、「輸出-輸入」は海外寄与分です。
この式を見ると、確かに輸出が増加して輸入が減少すればGDPは増加することになります。ですから貿易黒字(輸出-輸入)の額がいちいちニュースで取り沙汰されるわけです。貿易赤字になると、もはや亡国の危機かのように報道されます。

しかしながら経済学では、貿易赤字でも「so what?(だから何?)」というのが常識です。そもそも世界的に見れば、貿易黒字の国があれば赤字の国もあるわけで、カナダやオーストラリアのようにほとんど常に貿易赤字ですが、経済成長している国もあります。

というよりそもそもアメリカも30年以上貿易赤字ですが、貿易黒字(2011年から15年は赤字)であった日本よりも遥かに経済成長しています。ですから「貿易赤字で何が問題?」ということになるのです。


■輸入増加は景気が良い証拠

なぜ貿易赤字でもGDPは成長するのでしょうか。実は輸入は国内消費と同じ動きをするからです。輸入も国内消費も消費であることには変わりなく、海外で生産されたものの消費なら輸入、国内で生産されたものの消費なら国内消費になります。

景気が良く所得が上昇すれば、国内消費が増えると同時に輸入も増えます。
みなさんも給与が上がれば国内品も買うでしょうが海外のブランド品も買うでしょう。ですから輸入が増えていることは景気がよいことを示しているにすぎないことになります。

また輸入には海外の資源の購入も含みますが、海外の資源の購入が増えているということはそれだけ国内の生産活動が活発化しているということなので、こちらも景気が良い証拠ということになります(単なる資源価格の上昇は除く)。

「輸出-輸入」の海外寄与分を見ると、輸出が伸びず輸入が減れば、貿易黒字が拡大し、GDPは増加することになります。しかしこれは景気が良くないというシグナルです。公表されている日本の2016年度7―9月期の四半期GDPはこれを示しています。実質で0.3%、名目で0.1%のGDP成長ですが、実態的にはゼロかマイナスの経済成長と言えます。


■雇用を増やすには国内需要を増やすしかない

アメリカの話に戻すと、景気が良ければどのみち輸入は増えるのですから、輸入(日本にとっては輸出)を叩いてみても仕方がないことになります。トランプ大統領が雇用を増やすというのであれば、国内需要を上げて生産活動を活発化することしかできることはありません。

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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