■リーダーシップとマネジネント 一般にリーダーシップは「変革を推し進める機能」、マネジメントは「効率的・確実的に組織を運営する機能」と定義されます。 具体的には次のとおりです。
●リーダーシップ ①長期的なビジョンの提示 ②ビジョンの伝達によるメンバーの統合 ③メンバーの動機づけ ●マネジメント ①(短期的な)計画や予算の立案 ②組織構造の設計と人員配置 ③予算や実績管理を行い、問題解決を図る ざっくり言うと、リーダーシップとは、「何かを決めてそれをリードすること」、マネジメントとは「それが確実に実行されるようにコントロールすること」になります。
このようにリーダーシップとマネジメントとは別のことを意味する言葉ですが、これがリーダーとマネージャーとなると両者の違いはほとんどなくなります。
マギル大学教授でマネジメント論の大家であるミンツバーグは、次のように述べています。
「リーダーは、マネジメントを他人任せにしてはいけない。マネージャーとリーダーを区別するのではなく、マネージャーはリーダーでもあり、リーダーはマネージャーでもあるべきなのだと理解する必要がある。」 リーダーシップとマネジメントの言葉の定義を明確にしたところであまり意味はないでしょう。いずれにせよマネージャーにはどちらも求められるのですから。
トップは大局を判断して意思決定し、管理(マネジメント)は下の管理職が行うという見方がありますが、これは正しくありません。ミンツバーグは、「
マネジメントとは、管理することであり、ものごとを実行することであり、考えることであり、リーダーシップを振るうことであり、意思決定を下すことであり、それ以外の諸々のすべての活動のことである。 しかも、そうしたすべての要素の単なる総和ではなく、すべてが混ざり合ったものだ。」と言います。その上で、マネージャーの役割を次のように分類しています。
①情報の次元 ・社内に対するコミュニケーションの役割 (モニタリング活動、情報中枢)
・社外に対するコミュニケーションの役割 (スポークスパーソン活動、情報中枢、情報拡散活動)
・コントロールの役割 (設計、委任、選定、分配、目標設定)
②人間の次元 ・内部の人々を導く役割 (メンバーのエネルギーの活性化、メンバーの成長の後押し、チームの構築・維持、組織文化の構築・維持)
・外部の人々と関わる役割 (人的ネットワークづくり、組織の代表、情報発信・説得、内部への情報伝達、緩衝装置)
③行動の次元 ・内部でものごとを実行する役割 (プロジェクトのマネジメント、トラブルへの対処)
・対外的な取引を行う役割 (同盟関係の構築、交渉)
【参考】
『マネジャーの実像』ヘンリー・ミンツバーグ著、日経BP社
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テレビのニュースを聞いていておかしいと思うのは、日本の財政危機を煽りながら、一方で為替の話になると「国際情勢の不確実性が高まる中で安全資産である円が買われ・・・」などとコメントすることです。財政危機の国の通貨が安全資産であろうはずがありません。最近では、さすがにマズいと思ったのかわかりませんが、「安全資産と思われている円が買われ・・」などと微妙に表現が変わりつつあります。■安全でなければ円高になるはずがない 結局のところ、有事の際に円が買われ円高になるのは、日本の財政が他国と比べて安全だと思われているからではないでしょうか。少なくともマーケット関係者は日本の財政問題を深刻には考えていないから、有事の際には円を買っているということでしょう。 先日、来日したノーベル経済学賞受賞者でコロンビア大学のスティグリッツ教授は、「日本の1000兆円の政府債務と(統合政府の一部である)日本銀行が保有する400兆円の国債(資産)は相殺されるので財政問題は遠のく」という趣旨の発言をしています。 日本政府の借金は子会社の日銀の資産ですから相殺されるということは、当ブロクでも取り上げてきました。政府資産は600兆円ですから資産と債務の帳尻が合うわけです。■日経新聞の指摘は正しいか? 有事の円買いの理由として日経新聞があげたのは、長期的なデフレ、超低金利、世界最大の対外純資産残高の3つです。 1つめについて、デフレは円の購買力の上昇を意味します。少額で多くのものを買えるようになるからです。よって購買力が高い円が買われるというわけです。ただしこれは金融緩和をさぼった結果(特にアベノミクス以前)ですから、今に始まったことではなく、さらに有事に限ったことでもないので説明にはなりません。 2つめの超低金利は、いわゆる裁定取引と呼ばれる短期売買の動きであり、そういうこともあるという程度ですから、為替トレンドを把握する際には無理があります。前回触れた実質金利差による為替変動(相対的に金利が高い国の通貨が買われる)とも整合しません。 3つめについて、日本は政府と民間を合わせて2015年末時点で約339兆円の対外資産があります。有事になると、心配になり国内の資産に戻そうとしますが、国内の資産は円建てですので、その際に円が買われるというものです。これはそれなりに妥当性があるかもしれませんが、民間レベルの話で資産の国内回帰という話はあまり聞いたことがありません。 ただしこの記事が面白いのは増税派の日経新聞らしく、「マーケットが単に円が安全だと思い込んでいるだけで根拠がない」としている点です。いまさら財政問題がないことを認められないので、それ以外の瑣末な理由を何とか寄せ集めている努力が感じられます。 2014年度の消費増税後の消費の落ち込みについて、増税派の某大学教授が「広島の水害と、テング熱と、冷夏の影響」としていましたが、いずれも景気にはほとんど無関係です。今回の日経の記事にも同じスタンスが感じられてしまうのです。 スティグリッツ、シムズ、クルーグマンといったノーベル賞クラスの世界的な学者が財政拡大を提案するたびに、なぜ日経新聞はいつも反対するのか考えてみる価値があると思います。■今回の朝鮮半島問題の場合は今後次第 ここまで円が買われる背景として、日本の財政事情には問題がないこと(と思われていること)がある点から触れました。 しかしながら今回の朝鮮半島問題については、今後の推移によるところが大きいとしか言えません。 今のところはやや円高気味に推移していますが、日本にも深刻な事態が生じるようであれば、ドルが買われ円が売られる可能性は十分にあります。一方、事態が日本にあまり影響が無ければ、朝鮮半島の復興需要に伴い円が買われる可能性が高いでしょう。
朝鮮半島問題の深刻度が増す中で、年初には118円台で推移していた為替レートが110円前後と円高気味に推移しています。さらにフランス大統領選挙でのフランスのEU離脱の可能性が高まると、為替が急に円高に振れたりします。これまでは「有事のドル買い(ドル高)」がセオリーでしたが、今では「有事の円買い(円高)」というのがマーケットの流れになりつつあります。 4月16日付けの日経新聞には、これまでの世界的なショックが起こった時に円が買われたケースとして、リーマンショックなどの世界的な金融危機(2008年9月)、欧州債務危機(2010年)、東日本大震災(2011年3月)、英国民投票(2016年6月)で「EU離脱」が決まったときが挙げられています。 リーマンショックや欧州債務危機の際の円高は、為替のマネタリーベース・アプローチによって説明できます。通貨発行量が多い国と少ない国では、少ない国の通貨が希少になるので価格が高くなる(増価)ことになります。リーマンショックや欧州債務危機では、各国の中央銀行が通貨発行量を大幅に拡大させた一方で、日本銀行は金融緩和に消極的であり、結果、円高が急速に進みました。 東日本大震災の際の円高について、経済学で言うところのマンデル=フレミング効果によって説明可能です。 ①復興のための財政支出を増やす(政府による資金需要が高まる)と、資金の調達コストである国内の金利(利子率)が上昇します(あるいは上昇予想が強まります)。これはクラウディングアウトと呼ばれるものです。 ②海外の投資家は金利が高い日本の債券に投資したほうが儲かるので、日本の債権(円建て)を買うためにドルを売って円を買うことになります。 ③需要が高まった円は増価(円高)し、ドルは減価(ドル安)になります。 さらに上記のとおり金融政策は緊縮気味でしたので、もともと83円台と円高だった傾向を後押し、76円台まで円高が進みました。 同様の現象は、1995年1月の阪神淡路大震災のときも見られ、1ドル99円台が一時期84円台まで進みました。 (つづく) 【参考】 現代ビジネス「北朝鮮で緊張が高まると、なぜ「日本の円」が買われるのか?」2017年4月17日 高橋洋一
■アイデアを企画として判断してしまう ビジネスシーンでのアイデアの発想というと、販促案の企画、新商品・新サービスの企画、業務改善の企画などが考えられます。アイデア発想は企画の出発点ではありますが、両者は異なるものです。ビジネスシーンにおける企画とは実行可能性や利益可能性を含むものですが、アイデア発想の段階でこれらを求めると無難なアイデアしか出てこなくなります。アイデアをたくさん出す⇒良いアイデアを選ぶ⇒企画にまとめるという手順に沿って、まずは常識はずれでも良いのでたくさんのアイデアを出すことに専念することが求められます。 ■アイデアをまとめてしまう 「アイデアの発散と収束」ということがよく言われます。ここで注意したいのが収束です。収束の際によくあるのが、みんなの意見をそれぞれ部分的に取り入れてしまうというもので、その結果、本来の目的やメッセージ、商品やサービスの位置づけが不明確となり、中途半端なものになってしまうことです。 発想を拡げた後に必要なことは、収束ではなく選択です。一番面白そうなアイデア、優れているアイデアを1つだけ選ぶということです。 棄却されるアイデアの発案者に気を遣って部分的に取り入れようとしてしまいがちですが、そうするとアイデアがだんだん丸まって面白くなくなります。思い切って無記名投票するなどして選択する必要があります。 投票にあたっては、まず効果が最大のものを選ぶようにし、ひとまず実現可能性は横に置いておくということも求められます。 【参考】 『全思考法カタログ』三谷宏治著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 『発想法の使い方』加藤昌治著 日本経済新聞出版社
古典的な発想の観点といえば、ドラッカーによる「イノベーションの7つの機会」が有名です。(1)予期せざるもの 想定していなかった成功や失敗から学んで、イノベーションのヒントを見つける。 例)IBMは当初、科学計算用にコンピュータを作ったが、企業が給与計算などの世俗的な仕事にコンピュータを使い始めた。IBMにとっては予想外の出来事で戸惑いを感じずにはいられなかったが、すぐにこのニーズに応じた。 例)3Mのポストイットはつかない糊から生まれた。(2)調和せざるもの 企業が想定していた業績や市場に対する認識、商品に対する価値観などにおいて、実際の顧ニーズや市場動向とギャップが存在することがわかった場合に、それをヒントにするもの。 例)アメリカの自動車メーカーが「アメリカ人は大きな自動車を好む」と考えていたのに対し、日本の自動車メーカーは小型で燃費が良い自動車で市場を奪うことに成功した。(3)プロセス・ニーズ 現在不足しているプロセスや労働力、ノウハウなどを充足・補完することでイノベーションを果たすもの。 例)以前、個人が荷物を送るには郵便局か小荷物取り扱い駅に持参するしかなかった。しかもいつ届くのかさえわからない状況であった。そこに「電話1本で集荷・1個でも家庭へ集荷・翌日配達・運賃は安くて明瞭・荷造りが簡単」というコンセプトの『宅急便』が誕生した。 例)自動化されたもののほとんどが該当する。(4)産業と市場の構造変化 市場における産業構造の変化の機会または脅威を捉え、イノベーションを起こす。 例)モータリゼーション社会を見越したヘンリーフォードは、コンベアシステムにより安価なT型フォードを大量生産し、市場を席巻した。 例)デフレ経済下でのユニクロや吉野家、100円ショップなど。 (5)人口構成の変化 社会の人口の増減、年齢構成の変化、それから生じる所得や雇用の状況などの変化を捉え、イノベーションの機会とするもの。 例)先進国の高齢化社会の進展に向けたビジネス。(6)認識の変化 社会のライフスタイルや価値観の変化を捉え、それを利用してイノベーションを起こすもの。 例)健康志向の高まりにより、健康食品や健康器具を開発する。(7)新しい知識研究開発などにより新しい知識が発見されたら、それを利用した革新的な製品やサービスを開発するもの。 例)自社の電子写真技術(ゼログラフィ)をもとにコピー機を開発したゼロックス 例)セイコーのクォーツ式時計 例)医薬品 「イノベーションの7つの機会」は、現在でも有効な観点だとは思いますが、(2)から(7)まではもはや誰でも気がつきそうな感があります。ただし「(1)予期せざるもの」は私たちがともすれば忘れがちな観点です。 イノベーションはねらったどおり実現することは希で失敗の連続かと思いますが、その経験の中からいかに何かを学べるかが重要です。これはイノベーションに限らず、経営戦略でもビジネスモデルでも意図せざる結果を取り入れて修正していくことが成功の鍵となります。 【参考】 『イノベーションと企業家精神』P.F.ドラッカー著 ダイヤモンド社
■創造性とは異なる分野からの応用 創造性といってもゼロから創造することは不可能です。創造とは何らかの模倣と考えてよいでしょう。ただし同じ分野ではなく、なるべく異なる分野からの応用が世の中で言うところの創造性だと思います。 アップルのマッキントッシュのユーザーインターフェース・OS・マウスは、スティーブ・ジョブズらがゼロックスのパロアルト研究所で見学したコンピュータ技術がベースとなっていますし、マックのデスクトップ・パブリッシング(DTP)はスティーブ・ジョブズが大学で受講していたカリグラフィーがヒントとなっています。 「創造的な人は、どうやってそれをやったのかと聞かれると、ちょっと後ろめたい気持ちになる。実は何をやったわけでもなく、ただ何かに目を留めただけなのだ・・・さまざまな経験を結びつけて、新しいものを生み出すことができたのだ。」 スティーブ・ジョブズ■異なるものと比べる類比法 一見すると関連がなさそうなものと比べるための方法として、類比法というものがあります。これは異なるものと比べる、異なる視点で見ることで異分野のものを応用しようというものです。 類比法では次の3つのアナロジーを用います。①直接的類比 似たものを探し出して、それをヒントにアイデアを発想する。 ②擬人的類比 自分がその要素となりきって、その視点から発想する。 ③象徴的類比 問題を抽象化して、シンボリックな視点から幅広く発想する。 ■生物を模倣する 3つの中で最も発想しやすいのは直接的類比でしょう。ビジネスモデルや業務プロセスを考える際には、同業他社ではなく、異業種の企業のそれを応用するといったベンチマークが行われます。 また製品のアイデアについては、生物や人体を類比対象とする場合があります。生物の生態を模倣した技術をバイオミミクリー(生物模倣技術)といい、次のような例があります。 ・新幹線500系 先頭車両のデザイン←カワセミのくちばし パンタグラフ←フクロウの羽 ・洗濯機の回転盤←イルカの背びれ ・マジックテープ←ごぼうの実 ・競泳水着←サメの肌 ・接着テープ←ヤモリの足 ・トヨタの超省エネエンジン←アネハヅルの血流 製品に限らず、組織を考える際にも人体や魚の群れなどにヒントを得ることができます。京セラのアメーバ組織もそのような例と言えるかもしれません。 【参考】 『イノベーションのDNA』クレイトン・クリステンセンほか著 翔泳社 『全思考法カタログ』三谷宏治著 ディスカヴァー・トゥエンティワン
前回に続きSCAMPERの各項目のサブ質問について取り上げます。Magnify(拡大できないか?) ・何を拡大できるだろう?大きくしたり、引き伸ばしたりできるだろうか? ・誇張したり、おおげさに言ったりできるだろうか? ・何か付け加えられないだろうか?時間は?力は?高さは? ・頻度はどうだろう?「これぞ」の特徴は? ・何か付加価値を与えられるだろうか? ・複製できるところはないだろうか? ・どうしたらドラマチックなまでに究極的に拡大できるだろう?Modify(修正できないか?) ・どうやったらよりよいものに変えられるだろうか? ・どこを修正できるだろう? ・新しい工夫はあるか? ・意味、色、動き、音、香り、形態、形状を変えたら? ・名前を変えてみたら? ・他に変えられるところはないか? ・企画の中で修正できるところは?プロセスやマーケティングではどうだろう? ・他にどんな形が可能だろう?他のパッケージを使ってみたら? ・パッケージは、商品自体の形態と組み合わせられるだろうか?Put to other purpose(他に使い道はないか?) ・他にどんな使い道があるだろう? ・そのままで使える新しい用途はないか? ・修正したら他の使い道が生まれないか? ・他にどんなものができるだろうか? ・拡張してみたら?他の市場ではどうだろう?Eliminate(削除か削減できないか?) ・もっと小さくなったらどうなるだろう? ・何を省けるか? ・分割できないか?裂くことができないか?パーツに分離できないか? ・控えめに表現してみたら? ・簡素化できないか?縮小版は?濃縮は?コンパクトには? ・引き算できないか?削除できないか? ・そのルールは撤廃できないか? ・不必要なものはないか?Rearrange(並び替えできないか?) ・どんな再編をすればもっと良くなるだろうか? ・構成要素を交換できないか? ・他のパターンやレイアウトにできないか? ・他の並べ方はないだろうか?順番を変えてみたらどうなる? ・原因と結果を入れ替えてみたら? ・スピードを変えてみたら? ・スケジュールを変えてみたらどうだろう?Reverse(逆にできないか?) ・肯定・否定を入れ替えられないか? ・反対にあるものとは何だろう? ・否定的なものとは何だろう? ・回転させてみたら?下ではなく上に?上ではなく下に? ・後ろ向きに考えさせてみたら? ・役割を逆転させてみたら? ・予想と反対のことをしてみたらどうだろう? 必ずしもSCAMPERの順に検討する必要はなく、またアイデアがでないなら飛ばしても構いません。「Magnify(拡大できないか?)」や「Modify(修正できないか?)」から始めるのが手っ取り早いかもしれません。 【参考】 発想法の使い方』加藤昌治著 日本経済新聞出版社
前回に続き発想法についてSCAMPERモデルと言われるものを取り上げてみます。 SCAMPERとは、ブレインストーミングの発案者として有名なオズボーンによる発想のチェックリストを改変したものです。対象を絞らず幅広く適用することができます。・Substitute(代用品はないか?) ・Combine(結び付けることはできないか?) ・Adapt(応用・適用させることはできるか?) ・Modify(修正できないか?)あるいはMagnify(拡大できないか?) ・Put to other purpose(他に使い道はないか?) ・Eliminate(削除か削減できないか?) ・Rearrange/Reverse(逆にするか、並び替えできないか?) これだけでは少し大まかすぎて上手く発想できないかもしれません。それぞれの項目にはさらにサブ質問があります。かなり沢山あるので、2回に分けて挙げてみたいと思います。日頃から意識することは困難ですが、参考までにということで。Substitute(代用品はないか?) ・何を代用することができるだろうか?誰を?他にないか? ・規則は変更可能か? ・他の素材は?原料は? ・他にプロセスや手順はないか? ・他の能力に替えられないか? ・ほかの場所はどうか? ・他の方法はないか? ・他に代わりとなるものにはどんなものがあるか?代わりにどんなパーツがあるか?Combine(結び付けることはできないか?) ・どんなアイデア同士が結び付けられるか? ・目的を結びつけることができるか? ・この仕分けかたはどうか? ・混ぜたり、化合したり、アンサンブルは? ・部分同士を結びつけてみてはどうか? ・他にどんな品物を一緒に出来るか? ・組み合わせをどのようにまとめていくか? ・使い道を増やすために、何を結びつければよいか? ・どんな材料を結びつけたらよいか? ・魅力的なもの同士を結びつけたらどうか?Adapt(応用・適用させることはできるか?) ・他にこれと似たものはないか? ・これから他の考え方が思いつかないか? ・過去に似たものはなかったか? ・何か真似することができないか? ・誰かを見習うことができないか? ・何か他のアイデアを取り入れることはできないか? ・何か他のプロセスを応用できないか? ・他に何か応用できるものはないか? ・このコンセプトを違う状況に置くことができないか? ・この分野以外のもので、何かを取り入れられないか? (つづく) 【参考】 発想法の使い方』加藤昌治著 日本経済新聞出版社
私にようにあまり創造的でない人間にとって、創造的な人は羨ましいかぎりです。ビジネスシーンで創造性が求められる場面としては、業務効率化や新商品・新サービスの発想といったことが挙げられます。何か手軽に使えるツールがあれば便利なわけで、私もそれなりにツールを学んできました。 発想法としては、KJリストやマインドマップ、マンダラートなどが有名で、確かに強制的な発想法としては有効だと思います。しかしながら、私のようにめんどくさがりやな人間にとってはいまいち使いにくいし、それよりも手っ取り早く観点的なものが欲しいというのが正直なところです。■発想の基本はECRSの原則? 業務効率化や新商品・新サービスの発想の観点として、個人的に最も原点にあると思えるのが、ECRSの原則です。ECRSの原則は、生産現場における改善の4原則のことで、工程、作業、動作を対象とした分析に対する改善の指針です。改善の順番は、排除(Eliminate)、結合(Combine)、交換(Rearrange)、簡素化(Simplify)の順番で検討するのが一般的です。 E:Eliminate(排除)…なくせないか C:Combine(結合)…一緒にできないか R:Rearrange(交換)…順序の変更はできないか S:Simplify(簡素化)…簡素化・単純化できないか もちろんECRSの原則は、生産現場のみならず、ホワイトカラーの業務の改善にも使えます。また新商品・新サービスの発想にも有効だと思います。たとえば次のようなイメージです。 E:不必要な機能やサービスを省けないか? C:これまでバラバラに提供していたことをまとめてセットで提供できないか? R:サービスの提供順を変えられないか(例:代金先払いから後払いへ) S:過剰だったり分かりにくい機能やサービスをシンプルにできないか?■新商品や新サービスの発想にあたっては「メリハリ」が大事 ただしECRSの原則は、やはり業務の効率改善に主眼を置いているので、基本的には「何かを省く」ことに目的があります。特に新商品や新サービスの発想にあたっては、必ずしも「何かを省く」だけではありません。 本ブログのビジネスモデル⑨で取り上げたブルーオーシャン戦略の4つの観点は、ECRSの考え方を踏まえつつもメリハリをつけることに力点があります。 <ブルーオーシャン戦略の4つの観点> ●業界では当たり前とされるどの要素を「取り除く」べきか? ●どの要素を業界標準以下へと「減らす」べきか? ●どの要素を業界標準より「増やす」べきか? ●業界でこれまで提供されていないどの要素を「付け加える」べきか? (つづく)
2012年12月に始まったアベノミクスによる景気拡大が3月で52ヶ月となり、1990年前後のバブル経済期を抜いて戦後3番目の長さになったとの日経新聞による報道がありました。しかしながら、生活実感としては景気の恩恵を受けていないというのが多くの人の本音でしょう。■景況感は悪い それを裏付けるのが景気ウォッチャー調査です。これはタクシー運転手や商店街で働く人など景気に敏感な職業を対象としたもので、毎月、内閣府より公表されます。アンケート調査により現在の景況と今後の景況の判断を指数化し、50を上回れば景気が良い、あるいは景気が良くなると感じていることになります。 今月の10日に発表された3月の景気の現状判断指数が47.4となり、3カ月連続で低下しました。よって、景気は良くないという判断になります。 ただし内閣府から公表されている資料を見ると、面白いことに気がつきます。家計動向関連で見ると小売、飲食の落ち込みが激しく、企業動向関連で見ると非製造業の落ち込みが激しくなっています。 景気悪化の理由としては、「少子高齢化と競争激化(スーパー)」「燃料費の高騰を価格に転嫁できない(輸送業)」「紙類やサラダ油の値上がり(スーパー)」「人手不足(輸送業)」などが挙げられています。一方、観光業や製造業は堅調という見方が見られます。 要約すると構造的な問題、(円安による)原材料費の高騰、人手不足を抱える業種では景気が悪いという判断になっていると思われます。 こうした理由は企業の業績に直結するものの、景気全体の判断とは分けて考える必要があります。小売業の構造的な問題は景気にかかわらず存在するものですし、円安は原材料費の高騰にはつながるものの輸出企業には追い風になります。人手不足はまさに景気の恩恵です。■雇用環境は改善が続く 一方で内閣府が公表した3月の消費者態度指数は4か月連続で前月を上回っており、特に雇用環境の改善が際立っています。 2月の完全失業率は2.8%と1991年以来の低水準です。また、春闘の賃上げ率を見ると全体では昨年並でしたが、ベースアップの引き上げ幅で中小が大手を逆転するという事態が見られます。■アベノミクスの通信簿 以上を踏まえ、アベノミクスをどのように判断すればよいでしょうか。マクロ経済政策の評価は、GDP成長率と失業率の2点につきます。通常は、GDP成長率が上がれば失業率は低下しますが、両者の間に乖離が生じる場合もあります。 アベノミクス以降の名目GDP成長率を見ると、2013年1.7%、2014年2.1%、2015年3,3%、2016年1.3%であり、OECD 加盟国(34 ヵ国)の平均である3%~4%と比べると見劣りします。 一方、完全失業率は旧民主党政権時代の2012年の4.3%から2.8%に大きく改善しており、構造失業率(経済構造上、これ以下には下げられない失業率)に近づいています。 失業率の改善は既に正社員であったり自分で事業を行っていたりする方や、就業の意思のない主婦の方には無関係ですから、あまり恩恵は感じないでしょう。また、正社員の場合は、そうでな場合よりも、年に賃金が上がるタイミングが春闘の1度しかなく、賃金が上がりにくいです。 しかし学生や非正規社員といった労働市場の限界(境界)に位置する方にとっては、内定率や雇用条件の改善といった明らかな恩恵があります。 まずは失業率を減らすことが優先されますので、アベノミクスは控えめに見ても及第点はクリアしていると言えるのではないでしょうか。
前回は自民党の若手議員が取りまとめた「こども保険」について、実際は税金であることを取り上げました。しかしながら少子高齢化の中で社会全体で子育て支援をするということ自体は間違ったことではありません。■国の歳入は税金と国債 子育て支援のための歳入の確保にあたっては、税金以外にも国債発行という手段があります。 まず国債について確認しておきます。国債には建設国債と赤字国債の2種類があります。 道路などを造る公共事業を目的に発行する国債を建設国債、社会保障費など公共事業以外に充てるための国債を赤字国債と呼びます。 現世代のための歳入の不足で発行された国債はやがて償還され、その負担は償還時の世代(将来世代)が負担することになります。ただし公共事業は将来世代にも受益があるので将来世代が償還の負担を負うことには問題がなく、建設国債の発行は妥当性があります。 一方、赤字国債は現世代に受益がある一方で、将来世代には負担だけがあるので、財政法では原則、発行が認めていません(ただし特例公債という形で発行されています)。■教育は超優良投資案件 さて子育て支援に話を戻すと、子育てで最もお金がかかるのは、大学進学のための教育費でしょう。その教育費を教育国債を発行して賄うという考え方があります。 この場合、受益者は子供(将来の大学生)ですから、建設国債と同じと考えることができます。高等教育を受けることで将来は所得増、失業減などの恩恵があり、便益と費用の比率は2・4程度という実証研究があり、現在の公共事業採択基準を軽くクリアしています。現在、国債発行で借金しても、軽く返してもらえ、かつ将来の所得税収増(失業保険や生活手当の負担減)というリターンも期待できるのです。 ■教育国債は国債の品不足にも役立つ 実際に財務省のガイドラインでも教育のための国債発行の妥当性が認められているのですが、財務省は財政悪化を理由に難色を示しています。こども保険を推進する小泉進次郎氏、村井英樹代議士、麻生財務相も同じ立場です。民進党は教育国債を提案しているのは評価できるのですが、財源は増税ですから本質的に変わりません。繰り返しになりますが、教育国債は大きなリターンを期待でき、かつ受益者負担の原則にも叶うのですから、否定できる論理はないように思えます。 さらに現在の日銀の量的緩和の成約として国債の品不足があります。新規発行分のほぼ全てを日銀が買っているため金融機関分が不足しており、3月末には約8年ぶりに約1兆円もの国債を逆に市場に供給しているくらいです。教育国債の発行は、こうした国債の品不足の解消にもつながるのではないでしょうか。 【参考】 【日本の解き方】高橋洋一「教育無償化の財源は国債で 知識への投資は最大利益、王道は憲法改正による実現」
自民党の小泉進次郎・農林部会長ら自民党の2020年以降の経済財政構想小委員会の若手議員が、保育や幼児教育無償化のための「こども保険」を創設する提言をまとめたことに対し、「ほとんど詐称ではないか」という指摘が一部のエコノミストから指摘されています。 こども保険は、企業と従業員らの保険料に上乗せして集めた資金を財源に、未就学児への児童手当を加算する仕組みです。端的に言えば、20歳から60歳までの現役世代の人で、「子育てする人」を支援するというものです。 これだけ聞くと、少子高齢化の中で社会全体で子育て支援をするということで、なかなか良いアイデアのように思えます。■こども保険は保険なのか? 保険とは、偶然に発生する事象(保険事故)に備えるために多数の者(保険契約者)が保険料を出し、事象が発生した者(被保険者)に保険金を給付するものです。 つまり何らかのリスクに同様に直面する人たちが掛金を積み、実際にリスクに合えば保険金がもらえ、リスクに合わなければ保険金がもらえないという掛け捨ての考え方が基本になります。 自動車保険は事故に合わなければ掛金が無駄になるし、年金保険も長生きしなければ何ももらえません。提言されているこども保険で保険事故にあたるのは「出産(育児)」です。中高齢者のように子供を産む可能性が極めて低い層からも保険金を徴収しますから、保険とは言えず、税金といったほうが正確です。 ■復興税や消費増税と同じパターン? 「瑣末な定義の問題にこだわる必要があるのか?子育てを社会的に支援するのでいいのではないか?」という意見もあろうかと思います。 しかしながらこども保険には、復興税や消費増税と同じロジックが透けて見えてきます。何か社会的な意義があるものを表に出して増税を図るといういつものパターンです。 小泉進次郎氏は財政再建派(増税派)、「2020年以降の経済財政構想小委員会」の事務局長である村井英樹代議士は財務省出身で同じく増税派、お墨付きを与えている麻生財務相も増税派です。日本人の保険への肯定的なイメージを使って保険と偽って導入し、やがてジリジリと保険料(実態は税金)を上げるという筋書きを感じさせてしまうのです。 (つづく)
前回は次期総裁候補に挙がっている日銀関係者を取り上げましたが、今回は財務省関係者および経済学者の候補を取り上げてみます。武藤敏郎大和総研理事長 財務事務次官を経て福井総裁時代に日銀副総裁に就任。福田政権時にポスト福井の総裁候補となりましたが、民主党(当時)の反対により否決されました。2014年より東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の事務総長にも就任しています。 ただし五輪エンブレム問題での対応があまり国民の受けがよくないというのがマイナス面かもしれません。あくまで個人的な印象ですが、金融緩和についてはあまり積極的ではないように思えます。先の総裁候補時の所信表明で2006年に金融緩和を時期尚早に手仕舞った時の副総裁であるからです。また、財務省本流(主計畑)出身であり消費増税には積極的と考えられ、個人的には適当とは思えません。森信親金融庁長官 金融機関再編に積極的で、「強みのない銀行に残された時間は少ない」と市場での競争を通じた銀行改革を主張している点で従来の金融行政とは異なる姿勢が評価されています(金融機関の見方は別かもしれませんが)。基本的には構造改革主義の立場なようです。財務省出身ですが金融監督畑中心のキャリアで金融政策に対する考え方はよく分かりません。構造改革一辺倒で財政政策に消極的だと困るのですが…。岩田一政日本経済研究センター理事長 経済企画庁(現内閣府)出身。2003年3月日本銀行副総裁に就任。2007年に福井日銀が早すぎる利上げに踏み切った際、日本銀行政策委員会でただ一人反対し、その点を評価する声が結構あります。副総裁は総裁を補佐する立場であり、総裁意見に異を唱えることは1998年の日本銀行法改正以来で初めてです。 日本銀行の量的緩和を評価しつつも、十分に効果が上がらないのは成長戦略のせいだとしています。また2014年度の消費増税については懐疑的ですが、2030年までには25%まで引き上げないといけないとしています。財政政策には否定的な立場であるように思います。伊藤隆敏コロンビア大教授 東京大学名誉教授、一橋大学名誉教授を兼ねる学究畑の人。早くからインフレターゲットを提唱し、金融緩和には積極的な立場です。福田政権時に副総裁候補として 名前が挙がりましたが、民主党の反対で否決されました。 マイナス面では3・11後に復興増税を提唱し、消費増税にも積極的な姿勢であることが挙げられます。官僚組織での経験がなく、財務省出身者と日銀プロパーの就任が慣例となっている総裁の可能性は低いでしょう。本田悦朗駐スイス特命全権大使 内閣官房参与。財務省出身ですが、国際金融畑を中心としたキャリアであり、主計局・主税局といった本流ではありません。2012年に退官し静岡県立大学教授に転身しています。浜田宏一参与(イェール大学名誉教授)、高橋洋一嘉悦大学教授、山本幸三参院議員とともにアベノミクスの指南役として知られており、安部総理からの信頼も絶大だと言われています。 インフレターゲットを主張し、量的緩和に積極的です。消費税については消極的で、当初はやるにしても1%ずつの段階的な引き上げを主張していましたが、2014年の増税後の消費低迷から、むしろ2%の減税を主張しています。 2016年度の特命全権大使就任は本人希望によるものです。ただ財務省出身ではありますが、いかんせんどちらかというと傍流のキャリアなので泊をつけさせるという政権の意向もあるという見方があります。 大方の見方では、筆頭が黒田総裁留任、次点が本田悦朗駐スイス特命全権大使、中曽宏副総裁というようです。個人的には本田悦朗駐スイス特命全権大使を推したいです。
日銀の黒田東彦総裁の任期が残りあと約1年となったことから、日本経済新聞などで次期総裁候補が取り沙汰されています。ここで勝手に総裁候補を占ってみます。日銀総裁の見識として注目したい点は、①量的緩和政策の維持・拡大についてどう考えているか②財政政策や成長戦略についてどう考えているかの2点です。 ②については政府マターですので本来は日銀の担当外ですが、重視する経済政策を知る上で注意したいところです。 先にお断りしておくと、本ブログのスタンスは、①デフレ脱却のために量的緩和政策は維持・拡大すべきである②日本は深刻な財政問題に陥っているわけではなく、消費増税はデフレ圧力となるだけで当面は不要であるというものです。この立場から今回は次期総裁候補に挙がっている日銀関係者を評価してみたいと思います。黒田東彦総裁 エコノミストを対象としたアンケートなどで一番高くランクされるのが黒田現総裁です。現政策の維持という観点から高評価につながっているものと考えられます。また2月の完全失業率が2.8%と1991年の6月以来の低水準にまで改善させたことは素直に評価して良い点です。 マイナス面としては、財務省出身で消費増税に積極的であること(2014年度の増税時には経済に影響はないという発言をしています)は疑問符が付きます。さらに増税後の追加緩和のタイミングが遅すぎたという指摘もあります。 安倍総理との信頼関係はあるものと思われますが、総裁任期5年を超えて在任したケースは戦後でも2人しかおらず、続投はさせにくいかもしれません。岩田規久男副総裁 岩田副総裁は1990年代から日本銀行批判の急先鋒であり、そのものズバリ「日本銀行は信用できるか」「日本銀行 デフレの番人」という著書もあります。現執行部で最も量的緩和に積極的とも言われますが、個人的には就任を期待したい1人です。 マイナス面としては、もともと学究肌の人(前任は学習院大学教授)なので官僚組織の運営について未知数であること、上記の経緯から日銀内部の反発が大きいことが予想されること、就任前に2年程度で2%の物価目標が実現できない場合は辞職すると発言したこと(実際は先送り)が与野党から反発される恐れが高いことが挙げられます。 総裁人事はこれまで慣例上は財務省出身者と日銀プロパーで占められていますので、可能性としては低いでしょう。中曽宏副総裁 日銀プロパーで白川前総裁時の日銀理事を経て副総裁に就任。最近の講演でも量的緩和の重要性を訴えたようで現政策の維持が期待されます。日銀内部的には日銀出身者の総裁就任を待望しているでしょうから有力な候補と言えます。 マイナス面では2014年の消費増税の影響を過小評価したこと(「消費増税後の反動減は想定の範囲内」と発言)が気になります。雨宮正佳理事 日銀プロパーで、前白川総裁時に理事に就任、その後大阪支店長を経て黒田総裁就任時に異例の理事再任という経歴です。日銀のプリンスとの声もあります。黒田総裁の片腕として事務方トップとして緩和策をとりまとめ、政府との調整にも奔走したとの評価があります。 マイナス面としては、雨宮理事はもともと量的緩和に消極的でただサラリーマン的に現体制に従っているだけという見方もあります。 日銀内部にはまだまだ量的緩和に否定的な声が大きく、結局日銀プロパーは面従腹背か単にサラリーマン的に現黒田総裁の方針に従っているだけという声があります。以前、私がある会でお話した日銀の方も「デフレのほうが購買力が上がって良い」と断言していました。 日銀出身の総裁(速水・福井・白川)がデフレ脱却を約束しながらまったく消極的であったことから、どうも日銀出身の方の総裁就任には懸念がつきまとってしまうのです。
3月末に参院本会議で平成29年度予算案が可決されました。一般会計の総額が過去最大の97兆4547億円となり、国の財政問題とからめて報道されるケースが多いようです。 一般会計予算は過去最大が5年連続で続いており、一見すると「財政問題が厳しい中でそんなに大盤振る舞いして良いのか」「もっと歳出を切り詰めるべきでは」といった印象を持ちます。 さらに年度途中で補正予算が組まれることが多いことからもそのような印象を持ちがちです。 アベノミクス以降の一般会計予算の推移を見てみましょう。 <一般会計予算> 平成29年度 一般会計予算97.4兆円 平成28年度 一般会計予算96.7兆円+補正予算0.8兆円+第2次補正予算3.3兆円+第3次補正予算0.2兆円 平成27年度 一般会計予算96.3兆円+補正予算3.5兆円 平成26年度 一般会計予算95.8兆円+補正予算3.1兆円 平成25年度 一般会計予算92.6兆円+補正予算5.4兆円 予算がある以上は決算があります。ほとんど注目されていませんが、国の場合も 決算が当然あります。財務省から現在公表されている決算の状況も見てみましょう。 <決算> 平成27年度:98,2兆円 平成26年度:98,8兆円 平成25年度:100,1兆円 アベノミクスというとどうしても大盤振る舞いの印象があるかもしれませんが、決算の状況を見ると異なる印象をもちます。国の歳出は最初の1年を除いて減少する一方で、2014年度には消費増税に踏み切っていますので(毎年約7兆円の負担増)、トータルではかなり緊縮気味に推移していることになります。 消費者物価上昇率(総合)が前年同月比で0.3%と低迷しているのは、このあたりに事情があるようにも思えます。