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なぜ有事だと円高になるのか?②

テレビのニュースを聞いていておかしいと思うのは、日本の財政危機を煽りながら、一方で為替の話になると「国際情勢の不確実性が高まる中で安全資産である円が買われ・・・」などとコメントすることです。財政危機の国の通貨が安全資産であろうはずがありません。最近では、さすがにマズいと思ったのかわかりませんが、「安全資産と思われている円が買われ・・」などと微妙に表現が変わりつつあります。


■安全でなければ円高になるはずがない

結局のところ、有事の際に円が買われ円高になるのは、日本の財政が他国と比べて安全だと思われているからではないでしょうか。少なくともマーケット関係者は日本の財政問題を深刻には考えていないから、有事の際には円を買っているということでしょう。

先日、来日したノーベル経済学賞受賞者でコロンビア大学のスティグリッツ教授は、「日本の1000兆円の政府債務と(統合政府の一部である)日本銀行が保有する400兆円の国債(資産)は相殺されるので財政問題は遠のく」という趣旨の発言をしています。

日本政府の借金は子会社の日銀の資産ですから相殺されるということは、当ブロクでも取り上げてきました。政府資産は600兆円ですから資産と債務の帳尻が合うわけです。


■日経新聞の指摘は正しいか?

有事の円買いの理由として日経新聞があげたのは、長期的なデフレ、超低金利、世界最大の対外純資産残高の3つです。

1つめについて、デフレは円の購買力の上昇を意味します。少額で多くのものを買えるようになるからです。よって購買力が高い円が買われるというわけです。ただしこれは金融緩和をさぼった結果(特にアベノミクス以前)ですから、今に始まったことではなく、さらに有事に限ったことでもないので説明にはなりません。

2つめの超低金利は、いわゆる裁定取引と呼ばれる短期売買の動きであり、そういうこともあるという程度ですから、為替トレンドを把握する際には無理があります。前回触れた実質金利差による為替変動(相対的に金利が高い国の通貨が買われる)とも整合しません。

3つめについて、日本は政府と民間を合わせて2015年末時点で約339兆円の対外資産があります。有事になると、心配になり国内の資産に戻そうとしますが、国内の資産は円建てですので、その際に円が買われるというものです。これはそれなりに妥当性があるかもしれませんが、民間レベルの話で資産の国内回帰という話はあまり聞いたことがありません。

ただしこの記事が面白いのは増税派の日経新聞らしく、「マーケットが単に円が安全だと思い込んでいるだけで根拠がない」としている点です。いまさら財政問題がないことを認められないので、それ以外の瑣末な理由を何とか寄せ集めている努力が感じられます。

2014年度の消費増税後の消費の落ち込みについて、増税派の某大学教授が「広島の水害と、テング熱と、冷夏の影響」としていましたが、いずれも景気にはほとんど無関係です。今回の日経の記事にも同じスタンスが感じられてしまうのです。

スティグリッツ、シムズ、クルーグマンといったノーベル賞クラスの世界的な学者が財政拡大を提案するたびに、なぜ日経新聞はいつも反対するのか考えてみる価値があると思います。


■今回の朝鮮半島問題の場合は今後次第

ここまで円が買われる背景として、日本の財政事情には問題がないこと(と思われていること)がある点から触れました。

しかしながら今回の朝鮮半島問題については、今後の推移によるところが大きいとしか言えません。

今のところはやや円高気味に推移していますが、日本にも深刻な事態が生じるようであれば、ドルが買われ円が売られる可能性は十分にあります。一方、事態が日本にあまり影響が無ければ、朝鮮半島の復興需要に伴い円が買われる可能性が高いでしょう。

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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