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信頼の科学③

信頼についてブログで取り上げていたら、ちょうど良いことに(?)富士フィルム傘下の富士ゼロックスでも粉飾会計が発覚しました。以前は、日本の企業の不祥事といえば、現場の暴走によるものが多かったのですが、昨今の不祥事は経営陣が事実上、指示を出している点が特徴的です。一度、失った信頼を取り戻すことは容易ではありませんが、取り戻すためにはどのようなことが必要なのでしょうか?


■再発防止策は信じられるか?

前回の「信頼の科学③」で触れたように、問題が発生したとき、メッセージを送ろうとする相手の価値を理解する姿勢は常に重要です。また、自分たちの提案する対策が、なすべきこととして衆目の一致するところであるような場合には、その対策を実行する能力があると見なされるかが信頼を左右します。

企業の粉飾会計の場合、誰が見ても問題なのは明らかであり、「内部監査の仕組みを強化する」とか「意識改革を行う」とかいった対策が発表されるわけですが、基地いているほうからすれば白々しさ満載で、「本当に実効性があるのか」疑問視してしまいます。


■もっと厳しい罰則規定を

企業の不祥事への防止策としてまず浮かぶのが外部からの罰則強化です。東芝問題などを見ても、粉飾を不適切会計として見たり、上場停止になかなかしなかったりといったように、少々手ぬるい印象があります。

アメリカでは、エンロン事件やワールドコム事件など1990年代末から2000年代初頭にかけて発生した粉飾会計問題を受けて、2002年に投資家に対する企業経営者の責任と義務・罰則を定めたサーベンス・オクスリー法が成立しました。同第404条では、CEOとCFOに対してSEC(米国証券取引委員)へ提出する書類に「虚偽や記載漏れがないこと」「内部統制の有効性評価の開示」などを保証する証明書と署名を添付することを求めています。虚偽があった場合には個人的な責任が問われることになり、罰則として罰金もしくは5~20年の禁固刑という厳しい刑事罰が設けられています。

また株式上場の即時停止などの罰則規定を徹底すれば、不祥事に際し株主代表訴訟のリスクが高まり、また平時の株主によるガバナンスも効きやすくなるでしょう。

このような企業に対する規制や罰則の強化は、監視と制裁のメカニズムであり、俗に「人質供出」と呼ばれます。


■自ら罰則規定を設けるしか信頼は回復しない

さて、このような外部からの監視と制裁のメカニズムは粉飾の防止策とはなり得ても、社会からの信頼性の回復にはつながりません。それは受身の姿勢だからです。江戸時代に幕府は外様大名に人質を無理やり供出させて謀反を防止しましたが、信頼はしていなかったはずです。

そこで信頼の回復に求められるのが、要求されたから人質を出すのではなく、自主的に人質を出すこと(自発的に監視と制裁のメカニズムを導入すること)です。たとえば、不適切会計があったら経営陣は報酬を返上するとか、辞職する(無職になる)とかいった厳しい罰則を定款に明記したり宣言したりするといったことです。

これはゲーム理論で言われるコミットメント戦略です。コミットメントとは、「自分が将来にとる行動を表明し、それを確実に実行することを約束すること」です。

いわば背水の陣を敷くことで信頼を勝ち得るということです。東芝の例を見てもわかるように、委員会等設置会社にしても社外取締役を招聘しても、はっきりいって効果はあまり期待できないでしょう。失った信頼を回復するには、自らを厳しく罰する制度を自分で作るしかないのではないでしょうか。


【参考】
『信頼学の教室』中谷内一也著 講談社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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