ポスト安倍の経済学
いまだにマスメディアの報道をそのまま鵜呑みにしている人はもはや少数派だろうと思っていたら、政権寄りと言われる読売新聞でも7~9日の世論調査で、内閣支持率は前回調査(6月17、18日)から13ポイント減の36%と急落し、下げ止まる感がありません。
政権側の国会での証言や加戸守行・前愛媛県知事の発言など政権に有利となる情報はマスメディアにブロックされ、公正な観点で情報を知るにはネットを頼るしかありません。「首相の釈明を聞いても不透明感が拭えない」などという報道を聞いていると、自分たちで報道しないから拭えないのでは?と突っ込みたくもなります。
ポスト安倍がささやかれる中、27日民進党の蓮舫代表が辞任を表明しました。そこで現在、ポスト安倍と見られている人物、民進党代表候補の経済政策を確認したいと思います。
■自民党
まず政権構造を確認しておくと、安倍政権は官邸・内閣・与党・霞ヶ関の微妙なバランスの上に成り立っていると言えます。現在の安倍官邸は、経済政策的には必ずしも自民党の主流とは言えません。2度延期したことから分かるように安倍官邸は消費増税に消極的ですが、霞ヶ関(財務省)にくっついている自民党の経済政策の主流的な考え方は消費増税です。さらに金融緩和についても意見が異なります。
「金融緩和継続・消費増税反対」の立場の代表的な人物と言えば、おそらく安倍総理、菅官房長官、世耕経産大臣くらいでしょう。「金融緩和継続・消費増税賛成」の立場は麻生財務相、山本地方創世相、小泉進次郎氏などですが、与党内の最も多数は消極的にはこの立場であると考えられます。
一方、「金融引き締め・消費増税賛成」というアベノミクス全否定の代表格は石破茂氏です。
■民進党
現在、代表選に意欲を示しているとされるのが、前原氏と枝野氏です。両氏とも「金融引き締め・消費増税賛成」です。前原氏は民主党時代には金融緩和派だったのですが、安倍政権誕生以降は緊縮派になったようです。
枝野氏は「金融引き締めで金利が上がったほうが景気が良くなる」というどの経済学のテキストにも載っていない(実際になったこともない)珍説の持ち主です。おそらく貯蓄の金利が上がったほうがよいということを言っているのだと思いますが、金利が上がれば設備投資や住宅投資が落ちますから経済が失速するのは常識です。もしかしたら「景気が良くなると(資金需要が増えるので)金利が上がる」ことを勘違いして「金利が上がると景気が良くなる」と思い込んでいるのかもしれません。
経済政策で期待できるのは、馬淵澄夫氏です。馬淵氏は金融緩和派で消費増税凍結を明言しています。個人的には出馬可能性は高いと見ています。いずれにせよ前原氏と枝野氏では今までの民進党とあまり代わり映えしないのではないでしょうか。
■誰がなってもお先真っ暗
こうして見ると、誰が安倍総理の代わりに総理になってもお先真っ暗です。民進党が政権を取ることは考えにくいので除外すると、特に石破氏になると最悪だと言わざるを得ません。なにしろ「景気対策の経済政策を一切やらない」と言っているわけですから。
石破氏は成長戦略を重視しているようですが、成長戦略の効果は10年から20年かかるというのが経済学の常識で、足元の経済にはまったく効果はありません。
また18日付産経新聞によれば、15年9月9日、石破氏は、衆院議員会館の自室で日本獣医師政治連盟委員長の北村直人氏と、日本獣医師会会長の蔵内勇夫氏に対して、「学部の新設条件は大変苦慮しましたが、練りに練って、誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にしました」と語ったと言います。つまり今回の加計騒動で有名になった「石破4条件」は獣医師会の政界工作の成果だと言え、石破氏は規制緩和ではなく岩盤規制派だと言えます。
自民党国会議員内で受けが悪く、第2次安倍政権発足当初から自身の総裁意欲が見え見えで評判ガタ落ちですから、今のところ石破氏の総裁就任は厳しいと思いますが、一部マスコミが倒閣のために担いでいるようで変な風が吹くと就任するかもしれません。緊縮財政に転じたい財務省ものるでしょう。
ただ仮に誰がなっても発言どおり経済政策をすれば、景気はガタ落ちしますから、おそらく1年くらいで政権交代になると思います。ちょうどリーマンショック後に政権が1年おきに変わったように。ほぼ確実に日本のデフレ脱却は遠のくでしょう。