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エスカレートする交渉(勝者の呪い)③

前回の「エスカレートする交渉(勝者の呪い)②」では、企業買収を例に「勝者の呪い(勝者ですら損をする)」を取り上げました。

このような不毛な競争を回避するにはどうすればよいでしょうか。ゲーム理論で言うところのコミットメント戦略を取り上げたいと思います。

 

 

■コミットメントで不毛な戦いを回避する

 

コミットメントとは、「自分が将来にとる行動を表明し、それを確実に実行することを約束すること」です。

 

前回のケースは、1990年代半ばのアメリカの航空会社の買収合戦を例にしたものです。USエアの身売りに対し、アメリカン航空とユナイテッド航空が興味を示し買収合戦が始まりかけました。

 

このゲームでは勝者がいないことを見抜いたアメリカン航空のCEOは、「当社がUSエアに買収提案をすることはない。ただしユナイテッドが買収提案すれば、競争上の地位を確保するために必要な措置を講じる」と発表しました。つまりユナイテッド航空に「現状を変えるな。さもないと互いに多額の資金を失うことになる。」とメッセージを送ったのです。ユナイテッド航空はこれを受けて買収提案をせず、不毛な買収合戦が回避されました。アメリカン航空が「ユナイテッド航空が買収に乗り出せば、うちも必ず徹底的に闘う」と表明したことは、コミットメント戦略と言えます。

 

コミットメント戦略には大きなリスクがあります。ただし不毛な戦いになりそうなら、競争相手にもそれを分からせる必要があり、そのためには非常に有効です。

 

コミットメントで不毛な戦いを回避したケースをもう1つ取り上げましょう。1980年代、アメリカのビッグ3(フォード、GM、クライスラー)の3社で新車販売のリベート合戦が始まり、各社の収益を圧迫していました。そこでリベート合戦に終止符を打つために、GMのCEOリー・アイアコッカは「他社が新たなリベートプログラムを導入したら、必ず当社はそれを上回るものを導入する」と発表したのです。他社はそのメッセージを適切に読み取り、リベート合戦は終わりました。

 

 

■最低価格保証

 

このブログでも以前に取り上げましたが、最低価格保証もコミットメント戦略の一種です。

最低価格保証とは、「他店より1円でも高ければ当店は必ず安くします」というものです。家電量販店などでよく見られます。一見すると際限のない価格競争になると思いがちですが、実際には価格競争を抑制する効果があります。

 

ライバル店が値下げすれば必ず自店も値下げすることになり、ライバル店は値下げする意味がなくなります。互いに最低価格保証を採用することで、相互に値下げへの牽制ということになり、価格競争が抑制されます。

 

 

【参考】

「交渉の達人」ディーパック・マルホトラ、マックス・H・ベイザーマン著 日本経済新聞社

 

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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