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経済学を学ぶ意義④(経済歴史戦1)

ここ数年、いわゆる従軍慰安婦に関する朝日新聞の誤報や南京事件など私たちが定説と信じていたことが事実ではないということが徐々に広まりつつあります。こうした問題が事実だと考えている人は多いと思います。長く定説として存在してしまった内容を後から覆すことは容易なことではありません。

義務教育や高校・予備校で習ったり、テレビの歴史番組で放送したりしている日本史の内容が、実はまったく事実と異なるということが後からわかることが少なくありません。私は歴史家ではないので、歴史問題についてブログで論評はしませんが、同様のことが経済史でも言えます。

このことについて、日本史上で、私が個人的に考える最も偉大な政治家3人を例に挙げたいと思います。

 

 

■天才勘定奉行

 

荻原重秀は江戸時代の元禄期に貨幣の改鋳を行った勘定奉行です。江戸時代の貨幣は金銀本位制、すなわち国の所有する金や銀の量に応じて貨幣が発行されていました。もちろん現在は、政府の信用力に基づいて金や銀の保有量に関係なく紙幣を発行することができます(不換紙幣あるいは信用紙幣)。

 

元禄期というと華やかなインフレ経済に思えますが、実は金銀産出量の低下(貨幣供給の減少)と活発な経済活動による貨幣の取引需要の増加により、デフレ化していました。貨幣も市場の需要と供給で決まるので、超過需要になると貨幣の価値はあがります。デフレとは貨幣価値が上昇する傾向です。

 

そこで荻原は金銀の含有率を減らした元禄金・元禄銀を作り、貨幣量を拡大させることにしました。つまり貨幣改鋳です。荻原は金銀本位制の貨幣から幕府の権威による信用通貨へと移行することで緩やかなインフレを実現してデフレの状態を回避しようとしたのです。これは政府の信用力に基づく貨幣発行という現在の貨幣理論そのものです。

 

この貨幣改鋳は今で言えば中央銀行の量的金融緩和政策を意味し、アベノミクスの一本目の矢であり、リフレーション政策なのです。私は海外の経済史については詳しくありませんが、鎖国という海外からの情報が制限された中で江戸時代にこのような300年も時代を先取りした人物がいたことに驚きを禁じえません。荻原の政策は、実際に効果を上げ、物価上昇率3%のゆるやかなインフレを実現し、元禄経済の再活性化を果たします。

 

確かにその後の貨幣改鋳は容認しがたいインフレを招いたことは事実ですが、荻原は経済政策という点では天才といえます。

 

 

■道徳感情で経済を語る愚かさ

 

しかしながら歴史教育上の荻原の評価は最悪で「幕府の財政危機を回避するという都合主義で貨幣を改鋳し、極端なインフレを招いて庶民を困窮させた」というように教えられるのが一般的です。この際ですのではっきり言うと、歴史教育者は経済学について知らなさすぎです。貨幣改鋳を貨幣偽造と同じように考えているのではないかと疑ってしまいます。

 

貨幣改鋳(量的金融緩和)に対する否定的な見方は、現在でもマスコミ報道を通じて未だに根強く浸透しています。「政府がご都合主義で安易に紙幣を刷るなどけしからん」というのは感情的には理解できますが、それでは単に道徳感情で経済を語っているにすぎないのではないでしょうか。

 

 

 

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経済学を学ぶ意義③

■経済なくして社会は語れない

 

受験指導校での経済学の講義も佳境に差し掛かっていますが、教壇から見ていると受講生の方の焦燥感(ぜんぜん分からない!)が手に取るようにわかります。いかんせんほとんどの方にとって経済学は初めての経験ですし、学習内容に身近な感覚が持てないのは無理からぬところです。

 

しかしながら、それでも私は経済学を学ぶ意義は大きいと考えています。なぜなら多くの場合、社会現象は経済現象ととらえることができるからです。

 

不況が続くと治安が悪くなり政権が不安定化し、政権交代に至ることも少なくありません。日本の自民党政権から旧民主党政権への交代はリーマンショック後の不況とは無関係ではないでしょう。ヨーロッパ諸国の政治状況が不安定化しているのは、失業率が高いことが背景にあります。

 

歴史的に見ても、ナチスの台頭はワイマール体制下での経済失政が原因でしょうし、逆に言えば日本で自民党政権が長く続いたのは高度経済成長のおかげだとも言えます。

 

「経済なくして社会は語れない」のです。

 

 

川を上り海を渡れ

 

前回、「川を上り海を渡れ(過去の事例をあたり、海外の事例を調べよ)」という教訓をご紹介しました。私自身、マクロ経済について自分なりに学んだ結果、少しものの見方が変わったような気がします。このブログもそうですが、実証的に裏付けがあるものでないと情報として意味がないと考えています。

 

診断士を始め、コンサルタント、企画部門、政策立案者という立場にある人は、主観ではなく、できるだけ客観的・実証的な姿勢が求められると思います。個人として生きていくためには主観とか価値観といったことは必要でしょうが、助言する、教えるという立場にいる人間が個人の単なるイデオロギーを相手に押し付けるのは間違いだと感じています。そんなところも経済学学習を通じて感じてもらえたら有難いと思います。

 

企業診断2月号で「川を上り海を渡れ」の観点で失業率の改善と人口問題についての記事を執筆しました。機会がありましたらご覧いただければ幸いです。100000009002913409_10204.jpg

経済学を学ぶ意義②

 ■経済学学習で求められるのは演繹法

 

担当している中小企業診断士講座で経済学の講義が始まったので、経済学を学ぶ意義について考えたいと思います。以前、このブログでも「経済学を学ぶ意義①(帰納法と演繹法)」で触れたように、経済学は演繹法的思考法の練習になります。

 

演繹法とは、いわゆる三段論法のことで、絶対的に正しいことや、一般的に正しいと判断されること(前提)から、妥当と思われる結論を導くものです。たとえば「人は必ず死ぬ」「ソクラテスは人間である」という前提条件から、「だからソクラテスは必ず死ぬ」という結論を得ます。

 

経済学では「『追加的な便益が追加的な費用を上回れば行動する」という前提をもとに、企業行動や消費者行動、市場分析を行いますので、演繹的な思考が求められます。

 

 

■帰納法は印象論にすぎない

 

一方、わたしたちは帰納法的に考える傾向があります。帰納法とは、簡単に言えば、いくつかの事象から共通する項目を見つけ出してそれを結論にするという思考のことです。たとえば、

 

Aさんは朝型で営業成績が優秀だ。

Bさんは朝型で営業成績が優秀だ。

Cさんは朝型で営業成績が優秀だ。

 

以上から、「朝型人間は営業成績が優秀だ」という結論を得る思考法です。しかしながら、朝型でなくても営業成績が良い人はいくらでもいるでしょうし、そもそもこの3人の共通点が、「新規訪問件数が多い」「段取りがうまい」「楽天的だ」など朝型以外にあるかもしれません。

 

帰納法はあくまで印象論なのです。もちろん帰納法自体は否定できるものではありませんが、あくまでそれは仮説を立てるものだという認識が必要です。

 

 

■経営者、一企業目線で経済を語る

 

残念ながら優秀な経営者や一流の経営学者であってもマクロ経済を語るとまったくの的外れということは少なくありません。こうした人たちは企業経営を語るのと同じノリで日本のGDPも語るので、規制緩和や生産性向上といった成長政策(第三の矢)が最も重要だと考える傾向があります。

 

これもイメージしやすい自分の身の回りで発想するという点では帰納的思考だといえます。その割にデフレ期には設備投資せずにせっせと内部留保(現預金)を積み上げるので困ったものです。

 

成長政策の効果は10年以上かかるというのが実態ですし、そもそも成長政策だけで経済成長した国は存在しません。

 

 

川を上り海を渡れ

 

もちろん経済学でも何らかの仮説を立てる際には帰納法を用います。ただし仮説だからといって適当でよいはずはありません。

 

旧大蔵省では「川を上り海を渡れ」という教訓があったといいます。これは「過去の事例をあたり、海外の事例を調べよ」ということです。自分がよいと考えている政策が、本当に過去に成果を上げたのか、海外ではどうかを検証する必要があるでしょう。

 

このことは私たちのビジネス環境においても同様です。思い込みで判断するのではなく「過去はどうか」「他社はどうなのか」検証する姿勢が求められます。

リニア談合疑惑をゲーム理論で考える

リニア中央新幹線の建設工事を巡るゼネコン大手4社への東京地検特捜部などの調べに対し、まず大林組が談合を認め、その後に清水建設が続く形となり、談合を否認する鹿島建設、大成建設とで対応が分かれています。

 

 

■囚人のジレンマゲーム

 

今回の疑惑についてはゼネコン側にも同情の声があり、真相がよくわからない面もあります。ちょうど講義でゲーム理論の囚人のジレンマを扱っており、今回のケースは格好のネタです。

 

囚人のジレンマについては、以前、このブログでも取り上げましたが、再掲します。共犯の疑いで捕まった囚人Aと囚人Bが独居房にそれぞれ入れられており、捜査官の取り調べを受けています。

談合のジレンマ 図の見方は、(囚人Aの利得:囚人Bの利得)です。たとえば囚人ABともに黙秘すれば互いに刑期は1年で済みます(刑期はマイナスの利得なのでマイナス表示にしています)。しかし片方が裏切って自白をすれば、裏切ったほうは司法取引でお咎めなしですが、黙秘を貫いたほうは刑期が3年になります。両方黙秘をとおせば、互いに刑期は2年です。

 

囚人Aは囚人Bの行動が分からずに自分の利得を考えて行動するとしたら、自白を選ぶことになります。なぜなら囚人Bが黙秘する場合も自白する場合も囚人Bにとっては自白するほうが刑期が軽くて済むからです。

 

ちなみの囚人Bも同じ理由で自白を選ぶことになり、両人とも刑期2年に服すことになります。しかしながらお互い協調して黙秘すれば刑期は1年で済みますから、囚人にとっては良い結果ではありません。

 

このように非協調な行動の結果、協調した場合よりも利益が下がってしまうことを囚人のジレンマといいます。囚人のジレンマゲームの面白いところは、自らの利益の最大化を図るという合理的な判断が、結果的には低い利益になってしまうということです。

 

 

■談合疑惑での特捜の攻め方

 

今回の疑惑の場合、囚人Aを大林組、囚人Bをその他のゼネコンとすると大林組の行動を理解することができます。ここからは想像ですが、当初、ゼネコン4社では話し合いは情報交換であるという主張を通すことで一致していたはずです。それにもかかわらず、大林組が真っ先に東京地検の軍門に下ったので、残り3社としては怒り心頭といったところでしょう。しかし協調が崩れたと判断した清水建設がその後、続いて恭順に廻ったことで、ゼネコン側の当初の方針は崩れてしまったと考えられると思います。残った2社としても否認を続けていれば損するだけですから、談合だったかどうか事実はともかく、やがて東京地検の軍門に下るのではないでしょうか。

 

これまでも談合事件は多々ありましたが、地検特捜部の攻め方は、まず1社の切り崩しにかかることだといわれます。すなわち「今のうちに、おたくが自白すれば悪いようにしない」というわけです。今回のケースでも後から工事調整に加わった大林組にはそのようなアプローチがあったともいわれています。

選択肢が増えると楽しみが減る⑥

さて、これまで見てきたように、選択肢が増えると選択ができなくなる、選択後に強い後悔を感じることになります。魅力的な選択肢が増えるほど自分に合ったものを選べる可能性は高くなりますが、選ばなかったことで得られなかった便益(機会費用)が増え、皮肉にも後悔することが多くなってしまうのです。

 

私たちは、昔と比べようがないくらいの選択肢に直面しています。その中で、どうすれば選択の葛藤から逃れ、程よい満足感を得ることができるのでしょうか?

 

 

■人生に満足するためのポイント

 

社会学者のバリー・シュワルツは、次のように述べています。

 

「選択の自由を制約することに反対するのではなく、主体的に一定の制約を設けるほうが満足できる」

 

「最高のものを求めるよりも『まあまあ』なものを求めるほうが満足できる」

 

「選択の結果に対する期待を下げるほうが満足できる」

 

「選択をやり直せないほうが満足できる」

 

「周囲の人たちの行動に対する関心が低いほうが満足できる」

 

一般的には、「選択肢が多いほどよい」「良い結果を生むためには、最善を目指さなければならない」「選択はやり直せるほうがよい」と考えがちで、それは誤りではないのですが、これまで見てきたように少なくとも満足度は低下する可能性が高いのです。

 

 

■追求するより満足するほうがよい

 

シュワルツは、人間を2つのタイプに分類しています。

 

  追求者(maximizer

最高の選択肢だけを追い求め、それしか受け入れられない人

 

  満足者(satisficer

十分満足だと思える選択肢で妥協して、もっと相応しい選択肢がある可能性を考えない人

 

追求者的な性格の人は、選択に際し、ストレスを感じたり、その後に後悔する可能性が高くなります。世の中にあるすべての選択肢を見つけ出し、それを吟味することなど不可能ですし、事前に結果を予想することなどできません。さらに追求者は高い基準を持っていますが、それをクリアすることが難しい以上は後悔する可能性が高くなります。

 

 

■完璧主義者は悪くない

 

一方、世の中には完璧主義者といわれる人たちがいます。完璧を目指すのは悪いことなのでしょうか?シュワルツは、追求者と完璧主義者を区別しています。両者とも高い基準を設けている点では共通しますが、追求者はそれを達成できると思っているのに対し、完璧主義者は達成できるとは思っていない点が異なるとしています。よって、完璧主義者は追求者ほど後悔せず、満足度も低くないのではないかと述べています。もちろん適当に妥協する場合よりも成果の質は高くなります。

 

以上で選択の話は終わりますが、人生の満足を高めるために得られる教訓は次のようになるでしょう。

 

・自分にとって重要なことについては高い基準を設けるべきであるが、それは必ずしもクリアできないことを自覚する。

 

・重要でないことについては選択肢を自分で絞り、最低限の基準をクリアできる選択肢であればそれでよしとする。

 

・自分にとっての基準だけ考え、周りの人の基準は気にしないようにする。

 

・たとえば3つ以内から選ぶといったように、選択肢の数を最初から決めておく。

 

・一度決めたらできるだけ他の選択肢を考えないようにする。

 

【参考】

『購買選択の心理学』バリー・シュワルツ著 ダイレクト出版

『なぜ選ぶたびに後悔するのか』バリー・シュワルツ著 武田ランダムハウスジャパン

選択肢が増えると楽しみが減る⑤

「選択肢が増えると楽しみが減る」理由について、もう少しだけ理由を考えてみます。

 

■根拠の数は多いほどよいわけではない

 

みなさんは、過去を振り返ってどういうことに後悔するでしょうか?後悔には大きく2つあります。1つは、「○○しなければよかった」というもので、たとえば「転職しなければよかった」「余計な口を挟まなければよかった」といったようなことです。もう1つは「○○すればよかった」というもので、「もっと勉強すればよかった」「もっと真面目に考えればよかった」「思い切って頼めばよかった」といったことです。

 

後悔することは人それぞれですが、一般的に人は短期的には「○○しなければよかった」ということを強く意識し、長期的には「○○すればよかった」ということを強く意識します。

 

たとえば、過去6ヶ月間の最大の後悔を聞くと、行動して予想どおりにいかなかった事例を挙げるが、これまでの人生における最大の後悔を聞くと、行動しなかった事例を挙げる傾向があるそうです。

 

ある選択肢を選んでしまうと、長期的には他の選択肢を選ばなかったことが重くのしかかるようになるのです。

 

 

■ニアミスだと激しく後悔する

 

後悔するのは、「望んでいた結果にどれだけ近づけたか」も大きな影響を与えます。望んだ結果にもう少しで到達できたならば、「もっとちゃんとやればよかった」と後悔するでしょう。逆に端からてんでダメなら、後悔などしないはずです。

 

たとえば難関試験に挑戦し、あと数点で合格だったとしたら後悔は大きなものでしょうし、かすりもしなければ諦めも早いでしょう。ちなみに資格受験対策の講師をしていて、受講生の方から最も多く聞くことは、「二択で迷って最後に不正解の選択肢を選んでしまった」というものです(惜しいところだったという気持ちはわかりますよ)。

 

さて冬季オリンオピックの開幕が近づいています。では銀メダリスト(2位)と銅メダリスト(3位)では、どちらのほうが本人的には嬉しいでしょうか?これは有名な話でご存知の方も多いかもしれませんが、銅メダリストのほうが圧倒的に満足度が高いのです。なぜなら銀メダリストは、「あともう少しで金メダルが取れたのに」という思いが強くなるのに対し、銅メダリストは「表彰台に上れてラッキー」と思えるからです。

 

 

選択の自由が後悔を招く

 

前回、少し触れましたが、後悔の要因としては、さらに「決定についての責任」があります。人から言われたとおりにやって良い結果が得られなくても人は後悔することはありません。自分で決めたことで良い結果がでないと後悔するわけです。選択の自由が後悔を招くのです。

 

以上から、人が激しく後悔するのは、うまくいかなかった行動について自分に責任があり、もう少しでうまくいきそうだった場合になります。選択肢が増えれば自分に合ったものを見つけやすくなりますが、選択を誤る可能性も高くなり、ニアミスが生じやすくなります。ある選択をした結果、自分の期待どおりにならなかった場合、自己責任による呵責に、ニアミスの悔しさがマイナスの感情に拍車をかけることになったり、さらに選択後の後悔を恐れるあまり、選択そのものをしなくなるのです。

 

 

【参考】

『購買選択の心理学』バリー・シュワルツ著 ダイレクト出版

選択肢が増えると楽しみが減る④

いまだ独身でぷらぷらしている私は結婚生活の専門家でもなんでもないのですが、これまで見てきた選択肢の問題を結婚生活に当てはめると面白いことがわかります。

 

 

■恋愛結婚すると夫婦の満足度を下げる?

 

自由恋愛でいろいろな人とお付き合いし、その中でベストと思われる人と結婚すれば、幸せになる確率は高いように思えます。一方、取り決め婚(両家の一族や家族が話し合って結婚を決める、新郎新婦はそれにただ従うだけ)なんて最悪だと思うのが普通でしょう。しかしながら、実際には恋愛結婚が取り決め婚よりも満足度が高いとは言えないようです。

 

恋愛結婚と取り決め婚のどちらがカップルは幸せを感じるかについて、インドのラージャスターン大学による調査があります。この調査は結婚期間がばらばらな50組を対象にしたものです。

 

これによれば、恋愛結婚した夫婦の幸せ度スコアは、結婚期間が1年以内の場合は91点満点中で平均70点でしたが、結婚期間が長くなるにつれ徐々に低下し、10年を超えるとわずか40点でしかありませんでした。

 

一方、取り決め婚の場合は、結婚したての場合は平均58点と恋愛結婚の場合を大きく下回りますが、期間が長くなるにつれ感情が高まり、10年超の時点で68点になりました。

 

長く結婚生活の満足度が高いのは取り決め婚のほうだったのです。

 

 

■取り決め婚は文化や社会規範の現れ

 

さて、このような調査結果が出た理由を考えてみましょう。まず、インド特有の文化的な背景に起因するところが大きいことは否定できません。インドでは家族や一族の絆が深く集団主義的なので、一族の一員としての条件を満たせば愛していなくても結婚するのはやぶさかではないと考える若者が大半(ある大学生を対象とした調査では75%)だそうです。そして絆を維持するために結婚相手の面倒を一族全体でみるとも言われています。よって、初婚の相手との結婚生活は維持される傾向が強くなります。

 

また、同じ価値観を持つ一族の会談をとおして厳しく選別された結婚相手との結婚であれば、自分の伴侶としても相応しい可能性が高く、結婚に失敗する可能性が低いともいえます。

 

 

■もともと恋愛結婚は後悔する可能性が高い?

 

さて、これまで触れてきた選択肢の観点からも考えてみます。恋愛結構の場合、そもそも何も束縛のない恋愛を互いに繰り返しているわけですから、結婚生活をその延長と捉える可能性はあります。よって、「結婚後に運命の人(別の選択肢)」に出会ってしまい、結婚生活が維持できなくなるおそれがあります。

 

さらに言えば、恋愛結婚で上手くいかなかった場合の後悔は非常に大きくなります。人間が良くない結果を得て後悔を感じるのは、①結果に対する責任は自分にあると感じている、②現実とは違うより良い選択肢が容易に想像できるの2点です。逆に自分ではコントロールできない要因で良くない結果がもたらされた場合や、他に選択肢が無かった場合には、後悔することはありません。

 

今の相手と結婚したのは自分の意思ですし、こういっては何ですが、今の相手より魅力的な人物は周りにいくらでもいますので、後悔は深くなり、結婚生活が破綻しやすくなります。

 

一方、取り決め婚の場合は、結婚相手を選ぶ自由はなく、かつ社会規範上あるいは宗教上の理由で離婚は簡単にはできないのですから、①も②も当てはまらず、結婚相手に対する後悔は持ちにくくなります。

 

日本の場合も、かつては取り決め婚の割合が高かったと思いますが、自由恋愛の時代になって夫婦の幸福度が大きく上がったとも考えにくく、上記の内容が当てはまるように思えます。

 

自由恋愛での結婚を上手く続ける秘訣は、もはや他の選択肢はない(再婚も浮気もできない)という状況に置くことに尽きるのでしょう。

 

【参考】
『選択の科学』シーナ・アイエンガー著 文藝春秋
『購買選択の心理学』バリー・シュワルツ著 ダイレクト出版

皆様のおかげです!

皆様のおかげで拙著「中小企業診断士のための経済学入門」(同友館)が、アマゾンの中小企業診断士部門で1位になりました。

 

ご購読頂いた皆様、レビューアーの皆様、ほかの方にご紹介くださった皆様には、この場をかりて心より厚く御礼申し上げます。有難うございました。

 

瞬間的なこととは言え、無名の筆者として望外の喜びでございます。「本買いましたよ」「本出してませんか?」とお声をかけてくださる方もいらっしゃり、嬉しい限りです。やはり気になって本屋さんの陳列もちょいちょい見に行ってしまうのですが、診断士のコーナーに平置き、面出ししていただいており、うれしい限りです。

 

僭越ながらみなさまの経済に対する見方、そしてやや大げさですが世の中に対する見方の一助となれば大変有難いです。

 

これを励みに一層精進致しますので、今後共どうぞ宜しくお願い申し上げます。


経済学入門 

選択肢が増えると楽しみが減る③

前回は、候補となる選択肢が多ければ多いほど、心理的な機会費用も大きく感じることになり、最終的に選んだ選択肢の満足度も下がってしまうということについて触れました。

 

すべてにおいて優れた選択肢がない以上、何かを選択するということは何かを犠牲にするというトレードオフに直面します。そしてトレードオフに直面すると人は選択すること自体を拒否するか先延ばしするようになります。

 

 

■2番目の選択肢があると選択することが難しくなる?

 

少し古い実験をご紹介します。CDプレイヤーが欲しい人を対象にしたもので、次の3つのパターンが設定されています。

 

<パターン①>

ソニー(一流ブランド)の人気モデルが大幅値引きでわずか99ドルで売られている。                                                                                                        

<パターン②>

99ドルのソニー(一流ブランド)の人気モデルとアイワ(過去あった日本のオーディオブランド、どちらかというと2流ブランド。2015年にアメリカで復活)の最新モデルが大幅値引きで169ドルが売られている。

 

被験者へヒアリングしたところ、パターン①(選択肢がソニーの商品だけ)では、66%がソニー商品を購入し、34%がすぐに購入しないと回答しました。パターン②(ソニーとアイワの2つの選択肢がある)では、ソニーの商品を購入するのが27%、アイワの商品を購入するのが27%、すぐに買わないのが46%という回答結果になりました。

 

つまり魅力的な選択肢が1つなら3分の2が喜んでそれを選ぶが、魅力的な選択肢が2つになると購入するのは半分をわずかに上回る程度になってしまったのです。第2番目の選択肢の登場は、葛藤の原因となり、選択することを困難にさせたのです。

 

 

■見せ玉の選択肢は判断をしやすくする

 

それではもう1つのパターンをみてみましょう。

 

<パターン③>

1日限りのセールで、ソニーの人気モデルが99ドル、アイワの旧型モデルが定価の105ドルで売られている。

 

売られている商品がソニーモデルだけの場合は、ソニー商品を購入する割合が66%であるのに対し、パターン③のケースでは73%になりました。つまり明らかに劣った選択肢が提示されたことで、消費者の比較判断がしやすくなったことになります。

 

以上から、選択肢が多くなり、かつトレードオフが生じる場合は判断が困難になり決定を先延ばしするようになりますが、トレードオフが生じないような場合はむしろ判断をしやすくし、決定を促すことになります。選択肢が1つの場合は、その中間になります。

 

スリープライスなどの価格設定は、この原理を使っていると考えられます。また上司や顧客に提案する際にも、自分の本命案のほかに見せ玉の駄目な案を用意しておくとよいかもしれません。

 

不動産業者は。最初にわざと駄目な物件に案内して、それから自分が売りたい物件を見せるとよくいいますが、これも選択肢を上手く使った例でしょう。

 

 

【参考】
『購買選択の心理学』バリー・シュワルツ著 ダイレクト出版

 

選択肢が増えると楽しみが減る②

前回は「少なさすぎる選択肢は問題だが、多すぎる選択肢もまた問題である」ということを取り上げました。選択肢が増えると楽しみが減る場合があるのです。では、なぜそのようなことになってしまうのでしょうか?

 

■機会費用の存在

 

選択肢が増えると楽しみが減る大きな理由の1つに、機会費用の問題があります。機会費用とは「あるモノを手に入れるために失った利益」のことです。

 

ある学生が休日に家で何もせずゴロゴロしていたとします。使ったお金はゼロですが、この場合、コストはゼロと言えるでしょうか?彼はアルバイトをすれば日給1万円稼げたかもしれません。1万円を犠牲にしたのですから、彼の休日の過ごし方には機会費用1万円というコストがかかっていることになります。

 

たとえば、週末の過ごし方で次の6つが浮かんだとします。

 

  素敵なレストランで食事する

  食事は手軽に済ませて映画鑑賞する

  友人とテニスする

  自宅で野球観戦する

  洋服を買いに行く

 

時間の都合上、1つしか選べないとします。結局は最善のものを1つ選ぶかもしれませんが、それぞれに良さががあり、絞ることは難しいことです。言い換えれば、1つの選択肢を選ぶということは、他のものの良さを享受することを犠牲にするということ、つまり機会費用が生じることを意味します。

 

 

■選択肢が多いと機会費用が大きくなり、選んだ選択肢の満足度が下がる

 

私たちには、いくつかの商品の中から1つを選んで購買した後、「あっちにしておけば良かったな」などと何らかの後悔を感じることが指摘されています。これを認知的不協和といいます。休日の過ごし方の選択でも同じことが生じます。

 

1つのことを選択しても、このような機会費用を認識するとなると、候補となる選択肢が多ければ多いほど、心理的な機会費用も大きく感じることになります。しかも心理的な機会費用が大きくなればなるほど最終的に選んだ選択肢の満足度も下がってしまうのです。

 

すべての面で最善な選択肢などそうそうあるものではありません。報酬が良く、やりがいがあって、休日も多く取れる仕事などほとんどないでしょう。私たちの選択はトレードオフ(一方が立てば一方が立たずの関係)に必ず直面し不安やストレスを感じるわけですが、選択肢が増えるほどトレードオフに直面することになるのです。

 

 

【参考】
『購買選択の心理学』バリー・シュワルツ著 ダイレクト出版

選択肢が増えると楽しみが減る①

普通、私たちは、選択肢が多い方が自分にとって最善のものが選べてよいと考えます。確かに、何か高い買い物をするときには、多くの種類を取り扱っている大型店にいくことが多いでしょうし、場合によっては、いくつかの店舗を回ってできるだけ多くの商品の中から最も気に入ったものを選ぼうとするでしょう。

しかしながら、選択肢は多い方がよいとは必ずしも限らず、逆に選択肢が多い方が、結果的には買い手の満足度が下がってしまうことが多く見られます。このことはものを売る立場である人にも是非意識して頂きたいことです。


■商品の種類が多いと逆に買わなくなる

選択肢の数が消費者に与える影響を扱った実験を2つ紹介します。

<実験1>
ある高級食料品店の一角に海外高級ジャムの試食コーナーを設け、来店客に1ドルの割引クーポンを渡すことにした。日によって試食できるジャムの種類を6種類と24種類に分けて、どちらのほうが購入が多いか比較した。ただしいずれの場合も24種類のジャムを購入することができるようにした。

結果は、24種類のほうが多くの人が集まったものの、試食するジャムの種類の平均値には変わりがなかった。ところが驚くべきことに、6種類のジャムを用意した場合は実際に購入した顧客は約30%だったが、24種類の場合は購入者はわずか3%だった。

この実験はベストセラーとなった「選択の科学」の著者、コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授らによるもので、ご存知の方も多いと思います。

<実験2>
さらに次のような実験もあります。ある大学の研究室で、市場調査という名目で学生に様々な高級チョコレートを評価してもらった。説明とデザインから好きなチョコレートを選び、試食して点数をつける。終わった学生は、別室で謝礼として箱入りチョコレートか現金を受け取る。
また、最初に見せられるチョコレートが6種類のグループと30種類のグループに分けた。その結果、少数のチョコレートを見せられた学生のほうが試食したチョコレートの満足度が高く、謝礼として現金ではなくチョコレートを選ぶ比率が4倍高かった。


■最適な商品の種類は7

選択肢の数が多すぎると満足度が下がる理由として、一般的に言われるのは、それぞれの選択肢を評価して選ぶことが面倒になり、選択する行為そのものを放棄してしまうからだと言われています。

実際はそれほど単純な理由だけではないのですが、とりあえずここでは、少なすぎる選択肢は問題だが、多すぎる選択肢もまた問題であるということです。

ちなみに選び手にとって、最適な商品の選択肢の数は、5~9(7±2)であるそうです。それ以上、増やしても買い手の満足度は上がるどころか下がる恐れがあります。


【参考】
『選択の科学』シーナ・アイエンガー著 文藝春秋
『購買選択の心理学』バリー・シュワルツ著 ダイレクト出版


根拠は多ければよいわけではない

■根拠の数は多いほどよいわけではない

一般的に提示する根拠の数が多いほど、主張の説得力は増すと考えられていますが、かえって説得力を失う場合があります。次の例を考えてみましょう。

結論:捕鯨はやめるべきである。
根拠1:鯨は高度の知能をもった高等な哺乳類である。
根拠2:欧米の動物愛護団体の反発を招き、大規模な日本製品の不買運動が展開される必要がある。



根拠1では、「高等な哺乳類は食してはいけない」という本質論ですが、根拠2では、鯨の話など一切出てきません。単に商業捕鯨再開が招きかねない経済的制裁を憂慮しているにすぎません。よって、もし捕鯨再開でも何の反発もなければ鯨などいくら獲ってもよいというということになります。つまり根拠2を付け足すことでかえって、結論の説得力が失われてしまうのです。


もう1つ例を見てみましょう。

結論;総理大臣の靖国神社参拝に反対である。
根拠1:憲法で規定した政教分離に反する。
根拠2:中国などの反発を招き、経済関係が損なわれる。



これも根拠1が本質論であるのに対し、根拠2では都合だけが話題になっています。諸外国の反発さえなければいくらでも参拝してよいということになります。


■根拠選択は慎重に

人の主張を聞いていると、本質的な根拠と都合による根拠を並列するケースが多いです。往々にして都合のほうが本音だと思いますが、相手の主張の背景にあるものを把握することで、こちらも準備することができます。

逆に、自分が主張する場合でも、根拠の提示がいまいちで、根拠間の整合性をとらないと、相手に見透かされてしまうことになります。
都合優先ということも場合によってはありだと思いますが、少なくとも「本質論でいくべきか」「都合でいくべきか」明確にしたほうが、相手に訴える力が増すでしょう。


【参考】
『論より詭弁~反論理的思考のすすめ』香西秀信著 光文社

アイゼンハワーに見る計画の科学②

1回飛びましたが、「アイゼンハワーに見る計画の科学」の2回目です。

 

■計画そのものよりも策定のプロセス

 

急に顧客や上司から急に依頼があったり、家庭で問題が起きたりと、私たちの日常は、予期せぬことの連続で、そちらに引っ張られて計画通りに行くことは滅多にないかもしれません。それでも計画を立案する過程で、不測事態を想定し対処を考えることができ、有用なのです。

 

アイゼンハワーは、「計画そのものは無用だが、計画策定のプロセスは絶対に必要だ」と述べています。

 

 

■アイゼンハワー・マトリックス

 

アイゼンハワーは世界史でお馴染みのように、第2次世界大戦中のヨーロッパ連合軍の最高司令官で後のアメリカ第34代大統領です。もとマッカーサーの副官で、第二次世界大戦勃発時には一介の中佐にすぎなかったのが、米英仏など約450万の連合軍の最高指揮官にまで抜擢されたのは、アイゼンハワーの持つ高い管理・外交能力であったとされています。

 

アイゼンハワーといえば、時間管理術で使うアイゼンハワー・マトリックスが有名です。


アイゼンハワー・マトリックス 本当にアイゼンハワー本人が使ったかどうかは不明ですが、次のような発言があります。

 

「最も決断を急ぐべき案件が、最も重要な案件であることは滅多にない」

 

私たちは日常のルーチンワークに忙殺され、長期的な展望(緊急性が低いが重要度は高いもの)を考え実行することがなかなかできません。このことを計画におけるグレシャムの法則といいます。

 

自分の目標を実現するには、前回述べたように、まず計画することが大事です。日常の中で、まずは「緊急性が低いが重要度は高いものを計画する」ことをリスト化するとよいかもしれません。

 

 

【参考】

『コトラーのマーケティング・コンセプト』フィリップ・コトラー著 東洋経済新報社

 

新年、明けましておめでとうございます(お礼とお知らせ)

新年、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。今回はお礼とお知らせです。

 

昨年1130日に拙著「中小企業診断士のための経済学入門」(同友館)を出版させて頂きました。筆者が無名にもかかわらず、ご購読頂きました皆様には大変感謝しております。どうも有難うございました!


経済学入門 

 

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中小企業診断士およびその受験者の方でないとあまりご存知ではないかと思いますが、同じ出版社が「企業診断」という月間雑誌を出しています。先月末に発売された1月号より、「世相を読み解く 診断士の眼」という2ページの連載を1年間持たせて頂くことになりました(第1回は、「ノーベル経済学者・セイラーの功績~話題の行動経済学とは何か」)

 

タイトルどおり、今、話題となっている経済・経営。社会について、実証された正しい知識を使って解説するというコーナーで、内容の自由度が高く、私としてもやりがいを感じています。

 

私のポリシーは、「イメージや感覚だけで判断しない」ということなのですが、世間の通説といわれているものは、あまりに感覚的・感情的・教条的なものが多いと感じています。

 

上辺だけのうすいお説教みたいなことを書くつもりは一切ありません。きちんと裏付けが取れた理論で「本当はどうなのか」を説明していきたいと思います。機会がございましたらお目通し頂ければ幸いです。


企業診断1月号 

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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