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経済学を学ぶ意義⑥(経済歴史戦3)

日本経済史上で私が考える最も偉大な政治家の3人めは、高橋是清です。高橋是清

については、本ブログの「歪曲された歴史(世界大恐慌に見る経済政策①②)」で取り上げましたので今回は要点だけ触れておきます。

 

■大恐慌から日本を救った男

 

高橋是清ほどの人物になるとその功績は様々ですが、世界的に見て最も偉大なものは

昭和恐慌後、他の先進国に先駆けて日本の経済回復を実現したことです。

 

井上準之助の経済大失政の後を受けて高橋が蔵相として行ったことは積極的な財政政策と大規模な金融緩和です。財政政策の資金を国債の発行で賄い、それを日本銀行に買わせることで金融緩和を行いました。すなわち日銀の国債引き受けです。

 

今でいうところの量的金融緩和であり、前FRB議長のバーナンキもプリンストン大学教授時代に高橋の経済政策を研究したと言われています。先進国がリーマンショック後に取り入れたデフレ回避のための量的金融緩和の先鞭をつけたのが高橋是清なのです。

 

その結果、日本の実質経済成長率は1931年の0.43%から、1932年には4.4%、翌1933年にはなんと10%へと急回復を遂げます。

 

 

■歴史教育の常識は経済学の非常識

 

NHKの歴史アーカイブを見ていると、日本が戦争へと突き進んだのは、世界恐慌後、積極財政による軍備拡張などによりインフレとなり、庶民が困窮したからと説明されていました。また高橋はそれを主導した大悪人であり、それが青年将校たちの恨みを買い、226事件で暗殺されたという説も広く流布されています。

 

はっきりいえばこれはまったくのデタラメで、そんなことを信じている経済学者はほとんどいないでしょう。第一、軍備を拡張したのなら青年将校の恨みなど買うわけがありません。実際、急回復を見届けた高橋は、今度はインフレを回避するために、1934年以降は財政支出を絞り、陸軍からの軍事費拡張要求を拒否するようになりました。

 

226事件までの日本経済というと暗い不況の時代というイメージが強いですが、高橋が蔵相であった時代の実質経済成長率は平均で約7%、物価上昇率は約2%ではっきり言って好景気だったのです。

 

 

■経済学を通じて事実と向き合う姿勢を学ぶ

 

経済歴史戦と題して3回に渡り日本の経済史について荻原重秀・田沼意次・高橋是清を取り上げて説明しました。その理由は、「経済学を理解していないと誤った歴史観を刷り込まれてしまうこと」「その結果、現在の経済情勢を正しく認識できなくなること」「当然の帰結として、取るべき対応を誤ってしまうこと」に対する私なりの危機意識です。もっともその根底にあるのは、誤った事実認識を教え込まれたことに対する単純な怒りもあります。

 

荻原重秀や高橋是清の歴史教育における低評価を見ると、日本における「金融緩和は絶対的な悪(金を刷れば景気が良くなるわけがない)」という強い固定観念を感じざるをえません。

 

確かに私たち庶民にとって経済の話など無関係だと思われるかもしれません。しかしながら、私なりに経済学と接せしてきて、少しずつですが、事実と向き合う姿勢のようなものを教えられた気がしています。ビジネス環境でも「事実と向き合う」という客観姿勢は必要なことではないでしょうか?

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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