プラットフォームビジネス③(ネットワーク効果)
■ネットワーク効果とは?
ネットワーク効果(ネットワーク外部性)とは、利用者が増えるほど製品やサービスの価値が上がることを意味する経済原理のことです。1人のユーザーにとってのある製品の価値がその製品のユーザーの総数によって決まる場合、ネットワーク効果があるということになります。
たとえば電話は使っている人が多いから価値があります。もし使っている人が自分しかいなければ何も価値はありません。
ネットワーク効果の特徴として、ユーザー数がある規模を超えた場合、需要が爆発的に成長することが挙げられます。ユーザーの数が増えれば増えるほど、ますます多くのユーザーが価値を感じてそれを採用し、一気にユーザーが増えます。よって、企業としては早い段階で多くのユーザー数を獲得できれば、1人勝ち状態に持ち込むことができ、ユーザー数で劣位にあるその他の企業が挽回することはかなり難しくなります。
たとえばマイクロソフトのウィンドウズがOS市場を制することができたのは、アップルのマッキントッシュに比べて早い段階で多くのユーザー数を獲得できたからです(機能が優れていたらからではありません)。
たとえばグーグルの検索機能は、検索結果としてウェブサイト(他の人々が発信する情報)が無ければ価値はありません。フェイスブックも同様です。アップルのiPhoneも他社が提供するアプリによって価値が高まっています。
■ネットワーク効果の2つのタイプ
ネットワーク効果には、大きく2つのタイプがあります。1つは、サイド内ネットワーク効果です。これは、ユーザーの数が増えると、そのユーザーが属するグループにとって、プラットフォームの価値が向上(あるいは下落)する現象です。
先に挙げた電話の利用者が増えるほど電話の価値が上がるというのは、サイド内ネットワーク効果の例です。近年では、友達が多くいるSNSが選ばれるというのもこの例と言えます。
もう1つはサイド間ネットワーク効果です。これは、プラットフォーム上の異なる種類のプレイヤー間で働くネットワーク効果です。片方のグループの利用者が増加すると、もう片方の利用者グループにとって製品やサービスの価値が向上(あるいは下落)する現象のことです。
たとえばかつ家庭用ゲーム機やDVDプレイヤーが普及した際に、ハードの普及台数の増加がソフトの多様性や価格低下を引き起こし、ユーザーの便益を増大させました。ハードが普及すると、いろいろなソフトが出てきます。サイド間ネットワークは、「勝ち馬」に乗ろうとする補完プレイヤーの意識を加速させるものと言えます。
ネットオークションの場合には、「売り手が多いから買い手が集まる」という面のほかに、「買い手が多いから売り手が集まる」という面もあります。これは両サイドからネットワーク効果が生まれるパターンです。
サイド内ネットワーク効果とサイド間ネットワーク効果は別々に生じる現象ではなく、基本的にはサイド内ネットワークが働いた後にサイド間ネットワークが機能します。
プラットフォームとして自社の商品・サービスを機能させるためには、「プラットフォームビジネス②」で触れたレイヤー構造化を図り、魅力的な補完プレイヤーを巻き込む必要性があります。そのためには、まずはサイド内ネットワーク効果を固めることでサイド間ネットワークを機能させる必要があります。
【参考】
『プラットフォームの教科書』根来龍之著 日経BP社