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プラットフォームビジネス③(ネットワーク効果)

■ネットワーク効果とは?

 

ネットワーク効果(ネットワーク外部性)とは、利用者が増えるほど製品やサービスの価値が上がることを意味する経済原理のことです。1人のユーザーにとってのある製品の価値がその製品のユーザーの総数によって決まる場合、ネットワーク効果があるということになります。

 

たとえば電話は使っている人が多いから価値があります。もし使っている人が自分しかいなければ何も価値はありません。

 

ネットワーク効果の特徴として、ユーザー数がある規模を超えた場合、需要が爆発的に成長することが挙げられます。ユーザーの数が増えれば増えるほど、ますます多くのユーザーが価値を感じてそれを採用し、一気にユーザーが増えます。よって、企業としては早い段階で多くのユーザー数を獲得できれば、1人勝ち状態に持ち込むことができ、ユーザー数で劣位にあるその他の企業が挽回することはかなり難しくなります。

ネットワーク効果 たとえばマイクロソフトのウィンドウズがOS市場を制することができたのは、アップルのマッキントッシュに比べて早い段階で多くのユーザー数を獲得できたからです(機能が優れていたらからではありません)。

 

たとえばグーグルの検索機能は、検索結果としてウェブサイト(他の人々が発信する情報)が無ければ価値はありません。フェイスブックも同様です。アップルのiPhoneも他社が提供するアプリによって価値が高まっています。

 

 

■ネットワーク効果の2つのタイプ

 

ネットワーク効果には、大きく2つのタイプがあります。1つは、サイド内ネットワーク効果です。これは、ユーザーの数が増えると、そのユーザーが属するグループにとって、プラットフォームの価値が向上(あるいは下落)する現象です。

 

先に挙げた電話の利用者が増えるほど電話の価値が上がるというのは、サイド内ネットワーク効果の例です。近年では、友達が多くいるSNSが選ばれるというのもこの例と言えます。

 

もう1つはサイド間ネットワーク効果です。これは、プラットフォーム上の異なる種類のプレイヤー間で働くネットワーク効果です。片方のグループの利用者が増加すると、もう片方の利用者グループにとって製品やサービスの価値が向上(あるいは下落)する現象のことです。

 

たとえばかつ家庭用ゲーム機やDVDプレイヤーが普及した際に、ハードの普及台数の増加がソフトの多様性や価格低下を引き起こし、ユーザーの便益を増大させました。ハードが普及すると、いろいろなソフトが出てきます。サイド間ネットワークは、「勝ち馬」に乗ろうとする補完プレイヤーの意識を加速させるものと言えます。

 

ネットオークションの場合には、「売り手が多いから買い手が集まる」という面のほかに、「買い手が多いから売り手が集まる」という面もあります。これは両サイドからネットワーク効果が生まれるパターンです。

 

サイド内ネットワーク効果とサイド間ネットワーク効果は別々に生じる現象ではなく、基本的にはサイド内ネットワークが働いた後にサイド間ネットワークが機能します。

ネットワーク効果の2つのタイプ プラットフォームとして自社の商品・サービスを機能させるためには、「プラットフォームビジネス②」で触れたレイヤー構造化を図り、魅力的な補完プレイヤーを巻き込む必要性があります。そのためには、まずはサイド内ネットワーク効果を固めることでサイド間ネットワークを機能させる必要があります。

 

 

【参考】

『プラットフォームの教科書』根来龍之著 日経BP

 

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雑誌連載記事のご案内

プラットフォームビジネスの記事の途中ですが、今回はご紹介をさせてください。「世相を読み解く 診断士の眼」というコラムの連載をさせていただいています月刊誌「企業診断4月号」が発売されました。

 

今回のテーマは、「アベノミクス5年の評価と2018年の経済見通しー不確実性が増す経済環境に中小企業はどう対応すべきか?」です。

 

日銀新体制が発足することもあり、編集長からのご依頼で寄稿しました。通常は2ページなのですが、今回は特別に4ページを頂きました。

 

年が明けて以降の株の乱高下や円高の背景についても取り上げています。機会がありましたら是非お読みいただければと思います。

 

余談ですが時事的なネタを扱っていると、原稿投入時点から事情が変わったりすることがあります。今回は1月の失業率が想定外に改善したり、さらに森友がらみの国会混乱から日銀人事案の決議が不透明になったりといったことです。なかなかひやひやものです。


4月号 

プラットフォームビジネス②

プラットフォームビジネスの大きな特徴としては、レイヤー構造、ネットワーク効果、エコシステム、アマチュアエコノミーの4つが挙げられます。

 

 

■レイヤー構造化

 

レイヤー構造とは、階層(レイヤー)が重なり合うようにして形成されるビジネス構造をいいます。それぞれの階層にいろいろなプレイヤー(企業や消費者など)が参加してエコシステム(生態系)を形成します。

 

たとえば、電子書籍でいえば、コンテンツ、コンテンツストア、閲覧アプリ、ハード・OS、通信ネットワークのレイヤーが存在し、それぞれプレイヤーが異なります。

 プラットフォーム電子書籍 

■ゼロサムではなくプラスサムで考える

 

プラットフォームビジネスが進化すると、レイヤー構造化が進みます。レイヤー構造化とは、階層の数が増え、各階層の独立性が高まり、階層の組み合わせの自由度が増すことをいいます。レイヤー構造化は、モジュール化、ソフトウェア化、ネットワーク化の結果、生じます。

 

レイヤー構造化が進むことで、消費者の選択肢が増えます。さらに産業の主導権をもつレイヤーが変化したり、プラットフォーム事業者の影響力が増大したりといったことがおきます。

 

パソコンのレイヤー構造をみると、当初、主導権をもっていたのがパソコンの完成品メーカー(アセンブラー)でしたが、モジュール化で分業構造が進み、いつしかマイクロソフト(OS)やインテル(CPU)が主導権を握るようになりました。


レイヤー構造 【参考】

『プラットフォームの教科書』根来龍之著 日経BP

プラットフォームビジネス①

公正取引委員会は3月15日、アマゾンジャパンに独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査に入りました。自社サイトで販売する商品のメーカーに値引き販売額の数%から数十%を「協力金」として要求した疑いで、公取はアマゾンが優越的地位を乱用したと見ています。

アマゾンといえば、グーグル、アップル、フェイスブックと並んで(GAFA)、プラットフォームビジネスの代表格です。プラットフォームを制するものは、圧倒的に1人勝ちの状態になるといわれています。今回は、プラットフォームビジネスについて取り上げたいと思います。

 

 

■プラットフォームビジネスとは?

 

プラットフォームビジネスとは、ざっくり「顧客に価値を提供する製品群の土台となるもの」、つまり「他のプレイヤー(企業、消費者など)が提供する製品・サービス・情報と一体となって、初めて価値をもつ製品・サービス」と定義されます。

 

たとえばグーグルの検索機能は、検索結果としてウェブサイト(他の人々が発信する情報)が無ければ価値はありません。フェイスブックも同様です。アップルのiPhoneも他社が提供するアプリによって価値が高まっています。

 

 

■プラットフォームビジネスの2つのタイプ

 

プラットフォームビジネスには大きく2つのタイプがあります。1つは、基盤型プラットフォームです。これは、ゲーム機のように補完製品(ゲーム機の場合はゲームソフト)が存在することを前提にしたものです。この型においては、補完製品をプラットフォーム製品と一緒に利用することで、製品としての機能が発揮されます。

 

もう1つは媒介型プラットフォームです。これはユーザー感の仲介、コミュニケーションや取引の媒介などの機能を持つものです。ネットオークション、SNS、動画投稿サイト、ホテル予約などのネットサービス、クレジットカードなどは媒介型プラットフォームです。

 

現実のプラットフォームは、両方の側面を保有していることが多いです。たとえばSNSは人々のコミュニケーションの基盤を提供している一方で、補完製品としてアプリも提供しています。

 

 

【参考】

『プラットフォームの教科書』根来龍之著 日経BP

 

 

良い競争業者②

前回につづき、同業者が存在することのメリットについて触れます。

 

 

■業界構造の現状を改善する

 

  業界需要の拡大

業界内で複数の企業が製品開発や広告などで競争することによって、業界の注目度が高まり、結果的に市場の認知度が上がり拡大するという効果です。

 

  代替供給源の提供

市場を独占してしまうと、買い手にとっては調達のリスクやコストが高まります。1990年代にパソコンのOSでマイクロソフトが市場のほとんどを取ってしまったっために、パソコンのユーザーとしてはマイクロソフトに対する警戒感が高まりました。その結果、Linuxなどの他の代替OSの支援や調達に乗り出した経緯があります。

他の自らの地位に取って代わる恐れがない供給メーカーがいれば、買い手側に不要な警戒感を抱かせずに済みます。

 

  業界構造の好ましい要因を助長する

多様な戦略をもつ企業が存在することで、業界の魅了を高めるという効果です。

 

 

■市場開発を促進する

 

基本的には「業界構造の現状を改善する」の①②のことです。複数企業が存在することで市場開発コストを分担することができたり、買い手側の複数の選択肢を提供したり技術の標準化を進めることで買い手側のリスクを低減したり、業界のイメージアップを測ったりできるといった効果です。

 

 

■新規参入を阻止する

 

既存業者間で連合して新規参入への対抗力を高めたり、業界内の激しい競争を見せつけることで新規参入を躊躇させたりすることができます。

 

また複数企業であらかじめ市場セグメントや販売チャネルを押さえ込んでしまうことで、新規参入の隙間を塞いでしまうということもあります。

 

 

■良い業者の条件

 

以上のように同業他社の存在は必ずしも悪いことばかりではありません。ポーターによれば、良い業者とは「業界ルールや常識をわきまえている企業」です。逆にルールをわきまえず業界常識を覆してしまうような企業は、業界をカオスへと追いやり、結果的には業界全体の収益性を破壊してしまうので悪い業者ということになります。買い手側にとってはチャレンジャー(悪い業者)の存在は歓迎すべきですが、業界企業としては最も警戒すべき相手です。

 

携帯電話におけるソフトバンクは、当初、チャレンジャーとして振る舞いましたので、NTTドコモやauからすれば悪い業者だったと思いますが、最近は上位2社と歩調を合わせている感があります。楽天などの新規参入の可能性を考慮して、既存業者として新規参入をブロックするという志向に変わったのかもしれません。

 

同業他社にはどういう利用価値があるのか、何を担わせれば良いかの観点から同業他社とのパートナーシップを検討し、自社の戦略を考える必要があります。

 

 

【参考】

『競争優位の戦略』M.E. ポーター著 ダイヤモンド社

 

 

 

良い競争業者①

前回は、ポーターの5フォースモデルでは、近視眼的な「自社以外はすべて敵」という考え方に陥る可能性があり、実際には、「他のプレイヤーと協力関係も結べないか」「ゼロサムではなくプラスサム(ウィンウィン)にならないか」という点も考慮することが自社の利益を向上させるためのカギとなることについて触れました。

 

 

■良い競争業者が存在することのメリット

 

公正に言えば、ポーターは、5フォースモデルの提示後に、この点についても気がついたのか、「競争業者はすべて脅威というわけではなく、自社の競争的地位を高めてくれるような『良い競争業者』も存在する」と述べています。

 

ポーターによれば、(主にリーダー企業にとって)良い競争業者が存在することのメリットとしては、大きく「競争地位を高める」「業界構造の現状を改善する」「市場開発を促進する」「新規参入を阻止する」の4つがあります。

 

 

■良い競争業者は自社の競争地位を高める

 

ポーターは、良い競争業者(フォロワー企業)が存在することで、リーダー企業は自らの地位を磐石にすることができるといいます。

 

  需要変動の吸収

リーダー企業は市場で安定的な販売を確保しています。需要の変動部分についてはフォロワー企業が吸収してくれ、結果的にリーダー企業は安定操業が可能になります。

 

  差別化能力を強化する

他社製品は自社製品の優位性の引き立て役となってくれるということです。

 

  魅力のないセグメントを相手にしてくれる

リーダー企業は市場のおいしいところを握っており、フォロワー企業はもうからないセグメントを相手にするしかありません。

 

  コスト・アンブレラを提供する

高コストのフォロワー企業が、生存可能な価格をつけることを許容することで、結果的に業界全体の価格が高い水準で維持されるということです。

 

  労働組合や役所との交渉パワーが増す

他社と業界連合を組んで交渉力を増すことができるということです。

 

  独禁法違反の可能性が低下する

市場シェアを取りすぎると独禁法違反で会社を分割される可能性があります。他社のシェアを分け合うことでそのリスクを回避できます。

 

  改善意欲を高める

良いライバルの存在は、製品・サービスの改善意欲を高めます。

 

 

【参考】

『競争優位の戦略』M.E. ポーター著 ダイヤモンド社

ポーターの5フォースモデルは使えるか?②

前回、ポーターの5フォースモデルは、「利益の総額はおおよそ決まっており、より多くを奪わなければ儲からない」「プレイヤー間の分配で利益が決まる」という考え方が前提にあり、「自社の利益をあげるためには低コスト化と差別化のいずれかで他の企業に対抗しなければならない」という結論に至るということを取り上げました。

 

 

■価値相関図

 

確かに同業者、売り手、買い手、新規参入業者は、自社にとって脅威となる存在です。しかしながら、常に利益を取り合う関係ではなく、場合によっては、協力関係にもあります。

 

この協力関係についても考慮したフレームワークとして、価値相関図があります。

価値相関図顧客:自社製品・サービスの買い手

 

供給者;資源や部材、労働力などの生産要素の供給者

 

補完的生産者;自社以外のプレイヤーの製品を顧客が所有したときに、それを所有していないときよりも自分の製品の顧客にとっての価値が増加する場合、そのプレイヤーを補完的生産者という。

 

<補完的生産者の例>

ハードとソフト、本体と消耗品の関係が典型的。通信キャリアからすれば魅力的なアプリがあればそれだけ自社の価値は高まるのでアプリソフトメーカーは補完的生産者になる。

 

競争相手:自社以外のプレイヤーの製品を顧客が所有したときに、それを所有していないときよりも自分の製品の顧客にとっての価値が下落する場合、そのプレイヤーを競争相手という。代替品の供給業者や市場シェアを奪い合っている相手が典型的。

 

 

■ゼロサムではなくプラスサムで考える

 

通常、5フォースモデルの同業者や新規参入業者は競争相手と考えられます。しかしながら、一方で、補完的生産者という側面もあります。つまり相手がいたほうが都合がよい場合もあるということです。

 

たとえば、市場の立ち上がり期には、相手がいたほうがプロモーションコストを分担できてよいということがあります。ライバルとの競争が市場を活性化し、買い手の注目を集めることができ、市場の拡大を見込めるからです。

 

また集積の効果もあります。たとえば秋葉原の電気街や、飲み屋街、ブランドショップ街は、多くの同業者の存在が地域としての注目度や優位性に結びつき、多くの消費者を引きつけています。

 

もちろん自社は顧客や供給者とも共同開発などをつうじて協力関係を築くこともできます。

 

このように、近視眼的な「自社以外はすべて敵」という考え方ではなく、「他のプレイヤーと協力関係も結べないか」「ゼロサムではなくプラスサム(ウィンウィン)にならないか」という点も考慮することが自社の利益を向上させるためのカギとなります。

 

 

【参考】

『コーペティション経営』バリー・J. ネイルバフ、アダム・M. ブランデンバーガー著 日本経済新聞社 

ポーターの5フォースモデルは使えるか?①

ポーターの5フォースモデルとは、業界構造の分析、すなわち「この業界は儲かるのか?」を検証するためのフレームワークです。経営戦略論ではお馴染みの存在で、経営戦略のテキストではほぼ100%載っていますからご存知の方も多いと思います。

今回は概略を紹介し、次回、このモデルの致命的ともいえる問題点について触れたいと思います。

 

■5フォースモデルの概略

 

ポーターによれば、業界の収益性(儲かるかどうか)の要因は、次の5つであり、それぞれの圧力が強いとその業界は儲からない(逆に弱いと儲かる)ことになります

5フォースpng   競争業者間の敵対関係

何らかの形で同業者間の競争が激しいと価格競争になりがちで業界企業全体が儲からなくなります。

 

  新規参入企業の脅威

他の業界や進行企業がすぐに業界に参入できるようなら、競争状態が加熱するので、業界企業は儲からなくなります。

 

  代替品の脅威

代替品とは、同じ機能を持つ別の財(製品・サービス)という意味です。固定電話に対する携帯電話、CDに対する音楽配信サービス、デジカメに対するスマホなどが典型的な代替関係です。代替品が登場すれば、そちらに需要が奪われ、業界企業は儲からなくなります。

 

  売り手の交渉力

業界企業に部材やサービスなどを供給する業者の力が強いと、業界企業は儲からなくなります。たとえばパソコンメーカーとマイクロソフト・インテルなどの関係が挙げられます。

 

  買い手の交渉力

買い手とは、ある業界の企業が製品を販売する顧客のことです。買い手の交渉力が強い場合、業界に属する企業の収益性は低くなります。たとえば食品メーカーに対する大手流通チェーンの関係です。

 

 

■5フォースモデルの前提と結論

 

ポーターの5フォースモデルの前提にあるのは、「利益の総額はおおよそ決まっており、より多くを奪わなければ儲からない」「プレイヤー間の分配で利益が決まる」ということです。これはゼロサム型のモデル(合計するとゼロになること。一方の利益が他方の損失になること。)といえます。

 

5フォースモデルから導き出される結論は、個々の業界企業としては、この5つの圧力への対抗力を養うことが重要であり、そのためには差別化と低コスト化の2つを選択することになります。


【参考】

『競争の戦略』M.E. ポーター著 ダイヤモンド社

高い賃金で人をつるのは逆効果ではないか?

財務省理財局の文書書き換え問題により、野党が日銀人事審理を拒否し、副総裁空席という事態が取り沙汰されていますが、衆参で多数を握る与党側の人事案はいずれ可決されるでしょう。

日銀の現在の金融緩和政策は維持される見通しで、失業率は最悪でも現状維持,あるいは若干の改善が期待できると思われます。すでにサービス業や小売業の一部では人手不足が生じているのはご承知のとおりです。

三大都市圏(首都圏・東海・関西)ではアルバイト・パート募集時平均時給は、1000円を超え、今後、正社員募集の賃金水準も上昇することが予想されます。

 

 

■賃金でつるのは限界あり

 

ただし,注意したいのは、どの企業でも賃金をあげられるわけではないし、自社の賃金を引き上げてもそれ以上の賃金を提供する企業はほかにいくらでもあるということです。つまり,賃金で人をつなぎ止めるには限界があるということです。

 

よって,やりがいのある仕事の提供や,従業員の承認欲求(自分を認めてほしいという欲求)に働きかける管理,働きやすい仕事環境の提供が鍵となります。

 

 

■高い賃金をアピールするのは逆効果?

 

企業側からみて賃金をあげることのデメリットは、コストアップだけにはとどまりません。もしかしたら早急に賃金をあげると、募集にもマイナスになる可能性もあります。

 

少し卑近な例かもしれませんが、子供に勉強や手伝いをさせる際に、いくらか金銭的なご褒美でつるということは、よく見られることです。これは、親から見ても、勉強や手伝いが苦役に見えているからで、「金銭を渡さなければやろうとしないだろう」という暗黙の了解があるからです。

 

相場よりもかなり高い賃金を目にすると、求職者側からすれば「この仕事はつらい(あるいはつまらない)のだろうな」と暗に想像してしまいます。現にきつい仕事は、おしなべて時給が高いですし、企業側もそれを認識してことさら賃金の高さをアピールしているように思えます。つまり賃金の高さをアピールすることは、「うちの仕事はきつい(つまらない)ですよ」というシグナルを送っているようなものだということです。

 

ある程度の賃金のアップはしかたがないにしても、企業側の従業員に対する姿勢が問われる段階にきているのではないでしょうか。

 

 

【参考】

『あなたの部下は、なぜ「やる気」のあるふりをするのか』釘原直樹著 ポプラ社

 

財務省の文書改ざん問題にみる組織病理

今日、財務大臣の麻生太郎氏が森友学園問題における財務省理財局の文書書き換えを認め、大きく報道されています。

いずれは公文書の書き換えは刑事責任を問われかねない重大問題であり、なぜそのようなハイリスクなことを行ったのか驚きを感じ得ません。

メディアからは財務省の体質についての批判が高まっていますが、私としては今回の騒動はどの組織でもある典型的な集団浅慮の問題に思えます。

 

 

■集団は本来的に浅はかである。

 

このブログでもちょくちょく取り上げていますが、集団浅慮(グループシンク)とは、文字どおり、集団の意思決定は浅はかなもの(ハイリスクなもの)になりがちだという集団特性をいいます。

 

集団浅慮に至る条件としては、次のことが挙げられます。

 

A1:集団の凝集性が高いこと
凝集性とは「まとまりのよさ」のことです。まとまりがよいのはいいことなのですが、その一方で、集団独自の文化や規範(ルール)が生まれることになります。

B1
:組織構造的な欠陥があること
具体的には、「集団が外部から隔絶していること」「偏ったリーダーが率いていること」「意思決定についてきちんとした手続きがないこと」「集団内のメンバーの同質性が高いこと(似た寄った経歴やイデオロギーを持っていること)」です。

B2
:刺激となる状況要因が存在すること
外部からの明白な脅威が存在したり、最近、その集団が明らかな失敗を起こしているといったことです。

 

 

■財務省は集団浅慮の条件にぴったり?

 

財務省キャリア組は難関の国家公務員試験を突破し、さらにその上位者が採用されることはご存知のとおりです。近年の採用状況は東大法学部卒が全体の3分の1、東大卒が過半数といったところです。以前はもっと東大色が強かったでしょう。また(競争はあるものの)キャリアコースも決まっていて中途採用もなく、基本的には閉鎖した組織といえるでしょう。さらに入省年次の上下関係は絶対だといいます。

 

よって、組織の同質性は極めて高く、外部から隔絶していることは容易に想像できます。またエリート意識から官僚の無謬性(誤りはない)にとらわれがちということはよくいわれます。

 

私自身は、当初から、森友学園問題は財務省近畿財務局の失態が原因だと考えていました。今回の件も、今のところ、理財局の独走レベルだと考えています、なぜなら他の局長やその上の事務次官が自分にはまったく関係がなくハイリスクしかないことに加担するとは思えないからです。

 

いずれにせよ、昨年2月からの問題発覚以来、理財局としては批判にさらされてきましたので、理財局としては明白な脅威を感じていたことは間違えないでしょう。

 

さらに、集団での意思決定について、メンバーは個人としての明確な責任を意識しなくなります(赤信号、みんなで渡れば怖くない)。仮に佐川前局長や理財局幹部数人が書き換えを決め、それを末端に指示する過程で「みんなで決めている」という安心感がハイリスクな行動につながったと考えられるのではないでしょうか。

 

つまり集団浅慮に至る条件は、ひととおり揃っていたことになります。

 

集団浅慮はたとえば粉飾を行った企業でも見られます。財務省特有の体質ととらえるのでなく、どのような組織でも起きえることを意識したいところです。

大震災の経済学②

前回、震災の復興資金を増税で賄うことは、不況に追い打ちをかけることであり、経済学的にはありえないということを取り上げました。復興資金は増税ではなく国債でまかなうべきなのです。

 

■復興資金は国債でまかなうのが世界常識

 

国債の発行というと、「将来世代につけを回すのか!」という批判があります。それは現在、国債を発行するとその償還時期は将来であり、償還の財源は将来世代の税収によって賄われることになるからです。

 

しかしながら将来の国民の資産となるものへの投資を、現在、国債を発行することで賄うのであれば、問題はありません。これが建設国債の発行が容認される理由です。震災の復旧や防災対策も建設国債と同様ですから、将来世代のためでもあり、国債の発行で賄われるべきなのです。

 

そして、復興の費用は、やがて人々の所得の増加をつうじて税収という形で回収されていきます。

 

さらに確率論からも国債の発行が望ましいといえます。大震災といった50年に一度とか100年に一度という確率ですから、その復旧費用は50年、100年といったスパンで賄うべきです。つまり50年債や100年債の発行です。

 

 

■借金は絶対的に悪なのか?

 

「国の借金」というとメディアでも「絶対的にいかん!」というのが決まり文句です。おそらくそうした方々は、家や車もすべて現金一括払いで買うことができるのでしょう。

 

よく国の債務を個人の借金の場合と同じと考える人がいますが、それは誤りです。むしろ企業財務に例えるべきです。

 

たとえば将来の投資を怠り、せっせと出費をけちって現金を溜め込むことが正しいかということです。このような企業は投資家からは冷ややかな目でみられることが多いのではないでしょうか。

 

むしろ借金をして将来に向けての投資を行っている企業のほうがよほど健全でしょう。国についてもまったく同じなのです。

 

 

【参考】

『「復興増税」亡国論』田中秀臣、上念司著 宝島社

大震災の経済学①

もうすぐ東日本大震災から7年が経とうとしています。今回は大震災が起きた場合、どのような経済政策が求められるのかを検証してみたいと思います。

 

 

■東日本大震災の復興財源確保は増税

 

1995年の阪神大震災では、復興費約9,2兆円、その財源の内訳は、新規国債発行が5,4兆円、他の歳出の削減からの捻出が3.8兆円です。

 

一方、東日本大震災の場合、復興費約25兆円、その財源の内訳は復興増税が約10.5兆円、歳出削減・税外収入等が14.5兆円となっています。

 

ちなみに関東大震災のときは国債・地方債の発行により予算を確保しています。

 

つまり東日本大震災では国債発行ではなく増税で財源を確保しました。当時、「震災という国難に立ち向かうためには自分たちも負担するのは当然だ」「増税もやむなし」と思われた方も多かったと思います(私もその1人)が、増税による予算確保は異例のことなのです。

 

 

■震災が起きると供給より需要が落ち込む

 

震災は供給サイドと需要サイドの両方にダメージを与えます。しかし現代では、供給サイドは比較的早期に回復します。東日本大震災当時も交通網が寸断されて物流が行き届かなかったり、工場が破壊されて生産がストップしたりしましたが、現場の驚異的な努力もあり、数ヵ月後には生産が再開されたことはご記憶でしょう。罹災地域外での生産も可能なこともあり内閣府が発表している潜在総供給力はほとんどダメージを受けていません。

 

一方、需要サイドは被災地の方々を中心に大きく冷え込み、回復することは容易なことではありません。さらに増税が追い打ちをかけ、消費マインドは一層冷え込むことになります。事実、内閣府が発表している需給ギャップでみると、潜在総供給に対する需要不足の状態は、震災発生(2011年度1~3月期)から(2013年度4~6月期)まで続きます(ただし円高の影響もありますが)。

 

震災で落ち込んだ消費マインドをさらに増税で追い打ちをかけるなど、不況に増税するのと同様であり、経済学的にはありえないのです。どうもわたしたちは「震災だから増税はしかたがない」「負担を国民全体で分かち合うべきだ」という雰囲気に騙されてしまったのではないでしょうか?

 

 

【参考】

『「復興増税」亡国論』田中秀臣、上念司著 宝島社

 

 

チームのダイナミズム②

■チームを上手く機能させるための人数

 

チーム(集団)を上手く機能させるためには、メンバーの数も重要です。少なすぎても多様な意見を集めることができないし、かといって人数が多ければよいというものでもありません。

 

人数が多いと次のような問題が生じます。

 

  メンバー間のコミュニケーション・ネットワークが複雑になり、意思決定にかかる時間が増す

  その結果、情報が行き渡らなくなったり、支援が得られないメンバーがでたりする

  その結果、阻害されたメンバーのモチベーションが低下する

 

社会心理学では、作業集団や討議集団に関して、望ましいサイズは7人前後といわれています。これは、リーダーが全員に目を配れる人数にも相当します。

 

もちろんその7人は全員同じ思考の持ち主では意味がなく、多様な思考の持ち主でありほど意味を持ちます。

 

 

■チェック体制を強化するとエラーが起きやすくなる?

 

集団の人数が多いと誤りのチェック機能が強化され、エラーが少なくなると思うかもしれません。しかしながら、社会心理学の調査では逆の結果がでています。すなわちチェックする人数が増えてもそれに比例して正確さが増すわけでなく、むしろ2~3人で頭打ちになるか、かえって低下するのです。

 

その理由としては、「他者による緊張感の低下」が挙げられます。「他の人もチェックするのだから、自分は少々デタラメでもよいだろう」という心理が働くのです。

 

名門企業でも現場の担当者の不適切な処理が発覚することがあり、管理者の監督責任が問われることがあります。その背景には多重チェックの体制が、かえって11人の管理に対する自覚を損なってしまっていることがあるのかもしれません。

 

 

【参考】

『あなたの部下は、なぜ「やる気」のあるふりをするのか』釘原直樹著 ポプラ社

 

 

 

 

 

チームのダイナミズム①

■チームを上手く機能させるためには?

 

チームを上手く機能させるためには、2つのことが必要です。1つは人選、2つめはチームのダイナミズム(活力)を維持させることです。

 

1つめの人選とは、似たような人物をメンバーに揃えるのではなく、多様な人材をそろえることです。これについては本ブログの「役割分担の基本②(チームの人選)」で取り上げましたので、今回は2つめの「チームのダイナミズムの維持」について触れたいと思います。

 

 

■チームの活力を維持するために

 

チームの活力があるとは、個々のメンバーがやる気を持って業務の遂行にあたっている状態、逆説的にいえば、11人が手抜きをしない状態といえます。

 

組織の発達段階を表すものに、タックマンモデルというものがあります。これによれば、組織は5つの発達段階を経ます。

 

  形成段階

メンバーが知り合いになるが、まだ互いに遠慮がちである段階。しかし、集団メンバーとしての意識が徐々に芽生える。

 

  波乱段階

集団内での役割や序列、リーダーシップ、集団構造が明確になっていく段階。その過程で、メンバー間で競争や葛藤も生じる

 

  規律成立段階

集団の目標が明確になり、規範が成立し、集団の凝集性(団結の度合い)も高まっていく段階。

 

  課題遂行段階

メンバーが協力しながら課題遂行に邁進する段階。

 

  解散段階

目標が達成される、あるいは失敗に終わることで結果が明白になり、メンバーが集団から離れる段階。

 

メンバーの手抜きは、③④では起きにくいです。①②の段階では、集団の構造が不明瞭でコンフリクト(対立)が生じることもあり、うまく適合できないメンバーの動機づけが高まらない可能性があります。また、最後の⑤段階でも、集団の目標が失われるために、手抜きが生じます。

 

以上から、チームのリーダーに求められるマネジメントとしては、「チームの目標をすぐに明確にし、浸透させること」「チームの目標が達成されたら(失われたら)、すぐに目標を再設定すること」の2点になります。

 

 

【参考】

『あなたの部下は、なぜ「やる気」のあるふりをするのか』釘原直樹著 ポプラ社

 

 

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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