連続強化と部分強化
厚生労働省によると、ギャンブル依存症が疑われる状態になったことのある人は3.6%(約320万人)と推計されます。統合型リゾート(IR)実施法案の審議が予定される中で、ギャンブル依存性に関する問題が指摘されていますが、そもそもなぜ依存症という問題が起きるのか、モチベーション理論を使って考えてみたいと思います。
■モチベーションの強化説
モチベーションの強化説とは、単純にいえば、「人の行動は、それと結びついた報酬によって強化される」というもので、要は「アメとムチの理論」です。
たとえば子供が親にとって望ましい行動(片づけや勉強、お使いなど)をとり、その後に親が子供に報酬を与えれば、子供はその望ましい行動をとり続ける可能性が高いでしょう。これを正の強化といいます。
逆に子供が望ましくない行動をとった場合には、罰を与えることで、その望ましくない行動をとらせないことも可能です。
■連続強化と部分強化
「アメとムチ」というと感じが悪いですが、おおよそ企業でのマネジメントも強化説に沿って行われているでしょう。では、望ましい行動をとらせるには、どのような報酬の与え方がよいでしょうか?
これは、連続強化と部分強化の問題です。連続強化とは、望ましい行動をとったらその都度、報酬を与えるというものです。この場合、報酬を与えなかったら、下手をすると、望ましい行動をとらなくなる恐れがあり、あまりお勧めできません。また、上司が部下の行動を四六時中見張っているわけにはいきませんから、現実的でもないでしょう。いつもアメで釣るわけにはいかないということです。
一方、部分強化とは、望ましい行動をとった後に、何回かに1回だけ(ランダムに)報酬を与えるというものです。部下にとっては、望ましい行動をとっても報酬を与えられない場合がありますが、だからといってやめてしまえば報酬を得られる機会を無くすので、望ましい行動をとり続けることになります。また、予期せぬ報酬は、報酬の魅力度を高めます。
良い行動を習慣づけるためには、部分強化のほうが望ましいとされます。
■ギャンブルの報酬の与え方が依存症を生む
話をギャンブル依存症に戻します。賭けるたびに報酬がもらえるわけではないので、ギャンブルは部分強化によるものです。よって、これまで述べたように、ギャンブルに対するモチベーションを高めてしまい、依存性となりやすいのです。
【参考】
『あなたの部下は、なぜ「やる気」のあるふりをするのか』釘原直樹著 ポプラ社
『モチベーション入門 』田尾雅夫著 日本経済新聞出版社