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加入儀式の効果②(カルト集団はなぜ自分たちの誤りを認めないのか?

前回、加入儀式は組織へのコミットメントを強めることについて触れました。その結果、所属する組織がどんなに非合理であろうと、ますます組織への関与を高めることになります。カルト集団の思想は、傍から見てどんなに滑稽であっても、所属メンバーはそれを頑として認めません。今回は、そんな例を取り上げてみます。

 

 

■加入儀式の効果

 

社会学者のフェスティンガーは、地元紙の奇妙な見出しを見つけました。

「シカゴに告ぐ、惑星クラリオンからの予言―大洪水から避難せよ」。

 

記事の内容は、霊能者を名乗る主婦マリオン・キーチが、ある惑星の「神のような存在」から、次のようなメッセージを受け取ったというものでした。「1954年12月21日の夜明け前、大洪水が発生して世界が週末を迎える」

 

キーチはすでにこの予言を友人たちに伝えており、その中の何人かは家族の反対を押し切って仕事を辞め、家を出て、キーチと暮らしていました。新聞記事が出た頃には、キーチは彼らの教祖的な存在になっていました。信者たちはみな、「世界が終わる直前、真夜中に天から宇宙船が現れ、キーチの小さな家の庭にやってきて、信じる者だけを救ってくれる」と信じ込んでいたのです。

 

フェスティンガーは2人の同僚とこのカルト集団に紛れ込むことに成功しました。キーチの祈りも虚しく、もちろん、その時が来ても大洪水も宇宙船もやって来ません。では信者たちは教祖に幻滅してカルト集団から離れていったでしょうか?答えは否です。

 

いつまでたって宇宙船がやってこないことに、最初は動揺していた信者たちですが、キーチの「みなさん、喜んでください!私とみなさんの祈りが通じました。大洪水は回避されました!」の一言で、事実の解釈を変えてしまったのです。実際、信者たちは、これまで以上に布教に熱心になったといいます。

 

 

■人は認知的不協和を解消しようとする

 

なぜ信者たちは事実をありのまま受け止めなかったのでしょうか?彼らは職を捨て、私財をなげうってこのカルト集団に参加していました。このことが一種の加入儀式として作用しました。そこまでして加入したカルト集団の誤りを素直に認めることができるでしょうか?認めることは自分そのものの否定であり、かなりの抵抗感があるはずです。

 

カルト集団に限らず組織の不合理な行動は、フェスティンガーが提唱した認知的不協和の理論から説明できます。これは、心の中に生じた矛盾を解消しようとする心理作用を示すものです。失敗を認めたくないばかりに、自分にとって都合が良い解釈をする、自分にとって有利な情報ばかり集めようとするというものです。

 

マフィアやヤクザなど反社会団体には必ずと言ってよいほど少々オカルトじみた加入儀式があります。体育会系では新入部員の洗礼があります。省庁や大企業の場合は、入省・入社の前の厳しい選考過程があります。さらに所属後も過酷な試練があり、それが組織への忠誠心を一層高め、自分と同一視するようになるのです。

 

加入儀式は組織の結束を高めるためのものなので、あながち不合理ではありません。しかしながら、それがあまりに内向きの志向になると大問題です。外部視点で見た客観性の確保が課題ですが、これは言うは易しでこれからも組織の課題となり続けるでしょう。

 

【参考】

『失敗の科学』マシュー・サイド著 ディスカヴァー・トゥエンティワン

 

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
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