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雑誌連載記事のご案内

「国の借金 9月末で1080兆円 国民1人あたり852万円 :日本経済新聞」は嘘である!


「世相を読み解く 診断士の眼」というコラムの連載をさせていただいています月刊誌「企業診断8月号」が発売されました。


2018年8月号 


今回のテーマは、「日本の財政は本当に悪いのか?――企業の財務分析の手法で国の財政を考える」です。

 

ご承知のとおり,201910月に消費税率10%への引上げが予定されています。「日本の財政が悪いから消費税を引き上げるのはやむを得ない」という方も多いと思います。しかし,本当に日本の財政は危機的な状態なのでしょうか?

①クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のプレミアム(保険料率)の観点から、マーケットが考えている日本の財政破綻の確率、②国のバランス・シートを使って日本の財政状況を論評しています。

 

機会がありましたら是非お読みいただければ幸いです。

 

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外国人労働者受け入れは増やすべきか?②

■労働力不足は設備投資を促す

 

日本人労働者の不足は、何も産業界にとって悪いことだけではありません。日本人労働者の賃金を上げればそれだけ日本全体で消費が増え、企業の名国売上・利益が増加する(デフレから脱却する)からです。

 

また人手不足は、企業の積極的な設備投資を促します。日本の人手不足は高度経済成長時代から言われており、旧西ドイツが移民政策をとったのに対し、日本は省力化投資をとってより高い経済成長を成し遂げました。

 

また、80年代の円高、人手不足でも、世界でいち早くFA化に取り組み、生産性を向上させてきたのです。

 

 

■日本の生産性が低いのは?

 

デフレ下においてはこれが逆回転します。

 

日本生産性本部によると、2000年に1位だった日本の製造業の名目労働生産性は14(2015)でしたが,これは雇用が維持される一方,長引く景気低迷で製造業の開発投資や設備投資の意欲を減退させた面が大きいでしょう。

 

サービス業では,1位のアメリカの半分以下で,特に卸・小売業は30%程度に過ぎないともいわれています。日米の商文化上の違いもあるでしょうが,これも長引くデフレが大きな原因だと考えられます。いくらでも安い賃金で労働力を確保できたので,省力化          投資を進めるインセンティブが働かなかったからだと思われます(そのツケが人手不足感のある現在に回っています)。

 

安易な外国人労働者の受け入れ拡大は、日本人労働者の賃金の伸びを抑え、設備投資が進まず、生産性が低迷したままになりかねないということを意識する必要があります。

 

 

外国人労働者受け入れは増やすべきか?①

街中で外国人労働者を目にすることがすっかり多くなりました。コンビニや駅の売店、飲食店で外国人労働者を目にしないほうが珍しいくらいです。

総務省によると、外国人労働者数が249万人で、前年より17万4228人(7・50%)増えたとのことです。人手不足を受けて、経団連をはじめとする産業界からは、外国人労働者受け入れ拡大の声が高まっています。

これを受けて、政府は24日、新たな在留資格の創設による外国人労働者の受け入れ拡大への調整を本格化させています。来年4月に運用を始める予定の新資格は、これまで認めていなかった単純労働分野での就労を可能とするもので、受け入れ政策の転換点となります。

 

■外国人労働者の拡大は賃金を上げたくない企業の思惑?

 

「人手不足なのだから外国人労働者の受け入れはやむをえない」という声が一般的ですが、マクロ経済全体でみると、必ずしもそうではないように思えます。

 

産業界が外国人労働者を受け入れたいのは、要はデフレのときと同じように、安い賃金で人を雇いたいからです。ここにきてようやく雇用者報酬(名目)が3%台の上昇となるなど、賃金の上昇が見られますが、伸びは比較的ゆるやかに推移しています。

 

デフレ下においては、低賃金で悪条件でもいくらでも労働者を確保できましたが、労働市場が好転し、労働者側の選択肢が増えると、人員確保のために企業としては賃金や労働条件をよくする必要があります。

これは企業側としてはぜひとも回避したいところです。要は「人手不足とは、安い賃金の下での人手不足、悪条件での人手不足」ということになります。

 

外国人労働者の受け入れを拡大すると、日本人労働者の賃金はおさえられ、それが消費低迷へとつながり、デフレからの完全な脱却はそれだけ困難になります。

 

「外国人労働者を増やせば、それだけ所得税収が増えるので、財政健全化にもよい」という意見がありますが、その分、日本人労働者の賃金はおさえられて所得税収減となるので、ほとんど税収増にはつながらないという試算もあります。

 

オズボーンのチェックリスト

発想のヒントとなるようなポイント・フレームワークは多くあります。ここでは、新商品や新サービスの企画に使えるオズボーンのチェックリストを紹介します。ボールペンの企画を例にしたものです。

 

Other uses/転用

他に用途はないか?

⇒指示棒を転用してボールペン付き指示棒にする

 

Adapt/適合

他に似たようなものを応用できないか?

⇒消しゴム付き鉛筆を応用して消しゴム付きボールペンにする

 

Modify/変更

色、音、匂い、意味、動き、形などを変更できないか?

⇒インクの匂いが良い香り

 

Magnify/拡大

大きさ、時間、頻度、高さ、長さ、強さを拡大できるか?

⇒軸を太くして握っても疲れないボールペンにする

 

Minify/縮小

より小さくできるか?携帯化できるか?短くできるか?省略できるか?軽くできるか?

⇒軸を細くしてしおりにも使えるボールペンにする

 

Substitute/代用

他の材料、 他の過程、他の場所、他のアプローチ、 他の声の調子、他の誰か、異なった成分など、他の何かに代用できないか?

⇒材料を形状記憶合金に変えて形が自由に変化するボールペンにする

 

Rearrange/再配列

要素、成分、部品、パターン、配列、レイアウト、位置、ペース、スケジュールを変えられないか?原因と結果を替えられないか?

⇒軸の外側にインクを入れる

 

Reverse/逆転

逆にできないか? 正反対にできないか? 後方に移せないか? 役割を逆にできないか?ターンできないか?反対側を向けられないか?マイナスをプラスにできないか?

⇒書いた文字が消せるボールペンにする

 

Combine/結合

目的や考えを結合できないか?一単位を複数にできないか?組み合せられないか?

⇒ライト付きボールペンにする

 

 

【参考】

『創造力を生かす』A・オズボーン著 創元社

『顧客力を高める』平井孝志著 東洋経済新報社

会議の生産性⑤(決め方のロジック2)

前回、情報が不足していてもロジックさえ決めておけば、いちいち会議で話し合ったしなくて済むことについて取り上げました。今回はその続きです。

 

会議の場で「場合によるから決められない」という状況に出くわした場合は、どうすればよいでしょうか。

 

この状況では、「どういう『場合』ならイエスという判断になるのか?」と「場合による」の「場合」を明確化することです。

 

たとえば、「顧客の反応がわからないから決められない」「販売すべきかどうかは顧客の反応次第」などといった話になったとき、「では調査してから決めましょう」と意思決定を延期するのではなく、「消費者調査の結果が仮にこうであったら、どのような意思決定をするか」を明らかにしておくのです。

 

たとえば「調査の結果、顧客の4割は満足と回答、3割が機能には満足だが価格が高いと回答した」ら販売にイエスなのかノーなのかを明らかにしておくのです。せっかく情報を集めてきても決定のロジックや判断基準が明確でないと、やっぱり決められないなんてことになりますから、予め決め方のロジックを明確化することは有効です。

 

ベンチャー企業やオーナー企業の意思決定が早いのは、彼らなりに意思決定のロジックを持っているからであるともいえます。ロジックがあるので、部下が情報を集めてくれさえすれば意思決定ができるのです。

 

「情報が足りないから今日の会議では決められない」という話になったときは、「足りないのは情報なのか、それともロジックなのか」を考えてみるとよいでしょう。

 

 

【参考】

『生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』伊賀泰代著 ダイヤモンド社

 

会議の生産性④(決め方のロジック1)

■会議で決めるべきことが決まらない理由

 

会議で決めるべきことが決まらない理由としては、次のことが挙げられます。

 

  意思決定権者が会議を欠席した

  意思決定のロジックが明確でなかった

  データや資料が揃っていなかった

  会議の主催者が「決める」ことへのリーダーシップを発揮しなかった

 

  については、急を要するのであれば、責任者が他の誰かに会議での意思決定件を付与しておき、あ

とから追認するといったことが必要です。

 

については、「会議の生産性①」で見てきたように、会議の達成目標を明確にする必要があるでし

ょう。

 

 

■ロジックさえ詰めておけばアクションは取れる

 

「情報が不足しているので決められない」ということは会議ではよくあります。しかしながら、実は足りないのは情報ではなくロジックということも多々見られます。「情報不足で意思決定できなかった。なので次の会議までに各自でさらに多くの情報を集めてきましょう」ということになると、少しも先に進めないことになりかねません。

 

情報やデータがなくても決められることがあることについて、次の例を考えてみます。「円が1ドル120円より高くなれば為替予約する」というロジックと、「今日の為替は1ドル119円である」という情報があれば、「今日は為替予約する」という決断ができます。

 

では、ここで、ロジックはあるが情報が足りないという状況を思い浮かべてみます。「円が1ドル120円より高くなれば為替予約する」ことは決まっているけれど、今日の為替がいくらかわからない」という状況です。

 

この場合、情報を集めてから再び会議を行う必要はありません。意思決定のロジックについてのみ会議で合意しておけば、あとは情報が手に入り次第、自動的に決められます。なので会議をやり直す必要はなく、担当者に「119円台に入っていれば為替予約し、そうでなければしないように」と指示を出せば終わりです。つまり情報がないからといって会議をやり直す必要はないのです。

 

少し単純な例を挙げましたが、ロジックさえ決めておけば、いちいち話し合ったりせず、自動的にアクションを取れるケースは結構あるのではないでしょうか。

 

 

【参考】

『生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』伊賀泰代著 ダイヤモンド社

 

会議の生産性③(ノミナル集団法)

ダラダラしている会議は苦痛なのにそれを続けてしまうのは、なんとなく「みんなで話し合ったほうが良い」という思い込みがあるからではないでしょうか。

もちろんみんなで力を合わせることで個人では不足する部分をカバーすることができます。しかし、ただ単に「みんなで話していればよいアイデアが出る」というのは幻想にすぎません。

 

 

■ノミナル集団法とは?

 

意思決定の方法として、ノミナル集団法というものがあります。ノミナル集団法の典型的な手順は次のとおりです。

 

・7~10人がテーブルを囲んで座る。互いに顔を見ることができるが、会話はしない。

・各人が目の前の紙にアイデアを書きつける(1020分間)。

・その後に各人が書き付けたアイデアを1人ずつ発表していく。

・記録係がいて、それを全員に見えるように大きな紙に記入していく。

・しばらく参加者間で議論する。

・各アイデアの順位付けのための投票に移り、その集計結果をもって決定とする。

 

ノミナル集団法は、アイデア出しの段階では互いに干渉せず各自で行うというものです。研究成果によれば、ノミナル集団法のほうが、その場でみんなでアイデアを出し合って決めるよりも、意思決定の質が高いことが明らかになっています。

 

 

■ノミナル集団法のメリット

 

ノミナル集団法が優れている点は次のとおりです。

 

・他人がすぐそばにいること、静かなこと、作業している証があることが創造的な緊張感を刺激する。

・問題を要素分解しているときに、他者からの評価や込み入ったコメントに作業を妨げられることがない。

・ひとりで熟考する時間と機会が与えられ、また自分の考えを強制的に記録させられる。

・性格的に押しが強い人物によって集団の議論や生産性が支配されるのを避ける。

・考えが熟さないうちに1つの考えに凝り固まって他の案を探すのをやめてしまうのを防ぐ。

・誰もが集団の意思決定に影響を与えられるようにする。

・少数意見の形成とその表明を促進する。

・あらゆるアイデアが書き出させるため、互いに対立し両立しないアイデアが許容される。

・口頭の議論と異なり、文字にされると隠れた議題や隠れた政治的力学が現れにくい。

・集団作業を成功させようとする責任感が高まる。

・応分の仕事をしようとする負担感を全員に課す。

・話すよりも書くほうがコミットメントや達成感が高まる

 

 

会議の場ではなく、予め各自のアイデアをまとめておいてもらってもよいです。

 

 

【参考】

『意思決定のストラテジー』長瀬勝彦著 中央経済社

会議の生産性②(アイデアの洗い出し)

■洗い出しは予めしておく

 

前回触れたように、おおよそ会議の目的は次のとおりでしょう。

 

  決断する

  洗い出しをする(リストを作る)

  情報共有する

  合意する=説得する=納得してもらう

  段取りや役割分担など、次のステップを決める

 

ただし、本来、会議は意思決定の場であるはずなので、目的はなるべく①④⑤に絞りたいところです。

 

「②洗い出しをする」ですが、よくあるのが議長が「何かありませんか」とみんなに声をかけるというパターンです。言われた方はポツポツとその場で思いついたことを発言するのですが、大抵はそのうち煮詰まってしまい、微妙な空気が流れることになります。

 

それを防ぐために、あらかじめ各自でリスト化しておいてもらうということもありますが、各自に発表してもらっていると時間がかかるし、多くの場合はかなり話が重複してしまい効率的ではありません。

 

そうであるならば、異なる意見を持つ2人程度にのみ予めリストを作っておいてもらい、会議の場では、不足分だけを他の人が追加するというスタイルの方が効率的です。

 

また、「⑤段取りや役割分担など、次のステップを決める」ですが、これは前回触れた「会議の達成目標の設定」において、次のアクションにつながりやすい目標をセットする工夫が求められます。

 

 

■資料を読み上げさせない

 

よく会議の場で自分の資料を読み上げにかかる人がいます。はっきり言って迷惑なだけですが、「せっかく本人が作ってきたのだから思う存分話させてやろう」と割と寛容な雰囲気だったりします。

 

発表者にはまずは「他人の時間をとっていること」「会議の生産性を阻害していること」を意識してもらう必要があります。

 

これまで述べたように資料は事前配布が基本です。もしそれができないのなら、作成者が読み上げるより、その場で各自で読んでもらったほうがおそらく早いでしょう。話す時間が10分くらいかかる内容なら、一読するのに2分程度で済むのではないでしょうか。それでわからないところが質問すればよいだけです(話してもらったてもどうせわからないことは出てきます)。

 

 

【参考】

『生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』伊賀泰代著 ダイヤモンド社

 

会議の生産性①(達成目標の設定)

だらだらと続く会議は誰にとっても嫌なものです。「日本人は会議の開始時間は守るが終わる時間はルーズだ。これでは開始時間がルーズなイタリア人と同じではないか」という指摘もあります。今回は会議の生産性を上げる方法について考えてみましょう。

 

■ダラダラ会議の特徴

 

一方で、ダラダラと続く会議の特徴には、次のようなことが考えられます。

 

・各人で前提条件や認識がバラバラで意見が拡散する。

・事前に資料に目を通していない人がいて、話がループする。

・着地点がはっきりしないので、みんなが好き勝手な話をする。

 

「会議の生産性を上げる=限られた時間で成果を出す」ためには、会議にあたってのルールや事前準備が必要になります。たとえば終了時間(全体時間)を決めておけば、それだけ無駄な議論はなくなりますし、事前資料の確認については、必ずあらかじめ各自でやっておくことをルール化します。共通認識については、会議を始める前に議長かファシリテーターが再確認するステップを組み込んでおくとよいでしょう。

 

 

■会議の達成目標

 

おおよそ会議の目的は次のとおりでしょう。

 

  決断する

  洗い出しをする(リストを作る)

  情報共有する

  合意する=説得する=納得してもらう

  段取りや役割分担など、次のステップを決める

 

よくあるのが、会議の議題の一覧だけ先に述べて、達成目標がないというものです。

 

<本日の議題>

・来月の○○発売3周年記念イベントについて

・先月発売された○○の販売実績の報告

・来月実施予定の市場調査の方法について

 

これでは、みんながなんとなく話をして自己満足に終わるか、「結局、何のために集まったんだっけ」ということになりかねません。

 

会議とは基本的には「何かを決める場」であり、決定事項が成果ですから、意思決定の達成目標を明らかにしておく必要があります。よくそれぞれが現状の報告をだらだらとすることがありますが、報告だけなら会議の前にメールや掲示板、社内データベースなどでできるはずです。先の例で言えば、次のような達成目標を明らかにしておくとよいでしょう。

 

<本日の達成目標>

・来月の○○発売3周年記念イベントの、メインの出し物の案出し

・先月発売された○○の販売目標未達の理由の共有と今後のテコ入れ策の決定

・来月の市場調査の詳細の最終確認

 

 

【参考】

『生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』伊賀泰代著 ダイヤモンド社

 

強いつながりの強さ

さて、ここまで「弱いつながり」のネットワークのほうが、幅広く・多様な情報が、遠くまでスピーディに伝播することを見てきました。では「強いつながり」にメリットはないのでしょうか。

 

■安定産業では「強いつながり」が重要

 

「強いつながり」は、両者の間に信頼関係があるということです。そして信頼関係が様々なメリットを生みます。

 

たとえば、「知の深化」があります。イノベーションを実現するためには、「弱いつながり」によってもたらされ一度組み合わされ「潜在性がある」と見込まれたアイデアが、収益化のために深堀される必要があります。

 

本ブログの「弱いつながりの強さ④」で、カーネギーメロン大学のクラッカードとトロント大学のロウリーの、半導体メーカー66社による132のアライアンスの調査を取り上げました。その結論は、「共同開発・技術ライセンスなど、両社のコミットメントが弱くて済むタイプの提携を多く持つ企業ほど、事後的な利益率を高める傾向がある」ということでした。

 

彼らは同時に鉄鋼業界の企業も同時に調査しており、「鉄鋼産業では、むしろ合弁事業など『強いつながり』のアライアンスが豊かな企業のほうが、事後的な業績が良いことを明らかにしています。

 

変化が激しく、技術の陳腐化も速い半導体産業では、企業には知の探索が求められており、この場合、足の長い弱いつながりをいかに多く持つかが重要です。一方、鉄鋼産業では相対的に技術進歩のスピードが遅く、したがってより知の深化が求められますから、「強いつながり」が求められるわけです。

 

 

■「強いつながり」は実行面で効果を発揮する

 

「強いつながり」が求められるのは、実行の局面です。新たに生まれたアイデアは実行されてこそイノベーションになります。

 

マーカス・バエアーの米農産加工品企業のスタッフ216人を対象にした調査では、「社内で生まれた創造的なアイデアが実行されるには、その人が社内で強い人脈を持っている必要がある」という結果を得ています。

 

一般に創造的なアイデアであるほど、社内で却下されやすい傾向があります。他の人には理解できないからです。よって、意思決定層に上がる前に企画はボツになります。

 

しかし、もし企画書を上げる立場の人が社内に強い人脈を持っていれば、それは信頼できる仲間が多くいるということであり、その人脈を活用して企画を上げやすくなります。

 

さらに企画が通った後に実行に移す段階では、社内の広範な協力を取り付ける必要がありますが、ここでも強い人脈が活きてきます。

 

 

■「強いつながり」は暗黙知を伝える

 

知識には暗黙知と形式知があります。端的に言えば、暗黙知とは言語化しにくい情報でコツやノウハウの類です。一方、形式知とは言語化できる情報で、いわばマニュアル化できる情報です。

 

信頼感に基づいた「強いつながり」では、暗黙知を伝えることができます。ツーカーの間からですから、阿吽の呼吸で様々なことを伝えることができます。

 

一方、「弱いつながり」では、暗黙知の伝達はほとんど無理で、形式知しか伝えられません。SNSで伝えることができる情報はたかがしれています。文字数に限界がないメールでも同様です。

 

 

■「強いつながり」と「弱いつながり」の両方が大事

 

「強いつながり」と「弱いつながり」のどちらかが大事ということはありません。結局のところ、両方大事なのです。

 

ただし、組織や個人が置かれている状況によって、「どちらを重視するか・強化するか」は変わってきます。たとえば、日本企業は相対的に「強いつながり」を重視してきましたから、今後は「弱いつながり」を強化すべきでしょう。また、技術変化が激しいハイテク企業や、流行変化が激しいアパレルなども同様です。

 

 

【参考】

「ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016 12 月号」ダイヤモンド社

弱いつながりの強さ⑤

SNSのつながり

 

「弱いつながり」といえば、まず思い出すのはSNSでしょう。フェイスブックの研究者バクシーは、約340万の観測データから次のことを結論づけました。

 

・人は、フェイスブック上で頻繁に交流している「友だち」が発信した情報をシェアしがちな傾向がある。

 

自分と近い人が発信した情報は、心理的に周囲にシェアしたくなるということは感覚的にも理解できます。

 

・フェイスブック上の「友だち」がある情報をシェアした場合、そのシェアされた情報をその「友だち」の友だちがさらに周囲にシェアする確率は、両者が頻繁に交流している場合より、両者に普段はほとんど交流がない場合の方が、高い。

 

「強いつながり」の友だちが「みずから発信する情報」は、周囲に知らせたくなるものです。一方、強いつながりにいる友だちが「シェアした情報」は、同じようなものである可能性が高い。よってシェアされにくくなるのです。

 

一方、「弱いつながり」の友だちがシェアする情報は、シェアされた人にも目新しいことが多く、したがってさらに別の人にもそれをシェアしたくなるのです。

 

 

SNSで狭まるスモールワールド

 

さて、前回、人と人の間には平均で6人存在するという「6次の隔たり(スモールワールド)」を紹介しました。これは1960年代後半の話です。SNSの普及によって、人と人とのつながりはさらに近くなったように思えます。

 

フェイスブックのベックストルムとミラノ大学の共同研究チームは、全世界7.21億人のフェイスブックユーザーをもとに、「友だち」が「友だち」としてつながる経由数を測ったところ、平均で4.7人でした。SNSの世界では、スモールワールドはいっそう狭いものであることが確認されたのです。

 

SNSによって確実に弱いつながりが爆発的に延びています。このことは、商品の流行に大きな影響を持つことが容易に想像されますが、政治の世界にも大きなインパクトがあります。2010年にアラブで起きた「アラブの春」では、SNSを通じて人々の間に情報が急速に広がり、それが政変につながったとされます。

 

一方で、フェイク情報も一気に広まりパニックに陥る恐ろしさがあります。昔からデマの問題はありましたが、SNSがそれを増幅させることは留意しておくべきでしょう。情報が流れても、他の弱いつながりから違う情報も確認する姿勢は持ち合わせたいところです。

 

 

【参考】

「ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016 12 月号」ダイヤモンド社

「世間は狭い」は本当か?

自分の知り合いの、また知り合いが、自分の知り合いだったりすることはよくあることです。そんなとき、「世間は狭いね」などと驚いたりするものですが、実は意外と珍しくもないのです。

 

■ベーコン指数

 

ケヴィン・ベーコンというアメリカの俳優がいます。数々の名作に出演していますが、知っている人もいるけど知らない人もいるというほどほどの知名度でしょう。

 

1994年に、このケヴィン・ベーコンを使った「ケヴィン・ベーコン・ゲーム」というものを、オルブライト大学の4人の学生が作りました。これは、ケヴィン・ベーコンと共演した俳優に「1」、「1」の人物と共演した人物に「2」というようにベーコンとの隔たりの指数(ベーコン数)を与えるものです。

 

その結果は、次のとおりです。

・ハリウッドに限らず古今東西のほとんどの俳優は「ベーコン数」3以内に収まってしまう。 

・インターネット・ムービー・データベース(IMDb)に掲載されているデータに基づいて任意の俳優間の「距離」を計測するサイト「The Oracle of Bacon」によれば、20168月時点で、IMDbに記載された約430万人の俳優のうち「ベーコン数」を持つ人物は約215万人。

3303人がベーコン数1を持っており、約176万人(「ベーコン数」を持つ者のうち約81.8%)が3以下である。

 

ケヴィン・ベーコンが際立って弱いつながりを持っているわけではありませんが、弱いつながりの広範な広がりを持つエピソードです。

 

 

■スモールワールド

 

「世間は狭い」ことを示すものには、他にも有名な「6次の隔たり(スモールワールド現象)」があります。

 

1960年代後半、エール大学のミルグラムらは、ある実験を行いました。この実験で、彼らは、たとえば米国国内で互いに面識がない任意の2人組を選び出し、ある一方に対して、もう一方の相手に届くように手紙を送るように依頼しました。とはいえ、その人は相手への面識がありませんから、自分の知る人脈のうち、「その相手に一番届きそうな人」に手紙を出すように依頼するのです。そして、その手紙を受け取った人は、さらにその最終目的の人に「近そうな人」に手紙を出すという、いわばチェーンメールのような実験です。

 

この実験の結果、手紙を最初に出した人から最終目的の人までたどり着くのに経由する人数は、最短で2人、最長で10人、平均でわずか6人でした。6人を経由すれば、アメリカの人口2億人以上(当時)と面識がなくてもつながってしまうということで、「6次の隔たり」は今でも有名です。

 

そしてこの「6次の隔たり」を理論的に説明したのが、前回まで触れた「弱いつながりの強さ」理論です。ちょっとした知り合い同士をたどっていくと赤の他人もつながってしまうのです。

 

ただし、「6次の隔たり」はあまりに有名になってしまったため、「6人を介せば必ず世界中の誰かとつながりを持てる」といった極端な結論が語られることが頻繁にあります。実際には、ミルグラムの実験では、つながった場合は平均6人の経由でしたが、そもそもつながらなかった場合のほうが多かったのです。理由はもちろん、わざわざ頼みごとを聞いて手紙を他の誰かに出すのが面倒だったり、忘れ去られてしまったりしたからです。このことは、事実として認識しておきたいところです。

 

 

【参考】

「ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016 12 月号」ダイヤモンド社

「スモールワールド・ネットワーク」ダンカン ワッツ著 CCCメディアハウス

弱いつながりの強さ④

■弱いつながりを多く持つほうが創造的な仕事ができる

 

ここまで仕事などの自分の転機となるような情報や、自分の見方を変えるような情報は、弱いつながりのネットワークからもたらされる可能性が高いことについて述べてきました。

 

ビジネスパーソンに求められる能力の1つとして、「自分から離れた遠くの知識を幅広く探索して、それを自分が持つ知識と組みあせて新しい知識を生み出すこと」があります。この知の探索に有利なのが弱いつながりのネットワークです。

 

このことは多くの研究成果でも明らかにされています。エモリー大学のペリースミスは、米研究所の研究員97人を対象とした調査で、「弱い人脈を多く持つ研究員のほうが、創造的な研究成果を出しやすい」果を得ました。また農産加工品企業238人を調査した別の研究でも、「弱いつながりを多く持つ従業員のほうが、創造的な成果を生み出しやすい傾向がある」ことを指摘しています。

 

「とにかく人脈を作れ」とはよく言われますが、確かに実証的にも正しいようです。ただよく見られるように、とにかく名刺をばらまくだけではだめでしょう。それは「弱いつながり」にさえもなっていないからです。強固な関係でなくてもよいので、ある程度は話せる間柄にはしておかないと「弱いつながりの効用」は得られないでしょう。

 

 

■企業のイノベーションも弱いつながりが大事

 

「弱いつながりを多く持つほうが、創造的な成果を生み出しやすい」ことは、企業間の連携でもいえます。

 

カーネギーメロン大学のクラッカードとトロント大学のロウリーの、半導体メーカー66社による132のアライアンスの調査では、「共同開発・技術ライセンスなど、両社のコミットメントが弱くて済むタイプの提携を多く持つ企業ほど、事後的な利益率を高める傾向がある」ことが明らかになりました。

 

 

■様々な分野で応用される「弱いつながりのネットワーク」理論

 

ちなみに「弱いつながりのネットワーク」理論は、知識や情報の伝播だけでなく、様々なものに応用されています。

 

昔の社会では、閉鎖的なネットワークが個別に存在していました。交通手段が少なく、ネットワーク間の移動は極めて限定的でした。一方、現代のように交通手段が発達し、自由に人やモノが行き来する社会は、弱いつながりのネットワークです。

 

ここである感染症が発生したとします。昔ならそれは特定のネットワーク内にとどまりますが、現代の弱いつながりのネットワークでは、爆発的に広まることになります。パンデミックの発生です。

 

またクチコミがどのように伝わるのか、それをどうマーケティングに活かすのかの研究もさかんです。今までまったく売れなかったものが、何かの拍子に爆発的に売れ出すことがありますが、その背後にも「弱いつながりのネットワーク」があるのです。

 

【参考】

「ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016 12 月号」ダイヤモンド社

 

弱いつながりの強さ③

前回、「強いつながりだけのネットワーク」と「弱いつながりだけのネットワーク」を図示しました。再掲します。

強いつながり 弱いつながり 

弱いつながりのネットワークには、ブリッジ(2つの点をつなぐ唯一のルート)が存在します。このうち幅広く・多様な情報が、遠くまでスピーディに伝播するのは、弱いつながりのネットワークです。その理由は、次のとおりです。

 

まず、強いつながりのネットワークは効率が悪い点にあります。同じ情報を流すのに、複数のルートがあるということは、ムダが多いことを意味します。弱いつながりのネットワークではそのような非効率が生じにくいのです。

 

次に、ブリッジが多い弱いつながりのネットワークでは、ルートに無駄がないので、遠くに延びやすい点です。しかもブリッジは弱いつながりからなるので、強いつながりよりも簡単につくれます。誰かと親友になるのは大変ですが、単にSNSでつながるだけの関係なら容易くつくれます。結果、ネットワークがますまず遠くに延びることになります。

 

一方、強いつながりのネットワークでは、遠くに延びないので、結果として似たような情報だけが、閉じたネットワーク内でぐるぐると回ることになります。似たもの同士の集まりの中で、ローカルネタだけが流通するだけで、目新しいものが伝わってこないというイメージです。

 

以上から、仕事などの自分の転機となるような情報や、自分の見方を変えるような情報は、弱いつながりのネットワークからもたらされる可能性が高いのです。

 

【参考】

「ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016 12 月号」ダイヤモンド社

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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