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「世間は狭い」は本当か?

自分の知り合いの、また知り合いが、自分の知り合いだったりすることはよくあることです。そんなとき、「世間は狭いね」などと驚いたりするものですが、実は意外と珍しくもないのです。

 

■ベーコン指数

 

ケヴィン・ベーコンというアメリカの俳優がいます。数々の名作に出演していますが、知っている人もいるけど知らない人もいるというほどほどの知名度でしょう。

 

1994年に、このケヴィン・ベーコンを使った「ケヴィン・ベーコン・ゲーム」というものを、オルブライト大学の4人の学生が作りました。これは、ケヴィン・ベーコンと共演した俳優に「1」、「1」の人物と共演した人物に「2」というようにベーコンとの隔たりの指数(ベーコン数)を与えるものです。

 

その結果は、次のとおりです。

・ハリウッドに限らず古今東西のほとんどの俳優は「ベーコン数」3以内に収まってしまう。 

・インターネット・ムービー・データベース(IMDb)に掲載されているデータに基づいて任意の俳優間の「距離」を計測するサイト「The Oracle of Bacon」によれば、20168月時点で、IMDbに記載された約430万人の俳優のうち「ベーコン数」を持つ人物は約215万人。

3303人がベーコン数1を持っており、約176万人(「ベーコン数」を持つ者のうち約81.8%)が3以下である。

 

ケヴィン・ベーコンが際立って弱いつながりを持っているわけではありませんが、弱いつながりの広範な広がりを持つエピソードです。

 

 

■スモールワールド

 

「世間は狭い」ことを示すものには、他にも有名な「6次の隔たり(スモールワールド現象)」があります。

 

1960年代後半、エール大学のミルグラムらは、ある実験を行いました。この実験で、彼らは、たとえば米国国内で互いに面識がない任意の2人組を選び出し、ある一方に対して、もう一方の相手に届くように手紙を送るように依頼しました。とはいえ、その人は相手への面識がありませんから、自分の知る人脈のうち、「その相手に一番届きそうな人」に手紙を出すように依頼するのです。そして、その手紙を受け取った人は、さらにその最終目的の人に「近そうな人」に手紙を出すという、いわばチェーンメールのような実験です。

 

この実験の結果、手紙を最初に出した人から最終目的の人までたどり着くのに経由する人数は、最短で2人、最長で10人、平均でわずか6人でした。6人を経由すれば、アメリカの人口2億人以上(当時)と面識がなくてもつながってしまうということで、「6次の隔たり」は今でも有名です。

 

そしてこの「6次の隔たり」を理論的に説明したのが、前回まで触れた「弱いつながりの強さ」理論です。ちょっとした知り合い同士をたどっていくと赤の他人もつながってしまうのです。

 

ただし、「6次の隔たり」はあまりに有名になってしまったため、「6人を介せば必ず世界中の誰かとつながりを持てる」といった極端な結論が語られることが頻繁にあります。実際には、ミルグラムの実験では、つながった場合は平均6人の経由でしたが、そもそもつながらなかった場合のほうが多かったのです。理由はもちろん、わざわざ頼みごとを聞いて手紙を他の誰かに出すのが面倒だったり、忘れ去られてしまったりしたからです。このことは、事実として認識しておきたいところです。

 

 

【参考】

「ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016 12 月号」ダイヤモンド社

「スモールワールド・ネットワーク」ダンカン ワッツ著 CCCメディアハウス

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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