顧客価値を考える⑧(ジョブ理論2)
■顧客にとっての価値を考える際の仮説のポイント
前回、触れたように、ジョブ理論では、「顧客は自らのジョブを片付けるために商品を雇う」という考え方で、顧客にとっての価値を考えていきます。クリステンセン教授は、顧客にとっての価値を考える際の仮説のポイントとして、次の5つ挙げています。
①
「片付けけるべき用事」があるか?
②
消費が行われていない領域はどこか?
③
どのような次善策が編み出されているか?
④
避けたいと考えているものは何か?
⑤
顧客が編み出した、既存商品の驚くような使い方はどのようなものか?
■「片付けけるべき用事」があるか?
商品やサービスのイノベーションの多くが失敗するのは、いくら売り手側が新しいものを作り出しても、買い手側に「片付けるべき用事」がないことです。「現状の製品ではこういう不都合がありますが、この製品ならその不都合を解決できます」といったところで、そもそも買い手側が不都合がなければ、その製品は売れません。
またテクノロジー優先で商品やサービスを開発した場合も、同様です。新規性のあるテクノロジーを盛り込んだ商品であっても、顧客側にそれを使って解消する不都合がなければ誰も買わないでしょう。
■消費が行われていない領域はどこか?
これまで相手にしていなかったターゲット層に注目するということです。たとえば大学であれば、大学生以外に社会人やシルバー世代にも対象を拡大するということです。
■どのような次善策が編み出されているか?
顧客が1つのジョブについて、いくつかの策を用いてなんとかこなしているというケースがあります。それをワンストップで解消できれば、付加価値の高い商品・サービスになります。
アマゾンを例にすると、それまでの「欲しいテーマの本を探す」「本屋に行く」「本屋で本を見つける」「購入して持って帰る」を1つにまとめているといえます。
■避けたいと考えているものは何か?
日々の生活の中には、やらずに済むにこしたことはないジョブがあります(ネガティブな用事)。日用品・消耗品を買いに行く、クリーニング屋に行く、銀行振込にいく、待ち時間をすごすなど、どうせなら省きたいことはいろいろあるでしょう。IOTの進歩で、これまではやるのが当たり前と思われていたネガティブな用事が解消されていますが、まだまだあるはずです。
■顧客が編み出した、既存商品の驚くような使い方はどのようなものか?
ユーザーは、ときに売り手の想定とは異なる用途で商品を使っています
・ファブリーズは、はじめ衣料用消臭スプレーとして販売したが、部屋の臭いを気にする人たちが使っていた。
・マスキングテープは、工事用用途であったが、色が多彩で剥がれにくいので、アート目的にも使われている。
・乳幼児用に販売した紙おむつは、意外と高齢者も使っていた。
などなど
ユーザーの行動を観察することで、新たな顧客価値の提案に結びつけることができます。
【参考】
『ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 03 月号(顧客は何にお金を払うのか)』ダイヤモンド社