否定的な言い方には説得力がある(説得の技法④)
■否定的な言い方には説得力がある
賞賛のパターン
「○○の主張は非常によくできていると思う。顧客のニーズ、当社の経営資源、対競合の観点から立論されており説得力が高い。また数値データが複数示されており、客観性が高い点も高評価だ。総じて妥当性が高く、十分に検討に値する。」
非難のパターン
「○○の主張はあまりできがよいとはいえない。顧客のニーズ、当社の経営資源、対競合の観点から立案したいところであるが、それが十分に配慮されておらず、説得力が低い。また複数示されている数値データの客観性の確保が不十分である。総じて妥当性が高くなく、検討に値しない。」
ハーバード・ビジネス・スクールの実験では、上記のような賞賛のパターンと非難のパターンの両方を見せられると、被験者の43%が賞賛のパターンの書き手を、57%が非難のパターンの書き手を「頭が良さそう」と答えたそうです。
また、被験者の42%が賞賛のパターンの書き手を、58%が非難のパターンの書き手を「ビジネスに詳しそうだ」と答えたそうです。
つまり内容には関係なく、否定的な言い方には説得力があるのです。
■思慮深さをアピールしたいからこそ非難する?
非難ばかりするということは、そもそも感じが悪く、人間関係にもよい影響を与えません。しかし、その一方で、否定的な言い方には、伝えている内容に信憑性を含ませられるという側面があります。話に知性が感じられ、思慮深く感じられるのです。メディアの報道をみると、とにかく政権批判が目立ちますが、それもメディア側が思慮深いことを印象づけたいのかもしれません。
■自分の主張にあえて否定的な面を盛り込む
否定的な言い方には、伝えている内容に信憑性を含ませられるという側面を、もう少し建設的に利用できないものでしょうか。
たとえばプレゼンテーションをするときに、一部に自ら否定的なコメントをすると説得力が増します。たとえば。「私の企画に対し、顧客調査が不十分だと異を唱える方もおられるでしょう。確かにその点は認めざるを得ません。しかし、仮説としては十分に検討に値するのではないでしょうか」といった具合です。自分の意見のデメリットを入れるのも可です。
単に一方的に自分の意見の正当性を主張するよりも、はるかに周りの同意を得やすくなるでしょう。
【参考】
『図解 モチベーション大百科』池田貴将著 サンクチュアリ出版