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コアサービスとサブサービス

今回も続きで、ベネフィットを広くとらえるためのフレームワークを取り上げます。サービスは単一のサービスだけでなく、複数のサービスを含んだパッケージとして提供されます。利用者にソリューションを提供するには、複数のサービスが必要になること、サービス提供者がサービスの魅力度を高める必要があることがその理由です。

 

サービスは、コア(中核)サービスと、副次的(サブ)サービスから成り立ちます。ホテルのコアサービスは、安全な宿泊先の提供です。しかし同時に、レストラン、バー、ランドリー、モーニングコール、ジム、プール、駐車場、会議スペース、コンシェルジュサービス、ショップなど様々なサービスを提供しています。これらがサブサービスです。

 

航空会社にとっては、コアサービスは「高速で安全に空間移動すること」であり、サブサービスは機内食。映画、音楽などです。

 

 

■差別化できるのはサブサービス

 

サブサービスは付帯的なものですので重要性は低いと思われるかもしれませんが、実は差別化できるのはサブサービスの部分です。なぜならコアサービスは、いうなれば「あって当たり前」「満たされて当たり前」のものであり、差別化の余地がないからです。安全でないホテルや、やたら時間がかかる航空会社を誰が利用するでしょうか。

 

コアサービスは、その属性の1つでも不十分なら、顧客は不満を感じます。しかしコアサービスが十分に提供されていても、顧客満足には直接的には影響がありません。

 

一方、サブサービスは、それらの質が悪くても大きな不満にはなりませんが、その属性のどれか1つが優れていれば、他の悪さを代償して、満足度の向上に貢献します。

 

銀行であれば、確実性、安全性、公平性などのコア部分で1つでもかければ信頼性が著しく損なわれます。一方、建物が古かったり、行員のユニフォームがイマイチでも、親切な対応があれば満足度は高まるでしょう。

 

よって、顧客満足を高めるには、コアサービスについては、すべての属性について少なくとの最低限の許容水準を維持すること、そしてサブサービスについては自社が強い部分に集中し強化すべきということになります。

 

【参考】

『サービスマネジメント入門』近藤隆雄著 生産性出版

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カスタマーバリュー・パッケージ

前回、顧客のベネフィット(便益)を広く捉えることの重要性について触れました。今回もその続きで、ベネフィットを広くとらえるためのフレームワークを取り上げます。

 

サービスのマーケティングを考えるためのフレームワークに、アルベレヒトのカスタマーバリュー・パッケージというものがあります。サービスのパッケージは、顧客に対して提供されるモノ、サービス、経験の総和であり、次の7つの要素から成り立ちます。

 

  環境

顧客がその商品を経験する物理的な設定のことで、病院のロビー、飛行機の客室、美容院の椅子などです。在宅サービスの場合、顧客の自宅が環境になることもあります。

 

  感覚

顧客が受け取ったあらゆる感覚的な経験のことで、見えたもの、聞こえたもの、匂い、肉体的感覚、痛みや不満、感情的な対応、雰囲気などが含まれます。

 

  人的関係

顧客とサービス提供スタッフ、あるいは顧客と他の顧客との相互作用をいいます。親密さ、丁寧さ、支援的な姿勢、外見上の特徴、問題処理能力などを含みます。サービスの品質は提供スタッフと利用者の相互作用で決まりますが、それに関するものです。

 

  手続き

顧客がサービス事業者と取引するにあたり、顧客に強いる手続きをいいます。ある場所に出向くこと、待つこと、ニーズを説明すること、書類への記入などを含みます。

 

  提供物

顧客が受け取るもので、一時的なものであったとしても、サービスの経験の一部として提供される物理的な要素をいいます。購入した商品、飛行機の機内食、病院の食事、旅行に必要な書類、ノベルティ(粗品)などを含みます。

 

  情報

顧客が、顧客として活動するために必要な情報収集に伴う経験に関する要素をいいます。施設内の案内表示を見てどこに行けばよいかを探せるかどうか、説明書を見て理解できるかどうか、サービスを利用した結果、どのような効果やリスクがあるかを把握できるかといったことです。

 

  財務

経験の対価として、顧客が支払うものです。通常は価格ですが、場合によっては、保険会社など第三者が支払うものもあります。

 

これらの7つのいずれか(あるいは複数)で差別化することができれば、サービス業では大きな競争優位を築くことができます。カスタマーバリュー・パッケージは、サービス業のためのフレームワークですが、卸売業や小売でも十分応用可能です。

 

顧客へのベネフィットを考える上で参考になるのではないでしょうか。

 

 

【参考】

『サービスの経営学』今枝昌宏著 東洋経済新報社

中途半場な満足度では意味がない(ホッケースティック・ロイヤルティ)

■ホッケースティック・ロイヤルティ

 

前回、既存顧客の離脱率を5%改善すると、利益が25%上昇するという5:25の法則について、取り上げました。しかし、顧客満足度を高めることで再購買率を上げることは容易なことではありません。ましてや、良いクチコミを拡めてもらうのはそう簡単なことではないということは認識しておくべきです。

 

顧客のリピート率は、満足度と直線的な比例関係を示すのではなく、最高度の満足に達したときに突然リピート率が高まる傾向があり、これをホッケースティック・ロイヤルティといいます。


ホッケースティック・ロイヤルティ 

たとえば5段階の顧客満足度調査で、満足度を3から4にするのと、4から5にするのとでは、その効果はまったく異なります。そこそこの満足度(満足度3や4)では、リピートやクチコミにはまったく繋がらないのです。

 

問題点の改善と顧客満足度の向上を混同しているケースがよくみられます。確かに問題点を改善すれば、顧客の不満は解消されるかもしれませんが、それは単に「普通のレベルになっただけ」ともいえます。特に再購買率を高めるためには、「普通のレベル以上のもの」を目指す必要があります。

 

 

■普通以上の満足をめざすためには

 

製品やサービスの便益(ベネフィット)には、理性面でのベネフィットと感性面でのベネフィットがあります。機能(性能・スペック)的価値が理性面でのベネフィットにあたり、情緒的価値(商品を使ってみて感じる価値)や、自己実現価値(自分のパーソナリティを表現してくれる価値)は、感性面でのベネフィットになります。

 

石鹸を例にすると、「汚れがより落ちる」「泡立ちがよい」が機能的価値、「色や香り」「感触」「サッパリ感」が情緒的価値、「自然素材」「ナチュラル志向」「ラグジュアリー感」が自己実現価値になります。

 

サービス業の場合には、ベネフィットに加え、「プロセス品質(提供過程の品質)」が加わることがあります。製品のように形がないサービスの場合、購入前に適切な品質評価をすることが困難です。場合によっては、購入後も妥当な品質評価ができません。よって、利用者は、サービスの提供過程でサービスの質を評価しがちです。

サービス内容それ自体は他と大差なくても、スタッフが顧客の事情に即して真摯に対応すれば、顧客にとっての価値や満足は高くなります。

 

このようにベネフィットを広くとらえることで、普通以上の顧客満足度を目指すことが求められます。

 

【参考】

『サービスの経営学』今枝昌宏著 東洋経済新報社

 

5:25の法則(顧客維持のメリット)

■5:25の法則

 

企業は新規顧客の開拓には熱心ですが、ともすれば既存顧客対応がおざなりになりがちです。マーケティングでは、5:25の法則というものがあります。これは、既存顧客の離脱率を5%改善すると、利益が25%上昇するというものです。

 

これに従えば、現在の顧客離反率が20%(毎年、20%の顧客が流出するイメージ)だとすると、これを16%に改善するだけで、現状の利益を維持することができるのです。

 

 

■顧客維持がもたらす効果

 

なぜ顧客を維持すると利益がもたらされるのでしょうか。次の理由が考えられます。

 

  購買・残高増利益

その製品やサービスに満足している顧客は、1年目よりも2年目、2年目よりも3年目により多額の購入する傾向があるといわれています。これが最も大きな効果です。

 

  営業費削減利益

既存顧客の維持にかかる費用は、新規顧客の開拓のコストよりもはるかに安いです。1対5の法則というものがあります。これは、「新規顧客の開拓コストは、既存顧客の維持コストの5倍かかる」というものです。

特にユーザー側で、使い方を覚えなければならないといった学習のためのコストが生じる場合、営業費削減利益は大きくなります。新規顧客と違って、既存顧客には教育のコストがあまりかからないからです。

 

  紹介利益

いわゆるクチコミ効果です。特に、新規性が高く、無形で、高額な製品・サービスほど、クチコミの影響は大きくなります。既存顧客の満足度を高めてクチコミにどう繋げるかは大きな課題です。

 

  価格プレミアム効果

これは値下げ圧力の低下です。満足度の高い顧客は、あまり値下げ要求をしませんし、原材料価格の高騰によるコストアップの価格への転嫁も、比較的受け入れやすいです。

 

 

【参考】

『図解 ビジネスの基礎知識50』グロービス著 ダイヤモンド社

物価は人々の予想で決まる②

■インフレ予想に影響を与える要因

 

数式は複雑なため割愛しますが、エコノミストの安達誠司氏によれば、人々のインフレ予想に影響を与える要因としては、金融政策、為替、原油価格、消費税の4つがあります。

 

まずお金の量を増やせばインフレ予想が高まります。為替が円安になると円建ての輸入物価が上がり、人々はインフレを予想します。程度の問題はありますが、原油価格高も同様に作用します。消費増税は消費抑制を通じてデフレ予想を高めます。

 

アベノミクス開始時点からみると、2013年4月の量的金融緩和以降、デフレからインフレへのレジーム転換が起きました。2014年の消費増税によりインフレレジーム確率が低下したものの、同年10月末の追加緩和により回復しています。

 

2016年4~6月期以降の低下は、円高と原油価格の急落によるものと考えられます。ただその後のアメリカ・トランプ政権の誕生による円安と原油価格の下げ止まりにより、インフレレジームに回帰しており、現在では60%程度と推計され、かろうじてインフレ予想が上回っていると推察されます。

 

■やっぱり今年も物価は上がらない?

 

では、2019年のインフレ予想(その結果としての実際のインフレ率)はどうなるでしょうか。結論から言えば、見通しは暗いように思えます。

 

まず金融緩和ですが、2018年4月の金融政策決定会合で、日銀がこれまで2019年度としていた物価上昇率目標2%の達成時期が削除され、実際の金融緩和のペースも鈍化しています。

 

次に為替は通貨量によって決まる部分が大きいですが、金融緩和ペースが鈍化していることから大幅に円安になるとは考えにくいでしょう。さらに世界規模で経済ショックが生じリスクオフ局面になると急激な円高になる傾向がありますが(近年ではリーマンショック、欧州債務危機、Brexit)、その可能性が完全には排除できません(例えばハードBrexit、中国経済)。

 

最も影響が大きいのは消費増税でしょう。仮に延期したとしても、根強いデフレマインドを払拭するには至らないでしょうが、予定通り引き上げられれば、さらに長期に渡りデフレマインドが根付く可能性が高いことは間違いありません。

 

確かにアベノミクスにより、リーマンショック以降の完全なデフレマインドから脱却できたのは事実ですが、政権当初の公約である「デフレからの完全脱却」に向けた追加の経済政策が求められているのです。

 

【参考】

『デフレと戦う――金融政策の有効性』安達誠司・飯田泰之編著 日本経済新聞社

物価は人々の予想で決まる①

 

現時点で消費者物価指数は、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)」で0.3%(201812月)であり、物価上昇率目標2%に遠く及びません。消費者物価指数は上方に0.5~1%程度ブレる傾向があることを踏まえると、実際にはまだデフレの状態とさえいえます。

2013年4月以降、日本銀行(日銀)の量的・質的金融緩和が行われているにもかかわらず、なぜ物価は上昇しないのでしょうか。

 

根強いデフレマインド

 

日銀が量的金融緩和を行い、失業率も歴史的な水準にまで下がっているにもかかわらず、なかなか物価が上がらない理由として指摘されるのが、根強い人々のデフレマインド(デフレレジーム)による消費の低迷です。

 

消費性向(所得に占める消費の割合)は2014年の消費増税から半年ほど後の2015年初めから低下し続けています(76%弱から71%弱に)世帯主の消費支出等の伸び率(2013年から2017年の平均)でみると、勤労者世帯では2050歳代までのすべての層で消費性向が低下しています。これは将来に対する根強い不安によるものと考えられます。

 

特に興味深いのは、20歳代の貯蓄率が顕著に高まっていることです(7.9%の上昇)。よく「最近の若者は物欲がない」と言われるが、奇しくもデータでも裏付けられてしまっているのです。

 

 

人々の物価予想を推計するモデル「LSTARモデル」

 

実際にデフレからインフレに転じるためには、まず人々のデフレマインドを払拭して、今後、インフレになるという予想を高める必要があります。人々のインフレ予想が高まれば、それに沿った行動に表れ、実際にインフレとなります。

 

経済学的には、「インフレ予想が高まれば実質貨幣残高(名目貨幣残高÷物価水準)が目減りすると考えるので、相対的に貯蓄よりも有利となった消費活動が起こるから」と説明されますが、「インフレに応じて名目所得(額面所得)が増加すると考えれば、不安が解消し、お金を使う気になるから」といったほうが直感的に理解しやすいでしょう。

 

LSTARモデルは、単純にいえば「人々の今後の物価上昇の予想の程度」を見たもので、計算式より推計されたインフレレジーム確率が50%を超えれば、過半の人々がインフレを予想し、下廻れば過半の人々がデフレを予想していることを意味します。

 

エコノミストの安達誠司氏の分析によれば、リーマンショック後のインフレレジーム確率の推移は次のとおりです。

 

2008年~2012年 ほぼ全期間で0%

2013年~2014年前半 急激に上昇し100に達し、70に下降

2014年後半~2015年末 再び上昇し100に達する

2016年前半~ 急激に下降し45%程度まで落ち込む

2016年後半~2018年 徐々に回復し65まで回復

 

【参考】

『デフレと戦う――金融政策の有効性』安達誠司・飯田泰之編著 日本経済新聞社

 

ピーク・エンド効果

ピーク・エンド効果とは、人は自分の過去の経験を「ピーク(最良・最悪)」と「エンド(終わり方)」 によって判断しているというものです。2つのケースを考えてみます。

 

<ケース1>

どちらの結腸内視鏡検査がよいか?

  時間は短いが最後に痛い思いをした検査

  ①と全体としての痛みの量は変わらないが、長時間におよび、最後にそれほど痛みがなかった検査

 

全体としての痛みの量は変わらず、短時間で終わるのであれば、①を選ぶのが妥当ですが、調査結果は、①のほうが圧倒的にひどい経験として記憶されました。

 

<ケース2>

どちらのCEOのほうが好ましいか?

  30年間まったく寄付活動をせず、低賃金で従業員を働かせ続けたが、キャリアの終盤にころっと態度を改め、給与を引き上げ、様々な慈善団体に多額の寄付をした。ところが半年後に突然心臓発作で息を引き取った。

  数十年間慈悲深いCEOとして、自分の利益よりも従業員の福祉を重視し、様々な慈善団体に多額の寄付をしてきた。しかしキャリアの終盤で態度が豹変し、従業員の給与をカットし、寄付活動も一切やめ、利益を1人占めするようになった。ところが半年後に突然心臓発作で息を引き取った。

 

善行の総量では、②のほうが①よりもはるかに大きいのですが、結果はほぼ同数でした。つまり、「29年におよぶ不実な行為と半年間の善行」と「29年におよぶ善行と半年間の不実な行為」を同じくらいの道徳性ととらえたのです。人は最後に起きたということだけで、それがたとえ短期間の出来事であったとしても、それまでの比較的長期間の出来事を無視してまで重視する傾向があるのです。

 

このことは私たちに対する他人の印象を考える上で極めて重要です。ピーク時(あるいは最後)の印象が悪ければ、いくらそれまで好印象を与えていたとしても、悪い印象しか残らないからです。「信用は一瞬にして失う」というのは心理学的にも裏付けられてしまうのです。

 

【参考】

When 完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク著 講談社

中間地点でモチベーションを呼び覚ます方法

前回みたように、私たちは中間地点でモチベーションが下がる傾向があります。いわゆる中だるみです。中だるみはある程度工夫で避けることができます。

 

■中間目標を設定する

 

モチベーションを維持し、さらには再活性化するためには、大きなプロジェクトを小さなステップに分けて中間目標を設けるというのが基本です。減量やレースに取り組む人、マイレージを貯める人を調査した結果、モチベーションはその過程の最初と最後に高まるが、中盤で停滞することがわかりました。

 

たとえばマイレージを2万5千マイル貯めようとしているとき、マイルが4千から2万1000のときには一生懸命貯めようとします。ところが、12千マイル貯まったときは、あまり熱心ではありませんでした。

 

こうした中だるみを解消するには、中間を異なる視点で見ると良いです。2万5千マイルを考えるのではなく、1万2千マイル時点で下位目標を設定し、1万5千マイルを貯めることに集中します。

 

レースの場合は、ゴールまでの距離を思い描くのではなく、次のマイル標識にたどり着くことに集中するのです。

 

 

■中間目標を公約する

 

中間目標を設定したら「自分は必ずそれを実現する」と誰かに公約すると効果があります。さらに進捗状況をSNSなので公開し、「自分の進捗状況をフォローして欲しい」と頼めば効果はてきめんです。経済学で言うところのコミットメント(決意表明)効果です。

 

 

■中途半端なまま終えておく

 

私もよくやるのですが、前日にややこしい仕事の手をつけておいて止めると、次の日に取り掛かりやすくなります。

 

人は完了した課題よりも未完了の課題のほうがよく記憶している傾向があります(ツァイガルニック効果)。

 

 

■流れを切らない

 

一度勢いに乗ったら、途中で流れを切らずに一気に前進します。中だるみになる前にできるだけ前に進むのです。さらに、やったことの蓄積が貯まると自信が沸いて最後まで到達しようという意欲が高まります。

 

 

【参考】

When 完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク著 講談社

「おっと大変だ」効果

人は仕事の中盤で手を抜く傾向があります。いわゆる中だるみというやつです。その一方で、現時点から期限までの中間地点で急にエンジンがかかるという傾向もあります。

 

一般的に、チームの集中力や生産性は時間が経つにつれ徐々に高まるイメージがあります。しかし、コニー・ガーシックという研究者が、銀行や病院のチームを調査したところ、最初は長々と惰性の期間を過ごし、ある時点で急にギアが上がることに気づきました。

 

チーム発足から、ほとんど何ごとも成し遂げないまま、かなりの時間を過ごし、スケジュールの中間地点で、突如精力的に活動するようになる傾向がどのチームにも見られたのです。

 

中間地点に達すると、もう半分も時間を無駄に過ごしてしまったと頭の中に警鐘が鳴り、これが適度なストレスとなって、「おっと、もう時間がないぞ」とモチベーションを再び呼び戻すのです。

 

このように中間地点には、中だるみでモチベーションを失わせる場合もあれば、「おっと大変だ」とモチベーションを高める場合もあります。次回は、中間地点でモチベーションを呼び覚ます方法を見ていきます。

 

【参考】

When 完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク著 講談社

 

順番が遅いほうが有利なとき

前回は「順番が早いほうが有利なとき」を紹介しましたが、今回は、「順番が遅いほうが有利なとき」を紹介します。

 

■自分がデフォルトの選択である場合

 

自分がデフォルトの選択(現状の選択肢)である場合、遅いほうが有利に働きます(現状の選択肢であるあなたを変えたがらない)。

 

これは時間が経つにつれ、意思決定者は関心や気力を失っていくことで、現状の選択肢をわざわざ変えたがらないことによります。

 

たとえば半年後に完了しなければいけない案件がクライアントに生じ、業者の選定に入ったとしましょう。あなたはこのクライアントと長年の取引があるとします。クライアント側は最初のうちは他の業者も検討するでしょうが、時間が経つにつれ、期限も迫り、もはや既存業者であるあなたを変えようとは思わなくなるでしょう。

 

余談ですが、裁判官は午前よりも、夕方の方が圧倒的に仮釈放の決定を出さなくなるそうです。この場合、デフォルトは「仮釈放しない」です。気力がある午前中や、休憩後で回復した午後の早い段階では現状を変える「仮釈放を許可する」決定に躊躇しませんが、疲れてくる夕方になると現状肯定(仮釈放しない)を選ぶからです。

 

 

■競争相手が大勢いる場合

 

競争相手が大勢いる場合(優秀な競争相手という意味ではなく、とにかく人数が沢山いる場合)、順番が遅いほうが少し有利になり、最後なら非常に有利になります。

 

8カ国で1500人を超える若手アイドルのパフォーマンスについて研究したところ、最後に歌を披露した歌手のおおよそ90%が次のラウンドに進んだことが判明しました。フィギュアスケートの試合やワインの鑑定会でも同じ傾向が見られます。

 

社会心理学者のガリンスキーとシュバイツァーによれば、競技の開始直後、審判は理想化されたやや現実離れの高い基準を抱いているといいます。競技が進むにつれ、現実的な基準値が彼らの中に出来上がっていきます。それは順番が遅い競技者のほうに有利に働くうえに、順番が遅い者はほかの出場者のパフォーマンスを見られ参考にできるというさらなる強みもあります。

 

 

不確かな環境でパフォーマンスする場合

 

不確かな環境でパフォーマンスする場合、最初でない方が有利です。評価者が何を望んでいるのかわからないなら、先にパフォーマンスする人たちの様子を見ながら、評価者の基準を見極められるからです。

 

 

■競争が激しくない場合

 

競争が激しくなければ、順番が後になるほど、あなたの特徴が際立ち有利になります。心理学者のシモンソンは「レベルの低い志願者が多く、競争が激しくなければ、しんがりは得策である」といいます。

 

これにはピーク・エンド効果も働くと考えられます。ピーク・エンド効果とは、人は自分の過去の経験を「ピーク(最良・最悪)」と「エンド(終わり方)」 によって判断しているというものです。あなたが優秀であれば、順番があとになるほど評価者のエンドでの印象を強く残すことができるでしょう。

 

 

【参考】

When 完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク著 講談社

順番が早いほうが有利なとき

みなさんは、面接の時に「順番が早いほうがよかったな」とか、「もっと遅い時間帯のほうがよかったな」とか思ったことはないでしょうか。私も面接官の経験がありますが、1日(あるいは何日も)面談していると、はっきりいって飽きてきますから、それが評価にまったく影響しないかというと自信がありません。

 

評価する側も人間である以上、面接を受ける順番が評価に影響を与える可能性は否定できません。今回は、順番が早いほうが有利な状況をご紹介します。

 

 

■投票で選ばれる場合

 

これは投票用紙の最初の方に名前が書かれている方が選ばれやすいということです。教育委員会から市議会、カリフォルニア州からテキサス州まで、数千件の選挙を調査したところ、投票用紙には一貫して、用紙の最初に書かれた名前を好む傾向が見られたそうです。

 

2000年、ブッシュJrとゴアで争われた大統領選は、得票率で勝ったゴアが破れるという歴史的な大接戦でした。ブッシュの名前が最初でなかった州よりも最初だった州の方が9、4%も得票率が高かったのです。おそらく名前の順番が異なれば、ゴアが勝っていただろうといわれています。

 

 

■自分がデフォルトの選択ではない場合

 

あなたがデフォルト(初期設定)の選択ではない場合、たとえば新規クライアントの獲得の際、その顧客とすでに取引がある企業(デフォルト設定)に対抗して自分を売り込む場合、最初に名乗りを上げれば、意思決定者に新鮮な印象を与えることができます。

                                                        

 

■競争相手が少ない場合

 

競争相手が比較的少ない場合(5人以下くらい?)、最初の順番だと初頭効果を利用できるがあります。初頭効果とは、最初に与えられた情報が後の情報に影響を及ぼす現象のことです。たとえば第一印象で好印象を持った人物は、その後の行動も良く評価されがちです。

 

人が複数の情報に触れた場合、後から触れた情報よりも、最初に触れた情報のほうが印象に残りやすいです。

 

 

■面接を受けるときに、ほかにも強力な候補者がいる場合

 

心理学者のウリ・シモンソンらは、MBAの入学志望者9000人以上を調べ、面接官はたいてい「狭い括弧づけ」を行っていることを明らかにしました。つまり、少数の希望者が全体を代表すると推定してしまうのです。よって、順番の早いほうに優秀な志願者がいると、面接官は、それ以降の志願者のアラ探しを積極的に行う傾向があるのです。

 

 

【参考】

When 完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク著 講談社

どの時間帯に何をすべきか?②

前回、のおさらいです。

 

<仕事の分類>

分析的作業 ⇒ 事務作業や書類作成など注意力を要する作業

洞察的作業 ⇒ 発想やアイデア出しといったクリエイティブ性が求められるもの

感銘を与える ⇒ 公演や面接、プレゼンなど人に好印象を与えることが求められる

意思決定 ⇒ 仕事の方向性や選択を決める

 

<人のタイプ>

ヒバリ型・第3の鳥型・フクロウ型

ヒバリ型と第3の鳥型は、感情の起伏が、「ピーク⇒谷⇒回復」となる。

フクロウ型だけは「回復⇒谷⇒ピーク」になる。

 

<仕事の時間帯の割り当ての基本>

・注意力と明快な思考力を求められる最重要の仕事は、ピークの時間帯に入れる。

・2番目に重要な仕事やひらめきを要する仕事は、回復の時間帯に入れる。

 

以上を表にすると、次のようになります。


時間帯別 出典:ダニエル・ピンク著『When 完璧なタイミングを科学する』講談社に加筆

 

フクロウ型が「人に感銘を与える仕事」を午前中にすべきなのは、午前中にするのが最適だからではなく、必要に迫られてです。おおよそ人はヒバリ型が4分の1、第3の鳥型が2分の1(あわせて4分の3)程度であり、彼らは午後より午前中のほうがポジティブな感情を持っています。よって聞き手がポジティブな感情を持っている午前中にせざるをえません。

 

もちろん、ほとんどの人は自分で1日のスケジュールを立てられる立場にないと思いますが、自分のピーク時間帯を把握しておけば、ある程度備えができます。たとえば、あなたがフクロウ型であれば、午前中に集中力を要する事務作業をどうしても仕上げなければならないとしたら、ミスに対してより注意すべきです。また、ピークの時間帯に取るに足らないことで費やすムダを省くことができます。自分の1日の感情の起伏を把握することで、生産性を上げることができるのです。

 

 

【参考】

When 完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク著 講談社

 

どの時間帯に何をすべきか?①

■ポジティブな感情は午前中にピークに達する

 

多くの人間は、午前中にポジティブな感情が高まり、午後になると弱まり、夕方になると再び高まるようです。

 

ある研究によれば、経営者が株主たちに行う収支報告が午前中に行われた場合ほど楽観的で、午後になるとネガティブで怒りっぽく、喧嘩腰になる傾向があるそうです。この傾向は、当然ながら株価にも影響を与えます。

 

こうしたことから、よく「朝の時間はもっとも集中力が上がるため、朝型にしよう」といわれます。

 

 

■あなたは朝型・夜型のどっち?

 

実際に仕事のパフォーマンスは時間帯に応じて変わるのでしょうか?

 

朝型の人もいれば、夜型の人もいます。普通のサラリーマンなら、始業は午前9時から10時でしょうから、朝型のほうが有利かもしれません。ただし、クリエイティブな仕事をする人などを見ると、典型的な夜型の人が少なくなく、高いパフォーマンスをあげています。

 

そもそもみなさんは朝型・夜型のどちらでしょうか?ここで、仕事がない日(特定の時間に起きる必要がない日)について考えてみてください。

 

・通常、何時に眠るか?

・通常、何時に起きるか?

・その中間は何時になるか?つまり、睡眠の中間時刻はどこに当たるか?(たとえば、普通は11時半に寝て午前7時半に起きるのなら、中間時刻は午後3時半になります)

 

睡眠の中間時刻が0~3時 ⇒朝型(ヒバリ型)

睡眠の中間時刻が3時~5時半 ⇒ 一般型(第3の鳥型)

睡眠の中間時刻が5時半以降 ⇒ 夜型(フクロウ型)

 

過半数は一般型(第3の鳥型)になります。ヒバリ型と第3の鳥型は、先に述べたように感情の起伏が、「ピーク⇒谷⇒回復」となります(早朝から午前半ばにポジティブな感情が高まり、午後になると弱まり、夕方になると再び高まる)。一方、フクロウ型だけは「回復⇒谷⇒ピーク」になります(夕方以降にポジティブな感情が最も高まる)

 

私のように夜型の人ならお分かりになると思いますが午前中はダラダラと過ごすか、どちらかといえば重要度が低い仕事を済ませ、午後に骨が折れる仕事を始めるというパターンが多いのではないでしょうか。

 

 

■感情がピークに達する時間帯に最重要な仕事をする

 

一方、ひとことで仕事といっても様々なタイプのものがあります。

 

分析的作業 ⇒ 事務作業や書類作成など注意力を要する作業

洞察的作業 ⇒ 発想やアイデア出しといったクリエイティブ性が求められるもの

感銘を与える ⇒ 公演や面接、プレゼンなど人に好印象を与えることが求められる

意思決定 ⇒ 仕事の方向性や選択を決める

 

ここで分析的作業と洞察的作業はまったく異なることを強調しておきます。分析的作業は注意力が求められますが、その注意力が落ちたときに新たな発想が生まれまず。つまり分析的作業と洞察的作業は両立せず、異なる時間帯に行うことになります。

 

自分が何型(ヒバリ型、第3の鳥型、フクロウ型)かによって、感情のピークの時間帯は異なるので、どの時間帯にどの作業を行うべきかは異なりますが、基本は次の3つです。

 

・注意力と明快な思考力を求められる最重要の仕事は、ピークの時間帯に入れる。

・2番目に重要な仕事やひらめきを要する仕事は、回復の時間帯に入れる。

・ルーティンワークをピークの時間帯に入れない。

 

 

【参考】

When 完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク著 講談社

 

雑誌連載記事のご案内

「世相を読み解く 診断士の眼」というコラムの連載をさせていただいています月刊誌「企業診断2月号」が発売されました。


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今回のテーマは、「日産問題,フランス,そしてユーロ――ゴーン事件と黄色いベスト運動の根底にあるEUの経済問題」です。

 

最終原稿投入は発売の2ヶ月弱ほど前なので、どうしても少しタイムラグが生じてしまうのですが、昨年の11月に入ってからのフランス関連の騒動について論評させて頂きました。

黄色いベスト運動や日産のカルロス・ゴーン事件の背後にあるのが,マクロン政権の経済政策,そしてユーロ圏が抱える根本的な経済問題であることを認識しなくては,本質的な理解はできません。

 

機会がありましたら是非お読みいただければ幸いです。

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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