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MECE(モレなくダブりなく)のしかた②

■プロセス型MECE

 

ビジネスは一連の仕事の流れ(チェーン)ですから、プロセスごとに分解すればモレはなくなります。

 

例)バリューチェーン

開発⇒資材調達⇒製造⇒マーケティング⇒販売⇒物流⇒アフターサービス

例)サプライチェーン

サプライヤー⇒完成品メーカー⇒卸⇒小売⇒ユーザー

例)生産

設計⇒調達⇒作業

例)工程

第1工程⇒第2工程⇒第3工程⇒検査

例)AIDMAモデル

Attention(認知)⇒Interest(興味)⇒Desire(欲求)⇒Memory(記憶)⇒Action(購買行動

例)AISASモデル

Attention(認知)⇒Interest(興味)⇒Search(検索)⇒Action(購買行動)⇒Shere(共有)

 

 

■構造型MECE

 

構造型は要素型と似ていますが、要素間のかかわりも考慮したものです。

 

例)SWOT(クロスSWOT)分析

強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats)を抽出後、4つの戦略的指針を提示する。

 

例)5フォースモデル

「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の5つの要因が業界全体の収益性を決める。

 

例)PPM

市場成長率と相対的市場シェアの2軸のマトリックスを描き、問題児・花形・金のなる木、負け犬に事業を分類し、各事業のミッションや事業間の資金のやりとりを検討する。

 

 

 

【参考】

『ビジュアル ロジカル・シンキング』平井孝志、渡部高士著 日本経済新聞出版社

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MECE(モレなくダブりなく)のしかた①

MECEとは?

 

ロジカルシンキングの基本概念の1つにMECE(ミーシー、またはミッシー)というものがあります。これは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、全体をいくつかのパートに分割して分析する際に「モレなくダブりなく」分けることを意味します。

 

たとえば顧客層を、「学生・20代・30代・40代」と分けることはMECEではありません。学生と20代(場合によっては30代や40代)がかぶりますし、その他の世代が漏れているからです。すべての年代で分けることは、切り口として意味があるかどうかはともかく、モレもダブリもないので、MECEになります。

 

また、たとえば女性を「学生、主婦、キャリアウーマン」に分けることも、MECEではない例です。家庭をもって非正規雇用で働いている女性は多いですし、場合によっては学生と主婦を兼ねている人もいるでしょう。パートで働いている方はどこに所属するのかといった問題もあります。

 

このように適切にMECEを行うのは意外と難しかったりします。実務的には意味のある切り分けが大事で、過度に「モレなくダブリなく」を追求するのは非効率ですから、ある程度のモレやダブりは許容されます。

 

 

MECEのパターン

 

世の中にはビジネスフレームワークといわれるものが沢山ありますが(MBAで取り上げられるものでも数百あるといわれています)、それらはみなMECEで構成されています。こうしたフレームワークを見ると、MECEにはおおよそ3つのパターンに集約されます。

 

  要素型

  プロセス型

  構造型

 

以下、順にみていきましょう。

 

■要素型MECE

 

フレームワークの典型例は、要素型です。これは、全体を構成する要素にモレなくダブりなく分解したものです(中にはモレがあったりダブリがあったりしますが)。

 

例)3C

市場(customer)、競合(competitor)、自社(company

 

例)CFT

顧客(Customer)、機能(Function)、技術(Technology

 

例)マッキンゼーの7S

ソフトの4S

Shared value (共通の価値観・理念)、Style(経営スタイル・社風)、Staff(人材)、Skill(スキル・能力)

ハードの3S

Strategy(戦略)、Structure(組織構造)、System(システム・制度)

 

例)マーケティングの4P

Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)

 

(つづく)

 

【参考】

『ビジュアル ロジカル・シンキング』平井孝志、渡部高士著 日本経済新聞出版社

 

問題発見の4P

ミーティングの場で、各々のメンバーから問題が提起されますが、果たしてそれは議論すべき問題なのか疑問に思うことも多いでしょう。適切な問題提起なのかどうかチェックするためのフレームワークとして、問題発見の4Pというものがあります。

 

  Purpose

何のために問題を解決するか

  Position

誰にとっての問題か

  Perspective

思考が十分に広がっているか(問題の範囲)

  Period

どのタイミングの事象を問題ととらえているか、

 

悪い問題の捉え方は、売上不振に陥り、なんとか急場をしのがなければならない企業や部門でよくみられます。

数字をなんとか作らないといけないということで、すぐにできて対処療法的(ただし売上へのインパクトはほとんどない)ことをやりたがります。本当は土台となる顧客への姿勢が問題なのに、手間がかかる、効果が出るのに時間かかかる、社内で波風が生じるなどの理由で避けてしまうのです。

 

<悪い問題設定の例>

  Purpose

目の前の数字をどう捻出するか

  Position

自分たちの短期的な評価

  Perspective

対処療法的な解決策(例:費用削減、顧客にとっては何も価値がないオプション的な製品・サービスの販売、値上げ(あるいは値下げ)

  Period

月単位か長くても四半期

 

<良い問題設定の例>

  Purpose

顧客から選ばれるためにはどうすべきか

  Position

組織全体

  Perspective

顧客にとって価値のある商品の開発、そのための組織能力の蓄積、人材の確保

  Period

今後10年間

 

 

【参考】

『ビジュアル ロジカル・シンキング』平井孝志、渡部高士著 日本経済新聞出版社

説得力を上げるためのCRFの原則

メッセージの発信は前結論が基本だということを取り上げました。CRFの原則とは、そのための論理の組立をしめしたものです。

 

CRFの原則>

Conclusion(結論)

Reason(理由)

Fact(裏付け)

 

まず結論を示し、その結論の根拠(理由)を示します。根拠の切り口はいくつかありますが、提案を行う場合、最も一般的なのは、「重要度・緊要度・実現可能性」の3つでしょう。

 

<理由の切り口>

重要度:この提案がいかに重要か?

緊要度:なぜこの提案をすぐに行わなければならないか?

実現可能性:この提案を実行・実現するためのリソースがあるか?

 

たとえば自社はこれまで新製品の展示会への出展がなく、あなたが新製品展示会の出店を提案したとしたら、次のような構成になります。

 

結論

幕張メッセの○○EXPOに我が社も出店すべきである。

 

理由:

・この度の新製品は社運をかけたものであり、大々的な認知活動が必要だ(重要度)

・同業他社はすでに何度も出店しており、販売実績を伸ばしている(緊要度)

・すでに出展の受付が始まっており、今なら新規出展のキャンペーン期間中で費用が抑えられる(緊要度)

・社内の山田さんは前職で出展経験のがあり、そのノウハウが活かせる(実現可能性)

・行政が提供している専門家のサポートが受けられる(実現可能性)

 

裏付け

・自社の製品別の売上・利益データ(重要度の裏付け)

・新製品の販売目標データ(重要度の裏付け)

・同業他社の出展状況(緊要度の裏付け)

・山田さんの証言や行政の支援プログラムの内容(実現可能性の裏付け)

 

この構成は、口頭でのプレゼンのみならず企画書全般で使われるものです。私は中小企業の事業計画書作成のお手伝いをすることがありますが、この場合もCRFの原則に沿って作成します。

 

 

【参考】

『ビジュアル ロジカル・シンキング』平井孝志、渡部高士著 日本経済新聞出版社

話し方のダイナミズム

■自分らしさを表現する

 

予定調和調だったり、単に原稿を読み上げているようなスピーチでは、聞き手の積極的な態度を引き出すことができないのはいうまでもありません。いくら内容自体が優れていても、エトス(受け手が送り手に持つ態度・信頼感)やパトス(感情・フィーリング)に欠けるからです。エトスやパトスに訴えかけるためには、自分らしさを表現する必要があります。ポイントは次のとおりです。


①しっかり準備する

②ただし暗記はしない

③個人的なエピソードを語る

④話す内容を意識する

⑤「何を言うか」より「どう言うか」を考える

 

しっかりとした準備がその場での自信をうみます。しかし気をつけなければならないのは、正確に準備どおりやろうとは思わないことです。聞き手の反応等によって柔軟に内容は変えるべきで、新たに付け加えたり、外したりといった即興的な対応が求められます。といいうより、そうしたことまで含めての準備ともいえます。即興的な態度が自信や信頼感を生み出すのです。

 

 

■話しかたのコツ

 

話し方のコツは以下のとおりです。


①相手を見て話す

②最初は一番遠くの人に話しかける

③早口でもよいが適度な間を取る

④強調の副詞(必ず、絶対に、非常に、とても等)を上手く使う

⑤言い切る(断言する)

 

聴衆1人1人に訴えかけるためには、1人1人にアイコンタクトを取ることが求められます。そこまでいかなくても、少なくとも全体を意識しているというフリはしたいところです。慣れないとこれが難しく、誰とも目を合わさなかったり、特定の人ばかり目をむけて話してしまったりします。照れといったこともあるでしょう。コツはまず遠くの人に話しかけることから始め、慣れてきたら徐々に全体を見回すという手順を踏むと、スムースです。

 

また、よく話し始めや語尾に「えー」がつい出てしまう方がいて、相談されることがあります。この場合、「えー」を言わないようにしようと気をつけるのは逆効果です。人は気にするほどしてしまうものだからです。この場合は、文節を短く切り、「○○です」と言い切るとよいです。やってみるとわかるのですが、強い言い切りで終わると、その後に「えー」」ということが物理的に困難になります。もちろん主張に自信があるという印象を与えることもできます。ぜひ、試してみてください。

スピーチのための技術

 ■アリストテレスによる説得力の三要素

 

プレゼンとは、「何かをしてもらう」「決断してもらう」など、相手に何らかの行動を促すためのものです。その際に参考になるのが、アリストテレスによる説得力の三要素です。

 

・エトス:受け手が送り手に持つ態度・信頼感

・パトス:感情・フィーリング

・ロゴス:ロジック・メッセージ

 

たとえば自分の新規事業企画を通したければ、自分の企画に対する自信、自分にはその企画をやり遂げることができる資質があるという態度、是非とも通したい、企画をやりたいという熱意が必要です。これらは感情的な要素、つまり右脳に関するものです。

 

一方、合理性・客観性といった左脳的な姿勢も求められます。その企画が有望である根拠、たとえば対象顧客とその規模、企画案に対するニーズの存在、対競合への優位性の獲得策、予定スケジュール、収益性の見込みといったことです。

 

右脳的姿勢だけでも左脳的姿勢だけでも人は動かされません。これはスピーチの場でも同様です。

 

 

■エトスの3つの源泉

 

エトスには3つの源泉があります。


①能力(専門性や知識)

②信頼性

③ダイナミズム(情熱やエネルギー)

 

初期エトス(聴衆の感情的な印象)が高いと最終エトスも高くなる傾向があります。よって、初めての聞き手に対しては、自己紹介の仕方や外見も大事になります。逆に初期エトスが低いと挽回が難しくなります。これは初頭効果で触れたとおりです。

メッセージの構成②

■「導入部」で話すこと

 

導入部はつかみの部分です。これが上手くいくかで全体の評価のほとんどが決まってしまうといっても過言ではありません。「導入部」で話す内容としては、次のようなことがあります。

 

・自己紹介

・セミナーの目的・期待効果

・セミナーの内容

 

つかみの例

・ジョーク(ただしケース・バイ・ケース)

・テーマに関する個人的な体験談

・名言の引用

・問いかけ

 

プレゼンや講演について、まだ関心が薄い聴衆に関心を持ってもらうために全力を尽くします。

 

 

■「ボディ」での説明のしかた

 

「ボディ」での説明のしかたは、トップダウン型が基本です。すばわち、

 

・各テーマのメッセージを示す

・根拠を示す

・メッセージを確認する

 

という流れです。取り上げるテーマごとにこれを繰り返します。

 

<ポイント>

・要旨・目的は最初に伝える

・ポイントを絞る

・ページとページの流れを意識する

・繰り返し再確認する

・冗長になるため、必ずしも正確さ・厳密さにこだわらない

 

 

■「結び」での再確認

 

結びは駆け足になりがちですが、終末効果が大きく印象に影響を与える場合もありますから、重要です。

 

<ポイント>

・最も伝えたいメッセージを再度伝える

・明日から実践してもらいたいことを伝える(研修やセミナーの場合)

・職場で共有してもらいたいことを伝える(研修やセミナーの場合)

メッセージの構成①

■メッセージの伝え方の構成

 

メッセージの構成は「導入部(要旨を述べるイントロ部分)」「ボディ(プレゼンの本体)」「結び(全体メッセージの再確認)」です。


メッセージの構成 

■初頭効果と終末効果

 

メッセージを伝えるときには、初頭効果と終末効果を意識する必要があります。

 

初頭効果とは、最初の印象が全体の印象に大きく影響を及ぼすことをいいます。第一印象でほとんど決まるといったことです。

 

一方、終末効果とは、最後の印象が全体の印象に大きく影響を及ぼすことで、「終わりよければすべてよし」といったことです。本ブログでも「ピーク・エンド効果」を何度か取り上げましたが、このうちのエンドの効果です。

 

初頭効果と終末効果のどちらが大きく印象に残るかはケースバイケースです。

 

<初頭効果が大きい場合>

・最後まで聴衆の拘束が保証されていない場合(聴衆は自由に退出できる)

・セールスマンの営業トーク

・まだ関心が低い相手とのコミュニケーション

・メルマガ、書籍、テレビ番組など

 

<終末効果が大きい場合>

・最後まで聴衆の拘束が保証されている場合(聴衆は退出不可)

・すでに関心が高い相手とのコミュニケーション

・リピートを促したいハイタッチサービス

・ショートショート小説、高額のエンターテインメント、コンサートなど

 

要は聞き手が逃れることが出来る場合は初頭効果で良い印象や関心を持ってもらうことが大事で、聞き手が逃れることができない場合は終末効果で最後によい印象をもってもらうことが大事ということです。

 

多くのプレゼンの場合は前者かと思いますが、この場合は導入部が大事です。聞き手が拘束されている研修や申し込み方式のセミナーでは後者を意識し、ボディの後半から結びが大事になります。

 

 

【参考】

『図解 ビジネスの基礎知識50』グロービス著 ダイヤモンド社


KISS(シンプルかつ具体的に)

Keep It Simple and Specific

 

前回、メッセージの伝え方は、なるべくシンプルなほうがよく、論点を絞るべきだという話をしました。これは、KISSKeep It Simple and Specific):シンプルかつ具体的に)」と表現されます。

 

シンプルかつ具体的にするコツは、次のとおりです。

・一番大事なことにメッセージを置く

・メッセージを30秒で要約してみる

・1つのテーマでポイントは3つ(多くて4つ)に絞る

・目的やキーメッセージは冒頭で話す

 

私は、資格受験の新人講師の方のトレーニングも担当していましたが、その際には次のようなことをやってもらっていました。

 

・バランス・シートを30秒で説明すると?

・キャッシュフロー計算書を30秒で説明すると?

・ポーターの戦略論を30秒で説明すると?

・マーケティングを30秒で説明すると?

・話すスキルを30秒で説明すると?

 

 

■マジックナンバー4±1

 

「マジックナンバー4±1」というものがあります。これは人間が一度に処理できる情報量は、せいぜい4±1程度であるというものです。以前はマジックナンバー7±1といわれていましたが、その後の調査でそんなに沢山処理できないことが判明しました。

 

なおここで4つというのは、情報のバイト数(容量)ではなく、チャンクと呼ばれる「意味を持つ塊」の数です。たとえば、4人の名前、4つの場所、4つの商品、4桁の数字といったことです。

 

C、5フォース、4PCFTなどこのブログでもいくつかのビジネスフレームワークを紹介してきましたが、これらの多くが「マジックナンバー4±1」に沿ってポイント数を絞っています。相手に伝えるメッセージでは、「マジックナンバー4±1」に従ってまとめるとよいでしょう。

 

 

【参考】

『図解 ビジネスの基礎知識50』グロービス著 ダイヤモンド社

メッセージの伝え方(SUCCESsの法則)

プレゼンにせよミーティングの場にせよ、相手への伝え方が上手な人とそうでない人がいます。私は講師の採用業務をやっていたことがありますが、「メッセージの伝え方を知らない人が意外と多い」というのが感想です。「伝え方」で相手の印象はまったく違うものになりますし、「伝え方」は単にお作法のようなもので、個性ではありませんから、誰でも習得可能です。

 

SUCCESsの法則

 

アメリカのベストセラー作家のハース兄弟によれば、メッセージの伝え方のポイントは、次の6つです。

 

Simple:単純明快である

伝えるメッセージをなるべく絞るということです。あれやこれや盛り込んでも聞き手には伝わりません。

Unexpected:意外性がある

当たり前のことをただ伝えるだけでは印象に残りません。

Concrete具体的である

具体例やデータなどを盛り込んで話に具体性を持たせます。

Credible:信頼性がある

メッセージに具体的な根拠を持たせます。

Emotional:感情に訴える

熱く強く語ります。弱々しい伝え方では信頼性に欠けます。

Story:物語性

起承転結など話にストーリー性を持たせます。

 

ただし時間が限られている場合は、6つをすべて盛り込むことは困難ですので、3~4つに絞ったほうがよいでしょう。

 

 

INFRANの法則

 

ビジネススクールのグロービスでは、メッセージを印象付ける6つの要素をまとめています。

 

Interest:読み手の問題意識や関心に沿っている

Something New:読み手にとっての目新しさがある

Focus:多くを語りすぎず、ポイントにフォーカスする

Rhetoric:レトリック(修辞法)の力を知る

Aspiration:熱い想いや信念を伝える

Nature:書き手の人となりが伝わる

 

SUCCESsの法則との違いは、「Interest:読み手の問題意識や関心に沿っている」「Nature:書き手の人となりが伝わる」の2つです。

 

聞き手は「これが聞きたい」と事前に期待をしますが、実際の話が期待していたものではないと不満を持ちます。特に講師を務める場合には、受講者のレベル、期待している内容を慎重に予想しなければ期待はずれのものになります。

 

また、初めて出会う聞き手は話し手の人となりに関心を持ちます。最初に自己紹介をしたり、テーマと無関係に思われるエピソードを盛り込んだりすることは、その関心に応えるためです。聞き手は話し手の専門性、社交性、信頼性が高いほど評価します。無関係だからと省略する方もいますが、個人的なエピソードを盛り込むのは有効です。

 

 

【参考】

『図解 ビジネスの基礎知識50』グロービス著 ダイヤモンド社

『アイデアのちから』チップ・ハース、ダン・ハース著 日経BP

 

 

購入する前に性質を判断できるもの・できないもの

製品・サービスには、購入(使用)する前に性質を合理的に判断できるものとできないものがあります。このような特性は、探索品質・経験品質・信頼品質とよばれます。

 

<探索品質>

消費者が製品を購入する前に評価できる品質。

 

<経験品質>

製品の購入後に経験してわかる品質

 

<信頼品質>

購入後も時間が経過しなければわからない(あるいは最終的にわからない)品筆

 

 

形がある製品であれば、購入する前に手に取って品質を判断しやすいでしょうが、形のないサービスは購入・使用してみなければ品質を判断しにくいということがあります。


探索財・経験財・信頼財 場合によっては、使用後も正しい品質評価ができない場合もあります。たとえばイケメンで有名医大卒で話をよく聞いてくれる医師が、肉親の治療にあたってくれましたが、不幸にも亡くなってしまったとします。もし医療ミスがあったとしても、「あの先生は真摯に治療にあたってくれた」と医師への評価は高いままでしょう。

 

サービスの無形性(形がない)という特徴から、買い手はサービスの機能やそれがもたらしてくれる便益を合理的に判断できません。よって、サービスの提供過程の品質(プロセス品質)で善し悪しを判断する傾向があります。たとえば企業イメージ、施設の建物や内外装、スタッフの見た目や接客態度などに注目します。

 

また経験しなければ品質評価できないので、クチコミや使用経験のある人の意見を重視しようとします。

よって、サービス事業者は、買い手が目にとまりやすい部分をよくするとともに、パンフレット等には機能面の強調よりも、利用者の経験談などを掲載したほうが有効になります。経験者の声や、著名人の推薦を載せているのはそのためなのです。

 

 

【参考】

『サービスマネジメント入門』近藤隆雄著 生産性出版

顧客を分類する

ひとことで顧客といっても様々で、自社にとって有難い顧客もいれば、そうでもない顧客もいます。よって、売り手としては顧客よって対応を変える必要があります。

 

顧客は「顧客満足度が高いか低いか」「スイッチング性向(他社に乗り換える可能性)が高いか低いか」で4つに分類することができます。


顧客の分類 

<伝道者>

顧客満足度が高くスイッチング性向が低い顧客は「伝道者」です。よいクチコミを拡げてくれて自社に顧客をもたらしてくれます。

 

<傭兵>

顧客満足度は高いですが、他社に乗り換える可能性が高い顧客は「傭兵」です。もともと1社に固執する気がない顧客ともいえます。

 

<人質>

顧客満足度が低いが、他社に乗り換える可能性が低い顧客は「人質」です。地元に他に選択肢がないので仕方がなく自社を使っている顧客が典型例ですが、いまさら他社にスイッチするのが億劫な人、入会金等相応の投資をすでにしてしまい他社に乗り換えることができない人なども該当します。要は囲い込まれている顧客です。

 

<テロリスト>

顧客満足度が低く、さらにスイッチング性向が高い顧客は「テロリスト」です。悪いクチコミをばらまく可能性があります。

 

 

■「伝道者」と「テロリスト」のマネジメントに集中する

 

4つの顧客層のうち、サービス業でとりわけ重要なのは「伝道者」と「テロリスト」のマネジメントです。

 

「伝道者」はよいクチコミを拡げ顧客をもたらしてくれますから、引き続き満足度を維持する必要があり、また他の顧客を「伝道者」に引き上げる努力をする必要があります。

 

一方、「テロリスト」は悪いクチコミを拡げる恐れがありますから、なんとか中立化させる必要があります。

 

売り手側はすべての顧客の満足度を上げようと考えがちですが、満足度が低い顧客を満足度が高い顧客に引き上げることは至難の技です。製品の場合は機能を追加すればある程度満足度を上げることはできるかもしれませんが、サービス業の場合は特に難しいとされます。なぜならサービスの場合、買い手側は機能を合理的・客観的に判断することが難しく(信頼属性が高い)、提供者についてのイメージや感覚で判断しがちだからです。一度ついた買い手側のイメージを変えることは容易ではありません。

 

またもともとスイッチング性向が高い顧客の態度を改めさせることも極めて困難でしょう。

 

すべての顧客に一様に対応するのではなくメリハリが大事です。

 

【参考】

『サービスの経営学』今枝昌宏著 東洋経済新報社

『カスタマー・ロイヤルティの経営』ジェームス・L. ヘスケット、レオナード・A. シュレシンジャー著 日本経済新聞社

製品の三層モデル

前々回、サービスはコアサービスとサブサービスからなり、差別化すべきはサブサービスであることについて取り上げました。この考え方は製品にも応用することができます。

 

製品もサービスと同様にいくつかの便益(機能)がパッケージ化されて構成されています。次の図は製品の三層モデル(コトラーの3層モデル)といわれるものです。


三層モデル ●製品の核(中核的製品)

中核となるベネフィット・サービス(コア・サービス)であり、なくてはならない部分です。携帯電話なら通話できる、自動車なら安全に走るといったことです。

 

●製品の形態(実際的製品)

実態としての製品を構成する部分です。パッケージング、ブランド名、特徴、品質、スタイルなどが当たります。

自動車なら燃費や加速性、耐久性、安全性、スタイリングやデザインなどが該当します。

 

●製品の付随機能(拡大的製品)

製品そのものを構成するわけではありませんが、製品に付随して提供される部分です。取り付け、配達と信用供与、保証、アフターサービスなどが該当します。

 

前々回に触れたように「製品の核」はあって当たり前のものなので、差別化にはつながりません。よって、それ以外での差別化を図ることになります。しかしながら、近年では多くの製品分野でコモディティ化(機能面での差別化がもはや困難で価格競争に陥っている状態)が進んでおり、「製品の形態」での差別化も容易なことではありません。もし差別化してもリバースエンジニアリング技術の進展により、1ヶ月後には他社が追随してくるからです。

 

よって、「製品の付随機能」まで製品の範囲を拡大し、差別化できる要素がないかを検討します。特に「製品の形態」での差別化ができない小売店においては、「製品の形態」での差別化が大きなポイントになります。

雑誌連載記事のご案内

「世相を読み解く 診断士の眼」というコラムの連載をさせていただいています月刊誌「企業診断3月号」が発売されました。


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今回のテーマは、「15回 日本が次世代イノベーションに遅れる理由――進化した国内環境が破壊的イノベーションの足かせとなる」です。

 

イノベーションというと先進国発と考えがちです。しかしながら,途上国発のイノベーションも多く生まれており,イノベーションの普及が先進国よりも早いといったケースが見られます。

 

一方で,日本はAIを使った各種技術の開発に遅れていると指摘されています。途上国におけるイノベーションの普及を見ると,日本で破壊的な次世代イノベーションの開発や普及が遅れる理由や,今後,必要な取り組みが見えてきます。機会がありましたら是非お読みいただければ幸いです。

 

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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