課金のしかたのシフト④
引き続き「顧客への課金(料金請求)のしかた」について取り上げます。
■高価格化
あえて値段を高くするというやりかたです。
価格設定法の1つに名声価格(威光価格、prestige price)というものがあります。これは、高価であることがその所有者にある種の優越感をもたせるような商品の価格のことです。高級ブランドで用いられる価格です。
名声価格が成立する条件として、買い手が合理的な品質判断ができないということがあります。つまり「安かろう悪かろう、高かろう良かろう」という判断しかできない場合です。1着30万円の高級スーツが5万円のスーツの6倍の価値があるか合理的な根拠は何もないですが、高いのだから良いのだろうということで需要があるわけです。
また製品にくらべてサービスの方が高い値段をつけやすい可能性があります。なぜなら製品と比べてサービスは合理的な品質評価が難しいからです。たとえば医師や弁護士で報酬がえらく高い先生がいますが、一般的な先生よりそれだけの価値があるかは別問題でしょう。
名声価格はブランド化されていないと難しいことは事実ですが、ブランド化されていない場合でも値段を下げるだけでなく上げてみることも考慮すべきです。
値段を下げるからには、値下げの減収分を上回るだけの需要量の増加による増収分がなければ意味がないのですが、「値下げすれば売れるだろう」という安易な姿勢が目立つ気がします。
逆にいえば、値上げをしても需要量が対して減らないのなら、値上げしたほうが増収になります。
少し古いデータですが、東証一部上場企業のデータをもとにマッキンゼーが行った調査があります。下記はそれぞれ1%改善することで営業利益が何%改善するかを示したものです。
・価格 ⇒ 1%アップで営業利益23.2%アップ
・変動費 ⇒ 1%削減で営業利益16.3%アップ
・数量 ⇒ 1%アップで営業利益6.9%アップ
・固定費 ⇒ 1%削減で営業利益5.9%アップ
(出典:マッキンゼー・プライシング2005)
価格をあげる余地がないかはぜひ検討したいところです。
■デアゴスティーニモデル
デアゴスティーニは、CMでもおなじみですが、日本の城や特撮ヒーローなどの全集や、船や自動車のプラモデルがセットになった雑誌を小分けにして発売する方式で、人気を博しています。
このように、1つの商品を分割して、少しつずつ売るのが、デアゴスティーニモデルです。
顧客のメリットは、毎週届く楽しみが得られることや少ない小遣いでも買えることです。1冊300円でも50冊まとめて買えば1万5000円になりますから、普通はなかなか買えません。また、嫌になったら途中でやめられるので最低限の出費で済みます。
一方、ディアゴスティーニにも、多くのメリットがあります。1つは、分割で売ることで、気がるに買ってもらえることです。1度買って気に入れば、最後まで買い揃えたくなるもの、それを狙って、デアゴスティーニでは、創刊号を190円程度と安く販売しています。
また、この方法は、創刊号の売れ行きが予想できるので、2号目以降の在庫リスクを抑えられるメリットがあります。
漫画なども創刊号から第3巻まで読んだ読者の多くは、その後も購読するといわれているため、3巻までを低価格で提供するなどの工夫をしているケースがあります。
また、最後までスタンプを貯めれば●●円引きといった紙のスタンプカードも同じ効果をねらっていると考えられます。発行してもらう際に、最初に気前よく何個かスタンプを押してくれますが、これも継続してその店で購入して最後までスタンプを貯めさせるための工夫です。
【参考】
「カール教授のビジネス集中講義
ビジネスモデル構築」平野敦士カール著 朝日新聞出版