デプス・インタビューの例の2つめです。
<デプス・インタビューの例②>
「ルウシチュー」
①製品や製品にまつわる分野全体について
対象となる製品や、その製品が利用されるカテゴリー全体に対して思いついたことや感じたことを自由に語ってもらう。その後、被験者の発言に基づいて細かな部分を質問していく。
Q:寒い日に食べるメニューとしては、どんなものを思い浮かべますか?
A:やっぱり鍋かな。あと煮物とか。洋食だったらシチューとかポトフとか。
Q:いま挙げて頂いたメニューは、どのようなところが寒い日にふさわしいと思われますか?
A:煮込み料理だからですかね。手間はそれほどかからないけど、グツグツ煮込むのに時間がかかるでしょ。お部屋も暖かくなるのがいいんですよね。
②製品に関する基本情報
使用銘柄や使用頻度、購入のきっかけ、購入時に重視するポイントなどを訊く。事実に関する質問は、被験者にとっても答えやすい。また、その行動を掘り下げていくことで深層心理下の感情を明らかにしやすくなる。
Q:ルウシチューはどのブランドのものを使ってらっしゃいますか?
A:特に決めていないんだけど、この前は「○○」を使いました。
Q:「○○」を選んだのはどうしてですか?
A:たまたま安売りをしていたから。使ったことはなかったんだけど、ああ、これを使ってみようかなって。
Q:もし、安売りしているルウシチューの種類がたくさんあったら、どうやって選びますか?
A:やっぱり、コマーシャルを見てよさそうかなって思ったものを買うかな。「あ、知ってる」って思うものに手が伸びますよね。いくら安くても、聞いたことがない商品は買えないなと思います。
③製品とのかかわり
はじめてその製品を使用したときの様子やその気持ち、子供の頃の思い出、今までで一番良かった、あるいは悪かった使用経験などを聞いていく。過去の経験が現在の意思決定や行動に影響を与えている可能性が多いので、詳細に掘り下げていく。
Q:最初にシチューを食べたのはいつですか?
A:やっぱり小さい頃、母親が作ってくれたシチューですね。最初はいつかはわからないけど、覚えているのは幼稚園の頃かな。私、シチューが大好きだったから、よく作ってもらいました、あと、給食のシチューも好きだったな。
Q:シチューを食べた時の気持ちは?
A:うーん、やっぱりおいしいって感じ?シチューって、おうちの中に匂いが漂うじゃない?カレーも同じだけど。外から帰ってきてその匂いをかいだたけで、なんかうれしい気持ちになりますよね。
④モチベーション・リサーチ的な(深層心理を引き出す)質問
対象となる製品や会話の流れ次第では、「この製品を人に例えるとどのような人だと思うか?」や「この製品を利用している人はどんな人だと思うか?」など、思いがけない質問を投げかけることで対象者に軽い驚きを与え、深層心理を引き出しやすくすることができる。
Q:ルウシチューを人にたとえるとどんな人だと思いますか?
A:え~っ、人?人って・・・なんだろう?うーん、ふくよかでニコニコしているおばさんっていうか、お母さんかな。
Q:具体的に、どんなおばさんやお母さんだと思いますか?
A:きっとお料理が上手な人だと思います。で、食べるのも好きな人。
Q:料理が上手で食べるのも好きと想像したのはどうしてだと思いますか?
A:うーん、やっぱりシチューをコトコト煮ているのって、料理上手で世話好きな人のイメージじゃない?それで、ときどき「できたかな?」とか言いながらつまみ食いしちゃうから、太っちゃう(笑)。
以上のインタビューから得られる仮説としては、「香りの良さのアピールがシチューを選ぶ際のフックになる可能性がある」「シチューというと「料理上手」という良いイメージのようだ」「その一方、潜在意識ではカロリーを気にしているようだ」ということでしょう。こうした仮説を販促活動に生かしていきます。
【参考】
『買い物客はそのキーワードで手を伸ばす』学習院マネジメント・スクール監修 ダイヤモンド社