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雑誌連載記事のご案内

「世相を読み解く 診断士の眼」というコラムの連載をさせていただいています月刊誌「企業診断12月号」が発売されました。

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今回のテーマは、「企業業績を決めるのは,内部要因か外部要因か?――マクロ経済の変動と企業業績との関係」です。

先月号の本コラムでは,日本のGDPとマクロ経済要因(為替要因)との関係について触れました。世界経済の不透明感と消費増税の影響により,企業業績の低迷を予想する声が大きいです。

その一方で,マクロ経済動向にかかわらず,成長している企業も存在します。「企業業績は,外部環境ではなく,その企業の戦略や努力に依存する」という声は多く見られます。

今回は「企業業績を決めるのは,外部要因なのか内部要因なのか」について取り上げてみました。

 

機会がありましたら是非お読みいただければ幸いです。

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スピーチのフォーマット⑤

<フォーマット5:状況、問題提起、解決策>

コンサルティングファームのマッキンゼーの出身者が開発したものです。

 

(1)導入

「本日はお招きいただきありがとうございます」などと謝意を述べる。

 

(2)本論

「本日、お伝えしたいのは、不良品率と製造数についてです」などと内容紹介した上で各論に入る。

  状況

昨年の自動車部品の不良率は1%でした。

  問題提起

ところが自動車の需要が高まっており、さらに部品を製造する必要がでてきていますが、限られた人員で製造数を増やすと、不良品率は高まってしまいます。

  解決策

そこで、不良品率と人員を変えないままで、製造数を増やす方法をいくつか提案します。たとえば・・・すれば上手くいきます。

 

(3)まとめ

「本日は、不良品率と製造数についてお伝えしましたが・・・」ともう一度、本論の内容を要約して話す。

 

【参考】

『スタンフォードでいちばん人気の授業』佐藤智恵著 幻冬舎

スピーチのフォーマット④

<フォーマット4:長所・短所・推奨>

政治家が法案を通したいとき、ビジネスパーソンが企画を出すとき、多くの人々から支持を求めるときのスピーチでよく使われます。

 

たとえば、業者選択で相見積もりをとっている場合を挙げてみます。

 

  長所

A社を選んだ場合、3社の中でもっともコストが安いというメリットがあります。

  短所

デメリットは、この内容では質が担保できない恐れがあります。

 

  長所

B社を取引として選んだ場合、質の高いサービスの提供が見込まれます。

  短所

デメリットは費用が予算オーバーになってしまうことです。

 

推奨

両社のメリット、デメリットを勘案した上で、私はB社がよいと思います。なぜなら・・・

 

【参考】

『スタンフォードでいちばん人気の授業』佐藤智恵著 幻冬舎

 

スピーチのフォーマット③

<フォーマット3:過去、現在、未来>

時系列で話すパターン。たとえば、定年退職するボブさんの送別会でスピーチする場合。

 

(1)導入

「本日はボブさんの送別会にお招きいただきありがとうございます」などと謝意を述べる。

 

(2)本論

簡単な自己紹介の後、ボブさんとの思い出を時系列で語る。

 

  過去

私がボブさんと会ったのは今から20年前。はじめて会ったときの印象は・・・。その後、ボブさんとは△△の仕事でご一緒させてもらいました(ボブさんとのエピソードをいくつか語る)。

  現在

私たちにとってボブさんは何でも相談できる父親のような存在です(エピソードをいくつか語る)。

  未来

これからボブさんは慈善団体で活躍されるとうかがっていますが、今後ますますのご活躍をお祈りしております。

 

(3)まとめ

このケースでは特に必要なし。

 

「過去、現在、未来」は自己紹介で使うと論理的な人と思われ好印象を残すことができます。

 

  過去

○○大学を卒業後、A社で広報の仕事に携わった

  現在

数年前に転職し、今は外資系のB社の日本支社でブランドマーケティング部門を統括してる。

  未来

今後はさらに自分を成長させるために、C社で経営に参画できるような仕事をやっていきたい。

 

【参考】

『スタンフォードでいちばん人気の授業』佐藤智恵著 幻冬舎

 

スピーチのフォーマット②

<フォーマット2:問題提起、原因、解決方法、解決策>

研究成果を発表するときや、コンサルティングをした結果をプレゼンするときによく使われる。

 

(例:心理学者が睡眠障害について発表した事例)

 

(1)導入

本日は睡眠シンポジウムにお招きいただきありがとうございます。不眠で困っている方、みなさんの中にどれくらいいるでしょうか?

 

(2)本論

本日お伝えしたいのは、不眠の原因とその解決方法についてです。

  問題提起

アメリカでは、7000万人を超える人々が睡眠障害に悩んでいるといいます。睡眠障害は集中力や記憶力の低下、不安障害、うつ病、高血圧、肥満などを引き起こす恐れがあります。

  原因

睡眠障害の大きな障害になっているのが、仕事や子育てのストレスです。

  解決方法

この問題を解決するには、1、2、3という3つの方法があります。

解決法1は認知行動療法です。この方法は・・・

解決法2は定期的な運動です。運動はストレスを解消し、睡眠障害に効果があることが研究からわかっています。

解決法3は瞑想です。瞑想にはストレスを緩和する効果があることが立証されています。

  解決策

ここにお集まりのみなさんにもっとも推薦したいのが、瞑想です。なぜなら・・・だからです。

 

(3)まとめ

「本日は、不眠の原因とその解決方法についてお伝えしましたが・・・」ともう一度、本論の内容を要約して話す。

私のお話がお役に立てば幸いです」ともう一度、本論の内容を要約して話す。

 

【参考】

『スタンフォードでいちばん人気の授業』佐藤智恵著 幻冬舎

 

スピーチのフォーマット①

スタンフォード大学で経営大学院で政治コミュニケーションを教えるデビッド・デマレスト氏によれば、すべてのスピーチの基本は「導入・本論・まとめ」の3部構成であるといいます。デマレスト氏によれば、本論の部分を論理的に伝えるフォーマットは5つあります。

 

<フォーマット1:ABC>

自分の言いたいことを3つにまとめるという、基本的なフォーマットです。

 

(1)導入

「本日はお招きいただきありがとうございます」など主催者や聴衆に謝意を伝える。

 

(2)本論

「本日お伝えしたいのは次のA,B,Cです」と内容を紹介したうえで、各論に入る。

Aについて、ご説明します

Bについて、ご説明します

Cについて、ご説明します

 

(3)まとめ

「本日は、AB,Cについてお伝えしましたが、私のお話がお役に立てば幸いです」ともう一度、本論の内容を要約して話す。

 

<例>

導入

本日は「働く女性のダイエット」についての講演にお招きいただきありがとうございます。みなさんの中にも無理をしてダイエットをしたけれど失敗したという経験がおありな方もいらっしゃるでしょう。・・・・(聴衆に共感してもらえるコメントを続ける)

 

本論

今日、私がこれからお伝えしたいのは、体重100キロだった私が、マイナス30キロのダイエットに成功した方法です。(A)食事制限、(B)運動、(C)モチベーション維持の3つの点からご説明します。

A)食事制限については、・・・

B)運動については・・・

C)モチベーション維持するために私がやったのは・・・

 

まとめ

本日は30キロ痩せた私のダイエット法についてご説明しましたが・・・、この3点を忘れずに、みなさんにもダイエットに成功してほしいと思います。

 

 

【参考】

『スタンフォードでいちばん人気の授業』佐藤智恵著 幻冬舎

 

コミュニケーションの基本(AIM)②

前回に続き、コミュニケーションの基本フレームワークであるAIMの例を見ていきます。

事務連絡の失敗事例です。

 

「ある会社が111日から出張・経費精算書の書式と提出方法を変更することにした。その会社の担当役員は、1000人の全社員に向けて「71日から、出張・経費精算書の書式と提出方法が以下のように変わります。・・・」と詳細なメールを送った。」

 

まず「このメールを全社員に送る必要があったか?」ということです。実際、この会社で出張業務に関わっている人は100人、出張・経費精算書の作成業務に携わっているのはたった10人だったとしたら、残りの890人には不要なメールになります。

 

このケースでは、10人と100人に、別々のメールを送り、必要な情報を伝えるべきでした。事務を請け負うアシスタント10人には、詳細な長文メールとサンプル書類を送り、出張する100人には「出張・経費精算書の書式と提出方法が変わりますので、アシスタントに伝えました」と数行のメールを送ればよかったのです。

 

こういう事態が続くと、経営陣からのメールが来るたびに社員は「また不要な事務連絡か」と思って、削除してしまいます。結果、本当に必要なメッセージが社員に届かなくなってしまうことになります。

 

A=Audience(聴衆)

事前に考えること

この変更を誰に伝えるべきか

→出張業務に関わっている管理職100人と精算書を作成するアシスタント10

 

IInterest(目的):

事前に考えること

誰に何をしてほしいか

→管理職100人には変更した事実を知ってほしい、アシスタント10人には、新しいシステムで精算書を提出・作成してほしい

 

MMessage(メッセージ):

事前に考えること

100人と10人に同じメッセージを送ってよいか

→出張する100人には、「出張・経費精算書の書式と提出方法が変わりますので、アシスタントに伝えました」と数行のメールを送る

→事務を請け負うアシスタント10人には、詳細な長文メールとサンプル書類を送る

 

【参考】

『スタンフォードでいちばん人気の授業』佐藤智恵著 幻冬舎

 

コミュニケーションの基本(AIM)①

社内や取引先との打ち合わせやメール、プレゼン、朝礼でのスピーチなど、ビジネスの現場では様々なコミュニケーションが発生します。しかしながら、メッセージの伝え方が上手な人と、そうでない人がいます。今回は、コミュニケーションの基本について、取り上げます。

 

■コミュニケーションの基本「AIM

 

AIM(目的)とはダートマス大学のメアリー・マンター名誉教授らが紹介したコミュニケーションのフレームワークです。

 

A=Audience(聴衆):どんな属性の人に伝えるのか

IInterest(目的):伝えることによって相手に何をしてほしいのか

MMessage(メッセージ):どんなメッセージを伝えれば相手は行動してくれるか

 

AIMを使ったコミュニケーションの例を見ていきます。

 

 

■ケース1(企画提案)

 

「あるテレビ局のプロデューサーは、予算1億円の単発ドラマを制作したいと考え、番組企画会議にはかることにした。どのような企画案でどのようにプレゼンすればよいか?」

 

A=Audience(聴衆)

・企画を審議する人たちはどんな番組にメリットを感じるか?テレビ局のブランドイメージの向上?コスト削減?偏りのない番組編成?若手のプロデューサーの活躍の場?

・彼らにイエスと言わせるためには、何を提案したらいいか?

 

IInterest(目的):

・プロデューサーは、この会議で何を達成したいのか?その場で1億円の予算を獲得したい?試作番組の制作用の予算が1000万円獲得できればよい?開発プロジェクトを立ち上げることだけ決まればOK?詳細を詰めるための次回ミーティングの設定ができればOK

 

MMessage(メッセージ):

・どんな企画書を書けば相手はのってくるのかを考えて、相手のメリットを強調した企画書を作成する。自分のやりたいことだけを強調しても目的は達成できない。

・企画会議の各メンバーの属性や利害を把握する。その上で、意思決定の仕方について知っておく。多数決かキーマンの独断なのかによって、訴求内容が変わる。

 

【参考】

『スタンフォードでいちばん人気の授業』佐藤智恵著 幻冬舎

WCAの具体例

WCAWants Chain Analysis:欲求連鎖分析)の具体例について、前回のハマノパッケージを取り上げます。

 

同社ではブレインストーミングを行い、本質的価値を実現するための作業を進めた。その結果、「飾っておきたい箱」「和のテイスト」「立体的なデザイン」などといったアイデアが生まれ、それらが「折り紙風の貼り箱」というコンセプトに集約され、最終的には「個人が日常で使いたくなる箱をあえて商用で流通させる」というソリューションにたどりついた。

 

その次に「最終消費者は何に価値を感じて製品を購入するのか」という点を追求するためにバリューグラフで掘り下げた。

 

<贈答品の目的の分析>

「贈答品を渡す」⇒「感謝の気持ちを伝える」⇒「感謝の気持ちに気づいてもらう」⇒「よい人間関係を築く」

 

この時点で同社が注目したのは、「感謝の気持ちに気づいてもらう」という目的だった。贈り手としては、相手に喜んでもらいたいのはもちろん、その喜びが長く続くことを望むだろう。そこで同社は、最終消費者にとっての本質的な価値は、相手に感謝の気持ちに気づいてもらうことと、その喜びが長続きすることであると考えた。それは、通常であれば廃棄される段階になっても手元に置き続けたくなるような価値を貼り箱にもたせることができれば実現できると考えたわけである。

 

バリューグラフで明らかになった本質的価値を、具体的な製品のカタチに落とし込むために、同社はCVCAでつながっているように見える価値連鎖が、本当に顧客を満足させているかどうかを確認するために、WCAを行った。

WCA例2

こうした試行錯誤の結果、同社が最終的に選択したのは、海外企業向けに「和のテイスト」を強調した高級貼り箱を開発するというアプローチであった。その目的は、直接の取引先(顧客企業)に価値を提供するだけでなく、贈答品をもらった人(最終顧客)に感動を与え、中身がなくなっても使い続けたくなる箱を、あえて商用に流通させることである。

 

この事例の重要なポイントは、それまで自分たちが「顧客」だと考えていた相手の先に「最終的な顧客」が存在することに気づいた点である。それにより、お菓子などの中身がなくなれば捨てられてしまうという前提条件を見直し、「廃棄されずにずっと使い続けられる貼り箱」というコンセプトのもとで新製品開発に取り組みことができるようになった。

 

【参考】

『システム×デザイン思考で世界を変える』前野隆司編著 日経BP

CVCAの具体例

CVCAの具体例を紹介します。

 

<企業概要(ハマノパッケージ)>

1954年創業。贈答品や高級菓子向けの貼り箱専業メーカーとして、優良企業との取引を通じて順調に業績を伸ばす。しかしながら、近年、製品単価の下落、原材料の高騰、高級品向け製品の不振により業績が低迷。

 

<これまでの取り組み>

コスト削減や生産性向上、品質向上、新規顧客開拓、既存顧客深耕などに取り組む。特に品質向上については、「高級貼り箱メーカーの生命線」という信念から、重点的に力を注ぎ、「高級感のある箱」「面白い形状の箱」といった要望を顧客から聞き出し、その通りの品質を実現した。しかし、顧客が欲しいという「良いもの」をどれだけ作っても、思うように売上は伸びず、コモディティ化が加速している単体での勝負に突き進んでいた。

このような状況の中、慶應SDMとのコラボレーションにより、「高品質から高価値へ」「付加価値から本質的価値」への視点の転換を図ることにした。

 

CVCA

社員とパートスタッフによる地元百貨店洋菓子売場でのフィールドワークを行った結果、「作り手(自社)」目線だけでなく、「売る人」や「買う人」の目線も意識できるようになり、「売り場でやり取りされている価値」という視点を持てるようになった。同時に、その価値が何か分からないという課題も浮き彫りになった。

 CVCA例2

昔から同社は、箱は何かの中身を入れることではじめて製品として成り立つと考えていた。単体の箱それ自体には価値がないと思い込んでいたのである。それが最終消費者の観察によって、製品の価値は局面(フェーズ)によって異なるという認識に変わった。

 

貼り箱が製造されてから廃棄されるまでは、いくつかのフェーズに分かれている。最終消費者を意識した貼り箱の開発を考えるのであれば、製造から廃棄までのどのフェーズで価値を最大化すべきかー。そう考えた結果、贈り手がもらい手に箱を渡した瞬間から、箱がもらい手によって保管されるまでの価値を最大化することが重要であるという結論に達した。言い換えるならば、「贈られた喜びがいつまでも持続すること」が、箱にとっての本質的な価値であると定義したのである。そして「廃棄を前提としない貼り箱の開発」という新たな道が開けた。

 

 

【参考】

『システム×デザイン思考で世界を変える』前野隆司編著 日経BP

 

WCA(欲求連鎖分析)

WCAWants Chain Analysis:欲求連鎖分析)は、「人々の欲求」という観点から、ビジネスモデルや社会システムの分析・設計を行う技法です。CVCAをベースに慶應SDMが開発したもので、CVCAの価値連鎖が本当に満足につながっているのかを確認するために、「したいこと」「してほしいこと」のつながり(欲求連鎖)を可視化します。

 

WCAでは人々の欲求を、マズローの欲求段階説に沿って、次の5つに分類します。

 

① 生理的欲求

食物、水、空気、温度、休養、性的欲求など、生理的体系として自己を維持しようとする欲求。

② 安全欲求

健康の維持、危険回避、住居の確保、安定した仕事など安全な状況を希求したり、不確実な状況を回避しようとする欲求。

③ 所属・愛情欲求

集団への所属を希求したり、友情や愛情を希求する欲求。

④ 尊厳欲求

他人からの尊敬や承認を得たり、名誉ある地位を求める欲求。

⑤ 自己実現欲求

自己の成長や発展の機会を希求したり能力の実現を希求する欲求。

 

利己的な欲求だけでなく、利他的な欲求にも注目します。

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上の図は、ミネラルウォーター「ボルヴィック」の販売会社が売上の一部を日本ユニセフ協会に寄付し、その寄付金がアフリカのマリで井戸を掘削するために使われる「1L for 1OL」というプログラムをWCAで分析したものです。自分以外(ユニセフ)が水を提供してアフリカの人々を助けてもらいたいという企業の欲求(利他的欲求)が、清潔で安全な水が欲しいというアフリカの人々の欲求(利己的欲求)を充足し、それが最終的に「収益を得たい」という企業の欲求(利己的欲求)を充足しています。

 

このように、ビジネスモデルの設計では、すべてのステークホルダーの欲求を満足させる仕組みづくりが鍵を握っています。

 

【参考】

『システム×デザイン思考で世界を変える』前野隆司編著 日経BP

CVCA(顧客価値連鎖分析)

CVCAとは?

 

CVCA(顧客価値連鎖分析:Customer Value Chain Analysis)とは、検討の対象となる会社や組織が「誰」と「どんな価値」をやりとりしているかというバリューチェーンの視点で、ある製品やサービスをめぐるステークホルダー(利害関係者)の関係を可視化する手法です。

 

アイデア創出の初期段階で、多様なチームメンバーとともに「この人(企業)にとっての価値は何か?」を検討することにより、ビジネスモデルの原型をデザインするために有効です。スタンフォード大学の故石井浩介教授らによって提唱されました、

 

<手順>

・分析の対象とする製品やサービスに関係する企業や個人をリストアップする。最初は重要度の高いステークホルダーに絞ると描きやすい。

・分析対象を中心にして、ステークホルダーを図に位置づける。簡単なイラストを使って、直感的にわかるように工夫する。

・やり取りしている価値の種類をアイコンで表現し、価値が流れる方向を矢印で示す。たとえば、お金は「¥」、情報は「!」など。

・アイコンで表現しにくい価値は、言葉で記入する。たとえば、企業内の部署間であれば「業務指示」「企画提案」、人間関係であれば「手伝い」「感謝の言葉」など。

・全体を見渡し、ステークホルダー間の価値の流れ(循環が起きているか?一方通行はないか?)を検証する。

 

CVCA例1


■価値の「一方的な流れ」に注意する

 

CVCAで検討する価値は金銭的なものばかりではありません。もの、サービス、情報など、ステークホルダーそれぞれにとっての価値を吟味することが重要です。そのうえで、ステークホルダー間の価値のやりとりや、バリューチェーンの循環が妥当かどうかを確認します。

 

価値を一方的に提供しているステークホルダーや、価値を一方的に享受しているステークホルダーが存在する場合、そのビジネスモデルは長続きしません。こうしてバリューチェーンを検討することにより、既存のビジネスモデルの問題点や改善点を発見したり、新たなビジネスモデルの原型をデザインすることができます。

 

【参考】

『システム×デザイン思考で世界を変える』前野隆司編著 日経BP

雑誌連載記事のご案内

「世相を読み解く 診断士の眼」というコラムの連載をさせていただいています月刊誌「企業診断11月号」が発売されました。


企業診断11


今回のテーマは、「なぜ日本は内需国なのに海外リスクの影響を受けるのか?

――為替・輸出・日本経済との関係を考える」です。

 

日本経済新聞社の集計では,上場企業の2019年4~6月期の純利益は前年同期比14%減と3四半期連続で減益となりました。また,7月29日までに2019年4~6月期決算を発表した日本の上場企業のうち,製造業は3社に2社が最終減益となったとの報道があり,日本メーカーの不調が報じられています。

これはリーマンショックの影響が残っていた2009年以来の広範な落ち込みだそうです。米国との貿易摩擦も重なって中国景気が減速し,電機,機械,自動車などの輸出が悪化しているとの見方がされています。今回は,輸出の日本経済に与える影響度合いについて考えます。

 

機会がありましたら是非お読みいただければ幸いです。

バリューグラフ(バリューラダー)

バリューグラフとは、スタンフォード大の故石井浩介教授らが開発した価値工学の手法で、製品やサービスの目的や価値を構造的に可視化し、解空間を広げるために用います。階層で表すときはバリューラダーとも呼ばれます。

 

私たちは問題解決に際して、あるコンセプトや解決策に飛びつく傾向にありますが、その前に「なぜそうするのか?」という問いを発し、より上位の目的を追求します。「そもそも本質的な目的は何か?」を考えることにより、当然のこととみなしていた思考や行動から離れて、視野を広げることができます。

 

上位の目的が見つかれば、逆方向にその目的を「どのように実現できるか?」と考えていくことで手段の自由度を高め、よりクリエイティブな代替案を検討できます。

 

バリューラダーのねらいは、上位の目的や価値を構造化し、より創造的な発想を促すことです。多くの場合、上位の目的は1つではないので、チームメンバーの多様性を活かしながら、いくつもの目的を考え出し、それぞれの目的を実現する手段を書き加えていきます。これまで考えたこともなかった手段が代替案として登場し、イノベーションのきっかけになることもあります。

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上図は、アップルの開発チームが、パソコン「Macintosh」の空冷ファンの価値について議論したときに作成されたものです。「空冷ファン」を出発点に、空冷ファンの目的は空気の流れをつくること、空気の流れをつくる目的は熱を除去すること・・・というふうに上位の目的を考えていった結果、「信頼性を向上させ長寿命を実現」という最上位の目的(本質的価値)が見えてきました。ここまでくると、その目的を達成するのに必ずしも空冷ファンを用いなくても、チップの性能を高めるといった別の選択肢が浮上してきます。なかには「一定温度に保つ」ために「南極大陸に出荷」といった現実的でない方法が混じっていますが、こうした突飛なアイデアを許容しながら議論を進めることが、枠にとらわれない思考では重要です。

 

 

【参考】

『システム×デザイン思考で世界を変える』前野隆司編著 日経BP

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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