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3S・7つのムダ

少し前にダラリの原則について取り上げましたが、ついでに他の生産現場の行動原則をご紹介しましょう。こちらも広く職場の効率化に適用できます。

 

■3S

 

合理化のための基本原則です。

 

単純化(Simplification

製品・材料・部品の種類を整理したり、作業方法を簡略化することで効率化を図ります。

標準化(Standardization

標準作業方法の設定のことです。

専門化(Specialization

各作業の担当を決めて専念させることで、作業の熟練を図ります。

 

 

■7つのムダ

 

トヨタ自動車においてムダとされるものです。すべて削減の対象になります。

 

1)作りすぎのムダ

沢山作りすぎると在庫が増え、売れ残りというリスクが生じます。

2)手待ちのムダ

前の工程の作業遅れや、指示待ち、材料待ちなどによる待機のムダです。

3)運搬のムダ

製造過程である場所からある場所まで運搬することのムダです。運搬は少

ないほど短いほどよいです。

4)加工そのもののムダ

必要以上に手を加えすぎることのムダです。基準以上のことをやってもあま

り意味はありません。

5)在庫のムダ

必要以上に在庫が多いとその保管費用がかかったり、経年劣化が生じた

り、売れ残りのリスクが生じたりします

6)動作のムダ

いちいち道具を探したり持ち替えたりといった作業動作のムダです。作業に

ムダに時間がかかったり、余計な疲労の原因になったりします。

7)不良をつくるムダ

不良品にかかった材料や時間のムダです。別途廃棄コストがかかるというム

ダも生じます。

 

ダラリの原則、3S、7つのムダは職場の効率化のための原則ですが、個人の作業の効率化にも使えます。ぜひ自分の作業にムダがないか確認してみてください。

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雑誌連載記事のご案内

「世相を読み解く 診断士の眼」というコラムの連載をさせていただいています月刊誌「企業診断2月号」が発売されました。今回のテーマは、「果たして挑戦的な目標は企業の成長に有効なのか?――かんぽ生命と東芝に共通する不正の温床」です。


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保険商品の不適切販売の責任で,かんぽ生命と日本郵便に新規販売3ヶ月停止の行政処分が下りました。

保険商品の販売で過剰なノルマ至上主義があったといいます。ノルマ至上主義というと,2015年に発覚した東芝不適切会計問題の「チャレンジ」を思い起こされた方も多いのではないでしょうか。実際に両者には共通点が多いように思われます。

今回は,挑戦的な目標(ノルマ)の功罪について,シム B. シトキン教授(デューク大学),C. チェット・ミラー教授(ヒューストン大学)らの論文を参考に考えてみます。

 

機会がありましたら是非お読みいただければ幸いです。

最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク

このたび2冊目の書籍を出版させていただくことになりました。

 

「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」

ぱる出版 単行本 ¥1,540


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2月6日発売予定です。アマゾン等で予約発売が始まっております♪

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4827212198?pf_rd_p=3d322af3-60ce-4778-b834-9b7ade73f617&pf_rd_r=FXKRT64AQW57JB55F02R

 

「フレームワーク集なんてたくさんあるけど何が違うの?」

⇒普通のビジネスパーソンが使えるものだけに厳選しました!

 

書店のビジネス書のコーナーを覗くと、実に多くのビジネス・フレームワーク本が出版されています。そのような本の定番のフレームワークとして、次のようなものがあります。

 

SWOT分析、3C、5フォースモデル、ビジネスモデルキャンパス、マッキンゼーの7S

P(4C)、PPMPEST分析、NPV

 

どうでしょう?いくつ知っていますか?実は1つも知らなくても何も問題ないのです。実際に知り合いの大手企業の部長や支店長に聞いてみましたが、1つも知りませんでした。それで何も問題はないどころか、彼らは十分仕事で成果を出して、出世もしているのです。おそらく一般のビジネスパーソンであれば、まず使うことはないでしょう(使う必要性に迫られたら学べばよいのです)。つまり単に教養にすぎません。

 

世の中のフレームワーク本は、若手社員のことなどまるで眼中にないし、実際に現場で使えるかどうかも二の次だったりします。なぜか?著者は大抵、外資系コンサルティング・ファーム出身者や総研系のコンサルタントです。彼らは、経営幹部候補生や経営コンサルタントに向けたMBA(経営学修士)本のついででフレームワーク集を書いていることが多いからです。

 

一方で、若手社員向けというと、フレームワーク本ではありませんが、経営者や著名人などが書いた「心構え」的なもの(いわゆる啓蒙書、教訓本)もあります。中にはよいことも書かれているでしょう。しかしながら、こうした本のイタイところは、あくまで個人の経験談や自己主張にとどまってしまっていることです。

 

なにか道徳の本のようで、客観的な根拠に乏しいという点では、所詮、上司や先輩の飲み屋での「語り」と同レベルです。また、読者は筆者と同じキャラクターや境遇ではないので、「行動を真似しろ」といわれてもムリがあります(たとえば「リスクを取れ」「自分の夢を追いかけろ」「苦労は勝ってでもしろ」など)。

 

本書は「世のフレームワーク本」と「若手への教訓集」の欠点を補い、数多くのフレームワークの中から、現場の一般の若手社員のためのフレームワークを厳選したものです。選考の基準は、①すぐに使える、②誰でも使える、③妥当性が高い、の3点です。ぜひ、本書を机の引き出しの中に入れておいて、困ったときに使っていただきたいと思います。

 

私が読んだ1500冊のビジネス書の中から厳選した絶対使える自信作です。皆様だけが頼りです!どうぞよろしくお願いいたします!!

ダラリ(3ム)の原則

■ダラリ(3ム)の原則とは?

 

ダラリ(3ム)の原則とは、組織や職場の効率を上げるための行動原則で、「ムダをなくす」「ムラをなくす」「ムリをなくす」の3つを指します。

 

ムダをなくす ⇒ 最適な作業方法の設定

ムラをなくす ⇒ 標準的な作業方法の設定

ムリをなくす ⇒ 余裕を適切に見込んだ作業方法の設定

 

もともと製造業の生産現場で用いられていましたが、それに限らず、職場の生産性改善に広く適用できる考え方です。

 

 

■ダラリの原則はなぜ必要か?

 

効率化とはすなわち「ムダをなくすこと」であることには異論がないでしょう。一方、同じ作業をしていても、効率がよい人とそうでない人がいます。職場全体でこうしたばらつきを無くすためには、効率がよい人の作業方法を観察し、それをもとに標準的な作業方法を確立する必要があります。その結果、効率が悪い人の「ムダ」を省くことができます。

 

その際には合わせて標準作業時間を設定します。たとえばAという作業の標準的な方法が確立されたら、それをどれくらいの時間で行うのが標準化するのです。その結果、作業の見積が立てやすくなります。たとえば1日5時間勤務として、作業Aの標準時間が5分、人数が3人だとしたら、延べで180回作業が可能になります(300分÷5分×3人)。

 

もっともぎりぎりまで効率化すればよいというわけではありません。機械と異なり、人間には休息が必要です。またトイレに行ったり、突発的なトラブルで作業が遅れたりといったこともあるでしょう。よって、ある程度の余裕を持った作業ペース(標準作業時間)にしておく必要があります。

三現主義

■三現主義とは?

 

三現主義とは、現場(場を確認する)、現物(物を確認する)、現実(この目で事実を確認する)という「3つの現」を重視する考え方のことです。自らの目で見ることで改善のヒントを探ることができます。

 

「ここが問題なのではないか」といくら頭の中だけで考えても、それはただの空論です。三現主義は、現場で現物を観察して、現実を認識した上で、問題の解決を図らなければならないという考え方です。

 

もともと三現主義は、トヨタ自動車などの生産現場の改善活動で用いられてきました。製造業では、「いかにムダをなくすか」が永遠のテーマですが、改善活動のベースとなっているのが三現主義です。

 

最近では、メールだけで報告を済ましてしまうことが多く見られますが、文字で伝えられることには限界があります。正しく状況を把握するためには、必要に応じて自分で現場におもむいて確認することが求められます。

 

もっとも三現主義は、製造業以外の業種の問題解決や改善活動でも基本となる考え方です。

 

 

■三現主義の例

 

取引してよいか不安のある取引先を訪問して、担当者の話を直に聞いたり、オフィスの状況を確認したりして、相手の経営実態を把握します。実際に話を聞いたり観察していると、あまり信用がおけない相手だったりすることはよくあります。

 

帳簿上は存在する在庫が本当にあるのか、実際に倉庫に見に行って確認します。確認したら商品が古くなって使い物にならない、そもそも数が足りないといったことはよくあります。

 

・顧客から自社商品のクレームが入った際に、実際に顧客に訪問して状況を確認します。実際には顧客の認識誤り(間違った使い方をしていた、説明書をよく読んでいないなど)で、商品の問題ではないといったことはよくあります。

 

経営学と経済学の違い②

■木も森も見る

 

確かに個々の企業の頑張りは重要なことですが、一企業レベルでできることには限界があります。

 

たとえばリーマンショック後、1ドル115円程度であった為替は、1ドル80円を割る水準にまで円高が進みましたが、これでは日本の輸出企業は韓国・台湾・中国などの企業と戦いようがありません。

 

20122月に会社更生法を申請し、製造業として戦後最大の負債総額4480億円で経営破綻した半導体製造業エルピーダメモリの坂本幸雄社長(当時)が、記者会見の中で「為替については、リーマンショック前と今とを比べると、韓国のウォンとは70%もの差がある。円高は一企業の努力でカバーできない」と発言したのは偽らざる本音でしょう。逆にアベノミクス以降の円安で、過去最高益の企業が続出したことは記憶に新しいです。

 

ミクロ偏重の発想は、経営者、経営学者、経営コンサルタントに顕著に見られます。極端な例では、「日本経済がイマイチなのは、みんなが頑張らないからだ」という主張さえあります。私に言わせると、これはただの精神論に過ぎません。

 

ここで大事なことは、経営学(ミクロ)の視点も、経済学(マクロ)の視点も両方大事だということです。私自身も、経営コンサルタントの立場では、(日銀の金融政策が悪い、規制緩和がイマイチなどと言っていても始まらないので)経営学の観点で思考します。一方、経済全体を論評するときは、もちろん経済学の観点で発想するようにし、完全に思考のフレームを使い分けています。

 

経済学の視点がないと、正しい状況認識ができなくなります。みなさんにも、「木も見て、森も見る」、実務的な意思決定の場面では経営学的な発想を、国の政策判断(あるいは選挙の際の政党・候補者の選択)の際には経済学的な発想を心がけて頂ければと思います。

経営学と経済学の違い①

私は経営に関するコンサルタントや、講義・セミナー・研修の講師をしている一方で、経済に関する講義や執筆活動もしています。つまり経営学と経済学の間を行ったり来たりするという立場で、経営コンサルタント(あるいは中小企業診断士)としてはいささか珍しい立場です。今回は、経営学と経済学の使い分けについて述べたいと思います。

 

■経営学と経済学では目的が異なる

 

多くの方は、「経済学と経営学を同じもの」、あるいは「経営学は経済学の1つのジャンル」と捉えているかもしれません。確かに経営学は経済学をベースに誕生したという経緯がありますが、両者はまったくテーマ(目的)が異なります。

 

経営学は突き詰めれば「単一の企業の利益の最大化(ミクロの観点)」をテーマにするのに対し、経済学は「国全体の利益の最大化(マクロの観点)」をテーマにします。

 

ここでよくある誤解が、「ミクロの合計がマクロになる」、言い換えれば、「1つ1つの企業が利益の最大化のために望ましい行動をすれば、国全体の利益(GDP)が最大化する」というものです。この考え方は誤りです。

 

一企業が利益を最大化するためには、同業者との競争を脱し、独占に近い形を目指すことになり、経営学でもそのように教えます。

 

しかしながら、一企業が市場を独占すると、価格が不当に上がり、消費者は損をするので、企業(売り手)と消費者(買い手)からなる経済全体では利益が阻害されることになります。よって、経済学ではできるだけ、市場を完全な競争状態に近い状態にすることを求めます。独占禁止法はその趣旨に沿ったものです。

 

またイノベーションの成功事例を数多く起こすことが国全体としての課題ですが、そのアプローチについても大きく異なります。

 

経営学では1つ1つのイノベーションの成功確率を高めることに力点が置かれます。

 

一方、経済学ではイノベーションはそもそも成功確率が低いものなので(ハイリスク・ハイリターン)、個々の質はともかくできるだけ多くのイノベーションを発生させるための環境整備に力点を置きます。要は「数打ちゃ当たる」という発想です。具体的には規制緩和や研究開発投資を促す仕組み(税制や資金調達市場など)の整備です。

価格バンドリングの効果

価格バンドリングとは、「〇〇と××をセットでいくら」つまり抱き合わせ価格のことです。今回は価格バンドリングの経済的合理性について考えてみます。

 

以下のケースを考えてみます。

 

・ソフトウェアXとソフトウェアYの2種類のソフトがあります。

・消費者はAさんとBさんの2人です。

Aさんの購買意欲(=商品に払ってもよいという価格)はソフトウェアXに対し4万円、ソフトウェアYに対し2万円です。合計で6万円支払ってもよいということになります。

Bさんの購買意欲(=商品に払ってもよいという価格)はソフトウェアXに対し3万円、ソフトウェアYに対し3万円です。合計で6万円支払ってもよいということになります。

・消費者は価格が購買意欲と同じか、それより低ければ購入します。

 

さて、ここでソフトウェアXとソフトウェアYが別々に発売され、それぞれ価格が3万円、2万円だとします。AさんBさんとも価格が購買意欲と同じかそれ以下なので両方とも購入します。

 

<ソフトウェアXとソフトウェアYが別々に発売された場合の売上>

Aさん:ソフトウェアX(3万円)+ソフトウェアY(2万円)=5万円

Bさん:ソフトウェアX(3万円)+ソフトウェアY(2万円)=5万円

合計10万円

 

次にソフトウェアXYをバンドルしセットで6万円で販売したとします。

この場合もAさんBさんとも価格が購買意欲と同じなのでセット購入します。

 

<ソフトウェアXとソフトウェアYがセットで発売された場合の売上>

Aさん:6万円

Bさん:6万円

合計12万円

 

なんと別々のものをただセットで売りさらに値段をあげたのに売上があがりました。

2万円の売上の増加はAさんのソフトウェアXに対する支払い増加分1万円とBさんのソフトウェアYに対する支払い増加分1万円によってもたらされています。

 

それぞれの製品について消費者の購買意欲は異なるので、単体で価格設定するとどうしても「安く売りすぎる」「高くて買ってくれない」という事態が同時に生じます。セットで価格設定することでその消費者の購買意欲をならしてしまうことができるのです。

 

 

【参考】

「ハーバード・ビジネス・レビュー20147月号 良い価格 悪い価格」ダイヤモンド社

適応型プライシング

消費税引き上げによる消費低迷を値下げによってカバーしようとする動きが強くあります。しかしながら値下げは消費者の参照価格(値ごろ感)を下げてしまい、値下げになれた消費者はもはや通常価格では買おうとはしなくなります。

 

このような不況下に求められるのは適応型プライシングです。これは長期的な景気変動を見据え、製品・サービスの価値を正当に反映した戦略的な価格設定です。消費者の参照価格を維持しつつ弾力的な対応で製品・サービスの価値を維持・強化していきます。そのための方法を紹介します。

 

 

■低価格バージョンを導入する

 

節約志向の買い物客を引きつけながら、既存の製品・サービスの価格を維持するために、バーゲン用のバージョンを作ります。

 

アパレルブランドが値段を下げたサブブランドを設けたり、高級自動車メーカーガエントリーモデルを導入したりといったケースに見られます。

 

 

■価格低下を防ぐためにプロモーションを活用する

 

キャンペーン期間中に限るというやり方です。早割キャンペーンが典型ですが、ちょっちゅうやると消費者はその期間しか買わなくなるので参照価格は低下します。「今なら3つ使えば1つついてくる」といったように値引きではなく増量キャンペーンのほうが望ましいでしょう。

 

 

■値頃感を保つために製品を改変する

 

食料品メーカーは、原材料の高騰に対し、製品のサイズや量を減少させることで対応します。

 

これは慣習価格が成立しているからです。慣習価格とは「この商品はこれくらいだろうという値ごろ感が成立している場合の価格」のことで、たとえばペットボトルのジュースなら120円といった具合です。この場合、原材料価格の高騰によって値上げすると大きく需要が減少してしまうことになります。

 

この戦略では単位当たりの価格は上昇しますが、顧客の目につきやすい全体的な表示価格は維持されます。

 

 

■サービスの価格を個々の設定して追加料金を課す

 

アメリカの航空会社では旅行需要が落ち込んだので、電話予約、荷物、食事、座席指定の料金を追加しました。これにより本体の低価格をアピールして価格に敏感な顧客を引きつける一方で、プレミアムを払ってもよいという旅行客から高い利益を得ることができました。

 

 

■不況時の価格戦術を取り下げる

 

不況時に値下げしていたのを好況時には取り下げるという単純なやり方ですが、消費者の反発を招く可能性はあります。

 

たとえば1990年代に日本マクドナルドは100円バーガーをやりましたが、その後の値上げで大きく需要を落としました。

 

 

■新しいプレミアム商品を導入する

 

景気が上向くにつれ贅沢したいと思う消費者心理を活用します。要は高価格バージョンを導入するということです。

 

 

■通常価格を上げる

 

こちらもかなり慎重に行わないと消費者の反発を招きます。なぜ値上げが必要なのか丁寧に説明する必要があります。

 

 

【参考】

「ハーバード・ビジネス・レビュー20147月号 良い価格 悪い価格」ダイヤモンド社

希少性の原則

■希少性の原則とは

 

希少性の原則とは、人は希少なものと認識したものに価値を見出すというものです。人は「現品限り」「限定品」「期間限定」「締切迫る」という言葉に弱いものです。

 

その背景にあるのが、心理的リアクタンスです。これは、心理学者ブレームが提唱したもので、「自由を制限されたり奪われたりすると、自由を回復しようとする心理が働く」というものです。「購入できる機会が限られている」というと自分の自由な選択が奪われつつあると感じ、何としてでも手に入れようとするのです。

 

 

■希少性の罠に陥らないためには

 

珍しいものを手に入れて喜びを感じるのは、珍しいものを経験することではなく、それを所有することにあります。

 

希少性の影響を受けて「ぜひ手に入れたい」という感情的な興奮を感じたら、それをアイズと考えて、いったん立ち止まって、落ち着いて理性的に考えることが必要です。

 

それができたら、「どうしてそれが欲しいのか」と自分に問いかけます。答えが「それを所有するため」なら、それを手に入れるのが難しいという事実を利用して、「どれだけのお金を払ってでもそれが欲しいのか」を考える目安とします。

 

けれど答えが「(運転したり、食べたり、飲んだりするために欲しいといった)その機能を利用するため」なら、それは珍しいものだからといって機能には関係がないということを考えましょう。

 

【参考】

「影響力の武器[第二版]」ロバート・B・チャルディーニ著 誠信書房

権威の原則③

■権威への盲従が問題をおこすとき

 

権威への盲従は、ときとして大きな問題を引き起こします。以前、他国と比べ韓国の飛行機事故が突出して多かった時代がありました。その理由として、上下関係が厳しい儒教色が強い文化で、機長のミスに副機長が異を唱えることが難しかったからだと言われています。もっとも上位者に逆らえないという傾向は欧米でもあり、医師の誤診に看護師が盲従した結果、患者に重大な危害をもたらしてしまったケースは山ほどあります。

 

 

■肩書きが上がると身長も上がる?

 

権威の力は恐ろしいもので、肩書きが上がると身長もより高く見せる効果があります。

 

オーストリアの大学で5つのクラスを使った実験があります。ある人物をケンブリッジから来たと紹介し、学生に身長を答えさせます。ケンブリッジでの地位を、学生、実験助手、講師、上級講師、教授とクラスごとに変えてみたところ、地位が上がるほどに身長が上がり、学生の場合と教授の場合とで4センチも差があったそうです。

 

私たちが有名人を目にして「思ったより背が低い」と感じるのも、テレビでは芸能人が権威付けされて勝手に実際より背が高いと思ってしまっているからかもしれません。

 

また格が高いものは大きく見えるという傾向もあります。同じただのカードに3ドルからマイナス3ドルまで書いてあるものの大きさを答えさせると、実際にはサイズは同じなのにもかかわらず、金額が高いカードほど大きいサイズを答えるそうです。

 

 

■本当にその分野の権威なのか?

 

私たちは単に有名人や知識人が言っているからだという理由だけで、その言葉を信じてしまいがちです。たとえば芸能人が薦める商品を買ってしまったり、まったく畑違いの専門家の言うことを信じてしまったりします。

 

テレビのバラエティ番組で、キャスターや弁護士が訳知り顔で政治経済や外交を語っているのを目にしますが、結構な人が真面目に受け取っているように思います。しかし彼らは、単に法律の専門家に過ぎないことは注意すべきです。

 

また経営学者や経営コンサルタントがマクロ経済について語っている場面を目にしますが、実際のデータや基本的な知識がなく、妥当性に欠けるものが多いです。

 

「本当にその分野の権威なのか」確かめることが大事です。

 

 

【参考】

「影響力の武器[第二版]」ロバート・B・チャルディーニ著 誠信書房

 

権威の原則②

前回取り上げたミルグラムの実験で、なぜ被験者たちはもだえ苦しむ学生(さくら)の悲鳴を耳にし、自分でも大いに葛藤しながらも、電気スイッチのボルトを上げ続けたのでしょうか?

 

ミルグラムは、白衣を着て、さらに厳しく指示を出し続ける実験責任者の権威に、被験者が抗しきれなかったからだと結論づけています。

 

ミルグラムの実験は、別名アイヒマンテストといわれます。アイヒマンとは、ナチス政権下で数百万人のユダヤ人を絶滅収容所に送り込み、死へと追いやった移送責任者です。戦後、逃亡しましたが、アルゼンチンでイスラエルの追跡機関に捕まり、裁判後処刑されます(1962年)。

 

裁判の過程でわかったことは、アイヒマンは、映画などで描かれるような冷酷なナチス親衛隊将校ではなく、もともと反ユダヤ主義者でもなく、単に生真面目で小心な公務員にすぎなかったということです。

 

このことから「アイヒマンはじめ多くの戦争犯罪を実行したナチス戦犯たちは、そもそも特殊な人物であったのか。それとも妻との結婚記念日に花束を贈るような平凡な愛情を持つ普通の市民であっても、一定の条件下では、誰でもあのような残虐行為を犯すものなのか」という疑問が提起されました。この実験は、アイヒマン裁判(1961年)の翌年に、上記の疑問を検証しようと実施されたため、「アイヒマン実験」とも言います。

 

実験の結果は、普通の平凡な市民が一定の条件下では冷酷で非人道的な行為を行うことを証明するもので、そのような現象を「ミルグラム効果」ともいいます。

 

【参考】

「影響力の武器[第二版]」ロバート・B・チャルディーニ著 誠信書房

権威の原則①

権威の原則とは、「人は専門家のいうことだと聞いてしまう」というものです。

 

このことを示す最も有名なものは、イェール大学の心理学者、スタンリー・ミルグラムの実験です。1963年に発表されました。

 

<実験内容>

被験者はある部屋に通され、白衣を着た実験責任者から学習における罰の効果を測定する研究に協力するよういわれます。そこで、「隣の部屋にいる学生が、教師役のあなたの出し続ける単語テストに不正解であったら、電気ボルトのスイッチをひねて、学生に電気ショックを与える」「間違う度に電圧を上げる」よう指示されます。教師役の被験者には学生は見えず、インターフォンを通じて声だけが聞こえるだけです。

 

被験者にはあらかじめ45ボルトの電流を経験させ、学生のショックを理解させます。

 

15ボルト(軽い衝撃)

75ボルト(中度の衝撃)

135ボルト(強い衝撃)

195ボルト(かなり強い衝撃)

255ボルト(激しい衝撃)

315ボルト(はなはだしく激しい衝撃)

375ボルト(危険で苛烈な衝撃)

 

実は実験責任者も学生もさくらですし、実際に電流も流されませんが、学生には教師役の被験者が電気ボルトをひねるごとに悲鳴をあげるように段取りされています。

 

<実験開始>

実験が開始されます。学生が単語テストに間違える度に教師役の被験者は電気ボルトの圧力をあげるように実験責任者から命じられます。75ボルトくらいならば学生はあまり声を上げませんが、それ以上になるとだんだん悲鳴を上げるようになります。195ボルトになると学生は「もうだめだ。テストはやめだ」と騒ぎ出します。うろたえる被験者に実験責任者は冷淡に続けるよう命じます。

 

75ボルトになると、不快感をつぶやく。

120ボルトになると、大声で苦痛を訴える

135ボルトになると、うめき声をあげる

150ボルトになると、絶叫する。

180ボルトになると、「痛くてたまらない」と叫ぶ。

270ボルトになると、苦悶の金切声を上げる。

300ボルトになると、壁を叩いて実験中止を求める。

315ボルトになると、壁を叩いて実験を降りると叫ぶ。

330ボルトになると、無反応になる。

 

教師役の被験者は学生役の悲鳴を聞いて実験の中断を求めるようになります、しかし実験責任者は強い口調で次のようにいって続行を命じます。

 

「続行してください。」

「この実験は、あなたに続行していただかなくてはいけません。」

「あなたに続行していただく事が絶対に必要なのです。」

「迷うことはありません、あなたは続けるべきです。」

 

被験者の3分の2は、学生の「やめてくれ!」という嘆願に負けることなく、実験責任者が実験終了を告げるまで、自分の目の前にある電気ショックのスイッチを1つずつ入れていき、最終段階の450ボルトまで続けたのです。

 

さらに恐ろしいことに。学生が最初に解放してくれと声をあげたとき、40人の被験者の誰1人として任務を放棄しなかったのです。

 

【参考】

「影響力の武器[第二版]」ロバート・B・チャルディーニ著 誠信書房

 

好意の原則②

■好意を利用して利益を得ようとする試み

 

前回、相手の好意を得るためには、相手と自分とがともに目指す目標をつくりあげること、互いの利益のために協力することだということを触れました。つまり自分は相手の味方であり仲間であると思わせることです。

 

これを悪用した手口をご紹介します。

 

このブロクでも何度がご紹介した「グッドコップ・バッドコップ(良い警官・悪い警官)」戦術です。悪玉役が相手の提案を批判することで不安に陥れ、「自分のほうが悪いのでは」と思わせます。次に善玉役が相手に同情しつつ助け舟を出すようにして譲歩案を出します。相手は渡りに船とばかりにその譲歩案を受け入れることを真剣に検討するというわけです。

 

また、共通の敵を作り出し、自分はあなたの味方だと思わせることで好意を得ようとすることもあります。たとえば商取引でわざと上司と揉めてみせて、自分はあなたのために頑張ったのだとアピールして好意を得ることで商品を売りつけるといったことです。

 

 

■相手への印象と取引内容を分ける

 

相手が好意を得てあなたから何かを引き出そうという意図がある場合にはどう対処したらよいでしょうか。

 

まずは相手の意図に早く気が付くことです。「自分が思っていた以上に早く相手に好意を抱いてしまったか」振り返ってみてください。もしそうであるなら、相手の術中にはまった可能性があります。

 

たとえばアパレルの販売スタッフが、自分の服を褒め、見ている商品を自分も好きだと同意し、共通の趣味で意気投合してすぐにそのスタッフに好意を持ってしまったとしましょう。そうしたら「会って10分しないのになんでこんなに好意を持ってしまったのだろう」と考えて見るのです。

 

相手に急速に好意を感じていることに気づいたら、相手と取引内容を分けて、相手への印象は脇に置き、取引だけを純粋に検討します。相手への好意を下手に引きずると、妥当ではない買い物をすることにもなりかねません。

 

【参考】

「影響力の武器[第二版]」ロバート・B・チャルディーニ著 誠信書房

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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